経理からCGデザイナーへ、やりたい仕事を自分でつかみとる方法。

A4A株式会社 加藤 実里(CGデザイナー・経理)

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A4A株式会社に所属する加藤実里さんは、現在CGデザイナーとしてクリエイティブディレクター・東市篤憲のもとで活動している。だが、そこに至るまでの軌跡はじつにユニークで、まさに人との出会いなしでは語れないものだった。
  • Profile

    加藤 実里

    1991年生まれ。宮城県出身。東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科在学中にA4Aでのインターンを経験し、卒業とともに入社。現在はCGデザイナー兼経理として活動している。

「デザインを考えることを学ぶ」美大進学で変わった人生のレール

―東北芸術工科大学出身とのことですが、小さい頃からものづくりに興味があったんですか?

加藤:うちの家庭は特に母親が厳しくて、門限にもうるさかったし、土日も友達と遊んではダメ、宿泊することなどもってのほかでした。だから、一人で部屋にいることが多くて、必然的にマンガとか本を読む機会が多かったんです。その影響で小学生、中学生の頃は絵を描くことが好きでした。出版社の編集部にマンガを投稿していた時期もあります。でも、高校に入ったらちょっとアングラな感じというか、暗い人間だと思われる風潮があって(笑)、描かなくなってしまいましたね。

―それで、何をしていたんですか?

加藤 実里

加藤:バスケ部のマネージャーをやりながら、バンドでベースを弾いたりしていました。バンドはボーカルの趣味でoasisのコピーをしたりして。個人的には相対性理論が好きだったんですけど、今考えてみれば、A4Aを知ったきっかけも相対性理論でした。でもそんなに本格的にやっていたわけでもないので、普通の女子高生だったと思いますよ。私の通っていた学校は大学の付属高校だったので、当初はそのまま内部進学する予定で。

—なのに、美大を志した、と。

加藤:高校3年生のときに、憧れていた小山薫堂さんが教授を務める大学があるということを人づてに知って。それが東北芸術工科大学の企画構想学科だったんです。詳しく調べてみると「デザインを考えることを学ぶ」とあったので、これなら私にもできると思って受験を決意しました。父が学生時代に漫画家のアシスタントをしていたこともあり、美大受験については応援してくれましたね。自己推薦だったんですが、面接で手相を見ることができるという話をしたら、小山さんに「じゃあ、僕と副学長の相性を見てよ」と言われ……。その場で相性診断したら「君、おもしろい」って。そのせいもあってか入学が決まりました(笑)。

—手相で合格とは、また珍しい経緯ですね(笑)。実際に入学してみてどうでしたか?

加藤:当時は宮城に住んでいたんですけど、親からは実家から通うことを条件に入学を許可してもらったので、通学は山形まで往復4時間。なかなか大変でしたね。でも、小山さんをはじめ、その道のプロの方々に学べる環境は贅沢だったと思います。そして何より、そこでいろんな人に出会える機会をもらえたからこそ、今の自分があると思っているんです。

「被災地の生活を経験したおかげで、タフになっていたのかもしれません」

―宮城から通っていたということは、学生時代に東日本大震災を経験したんですか?

加藤:はい。大学2年生のときに被災したんですけど、1ヶ月くらい水も食べ物も十分に取ることができなかったし、電気もガスも通っていなかったのでお風呂にも入れなくて。とにかく普通の生活が送れないストレスが大変でした。それでも子どもの頃によく遊んだ地元の海で、たくさんの人が亡くなっているから、みんなつらいとも言えず……。電気が復旧して、テレビはつくようになったんですが、なかなか見ることができませんでしたね。

―なぜ見れなかったんですか?

加藤:自分がお風呂にさえ入ることができない生活を送っている間、テレビにはおしゃれをした可愛い女の子達が映っている。それを見るのがいやだったんですよね。CMも東北を応援するようなものが多く流れていましたが、なんだか距離を感じてしまって。そんな時、ある保険会社のCMが目に留まりました。宮城の空が映っているだけのシンプルなものなのですが、それがとても心に響いたんですよね。それで、映像という仕事への関心が大きくなって。

―映像制作会社でのインターンも、それがきっかけで?

加藤 実里

加藤:はい。大学3年生の夏に1ヶ月ほど東京に出てインターンとして雇ってもらって。それも大学での縁がきっかけでした。東北芸術工科大学では他の学科の授業も取ることができて、そのときは映像学科の授業を取っていたんです。そこにいらしたゲスト講師の方の話がとてもおもしろかったんですね。授業が終わってから挨拶して、それから何度かお会いする機会があって、ある時、お手伝いしたいという話をしたら、都内で泊まる場所を確保できるなら働きに来てもいいよって。

―具体的に、どんな仕事を任されたんですか?

加藤:アシスタントのアシスタントみたいな感じでしたね、雑用全般を何でもやるみたいな。でも、とても楽しかったです。働きだして3日目くらいにUNIQLOのジーンズのCM制作の現場に連れていってもらえることになったのですが、人が足りないということで出演することになったんです(笑)。現場にいるのは、憧れていた監督やスタイリストばかり。インターンというだけでこんなところに来れるんだ! と驚いたことを覚えています。しかも皆さんすごく優しくて、「インターンなんだからはやく帰りなよ」とか気遣ってくれるんですよ。ただ、私としては現場のことを学びに来ているつもりでいたので、そこはもう遠慮せずこき使ってくださいって宣言して。それからはほとんど家にも帰らず、ずっと行動を共にしていました。でも、つらいとかは全然思わず、とにかく夢中になりましたね。被災地の生活を経験していたおかげで、タフになっていたというのもあるかもしれません(笑)。

―インターンで東京に行っていたときはご両親からは何か言われなかったんですか? けっこう厳しい家庭ということで、許可が下りない可能性もあったと思うのですが。

加藤:それは平気でしたね。後になって「そういえばうちの親、厳しかったわ」って気づいたくらい(笑)。実際に聞いてみたことがあったんですが、遊んでいるのか本気なのかは、さすがに見ていればわかるって言われて。信頼してくれていたんだなって感じましたね。ユニクロのCMに関わったと言えば、とても喜んでくれましたし。それまでは親との間に距離を感じていたというか、私のことを理解してもらえていないと思っていたから、どう接すればいいかわからなかったんです。でも、その時くらいから親と打ち解けられるようになりました。母親に電話で相談をするなんて、上京するまで一度もありませんでしたから(笑)。

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経理として入社、そしてCGデザイナーへ。

経理として入社、そしてCGデザイナーへ。

—A4Aでもインターンをしていたそうですね。そのきっかけは?

加藤:これも大学のゲスト講師としていらっしゃったアートディレクターの秋山具義さんとの縁でした。

—ゲスト講師がともかく豪華な大学なんですね(笑)。

加藤 実里

加藤:そうなんです。秋山さんにも授業が終わったあとに相談に乗っていただいて。私が映像制作会社でインターンをしていた話をしたところ、「夢を叶える力はあると思うから、がんばっていればいいんじゃない?」という言葉を掛けていただいて、とても励まされました。大学3年の冬には具義さん主催の忘年会の受付を任されたのですが、そこにA4A代表の東市が参加していて。そこで話す機会があって、就活の話をしたら「うちでインターンしたら勉強になるからおいでよ」って誘ってもらえたんです。今考えると、東北芸術工科大学に入学していなかったら宮城すら出ていなかったかもしれません。

—加藤さんはインターンからそのままA4Aに入社されていますが、進路選択で迷うことはありませんでしたか?

加藤:実は広告代理店に進もうかと迷ったこともあったんです。でも、就職活動をする上で2番目に行きたいところを選んだり、保険をかけておくのは良くないと思ったんですよね。なぜか(笑)。考えに考え抜いたら、自分がもっとも働きたい場所がA4Aだった。それは何にも代えることはできないと思い、覚悟を決めました。

—入社当初の肩書きは「経理」だったとか……?

加藤:はい(笑)。当時まだ自分で手を動かしてデザインができるほどのスキルはなかったし、私が入社するタイミングで経理的な事をやらなくてはいけないことが多かった時期で、手伝っているうちに必然的に私がやることになって。入社したての4、5月とかは本当に大変でしたね。税理士さんに教えてもらいながらやっていたのですが、聞きすぎるのも失礼だなと思って、いろいろ自分で調べながらやっていたので。でも、元々はクリエイティブな仕事がしたくて入社していたから、経理の仕事もしながら、CGデザインの専門学校にも同時進行で通い始めました。今は総務担当が新しく入ったので、仕事を分担しています。

—現在はCGデザイナーという肩書きで活動されていますよね。

加藤:はい。今も相変わらず専門学校に週1回通っているんです。東市が「今はCGの時代で、何でもCGは必要だから勉強しておくと良いよ。」というので学ぶことにしたのですが、いろんな人に相談しながら作業することが多いですね。完成イメージに技術が追いついていないのが悔しくて、はやく一人前になりたいと日々思っています。

—働きながらも学び続ける熱意がすごいです。

加藤:勉強をしながらでも実際に仕事を任せてもらえる機会もあるんです。『Green Apple Museum』に出した作品「ドリームアップルジェットコースター」ではCGデザインを担当しました。今は実写合成のPVを作れるようになること、そして人の動きに合わせたインタラクティブな映像のインスタレーションを、CGとプログラミングで作れるようになることを目標にしています。

『Green Apple Museum』ドリームアップルジェットコースター

『Green Apple Museum』ドリームアップルジェットコースター

人見知りだからこそ、勇気を持って「会いたい人達」に会いに行く

—A4Aで働くことの最大の魅力は何でしょう?

加藤:一番はやっぱり代表の東市と一緒に働けることですね。良し悪しの価値基準が高いので、そのなかで自分もセンスを磨けるなと感じています。あとは、やりたいと手をあげたらやらせてもらえることでしょうか。また、会社としてなんでもできた方がいいという方針があるので、いろんな仕事に携わることができます。制作に関わっていない案件でも勉強になるからと現場に連れていってもらえることもあって、吸収できることはすごく多いですね。

—今日、お話を伺って、加藤さんはすごい実行力のある人だなと思ったのですが、自分ならではの人の輪を広げる秘訣はありますか?

加藤:実は私、すごい人見知りで、人に会う前とかは億劫なんですよ。でも、会わないで後悔する方が嫌なので、なんとか勇気を奮い立たせています。あとは自分の想いを目一杯にぶつけてみる。それ以外はあんまりないかもしれないですね。誠実な気持ちでぶつかっていけば、相手も無下にはしないと思います。皆さん、とても優しいので。

—確かにそうかもしれないですね。では、今後こうなっていきたいというビジョンはありますか?

加藤 実里

加藤:今はCGデザイナーという肩書きでやっていますけど、まだまだクオリティを上げる余地があると思っているので来年はきちんとデザインができるようになっていたいですね。「できる」と「上手」は別物ですし。おそらくディレクションとかもやっていくことになるので、いろいろ覚悟しています。また、今は手が回らなすぎてメールの返事が遅れることもあるので、そういう社会人としてきちんとしないといけないことをしっかりしたいと思っています(笑)。

—来年は飛躍の年になるといいですね。

加藤:そうですね。あとはやっぱり、東北のために何かやりたいという気持ちがあります。大学を卒業するときに、学長が「震災を経験した美大生はこの大学にしかいないから、それをどう社会に還元するか楽しみにしている」と言っていたことを覚えていて。やっぱり震災の時に東北にいなかったら経験できないことってたくさんあって、そのなかにはまだ多くの人に伝わっていないことがいろいろあると思うんです。そういうことをきちんと発信していきたいですね。

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    vvvvook -プロトタイピングのためのビジュアルプログラミング入門

    私が現在、CGデザインと並行して学んでいる「vvvv」というプログラミング開発ツールに関する参考書です。この技術自体があまり有名ではなく、日本で専門にしている人が100人いるかいないかの世界。だからこそ逆に可能性を感じていて、今のうちに身につけておきたいなって思っています。この本は、チュートリアルから高度なことまで載っているので重宝しています。