Interview 私としごと

d47 MUSEUMスタッフが語る、全国のものづくりを伝える企画力と現場力

株式会社D&DEPARTMENT
黒江美穂(d47 MUSEUMスタッフ)

ロングライフデザインをテーマに47都道府県の魅力や、若い世代のものづくりを伝える渋谷ヒカリエ「d47 MUSEUM」。そこで企画から編集、運営までを担当しているのが黒江美穂さんだ。かつてデザインを専攻していた学生が全く異なる方法でデザインに関わりはじめた背景、また企画職にも関わらず現場目線をもっとも大切にする、その真意を伺った。

プロフィール

黒江美穂

神奈川県生まれ。桑沢デザイン研究所総合デザイン科を卒業後、2012年D&DEPARTMENT PROJECTに参加。同年より渋谷ヒカリエ8/の、47都道府県の「らしさ」を再発見する日本初の地域デザインミュージアム「d47 MUSEUM」の企画、編集、運営を担当。

取材・文:西丸亮 撮影:飯本貴子(2017/1/25)

「コミュニケーションの苦手な、動物好きの女の子でした。」

—幼少期はどんな環境で育ったのですか?

黒江:とても内気な性格で、人と話すことが苦手でしたね。でも、動物や自然は大好きで、幼稚園に通いたかった理由も、飼育していたうさぎに会いにいくためでした(笑)。小学生の頃からは牧場に通いはじめ、馬に乗ったりしていましたね。

―小学生の頃から乗馬へ?

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黒江:子供たちを地方の牧場に連れていく宿泊型の体験プログラムに通っていました。乗馬以外にも馬に餌をあげたり、参加者たちと協力して施設の掃除をしたり……。小学2年生から専門学校時代まで続けたおかげで、内気な性格は治せたかなと思います(笑)。

—現在の快活な黒江さんからは想像もつきませんね……(笑)。

「デザインをしない」と決めたデザイン学生

―D&DEPARTMENT PROJECTといえば、全国のものづくりを発信するプロジェクトとして国内外からすごく支持されています。黒江さんがデザインに興味を持つきっかけは何だったのですか?

黒江:高校生のとき、『ブレーン』を手に取りポスターや広告を見て、かっこいいなと思うようになりました。その頃から人の心の動きに興味を持つようになり、アウトプットとして広告をつくりたいという漠然としたイメージがあったのかもしれません。なので、デザインだけはなく心理学も学びたいと考えていましたね。

―将来の進路がとっても具体的ですね。

黒江:いいえ、実際はそんなことはなくて(笑)。心理学かデザインで悩み、実際に志望校を決めたのは高校3年生になってからです。それから美術予備校に通いはじめ、桑沢デザイン研究所へと進学。広告代理店の存在やディレクターの役割など、いわゆる広告業界に関して全く知らなかったので、とりあえずデザイナーになろうと思っていましたね。

―デザイン学科ではどんなことを?

黒江:私の在学中に、D&DEPARTMENTの創業者であるナガオカケンメイが、桑沢で1年間講師を務めていた時期があったんです。そのゼミに所属し、プレゼンテーションを叩き込まれたのは印象的に残っていますね。デザイン学科にも関わらず「もう新しいデザインはしなくていい」と教えられたのが衝撃でした。商品がお客様に届くまでのプロセスをどうやって伝えるか、あるいは膨大な時間をかけて調査したことを限られた時間の中でどう伝えるかということを徹底的に教え込まれたんです。

―デザイン学科で、プレゼンテーションですか?

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黒江:はい。プレゼンをする場所や参加する人数に合わせて、最もいい画角で伝える工夫だったり、パワーポイントのスライドひとつとっても「ここは写真より現物を持って伝えた方がいい」などというアドバイスを受けたり。「作る」だけではなく「伝える」ことができなければデザインの意味はなく、その違いがお仕事をもらえるかどうかを決めるポイントだと。

―とは言っても、少なからず「作る」ことに未練が残りそうです。

黒江:それはありませんでしたね。そう思うようになったのも理由があって。学校の授業で、優秀な学生が壇上で作品のコンセプトを説明する機会がありました。それを見て、私だったら彼女たちの作品を彼女たち以上にうまくプレゼンできると思ったんです。もちろんデザインのスキルでは到底及びませんが、プレゼンだったら勝てると。そのときに、「作品を作る側」から「作品の伝え方を考える側」になりたいと強く感じたことを覚えています。

―それでは、「企画職」に絞って就職活動を?

黒江:そうですね。でも、企画系の企業を受けていたのですが、どこからも採用されず……。その時にふと考えることがありました。商品を売るためや、知ってもらうための企画を考える立場になりたいのであれば、まずはその商品を売る側の立場になろうと。例えば将来、飲食店のブランディングをして欲しいと依頼を受けたとき、一度もフロアで接客したことがない人間にブランディングはできないと思ったんです。私はそれまで物のひとつも売ったことがなければ、ギフトのラッピングだってしたこともなかった。実際に自分が何かしたいと思ったときに何もできない状態になるのが怖かったんだと思います。物販や飲食など、まずはお客様や消費者にもっとも近い「現場」に入ろうと考え、就職活動をはじめました。

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