Interview 私としごと

格好つけてこそ男です。『LEON』編集者が語る、かっこいいオヤジ像

LEON編集部(株式会社主婦と生活社)
市村 広平(編集者)

2005年に新語・流行語大賞トップ10に選ばれるなど一斉を風靡した「ちょい不良(ワル)」という言葉。今でこそ当たり前のように世間に浸透したこの言葉ですが、雑誌『LEON』が理想の中年男性のスタイルを示す言葉・価値観として提唱したことで、ブームに火がつきました。そんな時代を切り開いた『LEON』編集部に24歳から7年在籍しているのが市村広平さん。その実「ちょい不良(ワル)」ファッションの世界に憧れて『LEON』編集部に在籍していたのかと思いきや、はじめは必ずしもそうではなかったと語ります。今、『LEON』を通じて提唱したい価値観とは?

プロフィール

市村 広平

1985年生まれ。明治大学商学部卒業。2010年より男性ライフスタイル誌『LEON』の編集を中心に、航空機内誌や紳士服ブランドWEBメディア、ゴルフ誌や通販カタログの制作などをこなす。

インタビュー・テキスト:冨手公嘉 撮影:すがわらよしみ(2016/8/18)

ファーストキャリアは「役者」!?

ー編集者になる前はどのようなことをしていたんですか?

市村:学生時代、偶然新宿で芸能事務所にスカウトされたのがきっかけで、役者をしていました。自分はミーハーなところがあって、特に役者を目指していたわけではないのですが「モテたかったから」と軽い気持ちで所属したんです。でも蓋を開けてみたら、いくらオーディションに行っても全然ダメで(笑)。何もないところで、いきなり踊りだしたり泣き始めたりしないといけないんですが、基本的に僕は恥じらいを捨てきれなくて……。

ーオーディションではどんな人が合格していたんですか?

市村:いい意味で頭のネジを外すことができる人、常識にとらわれずリミッターを解除できる人ですね。そうじゃないと芸の世界では通用しないというのをまざまざと見せつけられました。でも、プレゼン能力や人前で話す度胸、物怖じしない態度は身についたと思います。大学卒業してからも1年間ほど事務所に所属していたのですが、まったく仕事がなくて。大学卒業してからも定職につかずフラフラしている風に思えていたようで、実家の家族にも心配されていました。

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ー編集者志望というわけではなかったんですね。

市村:漠然とした憧れはありました。学生の頃からなんとなく9時〜5時の仕事はしたくない、忙しくても刺激のあるところで働いていたいと思っていたんです。大卒文系でそういう願いが叶えられる世界は編集職だろうなと考えていたので。ただ、ファッションの世界への憧れはそこまでありませんでした。役者を辞めていろんな雑誌の編集部に応募はしたんですが、基本的に編集者の募集は即戦力が最低条件であることが多いんです。僕は未経験だったし、全然受からなくて。

ーでは『LEON』の編集者というポジションは、どうやって手にしたんですか?

市村: 地元のファッションに詳しい知人がたまたま『LEON』を愛読書にしていて、「『LEON』がちょうど募集しているから試しに受けてみたら?」とアドバイスされて。ダメ元で応募したのが始まりでした。どういうわけか僕みたいなズブの素人を選んでもらえて、入ることができたんです。

どこの世界にも染まっていなかったから、未経験でも編集者になれた

ー編集者ともなると、何かしら光るものがないと採用されない印象です。市村さん採用の決め手はどんなところにあったんでしょう?

市村:後になって編集長に聞いてみると、「役者でコケて、失うものが何もないことと、まだどこの世界にも染まっていないこと」が評価されたみたいなんですけど(笑)。自分がまったく白紙の状態だったからこそ、ここでファッションや編集の「いろは」を叩き込んでもらえたのかなと思います。

ーまったくの未経験から編集の世界に足を踏み入れて、最初はどんなお仕事を?

市村:カメラマンやスタイリスト、モデル、ロケ場所の手配をして、時間調整するといったアシスタント業務で手一杯でした。現場でディレクションをするのはもちろん先輩。どこも最初はそうだと思いますが、自分はそれをただ見て学んで、なにが格好いい写真で、どう撮れば読者に響くのかをひたすら盗みました。1か月の間に3号同時に動いているような時もあって、そういう月は全然寝られないし、帰れない。情けない話ですが、その頃は「しんどい」「辞めたい」なんていつも思っていましたよ。

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ーそれでも食らいついて辞めなかったのにはどのような理由があるのでしょうか?

市村:同期に恵まれたからだと思います。しんどいという気持ちや野望なんかを語り合えて、ガス抜きもできて、お互いに支え合えた気がします。そういう時期が3年くらい続いて、ようやく自分のページを持つことができた時は本当に嬉しかったですね。

ーファッションにも疎かったというお話でしたが、大変な部分も多かったのでは?

市村:そうですね。着る服を毎日先輩にダメ出しされて、「今持っている服全部捨てろ」と冗談交じりに言われたりしていました(笑)。毎日の業務に必死だったので、自分の服なんて正直どうでもよかったのですが、でもそれでは当然ダメで。展示会も先輩の後ろについていき、どの服の前で立ち止まるのかを見て学んでいました。不思議と編集長も副編集長もデスクも、みんな立ち止まるところが一緒なんです(笑)。そういうのを見て、「『LEON』的なセンス」みたいなものが養われていったんだと思います。

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