Column 連載

好きなことにこそ、愚直であれ!

第3回:私は、紅白が大好きです。

寺坂 直毅(放送作家)

放送作家として知られる寺坂直毅さんは、デパート、紅白歌合戦、徹子の部屋など、とてもピンポイントなモノやコトに膨大な知識を持つ、その分野の“博士”。いわゆる“マニア”だ。今回のコラムは、紅白歌合戦に対する愛について。寺坂さんがなぜ、これほどまでに紅白を愛しているのかについてです。

プロフィール

寺坂 直毅
寺坂 直毅

1980年宮崎生まれ。 放送作家として、テレビ、ラジオ番組の構成を担当。 家から徒歩圏内にデパートが何軒も乱立する環境で幼少期を過ごし、 魅力に憑りつかれたために日本全国のデパートを行脚した 「胸騒ぎのデパート」(東京書籍)を刊行。 紅白歌合戦、黒柳徹子研究などの趣味を持つ。

http://twitter.com/terasakanaoki

紅白歌合戦が抱きしめたいほど好き

8月になりましたね。皆さん、体調崩さず過ごしてますか?

8月になったという事は、あと4か月で12月、今年も終わるという事です。
年々、「1年ってあっという間だなぁ」と、感じる力が増しているように思います。
これは、初めて歩く道が遠く感じ、慣れると近く感じるように、毎年毎年同じ風景を見ている「慣れ」で、年々「あっという間」と感じるのだと、あるタレントが言っていました。

そんな事はどうでもいいのですが、年の終わりの「大晦日」のテレビ番組といえば、「NHK紅白歌合戦」でございます。

その年の音楽界、芸能界、話題を振り返る総決算的番組です。
J-POP、クラシック、歌謡曲、演歌なんでもあり。まさにデパートのファミリー大食堂です。

「今年も終わりだな」と感じる曲、「来年もがんばろう!」と思える曲、故郷を思う曲、などなど、人生の喜怒哀楽をまとめて感じる事ができます。
このような説明が無くても、皆さんご存知の事でしょう。

「若者の紅白離れ」とも言われていますが、昨年の「あまちゃん」や、北島三郎「まつり」など、なんだかんだいって常に話題を振りまいています。

そんな紅白が私は大好きです。どれくらい好きなのか?
う~ん、紅白歌合戦を抱きしめたいくらいです。紅白歌合戦を目標に生きているといっても過言ではないです。いや、体の半分が紅白歌合戦でできているのです。川島なお美さんにワインの血が流れているならば、私の血は紅白歌合戦……。それくらい好きなのです。

もちろん大晦日は「笑ってはいけない24時」も好きです。しかし、紅白は1秒たりとも逃さず観なければならないのです。
普段私は、大量のお酒は飲みません。缶ビールだと1晩で平均1本、多くて3本です。しかし、昨年の紅白の放送時間中はビール6缶、缶チューハイ4缶、計10缶も飲んでいました。しかも全く酔っぱらう事がありませんでした。

人間、夢中になっている時は、酔う事すら忘れるのです。

酒の酔いさえも忘れる、楽しい楽しい紅白歌合戦。
前回は趣味の「デパート愛」について書きましたが、今回はもう1つの大事な趣味、「紅白歌合戦愛」について書きたいと思います。

紅白歌合戦の凄さ

「紅白歌合戦を愛する」というのは、僕のほかにもたくさんいらっしゃると思います。自分の好きな歌手、アイドルが登場するシーンは興奮する事でしょう。
普通に視聴するのはもちろんの事ですが、私はどういう訳か、1973年頃からの大トリ(最後に歌う歌手)の曲紹介を暗記しています。

例えば、
1974年第25回、森進一さんの『襟裳岬』では、

青春の旅は、遠く悲しく、いつか思い出の海へと帰っていきます。
1974年のさすらいの記憶をこの1曲に込めて、
森進一、白組の『襟裳岬』を聴いていただきましょう。
(司会・山川静夫)

1980年第31回、八代亜紀さん『雨の慕情』では、 

歌手になって成功するまで決して故郷には帰るまいと、
一番景色の美しいと思う瀬戸内海を船で神戸へ、
そうして東京まで鈍行で。その時と目の輝きはちっとも変わっていません。
八代亜紀さん、『雨の慕情』です。
(司会・黒柳徹子)

1996年第47回、北島三郎さん『風雪ながれ旅』では、

クリスマスイブに、
クリスマスソングを聴いてしっくり来るように、
やはり大晦日、この人の声を聴いて1年を締めくくる。
これがピッタリくるんじゃないでしょうか。
今年の紅白『歌のある国ニッポン』。大トリは、この人です。
このごろ人は、大声を出さなくなりました。
遠くから人を呼ぶような事が無くなって、
その分、人は、孤独になりました。
人間の肉声が騒音にかき消されるこの時代。
それでも諦めない男がいる!
辛い思いに沈んでいる人、凍えている人
全ての人に、常に大きな声で「元気か!」と呼びかける。
それがこの人の道 この男の美学です。
北島三郎さん、「風雪ながれ旅」
(司会・古館伊知郎)

……と、数を上げればキリがありません。

この台詞は、以前BSで放送されていた紅白歌合戦の再放送を見て覚えました。
覚えたというか、知識が降ってくる感じでした。覚えなくても、覚えてました。
好きなことは、覚えるのではありません。自然に身についてしまうものなのです。   

では、なぜ僕が紅白を愛するようになったのか? と思い出すと、高校生の頃のあるシーンがきっかけだったように思います。

高校2年の頃まで、紅白歌合戦に対して愛は一切ありませんでした。
当時の紅白歌合戦は、大晦日、音楽を聴くための一つの歌番組にすぎなく、何かをしながら見ていました。

しかし、僕が高校2年生だった97年の「第48回NHK紅白歌合戦」。クライマックスで、和田アキ子さんが、カールスモーキー石井が作詞作曲した「夢」という歌を歌ったのです。
そのアッコさんの背景が、とにかく凄かったのです。

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NHKホールのステージが宇宙のように、満点の星空になっていました。
背景も、床も星、星、星。星の上で歌うアッコさん。
とにかく煌めいていました。

やがて歌が終わり、白組司会の中居正広さんの曲紹介(10秒ほど)で、北島三郎さんが「竹」を熱唱。その間わずか10秒ほどにも関わらず、ホールのステージは雄大な自然を思わせる竹林。星から竹林。なぜ、1つステージで、10秒という短い時間で、宇宙から竹林に変化できたのか?

そして「竹」が終わり、紅組トリで、結婚し妊娠の為休養する前のラストステージの安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」の時には、煌めくクリスタルのツリーが登場。

白組、大トリの五木ひろし「千曲川」では、ツリーの前の五木さんに大量の銀紙の吹雪が舞います。その光景がなんともきれい。その感動から千曲川が流れる長野県へ旅をしたほどです。

セットの美しさは勿論ですが、その裏で作業する人の緊張感や汗にも感動しました。

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ひとり紅白歌合戦の開催

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