Interview 私としごと

憧れだけだった学生時代の自分に「ちゃんと編集者になれたよ!」って言いたい。

株式会社ロースター
渡部 彩(エグゼクティブディレクター)

「編集者に憧れる普通の子でした」。そう話すのは、メディア制作会社・ロースターに所属する渡部彩さん。現在、月刊ファッション雑誌『Soup.』の副編集長を務めるほか、広告、書籍などのチーフディレクターを務める叩き上げの編集者だ。しかし、これまでには編集の道から外れたこともあったという。そんな彼女に、初めて編集者を志してから今日までの経歴について語ってもらった。

プロフィール

渡部 彩

1984年生まれ。沼津高専を卒業後、埼玉大学に編入し卒業。編集プロダクションにて、フリーペーパー『FILT』等の編集を経て2010年より株式会社ロースターに入社し、現職。ファッション雑誌『Soup.』副編集長のほか、広告、書籍、ムックなどのチーフディレクターを務める。

インタビュー・テキスト:村上広大 撮影:すがわらよしみ(2014/6/27)

憧れの出版業界に飛び込み、理想と現実のギャップに苦しんだ学生時代。

―職歴を拝見すると、前職でも編集業をご経験されていますが、出版業界への憧れは強かったんですか?

渡部:はい。モノをつくる仕事がしたいと思って、マスコミ業界を中心に就職活動をしたんですが全くダメでしたね。でも、どうしてもこの業界で働きたかったので、知り合いに雑誌『Begin』の編集部の方を紹介していただき、なんとかアルバイトとして入れてもらえることになりました。

―実際に働いてみていかがでしたか?

渡部彩

渡部:編集の仕事というものを舐めていましたね。そもそも学生気分が抜けきれていなかったんだと思います。編集者の華やかな部分しか見ていなかったので、すぐに撮影現場に行けると思っていたんです。でも、実際は地味な作業ばかり。プレゼントページとか小さな原稿も少し書かせていただいていたんですけど、基本的には、コーヒーカップの片付けとか、リース商品を返却に回ったり、読者プレゼントを配送したり。今、思うと当たり前のことなんですけど、憧れだけで入ってしまっていたので、「何のために?」って思っていました。編集部の人たちはとても忙しそうで、コミュニケーションもうまくとれず、怒られてばっかりでしたね。

—現実を突きつけられたわけですね。

渡部:はい。とにかく不甲斐なさでいっぱいでした。どうやったら思い描いていたような編集の仕事をやらせてもらえるのかなと。でも結局答えは出ないまま、1年続かずに辞めてしまいました。もっと頑張れば良かったんですけど、そんな根性もなかったですね。今でも当時の児島編集長(現『装苑』編集長)や編集部の方には優しくしていただいていて、「渡部はあのとき本当に使えなかったけど、よくここまで成長したな」って言われます(笑)。『Begin』は読者はもちろんですが、アパレル業界の方からの信頼度も絶大で、それは下っ端のバイトからみても分かりました。素晴らしい雑誌でしたし、編集の方々は優れた人ばかりだったので、ここで出会えた人や得た経験は私にとっての財産になっていて。当時は本当にどうしようもなくて何の役にもたてなかったですけど、いまは当時お世話になった皆さんに見せても恥ずかしくないような仕事をしようと思いながらやっています。

「個性がない」コンプレックスを原動力に突き進んだ編集の道

―『Begin』編集部を辞めた後は何をしていたんですか?

渡部:大学を卒業して、六本木ヒルズにあるアパレルの店舗で販売員をやることになりました。その仕事自体はとても楽しかったんですが、どうしたら次のステップに進めるのかが見えなくて。結局、編集者の夢が諦めきれず、当時『FILT』というカルチャー系のフリーペーパーで編集長をしていた大崎(現ロースター代表)に声をかけてもらい、働くことになりました。

―そこでは具体的にどんな仕事をしたんですか?

渡部彩

渡部:『FILT』の編集を担当することになりましたが、あとはクライアントワークが多かったです。実力とかやる気次第で仕事を任せてもらえたので、モチベーションも上がるし、毎日が新鮮で。実際、編集部に入ってすぐにページを任せてもらえました。企画会議にも参加させてもらえたのも嬉しかったです。『FILT』はページ数もそれほど多くなく、企画をじっくり練ってページを作っていける媒体だったので、こだわった構成やビジュアルの作り方はとても勉強になりました。また、原稿が上手なマガジンハウス出身の上司が多かったので、コピーライティングも叩き込まれました。恵まれた環境でしたし、編集のイロハはここで教わったと思います。

―今でも印象に残っている企画はありますか?

渡部:自分の企画がはじめて特集として採用された「東京上京物語」という企画ですね。様々な有名人の方に上京したときの甘酸っぱい思い出や、夢に一直線だった当時のことを思い入れの場所で語ってもらう企画なのですが、上京当時に住んでいた土地で撮影をしたり、家の間取りなども書いてもらったり。私自身、静岡の田舎から上京してきたので、自分の思い出と重なるところがあって初心を思い出しました。そうやって自分の企画が認められて誌面として形にできるということが、単純に楽しかったですね。それこそ憧れていた編集の仕事をさせていただけたと思います。

―実際に理想としていた編集の仕事を経験できたわけですね。

渡部:学生の頃は編集者になりたいと思っていても、どうすればなれるのかも分からなかったし、とにかくがむしゃらだったので。今は当時の自分に「ちゃんと編集者になれたよ!」って教えてあげたい気持ちです(笑)。

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「編集の仕事って地味なことが多いけど、
どんなところでも見てくれている人はいる。」

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