Column 連載

好きなことにこそ、愚直であれ!

第3回:私は、紅白が大好きです。

寺坂 直毅(放送作家)

放送作家として知られる寺坂直毅さんは、デパート、紅白歌合戦、徹子の部屋など、とてもピンポイントなモノやコトに膨大な知識を持つ、その分野の“博士”。いわゆる“マニア”だ。今回のコラムは、紅白歌合戦に対する愛について。寺坂さんがなぜ、これほどまでに紅白を愛しているのかについてです。

プロフィール

寺坂 直毅
寺坂 直毅

1980年宮崎生まれ。 放送作家として、テレビ、ラジオ番組の構成を担当。 家から徒歩圏内にデパートが何軒も乱立する環境で幼少期を過ごし、 魅力に憑りつかれたために日本全国のデパートを行脚した 「胸騒ぎのデパート」(東京書籍)を刊行。 紅白歌合戦、黒柳徹子研究などの趣味を持つ。

http://twitter.com/terasakanaoki

ひとり紅白歌合戦の開催

時間がない、CMもない中で、なぜこうも風景が変わるのか? それがものすごく気になりました。
興奮を抑えられず、実家の部屋に戻ると、部屋の勉強机が劇場に見えてきました。
「ここで紅白を再現したい!」そんな思いから、ある遊びを始めました。

自宅のデスクに、毎年紅白歌合戦の舞台セットをミニチュアで作り、設置。
それを写真で撮影しています。つまり、デスクをNHKホールにするのです。今はデスクの上に、昨年のセットを常設(ずっと飾ってるだけ)ですが、以前は、年が明けて、録画した紅白歌合戦のVTRを流しながら、家のデスクで同時進行でセットチェンジをする「ひとり紅白歌合戦」を開催していました。誰にも理解を得られませんでしたが。

実家にある花瓶やスポット照明、洗濯物を入れるかご、ビニール生地を集めて、セット作りを必死でやりました。デスクをステージにすると、自然と歌手の姿が立体的に浮かんでくるのが不思議です。妄想ですが。

(自身が作った)第58回紅白歌合戦のメイン舞台セット

(自身が作った)第58回紅白歌合戦のメイン舞台セット

書道用紙で紙吹雪を作り、部屋中に降らしました。
かき氷機で砕いた氷を作り、本物の雪を降らしたりもしました。
ステージに向かってシャボン球を吹いた事もあります。
ラストの蛍の光では、うっすら涙がこぼれてきました。達成感です。

僕はこの遊びを10年ほど続けてきました。最近でも、年賀状のために、前年の紅白のメインセットを再現します。前は文房具店などで素材を購入していましたが、今はIKEAなどで安くてそれっぽいものを購入できるのです。便利な世の中になりましたね。まぁ、そんな使い方をするのは僕ぐらいでしょうけどね。

(自身が作った)第58回紅白歌合戦のメイン舞台セット

(自身が作った)第58回紅白歌合戦のメイン舞台セット

今は、お世話になった人に送る年賀状に載せる画像用に紅白のセットを作り、撮影しています。
セットの魅力もさることながら、紅白に出場する歌手の真剣な表情も見物です。
歌手にとって目標であり、親孝行の場でもある紅白で歌う姿は、音楽番組を超えて、ドキュメンタリーでもありません。まさに「歌メンタリー」という感じです。

紅白で歌手が流す涙は、達成感だったり、緊張感だったり、「これまでの人生を見返したぞ!」みたいな反骨精神だったり、人間の素晴らしさがすべてあるように思います。これほどきれいで美しい涙はないと思うのです。

毎年の儀式『紅白キャニオン』

そして紅白で忘れてはいけないポイントは「ストーリー」があるという事です。

第62回(2011)年の紅白の後半を例にとると、松任谷由実「(みんなの)春よ、来い」で、春の景色。
EXILE「Rising Sun」で夏の景色。
天童よしみ「愛燦燦」、そして北島三郎「帰ろかな」で秋の景色、
紅組のトリ、石川さゆり「津軽海峡・冬景色」は曲名のとおり冬の景色、
大トリ、SMAP「オリジナル・スマイル」で、春の祭りのような風景。
という風に、曲順に四季が織り込まれているのです。

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このようにストーリーで歌を披露できるのは、CMがない紅白歌合戦の特徴なのです。
やはりストーリーがあることで、見る側は自然と感情移入がしやすくなります。

そして紅白のためにやる事は、ミニチュアのセット作りだけではありません。

私は、毎年12月30日に、山に登ります。誰もいない、雪が降る場所に行きます。
長野や群馬などの山です。そこを3時間ほど歩きます。

寒い、つらい、きつい、寂しい、とにかく孤独な山歩きです。

しかし、あと24時間後は大晦日の紅白。山を越えると、紅白歌合戦が待っている……。
そんな希望の為に歩くのです。この年の瀬の山歩きにはまってしまい、
毎年、「紅白キャニオン」という一人のイベントにしています。

これはなかなか賛同してくれる人がいないのですが、無性に楽しいひとときなのです。
ドMなのでしょうか?

これらの行為や知識は「無駄」だと思ってきましたが、今ではお仕事につながることもあるのです。
それはまた次回。

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