Column 連載

好きなことにこそ、愚直であれ!

第2回:私は、デパートが大好きです。

寺坂 直毅(放送作家)

放送作家として知られる寺坂直毅さんは、デパート、紅白歌合戦、徹子の部屋など、とてもピンポイントなモノやコトに膨大な知識を持つ、その分野の“博士”。いわゆる“マニア”だ。そんな寺坂さん、好きが講じ、デパートに関する書籍まで出した、まさに「好きを仕事に」している人。しかし、なぜデパートなのか? 今回は、寺坂さんがデパートを愛するようになったストーリーをご紹介します。

プロフィール

寺坂 直毅
寺坂 直毅

1980年宮崎生まれ。 放送作家として、テレビ、ラジオ番組の構成を担当。 家から徒歩圏内にデパートが何軒も乱立する環境で幼少期を過ごし、 魅力に憑りつかれたために日本全国のデパートを行脚した 「胸騒ぎのデパート」(東京書籍)を刊行。 紅白歌合戦、黒柳徹子研究などの趣味を持つ。

http://twitter.com/terasakanaoki

私はデパートを愛しています。

私は今、長野県の南部に位置する飯田市の、駅前のビジネスホテルにいます。

ここにいるのも、ある目的があるからです。ホテルに置かれていた飯田市のパンフレットを見ますと、この町は蕎麦が美味しいらしいです。五平餅、ウナギ、馬刺しも名物なんだそうです。しかし、胃袋を満たすために来たのではありません。

なにを隠そう、今回の目的は「デパートを見たいから」なのです。同意していただけますか? なかなかこの趣味、理解してくれないんですよね。だから友達少ないんですよ。となると、前回の暗い過去の話に戻ってしまうんで……、今回は明るくいきます。

私はデパートを愛しています。きっかけは幼稚園の時です。

前回もお話しましたが、私の実家は宮崎県宮崎市。中心部で毛糸店&ブティック「愛編む寺坂」を営む両親のもとで生まれて育ちました。その実家の3軒お隣さんがデパートでした。幼稚園が終わったら、他の子供たちは公園で遊ぶのでしょうが、私は必ずデパートに行っていました。

毛糸店の店員さんと行ったり、お客さんに連れて行ってもらったり。エスカレーターやエレベーターは子供から見て、未来都市にタイムスリップしているような魅力がありました。それほど、デパートには未来的な魅力がありました。

そして、そのデパートの趣味がやがて仕事になるとは、この頃には思いもしませんでした。

エレベーターガールにフラれた小学2年生の春

エレベーターガールの優しい笑顔も楽しみの一つでした。

小学生になってもデパート愛は続き、学校でテストの点数が低くても、ドッジボールで集中的にボールを当てられても、音楽の授業のリコーダーを隠されても、数人分のランドセルを持たされても、放課後デパートに行けば気分は天国でした。

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しかし、小学2年生の春。そのデパートが、半期に一度のバーゲンの日。
あまりにデパートが好きすぎて、売り場に行かず、エレベーターを何往復も乗るという、今考えてもよく意味のわからない遊びをしていました。
そこで、エレベーターガールのYさんに、ある言葉を言われました。

「今日は忙しいから帰って。」

この衝撃、20年以上たった今でも忘れられません……。愛していたデパートにふられたのです。失恋です。

その日から、そのデパートには行かなくなりました。どうしても買い物をしたい時は、正面玄関から覗いて、Yさんが案内所にいるかどうかを確認してから中に入りました。私はデパートを完全に嫌いになったのです。

泣いて抵抗した、広島デパートめぐり

そして小学2年生の夏。家族旅行で、広島へ行く事になりました。

メインは宮島や平和記念公園だったのですが、宮崎のデパートは訪れる事が出来なくなってしまったので、「他県のデパートなら、また行きたい!」という思いから、広島駅に着いてすぐに、デパートを4軒、はしごする事になったのです。

というのも、広島で宿泊するホテルが、中心部の「紙屋町」という場所。広島駅から電車に乗り、紙屋町に行く道沿い、横一列にデパートが4軒建っているので、地図が無くても、土地勘が無くても、簡単にデパートを訪れる事が出来ます。「お好み村に行ってお好み焼きを食べたい!」という5歳上の姉の意見を無視し(泣いて抵抗し)、「広島デパートめぐり」をする事になりました。姉は不機嫌でしたが、その20年後に晴れて結婚した亭主は広島出身の人なので、今はしょっちゅうお好み焼きは食べているでしょう。そう思えば時効です。許してください。

話は戻しますが、その「広島デパートめぐり」。これがめちゃくちゃ楽しかったのです。三越広島店、天満屋広島八丁堀店(現在は閉店)、福屋八丁堀本店、そごう広島店、どれも売場面積、歴史、品格ともに大規模なデパートです。

デパートが与えてくれた安堵感

三越はレストランでお子様ランチを食べて、天満屋ではシースルーエレベーターに乗り、福屋ではおもちゃを買ってもらいました。そして最後はそごうです。そごうには屋上に遊園地があると知り、私は屋上のエスカレーターを降り、全速力で屋上遊園地の目玉「モノレール」に向かって走ったのです。

しかし、そこで興奮で前も見ず、我を忘れて走ってしまい、事故が起こりました。そう、他の子供と思い切りぶつかってしまい、感動は激痛にかわったのです。

「わ~~~~~!!うぁ、い、いたっ、痛い、ぎゃ~~~~っっっ!!!!!」

前歯から血がドバドバと出てきました。相手の子供は無事で何よりでしたが、私は血に染まったのです。「なんとかせねば!」と心配する家族。そんな時、そごうの店員さんが声をかけてくれました。「大丈夫? 医務室に行きましょう!」。

すぐに店内にある医務室に案内され、応急処置をしてくださり、すぐに歯科に紹介状を書いてくださり、事なきを得ました。泣いて泣いて、涙が枯れるほど泣いてわめいて、処置によって痛みがなくなった時の安心感は未だに忘れる事ができません。「デパートって、なんて親切な場所なんだろう。」

その時、私はデパートを本格的に好きになりました。

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「デパートバカ」が仕事になる!

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