Special 特集・PR

作品で「場の記憶」を刻みたい。HERE.がつくるのは、空間映像という体験

株式会社HERE.

『NHK紅白歌合戦』や椎名林檎らトップアーティストのライブビジュアルに、プラネタリウムのプログラム、商業施設のプロジェクションマッピング。株式会社HERE.は、四角四面の画面ではなく、空間へ投影する映像を専門としたプロダクションだ。目で楽しませるだけにとどまらず、見る人の体験そのものを演出する作品はどのようにつくられているのだろうか? VJ出身の土井昌徳代表とクリエイター陣に、「空間映像」のつくり方を聞いた。

取材・文:宇治田エリ 撮影:有坂政晴(STUH) 編集:立花桂子(CINRA)(2019/10/31)

新しいだけではない、「ここ」でしか体験できない映像をつくる

—コーポレートサイトには「新しい時代の映像表現を専⾨に手がける、ビジュアルデザインスタジオ」と書かれています。「新しい時代の映像表現」とはどういうものですか?

土井:アーティストのライブに使われるCG映像やプラネタリウムのプログラム、商業施設でのプロジェクションマッピング映像などですね。HERE.という社名の通り、ぼくたちは「ここ」という空間でしか体験できない映像を制作しています。

心が動く瞬間は、体験してこそ生まれる。そういった信念を持ち、単に「目新しい」だけの映像ではなく、物語性を持った映像表現にも挑戦しています。

株式会社HERE. 代表取締役社長 / ディレクターの土井昌徳さん。大学では一般の学部に在籍していたが、VJ活動をきっかけに、CG / VFXを学ぶ専門学校へ入学。卒業後はCGプロダクションで経験を積んだのち、2015年にHERE.を設立した

株式会社HERE. 代表取締役社長 / ディレクターの土井昌徳さん。大学では一般の学部に在籍していたが、VJ活動をきっかけに、CG / VFXを学ぶ専門学校へ入学。卒業後はCGプロダクションで経験を積んだのち、2015年にHERE.を設立した

—なぜCMや映画といった普通の映像ではなく、「空間映像」にフォーカスしたのですか?

土井:映像表現の手法としての可能性を感じたからです。プロジェクションマッピングも、最初はトリックアートの一種として注目を集めましたが、あれだけの面積を投影できるなら、これまでにはない演出もできるでしょう。映画のような物語性のある表現を持ち込むことだって可能です。

それに、ビジネスとしての可能性を感じたことも大きいですね。アートで終わるのではなく、社会性をもった「仕事」として広げていける確信もあり、2015年にHERE.を立ち上げました。シンプルに、ぼくが新しいもの好きだからという理由もありますが(笑)。

生み出すのは、「何か不思議なものを見た」という記憶に残る体験

—CMや映画など「画面」を前提とした映像に対して、空間映像にはどのような価値があるのでしょうか?

土井:CMや映画は、あくまでも「映像を見る / 見せる」という目的ありきのもの。一方、HERE.が手がける空間映像は、「何か不思議なものに出会った」という体験そのものに価値があります。アーティストのライブなら、お客さんはアーティストの世界観を体験しにいく。商業施設なら買い物をしに行く。それらの体験に付加価値を与える映像ですね。

—つまり、人の体験を演出するための映像ということですね。

土井:HERE.の作品でいえば、2016から2018年にかけて、新宿伊勢丹で上映されたプロジェクションマッピング「ミュージアムキューブ」があります。これは、クライアントの「商業施設のデッドスペースにコンテンツを取り入れて、入店体験の価値を上げ、購買につなげたい」という要望から生まれた作品です。

季節やイベントに合わせて、各フロアの踊り場にある壁面にさまざまなプロジェクションマッピングを展開しました。開催中は買い物途中の方や子どもが立ち止まって見入ってくれましたし、映像が変わるたびに見に来てくださる方もいました。

伊勢丹新宿店で展開された「ミュージアムキューブ」(画像提供:HERE.)

伊勢丹新宿店で展開された「ミュージアムキューブ」(画像提供:HERE.)

—私もこの作品を目にしたのですが、とても記憶に残っています。お父さんやお子さんが、不思議そうに見入っていたことを思い出しました(笑)。

土井:百貨店に連れて行ってもらった特別な記憶は、大人になっても覚えていますよね。「何を買ってもらったかは忘れたけど、大きな噴水があったな」とか(笑)。同じように、空間映像は「何か不思議なものを見た」という、記憶に残る体験を生み出すことができるんですよ。

—ほかに、これまでのなかで印象的な作品はありますか?

松下:東京スカイツリーにある『コニカミノルタプラネタリウム“天空”in東京スカイツリータウン(R)』で、ライブ用に制作した4K映像ですね。プラネタリウムでは、平らな面ではなくドームシアターに投影する必要があります。そのためにドームマスターというフォーマットを使って、魚眼レンズで見たときのような全天周映像を制作しました。

株式会社HERE. ディレクターの松下藍さん。テレビ局の2DCGデザイナーを経てフリーとして活動後、2019年4月にHERE.へ入社。土井さんは専門学校時代の後輩にあたるという

株式会社HERE. ディレクターの松下藍さん。テレビ局の2DCGデザイナーを経てフリーとして活動後、2019年4月にHERE.へ入社。土井さんは専門学校時代の後輩にあたるという

山田:私は『NHK紅白歌合戦』や椎名林檎さんのコンサートに使用された映像が印象に残っています。制作の苦労を間近で見ていたので、実際にステージを目の当たりにするとなおさら感動しました。

株式会社HERE. 制作進行の山田梨紗さん。音楽系の仕事への憧れから、大学在籍時にCINRA.JOBを通じてインターンに応募。映像制作は未経験ながら、2018年4月、正式に入社を果たした

株式会社HERE. 制作進行の山田梨紗さん。音楽系の仕事への憧れから、大学在籍時にCINRA.JOBを通じてインターンに応募。映像制作は未経験ながら、2018年4月、正式に入社を果たした

資料だけではわからない雰囲気を知るために、デザイナーも現場へ

—空間映像をつくるうえで、心がけているモットーを教えてください。

土井:現場に足を運ぶことです。プロダクションのデザイナーは会社にこもって作業をすることが多いですが、HERE.では作品が投影される現場へ同行してもらいます。

—それはなぜですか?

土井:たとえば、「建物の周りは木に囲まれている」といった、資料には書かれていない情報は実際に行ってみないとわかりません。そういう数値だけではわからないスケール感や五感で捉える現場の雰囲気は、表現にも反映できますから。

それから、DJやVJを経験しているメンバーが多いので、音楽との親和性も大切にしています。単に音響としての役割だけでなく、曲の歌詞や展開に合わせたストーリー性を演出に盛り込むようにしています。

Next Page
音楽の世界観を映像で表現するコツは、アーティスト本人を憑依させること?

この企業で現在募集中の求人