Column 連載

編集は愛だ。愛なんだ…。個性を出すための編集術

第2回:読者に未来を見せる記事構成の作りかた

大野恭希(フリーウェブ編集者・メディアアドバイザー)

プロフィール

大野恭希
大野恭希

ギズモードジャパンの副編集長、2代目編集長を経験。現在はライター。プロモーション。メディア運営アドバイザー。新しいガジェットが好き。未来予測しつつメディアや社会の動きを観察するのが日課。

ワールドカップがおもしろすぎます

こんにちは! ワールドカップの見過ぎで寝不足の大野です。

この記事を書いているのは6月25日。日本のグループリーグ最終戦があった日です。残念ながら日本はコロンビアに負けてしまいましたが、大久保・岡崎・香川の攻め、本田・長谷部の中盤、内田・長友のサイドからの攻め、吉田・今野の守りと、記憶に残る試合でした。ペナルティエリア内での切り込みが少ないことは、実況をしていた松木さんが何度も唱えていましたが、素人目に見ていても、あともう一歩がなかったのかなと思いました。また4年後に成長した日本代表を見たいですね。

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さて、「編集とは愛なんだ…」コラム第2回です。

無理矢理ですが、編集部もサッカーで例えることができるような気がします。前線でポンポンシュートだけ打って10本に1本でも入ればいいや……、という考えを持った僕のようなフォワードが、煽り上等な記事タイトルを付ける時もあれば、たまにラインを下げるパスを回して、記事の体裁を整える補強をミッドフィルダー役の人にしてもらったり。サイドからキレッキレのクロスを上げてくる人がいるのでそれを受け取ってシュートを決めたり。ディフェンスだけに集中するゴールキーパー川島のような編集もありですね。

サッカーはおもしろいなぁ。

メディアの文脈を捉える

サッカーから話を変えまして、よくメディアには文脈(コンテクスト)という言葉が使われます。

文脈の意味を調べると大辞林ではこう書いてあります。

①文における個々の語または個々の文の間の論理的な関係・続き具合。文の脈絡。コンテクスト。 「前後の-から意味を判断する」
②一般に、すじみち・脈絡。また、ある事柄の背景や周辺の状況。

この文脈という言葉ですが、ネットでは「メディアの文脈」と言われることがあります。メディアの文脈とは、自分たちが出したいと思ったコンテンツを重視して提供すること。需要と供給の言葉に置き換えるならば、供給に重きが置かれることをここではメディアの文脈と言っています。この「メディアの文脈」だけで考え編集していると、供給過剰になり、需要元である「読者の文脈」と接点を作りづらくなるため、読者(や読者になり得る人)にメディアの存在が気づかれにくくなってしまう可能性が高くなります。

コンテンツは「読者の文脈」が乗っていなければスルーされるもの。というのが僕の考えなので、自分の言いたいことだけを「編集する」という行為は基本したくありません。自分の言いたい事をやるならそれはただの自己満足なので、一人でオナニーしてればいいやという感じです。たまに一周して、人前でオナニーをすることがおもしろいんだ! というような思いっきり全力投球の自己満足で逆に話題を集める記事もあったりしますが。

(ちなみにこのコラムは、「編集とは何かを書いて欲しい」という依頼があったので、「CINRA.JOB」という求人情報の文脈に沿ったものとして編集とは何かを紹介し、編集職に興味を持ってもらうことを目標として書かせていただいています。)

その「メディアの文脈」を、大まかに文字コンテンツを作り出すという切り口で分けると「編集者の文脈」と「ライターの文脈」になるでしょうか。編集者が企画を立て、それを書くライターがいて、記事(コンテンツ)ができあがる。

それを編集者が読む、見る、眺める。その後「これはイイ」「これはダメだ」という取捨選択をするのは、編集者がいくつかの文脈を読み取るからです。

つまり、編集者は最低限「メディアの文脈」と「ライターの文脈」、さらに「読者の文脈」を知っている必要があります。先に挙げたように、メディアが発信するコンテンツには読者との繋がりを持たせなければ気づかれないからです。

読んでもらうコンテンツを作るには最低この3つの文脈を知っていることが望ましいです。あとは「ネットの文脈」や「日本の文脈」や、「世界の文脈」とかも大事ですが……。ま、限られた時間の中でこれらを知るのは容易にはいかないので、相応の努力が求められるスキルだと思います。

未来を見せる編集

僕は今年3月まで、ギズモード・ジャパンというガジェットをテーマにしたメディアで編集やライティングをしていたので、iPhoneやAndroidなどのスマホから、カメラやウェブサービスやアプリなどを紹介することが多くありました。

世に出ているガジェットはどれもこれも特徴があって、その特徴あるガジェットには必ず生活を変える魅力があると思っている僕は、ユーザーの身になってガジェットを使っている自分の未来を考えてみます。その思い描いた未来図を記事の構成に落とし込む編集です。

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仮で一例を出してみます。

スマホを持って家の玄関前に来たら、自動的に解錠されて家に入ることが出来る「カギ」製品を記事で紹介するとしたら、ざっと挙げられるユーザーメリットは以下のようなものがあるでしょうか。

・スマホを持っていればOK
・持ち物が一つ減る
・カギを取り出して解錠する手間がなくなる
・(副次的に)スマホ(カギ)を無くしても
 ネットでトラッキングできる
・なんとなく未来感ある家になる(自己満足に浸れる)

こういった要素を取り上げて記事化することで、「生活がちょっと便利になりますよ〜」という絵を読者の方に思い浮かべてもらえるような編集です。

具体的には、タイトルで「スマホを持っていれば入れる玄関」を強調し、記事の入りでは、スマホを持って玄関前にいる様子を写真で掲載。記事中盤に差し掛かるあたりで、スマホを持って解錠する場面を短めの動画で紹介。動画で製品の使用感を見てもらい、使用した人による製品の善し悪しを文章化。シメに製品の概要を紹介します。

こういった流れの構成を考えて、この製品のユーザーとなった場合、こんな生活ができるようになります。ということを事実として伝える編集をやっていました。

これを使ったらどんな風に生活が変わるだろう。なにができるようになるんだろう。誰にとって利便性があるんだろう。いつ役に立つんだろう。こういったことを記事で見てもらいます。

この編集方法で役立つのが前回のコラムで紹介した「三者の立場になって考える」です。製品を作った会社、それを使うユーザー、それと自分の主張を組み合わせて編集します。何度も繰り返しますが、自分の言いたいことだけを掲載するのはただの自己満足で、まったく価値を生み出さないものでしょう。

こういった編集ができると、単純に記事の制作が楽しくなります。自分の頭の中で誰かの顔を思い浮かべ、その人が喜ぶにはどうすればいいかをこねくり回します。あーでもないこーでもないと考えていく過程は、自分の中だけで醸成されていく経験になります。

2回に渡ってあれこれ書きましたが、編集とは人に向かって情報を届ける一つの手段でしかないと思います。

今テレビを見てたら、スマホで開くドアのCMが流れていました。僕が考えつくことくらい製品化はすぐできるんですね。さすが日本です!

それでは!

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