創業35年のベンチャー企業!? 映像制作会社の枠を越えたシネボーイの挑戦

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映像制作会社として35年というキャリアを積み上げてきたシネボーイ。2017年1月に「PAPER PAPER」、「BR LABORATORY」という2つのレーベルを立ち上げ、出版事業とゲームアプリ事業に参入を果たした。「なぜ映像制作会社が?」と疑問に思う人も多いだろう。数多くの実績を持ちながらも、率先して新しい事業に取り組む姿勢について、CG部の部長・近成カズキさん、制作部の部長・西川タイジさんと課長・川崎恵実さんに伺った。
  • 取材・文:村上広大
  • 撮影:鈴木渉

古い体制からの脱却、時代に合った働き方の追求

シネボーイは、3DCGやエフェクト・モーショングラフィックスを得意とする映像制作会社だ。その歴史は古く、設立は35年前の1982年まで遡る。CM、映画、遊技機、ゲームなど幅広いフィールドで質の高い映像を手がける彼らだが、社内の状況は4、5年前までとても褒められたものではなかったという。

西川:正直なことを言うと、かなりブラックな感じだったと思います。わりと古い体質の会社だったので、いわゆる体育会系の雰囲気が強く、勤務時間は長いし、休日出勤もざら。長く在籍できるような会社ではなかったんです。

近成:会社を辞めるにしても、次のステージに進むために辞めるのと、恨み辛みがあって辞めるのではまったく違うと思うんです。当時は完全に後者でした。今だから笑って話せますけれど、ちょうど僕が入社したその頃は、毎月のように送別会がありましたから(笑)。

CG事業部部長 近成カズキさん

CG事業部部長 近成カズキさん

こうした状況に危機感を抱き、西川さんと近成さんは社内体制を立て直すことを決意。社員が仕事とプライベートのバランスを保てるよう、組織づくりに力を注いだ。古くから会社に在籍している社員からは反発の声もあったというが、ぶれることなく二人は改善を続けた。

近成:それまでは会社というより、フリーランスの集まりのような雰囲気が強かったんです。案件が個々に舞い込んでいたので、誰がどれくらいの仕事を持っているのかも把握できない状態でした。そこでまずは、その整理から始めたんです。制作部がきちんと案件を管理し、一人のデザイナーに仕事が集中しないよう変えていきました。それに加えて、個々の仕事量をきちんと把握し、無理な受注はやめようと。また管理職の人間が率先して定時に帰るようにしたり、土日出勤もしないようになりましたね。

西川:僕は定時になったらすぐに帰りますね。管理職がバリバリ働く姿を見せるのも良いですが、そうすると部下はやっぱり帰りにくくなると思うんですよ。だから、まずは上の人たちから早く帰るのが、無理のない仕事をしていくうえで大事かなと。仕事をたくさん受注すればそれだけ売り上げは上がりますが、基本的に定時で帰れない状況というのは、どこかで無理をしながら働いているということ。だから、たとえ売り上げが減っても社員が健全に働ける環境をつくる。まずはそれを目指しました。

努力の甲斐もあり、社内体制は大きく改善。離職率も減り、男女比も男性優位の状態から半々に。さらには、社内のコミュニケーションも活発になっているという。

新卒採用を強化し、若手中心の会社へ

こうした活動と同時に、二人が取り組んでいるのが新卒採用の強化だ。ある程度の知識と経験を持った人材の方が即戦力として活躍できそうだが、あえて新卒採用に力を入れている理由は、どのようなところにあるのだろうか。

西川:やっぱり若い人だと型を持っていない分、吸収力が高いと思うんですよね。逆に、下手にノウハウがあると自分のやり方が確立しているから、会社の方針と合わず衝突してしまう可能性も高い。だから、良い意味でまだ何も経験していない人を積極的に採用し、自分たちと同じ感覚で働ける仲間を増やしていく方が財産になると思ったんです。

そうして西川さんたちが新卒採用を強化していくなかで採用したうちの一人が、現在は制作進行として活躍している川崎恵実さんだ。数ある映像制作会社のなかから、なぜシネボーイへの入社を決めたのだろうか。

川崎:私は美術大学で学んでいたこともあり、クリエイティブに携わる職業に就きたいとは思っていました。とはいえ専攻が油画だったし、映像に関しては未経験。対外的なコミュニケーションは得意だったので、自分で手を動かすよりはマネジメントしていく方が向いているように感じていて。テレビ番組やCMの制作会社など、映像業界で幅広く就職活動をしていましたが、社員や社風の雰囲気が合うと思ったのがシネボーイだったんです。

西川:映像業界って、入ってみてから「思ってたのと違う!」というギャップを感じることが多い仕事でもあると思うんです。もっとキラキラしていて、作るものはなんでも万人の目に触れる立派な仕事、みたいなイメージを抱いている学生も多い。だから就職説明会では、実際に働いたらどうなのかっていうのをリアルに教えてあげた方が嬉しいんじゃないかなと思って、全部ぶっちゃけて話していました(笑)。

制作部課長 川崎恵実さん

制作部課長 川崎恵実さん

川崎:マス向けではない映像があるというのはそのときまで知りませんでした。だけど、私の場合は「映像をつくる」「絵をつくる」っていうこと自体にモチベーションがあるので、企業向けの映像だろうと海外で流れるCMだろうと、そんなに大きな問題ではなくて。もちろん、自分が関わったCMがお茶の間に流れたら嬉しいですけどね。でも入社してからのギャップはほとんどなかったです。

川崎さんが入社して約4年。現在、彼女は制作部の課長として複数のチームでマネジメントを担っている。どうやってこの短期間で成長し、責任ある役職に就けたのだろうか。

西川:弊社では、入社したときに「1週間で作った絵も、1日で作った絵も同じ値段」というような考え方を教えるんです。仕事をしていると、1週間頑張ったからといって、値段が上がるわけではないケースに直面することもたくさんあります。短期間でよりクオリティの高いものを作るには、センスと引き出しの多さが鍵。新卒の場合、引き出しが足りないところもあるので、そこから社内で教えていこう、というスタンスを取っています。

制作部部長 西川タイジさん

制作部部長 西川タイジさん

近成:入社した直後にOJTとして数か月、先輩社員のもとで実務に携わってもらうようにしているんです。そこで足りない部分を埋めてあげる。そのなかで業務の進め方や映像制作の「いろは」などを学んでいくのですが、飲み込みの早い人はすぐに独り立ちさせ、仕事を任せるようにしています。

川崎:もちろんプレッシャーはありますし、責任のある仕事を任されているという実感もあります。他の会社で働く同級生のなかには、まだ後輩がいないという人もいますし。社内では同期もライバル関係を維持できているというか。仲が悪いわけでは全くないんですけど(笑)、切磋琢磨しながら働ける環境にいるからこそ、より頑張ろうという気持ちで仕事ができているんだと思います。

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映像制作会社が出版レーベル立ち上げ? ゲームアプリを開発?

映像制作会社が出版レーベル立ち上げ? ゲームアプリを開発?

2017年1月にシネボーイは出版レーベルを立ち上げ、フィルムアート社から書籍『トーク・アバウト・シネマ「特撮・CG・VFX」から語る映像表現と仕事論』を4月に出版した。西川さんが映像制作の傍ら、執筆も手がけたという。さらに、ゲームアプリ事業もスタートし、第一弾として『CRYSTAL XTAL(クリスタルエクスタル)』のリリースも控えている。WEB制作会社や編集プロダクションならともかく、映像制作会社が出版やゲームアプリ開発に携わることは極めて異例。果たしてどのような経緯で事業化に至ったのだろうか?

西川:主軸である映像事業が軌道に乗っているということもあり、今のうちにクライアントワーク以外に何かできないかと考えたのがきっかけでした。それに加えて、映像業界に35年も携わってきたのに、同じくらい続いている同業他社と比較すると世間的な認知があまりにもされていなくて(笑)。これまで、長いお付き合いのクライアント様とずっとお仕事をさせていただけていたこともあり、対外的な見せ方をほとんど考えてこなかったんです。今から正攻法で知名度を上げようとしてもハードルが高いので、変化球を投げてみようかと。

自社レーベル第一弾の書籍『トーク・アバウト・シネマ「特撮・CG・VFX」から語る映像表現と仕事論』(発売元:フィルムアート社)

自社レーベル第一弾の書籍『トーク・アバウト・シネマ「特撮・CG・VFX」から語る映像表現と仕事論』(発売元:フィルムアート社)

企画から出版までは2年を要したというが、その長い時間のなかで書籍の流通システムをはじめ、出版に関するノウハウも蓄積できたという西川さん。また、付き合いのなかった業界の人たちとの出会いによって、これまでとは違った可能性も見えてきたという。

西川:出版元になったので、本の企画を考えるだけでなく、コピーや表紙のデザインを考えるなど、今まで以上にやることも増えたので、正直大変だなと思うこともありました。同時に、出版レーベル立ち上げを支えてくれた東京ピストルさんやフィルムアート社さんなど、これまで関わりがなかった企業とご一緒できた価値は想像していた以上に大きかった。映像業界の中だけで仕事をしてきたからこそ、他業界で活躍している方の発想を目の当たりにすると、気付きも多かったですね。書籍に関してはありがたいことに「次はどうするんだ」というお声もいただいているので、早くご報告できるように進めていきたいと思います。

一方のゲームアプリ事業はというと、これも西川さんの策略があってスタートしたものだという。

西川:ジャンルは違いますが僕と同様、ずっとゲームをつくりたいと言っていた社員がいて。「どうせ失敗するなら一緒にしくじろう」とけしかけてみたんです(笑)。彼はゲームの初期設定から制作までをほぼ一人で手がけていて、何より情熱もある。ゲームだったら、映像のノウハウを直接活かせる場面もありますしね。そういう社員がどんどん出てくるような会社になっていけばいいなと思っています。

創業35年の「ベンチャー企業」?

映像制作会社の枠を越え、新規事業へ果敢に挑むシネボーイ。今後、どのような方向に進むのだろうか。最後に彼らの展望について伺った。

西川:これからは、そうした映像事業の型にハマらず、どんどん新しいことにチャレンジしていきたいですね。会社も若い世代が中心となって様々なことに取り組んでいますし。だから、気持ちとしては老舗という感覚は全然なくて。例えるなら「35年目のベンチャー企業」。そういう呼び方がしっくりくるかもしれませんね。

川崎:うちは良い意味で実力主義なんですよ。そして、個人の仕事に対する価値観も大切にしています。仕事を優先したい人、プライベートとのバランスを大切にしたい人など、個々人で仕事に対する考え方は異なりますから、そうした事情も踏まえたうえで仕事量を調整していて。もちろん頑張る人には給与面に反映してもらったり。年齢関係なくきちんと評価してくれるスタンスは、今後も続いていくのかなと思います。

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近成:社員一人ひとりが本業とは別に自分のやりたいことを実現できる場所にしていければ、それも嬉しいですね。最近は副業を認める会社も増えていますが、その目的がお金のためというよりは、知識や経験を広げるためにあるという人も多いと思うんです。それを、会社の事業としてできたら、わざわざ副業をする必要もないのかな、と。そのためには、きちんと自分の時間をつくることが大切。仕事に追われている状況では、なかなか良いアイデアも出てきませんし。今よりもっともっと働きやすい環境にしていきたいですね。

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    株式会社シネボーイ

    創立35年目に突入するCG会社です。3DCG、2DCG、イラストを得意とし、エフェクトや特殊効果、モデリング、アニメーションなど、多岐にわたってモノづくりを行っています。テレビCM、ゲームOPやPV、VPなど様々な作品に携わっております。会社は古いですが、20代の社員も多く、毎日うるさいくらいに活気のある会社です。

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