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営業から制作に異動したい……。人事異動に不可欠な3つの要素とは?

人気連載「若手クリエイターお悩み相談所」が3年ぶりに復活! 本連載では「若手クリエイター」から寄せられた悩みに対し、WEB業界で人事を担当する田汲さんならではの視点で答えます。

記念すべき復活1回目のお悩みは「人事異動」について。この時期、悩んでいる方も多いのではないでしょうか? 田汲さんが「異動に不可欠な3つの要素」と「よい異動」について語ります。

  • テキスト:田汲洋
  • 編集:吉田薫
  • イラスト・タイトルロゴ:Goofy Maruyama

Profile

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田汲洋

新卒でちっちゃな広告代理店に入社する。その後、某雑誌主催の大喜利世界大会に出場して優勝。ここで思いっきり進む方向を間違える。2011年に出版社に転職。宣伝部でエロゲー雑誌やラノベ、マンガを担当し、テレビCMやキャンペーン広告ほか、ゲームショウやコミケなど数々のイベントを手がける。2014年にインフォバーングループに入社。2017年10月より新卒採用担当となる。

どうも、タクミです。現在、企業のデジタルマーケティング支援を行うインフォバーングループで採用担当をしています。3年ぶりにこの連載が復活しました。ありがとうございます。おかげさまで、あの頃とはだいぶ状況が変わりました。かつてこの連載を続けていた当時は15㎡くらいのワンルームで毎日ゲームばかりしていたのですが、いまはまったく別人のようなライフスタイルを送っています。

まず、家がおしゃれになりました。衝撃的なビフォーアフターを載せましょうか。

左がもちろんビフォーです。10年くらい掃除機を使ったことがないです。現在は植物を育てる余裕が生まれています。ロボット掃除機も2台あります。

あと、クルマも持ってます。フランス車です。さらに、気品が漂うネコまでいます。

保護猫譲渡会で出会ったネコ、推定5歳。目が青くて毛が長めなのが今の自分にしっくりきますね。

週末はゲームでなくサーフィンをしています。ほぼ毎週波に乗っています。つまり以前のぼくとはまったくの別人というわけです。あの頃は普通に拾い食いとかしていた気がします。そんな男が偉そうにかつて連載で若者たちにアドバイスしていたわけです。申し訳ない……。もはや名前以外はすべての要素が変わってしまったので、これから先どういったテンションでお送りすればよいのかまだ手探りですが、過去の自分の記事を読んでいてなんとなく雰囲気は掴めました。

まず読者のお悩みに対して自身の経験をもとに、テーマに関連するエピソードを話します。ただしその話は本筋とは大きくズレているもの。つまり論点のすり替えですよね。ただし、それだけではあまりにも役に立たないアドバイスになってしまうので、それなりにちゃんとしている先輩のエピソードを小出しにしつつ、だいたいの着地が“人それぞれ”“自分次第”。この黄金フォーマットで連載を続けていたんですね。読者にまったく寄り添っていない。

聞いたところによると、特に読まれた記事が『「仕事中つい寝てしまう」若手からお悩み相談。ヒントは島耕作にあり!?』だったそうです。本文には「『島耕作が勤務中に寝ていた → でも彼は会社のトップであり、もはや日本経済界のトップに上り詰めている → つまり勤務中に寝るのは取り立てて悪いことではない』という超ロジカルなシンキング!」と書いてありました。こんな文章が3年前は許されたんですね。この記事が「仕事中 眠い」というSEOキーワードに引っかかってかなり読まれているということを聞いて読者みなさまの意識の低さを知り安心しました。ぼくの代わりにSEOキーワードがみなさまに寄り添っていたのですね。だとしたら、いっそのこと「仕事中 眠い」をテーマに連載を続けられないものですかね? 1月は「仕事中 眠い 正月ボケ」2月は「仕事中 眠い 節分」3月「仕事中 眠い 卒業」4月「仕事中 眠い 入社」5月「仕事中 眠い 5月病」6月「仕事中 眠い 梅雨」……なんだかいけそうですよね! 翌年は「仕事中 眠い 正月ボケ 2026年」みたいな。ダメか……。そもそもSEO対策ってこういうことではありませんよね。

というわけで心機一転! さっそく質問に答えましょう。

「新卒でいまの会社に入社して営業職を経験して3年、最近制作部に異動してみたいという興味が湧いたのですがタイミングなどがわかりません。どうすればよいでしょうか」
広告会社 新卒3年目 アン(女性)

そもそも異動とはなんでしょうか。こういうときはまず言葉の意味を調べるのが大事。

・「異動」
職場での地位、勤務などが変わること。また、転・退任などの人事の動き。「総務課へ異動する」

英語だとGet a Transfer。TransferはChangeとも言い換えられますね。つまり変わること。移動はMoveで、意味は物理的に位置が変わること。つまり移動の場合、自身は変わらない。異動は自身が変わることなんです。これまで得た知識やスキルを活かしつつ、それが活かせないかもしれない場所でも自身を変えることができるかどうか。異動したいのであればその意欲と覚悟が必要だと思います。また、会社側の視点で見ると異動は本人の希望だけではどうにもならないものです。本人の適性、会社の状況が合致して、その上で本人の希望が揃って初めて実現されるもの。つまりタイミングはアンさんが決められるものではないことがほとんどかと思います。ではやるべきことがまったくないのかというと、決してそうではないと思います。

営業という能力はあらゆることに横展開できる素晴らしいもの

ぼくの周りにメーカーに就職した先輩Nさんがいます。とにかく営業をやりたかったNさんが配属されたのは商品企画部でした。いわばメーカーの花形部門かもしれません。ですがどうしても営業をやりたいNさんは商品企画をしつつ、無意識のうちに営業的な動きもしていました。なぜなら、商品というものは企画しただけでは売れないからです。自分で作ったものを売る、その一連の動きを覚えたNさんは、その会社にはない商品を企画して自分で売ることにしました。つまり、独立して社長になったんです。いまでは社員を多く抱え、そのジャンルでは知る人ぞ知る企業へと成長しました。アンさんがいまやっている営業という職業はほかの仕事に接続可能なものなんです。

アンさんは営業が好きではないから制作に行きたいのでしょうか。それとも営業も好きだけど制作にも興味があるから異動したいのでしょうか。好きではないとしても営業マインドはどんな仕事でも必要なものなのでこの3年間は無駄ではないですし、営業が好きで制作に興味もあるのでしたら、やるべきことはたくさんある気がします。

異動には3つの要素が不可欠である

そもそもよい異動とはなんでしょうか。

繰り返しになりますが、異動は本人の適性、会社の状況、本人の希望、この3つが揃って初めて実現されるもの。

おじさんが作るパワポで表現してみました。友情・努力・勝利、魏・呉・蜀、フィジカル・プリミティブ・フェティッシュなど、大切なものってだいたい3つです。覚えておきましょう。

3つの要素のうちどれが欠けてもよい異動にはならないと思います。本人の適性が欠けてたら活躍できないし、会社の状況がよくない、たとえば受け入れ先が人を欲していないのに無理やりねじ込んでもうまくいかないし、本人の希望が強いものではないのであればその仕事は長続きしないし。会社の状況に関しては機が熟すまで待つというか、アンテナを張り巡らせる必要がありますね。

たとえばその部署が欲している人材が営業経験があってなおかつ制作のことも理解してくれている人であれば新たに採用するよりかはアンさんにもチャンスがあるかと思います。そのためにはアンさんが「制作のことを理解していそう」だと周りに思われている必要があります。普段の仕事で制作メンバーに意識的に質問するとか、率先してアイデア出しやリサーチを手伝ってみるなど、アピールする方法はいくらでもあると思います。がんばって!

本人の適性……こればかりはよくわかりません。ぼく自身、社会に出て20年近く働いてわかったことがひとつあります。それは自分がどの仕事にも向いていないかもしれないという懸念です。クリエイティブに携わるといってもぼくよりすごい人が作ったほうが絶対いいって思っちゃうし、まわりはツワモノ揃いだし。人事をやっててもそもそも人の悩みがよく理解できないし。キャリアについて悩んでいるって言われてもねえ……。こっちだってわからないよ! って話ですよ。適性ってのはわからないけど、自分が好きなことはわかります。その仕事を好きになる努力はできるつもりです。むしろそれだけでなんとかいままでやってきました。好きなものがない……そんなときはドラマ『早春スケッチブック』を観てください。ドラマのなかでこんなセリフがでてきます。

「好きなものがない、というのはとても恥ずかしいことだ。なにかを無理にでも好きにならなければいけない。若いうちは、特に、何かを好きになる訓練をしなければいけない。なにかを好きになり、夢中になるというところまでいけるのは、素晴らしい能力なんだ。物や人を深く愛せるというのは誰もが持てるというものじゃない、大切な能力なんだ。努力しなければ持つことが出来ない能力なんだ」

制作において、とくにクライアントワークとなると好きになる努力が必須だと思います。なぜなら仕事の対象が自分の好きなものだとは限りませんので。アンさんはクライアントのことだけでなく、制作という仕事自体も好きになる努力をしなくてはなりません。しかもこれまで制作を3年間やってきた同僚と同じかそれ以上に。

まだ異動すべきか迷っているよ〜、自分の本心がよくわからないよ〜というのであれば、個人的におすすめなのは異動じゃなくまず移動してみるのはいかがでしょうか。ひらがなで書いたら同じですし。ローマ字で表記してもどちらもIDO。ぼくは“移動”が大好きです。この世で一番好きなエンタメ(?)はひょっとすると“移動”なのかもしれません。

かのクリエイターで世界中を飛び回るジェットセッターの高城剛さんは「アイデアと移動距離は比例する」とおっしゃってました。スティーブ・ジョブズは長時間の散歩をすることで、アイデアを生み出していたそうです。彼は誰かと一緒に歩きながら会議までしていたらしいですよ。そんな記事をどこかで読んで以来、ぼくは暇さえあればとにかく自転車をこいで移動するようになりました。目的地もなく、自転車から降りることもなく、ただ移動して自宅に戻ってくる。混じりっけのない、移動の中の移動ってやつです。サーフィンにハマったのも、海の上を風を感じながら移動する行為だからだと思います。この連載の内容も自転車で移動しながら頭の中で内容を整理しています。元ゴールドマンサックスの方が朝の3時半に起きて25キロランニングをしているという話をYouTubeで見たのですが、そこまでする必要はありません。まずはゆるめに電動自転車で走り出せばOKです。

走るどころか歩くのも疲れるので、電動自転車を使うってところが自分の弱さですね。疲れることなく、シンプルに風を感じるだけの移動が好きなのです。

アンさんも異動で悩んでいるなら、とりあえず移動しながらじっくり考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

・機が熟すまで自分の強みをアピールし続けよう。

・向いているかわからないけど、その仕事を好きになる努力はしてみよう。

・とりあえず移動しながらぼーっと考えてみよう。

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