Interview 私としごと

笑顔の陰に努力あり。水野学が率いるgdcアートディレクターの仕事術

株式会社グッドデザインカンパニー
加藤圭織(アートディレクター)

熊本県公式キャラクター「くまモン」のデザインを手がけたトップクリエイター、水野学が代表を務めるgood design company(以下、gdc)。そこで活躍するアートディレクターが、加藤圭織さんだ。これまで「JR東日本」「中川政七商店」など、名だたるクライアントをデザイナーとして担当。さらには今年開催された『Tokyo Midtown Award 2017』デザインコンペにて、応募総数1,162点のなかでグランプリを受賞するなど、名実ともに注目の若手デザイナーである。彼女のデザインへのこだわり、gdcから得た学びについて話を伺った。

プロフィール

加藤圭織

1986年、神奈川県生まれ、茨城県育ち。東北芸術工科大学グラフィックデザイン学科卒業。広告制作会社MAQ inc.を経て、good design companyへ入社。「JR東日本」「久原本家」「中川政七商店」「薫玉堂」など、サービス・商品のブランディングやグラフィックデザインを手がける。今年開催された『Tokyo Midtown Award 2017』デザインコンペにてグランプリを受賞。

取材・文:羽佐田瑶子 撮影:きくちよしみ(2017/11/24)

人生を変えた恩師の一言、「君のやりたい仕事は、デザイナーだ」

—加藤さんは、もともと絵を描くのが好きだったのですか。

加藤:ものづくりが得意な両親の影響があると思います。母は紙粘土やビーズ手芸が好きで、地元のカルチャーセンターで講師をしていたほど。私は絵を描くのが好きで、小学5年生から地元茨城の絵画教室に通っていました。描いた絵を両親や友人に見せて、喜んでもらえることがうれしかったんです。周りからの勧めもあって、小学生のころからいろんな絵画コンテストにも応募していました。

—それは大人も参加するコンテストですか?

加藤:そうです。菓子メーカーのカンロが主催した「夢のようなキャンディーアイデア」を募集するコンテストで、賞をいただいたのはいい思い出です。なぜか子どもでは審査員に認めてもらえないと思い込み、「40代・主婦」と偽って応募してました(笑)。箱いっぱいのキャンディーをもらえたのもうれしかったですね。

—そのあと、自然にデザイナーの道へ?

加藤:山形にある東北芸術工科大学のグラフィックデザイン学科に進んだのですが、「私は絵を描いて、喜んでもらうことしかできない」と思い込んでいて、当初はイラストレーターになりたいと考えていたんです。でも入学早々、ある先生から「君のやりたいのはイラストレーターではなく、デザイナーの仕事だ」と言われて。

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—それはどういう意味でしょうか。

加藤:イラストレーターは、クライアントからの依頼に合わせて自分の作風でイラストを提供します。いっぽうデザイナーは、クライアントの根本的な課題から考えて、それぞれに対応したデザインをつくるのが仕事。どちらかというと、私は自分の表現を追求するのではなく、課題を考えてベストなアウトプットを提案するほうが好きなタイプだったので、先生はその点に早く気づき、指摘してくれたんだと思います。先生の一言は、当時の私にとっては衝撃的でしたが、なんだかスッと受け入れることができて、デザイナーの道を歩もうと意識しはじめました。

学生気分を打ち砕かれた、「デザイナー」としての試練と成長

―大学時代に力を入れていたことはありますか?

加藤:地域に根ざした大学だったので、地元メーカーのデザインコンペが定期的に学内で開催され、それに熱中していました。最初は地元出身の学生に負けてばかりでしたけど、3年生のときに初めて、焼酎のラベルデザインコンペで優勝したんです。実際にデザインした焼酎がいろんな店舗で発売されて、手にとってくれているお客さんを見て、すごくうれしかったことを覚えています。生活や日常に、自分が手がけたデザインが溶け込んでいるような、不思議な感覚もありましたね。

―仲間たちと切磋琢磨できる環境が、良い刺激を与えてくれたのでしょうね。

加藤:同級生には、東京へのライバル心や独特のハングリー精神が強い人が多かった気がします。山形からわざわざ東京の展示を見に行ったり、デザイン情報誌の『デザインノート』を読んでは、意見を交わしたり。

卒業制作では「食の問題」をテーマに、食卓が楽しくなるテーブルクロスをつくり、ありがたいことに最優秀賞をいただきました。じつは、その卒業制作の展示で初めてgdc代表の水野に会ったんです。でも憧れのデザイナーを前に緊張してしまって。あとで水野から「暗いし、ムスッとしていた」と言われて……。第一印象は最悪だったみたいです(笑)。

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―大学卒業後は、東京の広告制作会社に就職されたと伺いました。念願のデザイナーになってみていかがでしたか。

加藤:入社早々、上司へアイデアを提案したところ、「全然違う!」と言われたことが印象的で。入社1週間も経たずして「いままでやってきたことは無駄だったのかも」と、かなりショックを受けましたね。学生時代は「ビジュアルの面白さ」や「インパクト」だけを重視しがちだったのですが、「広告」はひと目で伝わる、「わかりやすさ」も大切だと教わりました。前職では6年間働かせてもらいましたが、振り返ればデザインの根本を教えていただいた大切な時間だったと思います。

―それからgdcに転職したのはなぜですか?

加藤:デザイナーとして大きな仕事を任せてもらえるようにはなったのですが、自分のデザインにどこか自信を持てていなかったんです。客観的にフィードバックしてもらえる機会が欲しいと思い、宣伝会議が主催する「アートディレクター養成講座(ARTS)」に通いました。そこで水野が講師をしていたんです。ARTSの卒業制作が、将来を考えるきっかけになりました。

「自分の出身地が抱えている課題をアートディレクションで解決する」というのがお題だったのですが。ARTSに通う前から「この講座で一番にならないと、この先業界で通用しない。絶対に卒業制作で一番になる」と意気込んでいて。本業も忙しかったのですが、寝る間も惜しんで制作に取り組んだ結果、一番をいただくことができました。

―すごいバイタリティーですね。水野さんからは何と?

加藤:講評の際、水野は私のデザインのクオリティーよりも、地域課題を発見して根本から変えようとする企画内容と、提案したアイデアの量を評価したそうです。水野の言葉を受け、「私は誰かから課題を振られるよりも、自ら課題を探し、その解決方法をできる限り多く提案したいんだ」とあらためて実感しました。

gdcはクライアントに対してあくまでフラットな関係を築き、課題解決に導く会社。解決方法もデザイン、ブランディング、空間演出など多様にわたります。「クライアントに寄り添い、さまざまなアイデアを提案できるのはgdcしかない!」と思い立ち、面接を受けたんです。

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デザイナーはクライアントの「御用聞き」ではなく「パートナー」であるべき。水野学からの教え

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