Column 連載

若手クリエイターのお悩み相談所

先輩の指示がそれぞれ違うとき、どうする? 自分なりにむりやり解釈する方法

クリエイティブ業界の若手が抱くお悩みに先輩がアドバイスする連載企画の第3弾。頼れる先輩は、デジタルマーケティング支援やオンラインメディア運営を行うインフォバーングループの田汲洋さんだ。クリエイティブ業界を渡り歩いた末に、現在人事を担当している彼は、業界屈指(?)のカウンセリング力を持っているとか、いないとか……。 今回寄せられたのは、「先輩によって指示がそれぞれ違うので戸惑っています」という若手のお悩み。いったいどれが正解なのか……。その答えを見つけるために必要な「自分なりに解釈する力」とは?

プロフィール

田汲洋
田汲洋

新卒でちっちゃな広告代理店に入社する。その後、某雑誌主催の大喜利世界大会に出場して優勝。ここで思いっきり進む方向を間違える。2011年に出版社に転職。宣伝部でエロゲー雑誌やラノベ、マンガを担当し、テレビCMやキャンペーン広告ほか、ゲームショウやコミケなど数々のイベントを手がける。2014年にインフォバーングループに入社。2017年10月より新卒採用担当となる。

文:田汲洋 編集:吉田真也(CINRA)(2019/7/25)

先輩によってアドバイスがそれぞれ違う。いったい何を信じればいいの?

どうも。タクミです。
現在、企業のデジタルマーケティング支援を行うインフォバーングループで採用担当をしています。ちなみに、前職は某出版社の宣伝部などで働いていました。

迷える若手クリエイターたちの質問に対して、真摯にお答えする連載第3弾。曲がりなりにもクリエイティブ業界で経験を積んできたぼくが、これまで経験したことをもとにアドバイスさせていただきます。

相変わらずウシジマくん似のタクミです

相変わらずウシジマくん似のタクミです

今回、読者の若手クリエイターの方からこんなお悩み相談をいただきました。

ぼくはいま研修期間中です。さまざまな部署でいろんな方に業務を教えてもらっています。

ですが、先輩によって指示やアドバイスがそれぞれ違うので戸惑っています。さらに同じ人でも、言うことがコロコロ変わることもあって、どれが正解なのかよくわかりません。いったい、ぼくは何を信じればよいのでしょうか?

IT広告系 新卒1年目 鉄雄さん(男性)

先輩たちがたくさんアドバイスをしてくれるということは、それだけあなたに対して真剣に向き合ってくれている証拠。期待しているからこそ、先輩はアレも伝えたいし、コレも覚えてほしいと、教えたいことがたくさんあるのでしょう。

前回の記事では、「一方的におすすめのマンガを紹介してくる先輩に困っている」というお悩みに対して、「とりあえず読んでみたら?」とアドバイスしました。いろいろと吸収することは必ず身になります。

ただ、全部吸収しようとするとパンクしちゃいますよね。新入社員は教わることが膨大ですから。ではどうすればいいのかというと、情報を取捨選択して、「先輩が本当に教えたいこと」を自分なりに解釈するのが大事。仕事の大半は、数式では表せません。正解がないものだから、自分で答えを探るしかないんです。

いろんなことを教えてもらえるのは、「いま」だけです。そして、いずれあなたが後輩に教える日が訪れます。そこでようやく気づくのです。この世のすべてがループしていることに。新人時代は、「いろいろ言われてもよくわからないよ~」と思っていた鉄雄さんが後輩にアレもコレも教えるのです。調子に乗りながら。そんなもんです、人生は。

自分なりに解釈することが大事。ストップウォッチをつねに首から下げていた新人時代

振り返ってみると、ぼくの場合、手取り足取り何かを教わったことはない気がします。前職ではテレビCMなどさまざまな広告をつくっており、新人の頃は見よう見まねでスキルを習得する毎日でした。

ある日、先輩にテレビCMの絵コンテを見せたところ「これ、声に出して読んだ?」と指摘されました。

テレビCMは基本的に15秒間、もしくは30秒間で流れるというルールがあります。絵コンテに書いたイメージも、実際にシミュレーションしないと時間内に収まるかわからない。つまり、声に出して読んでみないと、時間内に収まるか確かめられないんです。

でも、先輩が本当に伝えたかったのは「声に出せ」ということではなく、「時間内(15秒・30秒)に収めろ」ということ。ぼくは、そう解釈しました。

それ以降、ぼくは毎日ストップウォッチを身に着けて15秒と30秒を体に刻むことにしました。通勤途中も帰り道も、当然のごとく首にストップウォッチをぶら下げて。飲み会でも肌身離さず、どんなときでも時間を測る日々。

「なんでストップウォッチしてるの?」ってよく社内外で話しかけられたっけなぁ……(遠い目)。いま思えば明らかにやり方が間違っていましたが、当時は「とにかく時間どおりのもの」をつくろうと必死でした(※本来、CM制作で大切なのは「何を伝えたいか」を考えることなんですけどね)。

少し話が逸れましたが、先輩によってアドバイスが全然違うのは、いわば当然なんです。経験も、それによって培った考え方も、人それぞれですからね。

だからこそ柔軟性を持って、いろんな人の意見や教えを聞きながら、自分なりの答えを見つけることが重要。必要な情報を取捨選択できるようになれば、最短ルートで「なりたい自分」になれる気がします。

とあるボイストレーナーと運命の出会い。新潟でBON JOVIを熱唱した日

鉄雄さんからの質問を受けて、ぼくは10年ほど前のある日の出来事を思い出しました。

それは、まだぼくが20代後半で広告営業をしていた頃。出張で新潟市によく訪れていました。新潟市に訪れた際は、必ず立ち寄る行きつけの居酒屋があったんです。ある日、その店のカウンターで、たまたま隣に座っていたAさん(男性・30代前半)に出会いました。

ヒゲが似合うAさん

ヒゲが似合うAさん

彼は、ボーカルスクールを自身で運営しているボイストレーナーでした。飲みながら話をしているうちに、「ぼくも歌がうまくなりたい!」という欲がふつふつと出てきてしまった。

その翌日、もともと東京に帰る予定でしたが、急遽有休を取って延泊し、Aさんからボイストレーニングのレッスンを受けることに。居酒屋の席では、「超人気ボイストレーナー」のような口調だったAさんですが、いとも簡単にレッスンを予約できました。

教室に入るなり、「まずは今日練習する曲を決めようか」と言われました。とりあえず高音を出せるロックンローラーになりたかったので、課題曲はBON JOVIの『Livin’ On A Prayer』に決定。


BON JOVI『Livin’ On A Prayer』

「まずは歌ってみて」と荒野に放り出されたぼくはとりあえず熱唱します。すると、「なるほど」と頷きながら、Aさんはこう言いました。

「じゃあ、とりあえず反復横跳びをやろうか」

このときはまだ、「声を出さないボイトレ」がしばらく続くことになるなんて思ってもいませんでした。

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まさかのひたすら筋トレ。Aさんから教わった、ROCKに向き合う姿勢とは

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