Interview 私としごと

アイドルプロデューサー「もふくちゃん」のルーツは、ノイズミュージックとアートにあった

合同会社テキトーカンパニー
福嶋麻衣子(音楽プロデューサー / クリエイティブディレクター)

「もふくちゃん」の愛称で知られる音楽プロデューサー福嶋麻衣子さん。ライブイベントスペース「秋葉原ディアステージ」やアニソンDJバー「秋葉原MOGRA」の立ち上げ、でんぱ組.incやわーすたをはじめとしたアイドルグループのプロデュースなどを手掛けてきた。言わずもがな、秋葉原カルチャーを牽引してきた中心人物の一人だ。現在も様々なアイドルのクリエティブディレクションを行う彼女が、どのように音楽やアイドルの世界へのめり込み、現在に至ったのか。その背景や今後の展望についてお話を訊いた。

プロフィール

福嶋麻衣子

東京都出身。東京藝術大学音楽学部卒業後、ライブ&バー「秋葉原ディアステージ」、アニソンDJバー「秋葉原MOGRA」の立ち上げに携わり、でんぱ組.incやPUFFY、わーすたなど多くのアーティストの楽曲プロデュースを手掛ける。別称は「もふくちゃん」。

取材・文:冨手公嘉 撮影:すがわらよしみ(2017/2/17)

ポップスにもテレビにも触れられなかった小中学生時代

—音楽にはいつ頃から興味を持っていたんですか?

福嶋:3歳からクラシックピアノを習っていましたね。母はもともとクラシック好きで、父はジャズに傾倒していた人でした。その頃から、私を音大付属の高校に入れたかったようで、ピアノのレッスンにほとんどの時間を費やしていました。中学生になっても「テレビはNG、ポップスは聴いたらダメ」と(笑)。

―すごく厳しい環境ですね……。

福嶋:それが当たり前になっていましたね。テレビNGとはいっても、学校の校内放送からSPEEDが流れてきたり、皆が今聴いているものをカセットやMDに入れてもらって聴いていました。

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—他ジャンルの音楽を自発的に聴き始めたのはいつ頃からですか?

福嶋:高校へ入ったときですね。クラシック以外の音楽が解禁され、自分のお小遣いで初めて買ったCDが、PARLIAMENTというバンドのアルバムでした。Pファンクというジャンルにすら触れたことがなかったのに、CDショップに駆け込んで、その場で店内に流れている曲に聞き惚れて、「このCDをください!」と店員さんへ言ったことを覚えています。それからブルースとかブラックミュージックにもハマっていきました。並行してモーニング娘。などのポップスを聴いていると、ルーツ音楽との結びつきを感じられたりして。

「ピアニストにはなれない」その気づきから実験音楽などを模索

―念願の音大付属の高校に入ってみていかがでしたか?

福嶋:入学してすぐに自分はプロのピアニストになれる存在ではないと痛感しました。技術も表現力も別格みたいな子が学年に1人や2人いるんですよ。「ああ、こういう子がプロになるんだな」ということが高校生でもわかるわけです。彼女たちはプロになるために1日8時間の練習を当たり前にやっていますが、私は入試に受かるための練習をしていただけ。「このまま続けても、プロになるのは無理だな」と思ったんです。その頃から、音楽というジャンルのなかで自分が生き残っていくためにはどうすればいいだろうと模索するようになりました。

―具体的には、どんなジャンルや方面性で模索をしていたのでしょうか?

福嶋:非常階段や大友良英などのノイズミュージックをよく聴いていました。ずっとクラシック一本でやってきたので、「シーケンスのいらない音楽って、なんて最高なんだろう」と感じて。自宅に機材を揃えて自分でも色々試してみました。小学生の頃から自分でサイトを作るくらいパソコンに触れている時間が大好きだったので、勉強したというより好きで夢中になっていった感じですね。

―それほどノイズに魅了されながらも、進学先は音大ではなく東京藝術大学だったんですね。

福嶋:高校時代、アートやコンテンポラリーダンスにも関心を持つようになったので、その興味をもっと深めてみたいという気持ちがあったのが大きな理由ですね。このままエスカレーター式で音大に人生の歩を進めてしまうと、音楽だけを勉強する人生になってしまう気がして。もっと幅広くアートや音楽を勉強したいなという気持ちがあったんです。藝大なら多種多様なジャンルに関わる人がいるし、勉強にもなるなと。

―大学時代に学んだことは、今の仕事をする上で素養になっていると思いますか?

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福嶋:はい。結構ジャンルを横断して色々なことをつまみ食いしていたので、それが今のプロデュース業に役立っていると思います。学部学科関係なく、授業を取りまくっていましたね。学内にレアなアナログシンセサイザーが保管されていて、それを使った授業に出てみたり(笑)。面白くて仕方がなく、朝から晩まで学校にいました。勉強しているという感覚はほとんどなかったです。

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