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片山正通のマネジメント術。「Wonderwallが目指すのは、ジャズのセッションのようなチーム」

株式会社ワンダーウォール

インテリアデザイナー片山正通と彼が率いるWonderwallは、建築・空間のデザインを介して、先端的な都市とそこに息づく文化を体現してきた。海外のユニクロ旗艦店やDEAN&DELUCA、東京・青山の「INTERSECT BY LEXUS-TOKYO」など、数々の都市の「顔」を生み出してきた。それゆえに、Wonderwallには華やかできらびやかなイメージがある。しかし、それは彼らの本当の姿だろうか? 今回のインタビューでフォーカスするのは、片山と彼を支えるスタッフ。チームとしてのWonderwallの素顔に迫ってみたい。

取材・文:島貫泰介 撮影:kyosuke azuma(2017/6/21)

Wonderwallは、転換期を迎えている

2009年に建てられ、8度目の夏を迎える北参道のオフィスは普段とちょっと違う佇まいで取材陣を迎えてくれた。というのも現在、東京オペラシティギャラリーで開催されている「片山正通的百科全書 Life is hard… Let’s go shopping.」展に、片山が蒐集したアート作品、アンティークの多くが出張中だからだ。作品がほとんどないレアな状態のミーティングルームで、インタビューはスタートした。「Wonderwallの社内体制は、この数年で大きく変化しているんですよ。」そう話すのは、片山の右腕として十数名のチームを舵取りするデザインディレクターの坂巻陽平。彼は、入社した当時をこんな風に振り返る。

坂巻:僕が入社した9年前は仕事の90%以上を片山が担当し、片山からのアイデア、指示を受けてスタッフ全員がサポートに徹する、いわばワンマン体制でした。もちろん悪いことではないのですが、会社という組織の発展性を考えると、それは必ずしもヘルシーな状態とは言えませんでした。

左:デザインディレクター 坂巻陽平 / 右:代表取締役 片山正通

左:デザインディレクター 坂巻陽平 / 右:代表取締役 片山正通

片山:武蔵野美術大学で教鞭を取り始めたことも大きいし、歳をとると病院に通う必要もあるから、物理的に時間が限られてくるんですよ(苦笑)。もちろんまだまだ自分で手を動かして現場に関わっていたいと思うし、実際やってもいる。でも、みんなに頼る決断をすることがチームをもっと先に進めるために必要だと気づいたんです。

坂巻:一番の改革は、ミーティング方法の変化です。現在は、社長である片山、中間にいる僕、そして新人も含めたプロジェクトスタッフ全員が集まって、それぞれの意見、アイデアを出し合って議論します。そこでの片山の役割は、審査員やメンターのように、僕たちの仕事の是非を確認すること。そして実務的な仕事をスタッフが担うことで、片山の活動をもっと自由にしていこうと取り組んでいます。

改革の成果の代表例がある。2011年5月、香港にオープンしたバーラウンジ「Ozone at The Ritz-Carlton」だ。坂巻は、ここで初めて片山と共にプロジェクトを主導する立場になった。Wonderwall入社以前から海外ホテルのインテリアデザインを手がけてきた彼にとって、念願の仕事だったという。

Photo : Nacása & Partners Inc.

Photo : Nacása & Partners Inc.

オゾン層を思い起こさせる「Ozone」は、その名のとおり、ホテルの最上階、海抜490メートルの天空に広がる至極の空間だ。ドレープ型に造形された白い人造大理石や、葉脈などの自然の造形をデジタル化したかのようなデザインは、片山が立ち上げた「Edenic Experiment(実験的な楽園)」というコンセプトを体現している。老舗のザ・リッツ・カールトンが、顧客ターゲットを、50歳以上から25〜45歳へとシフトしたのは、香港が国際的な経済都市として生まれ変わりつつあるからだ。坂巻に求められたのは、香港とホテルの新しい顧客層との関係を視覚的・体感的に実感できる空間だったわけだが、組織としてのWonderwallの転換期にそれがオーダーされたのは、ひょっとすると偶然ではなく必然だったのかもしれない。ちょうどこの頃から、Wonderwallはワンマンから個々人のオリジナリティを活かす時代へとゆるやかに移り変わっていった。

「インテリアデザイナーが音楽家とつながって、作品やプロジェクトを生み出せる場所ってそうはないと思うんです。」

新しい世代のスタッフにも話を聞いた。 入社2年目の山内夏広と1年目の瀬川慧理は、Wonderwallでもっとも若いスタッフだ。日々、先輩や上司の仕事に触れながら経験を積んでいる最中の2人だが、山内と坂巻の間には、入社以前に奇妙な縁があったのだという。

山内:僕は桑沢デザイン専門学校でプロダクトもファッションも学んでいたのですが、全ジャンル楽しかったので専攻をどれにするか決めかねていました。ある日、学校の図書館で読んだ『FRAME』というオランダの雑誌に、ザ・リッツ・カールトン香港のラウンジバーが取り上げられていたんです。その写真に衝撃を受けて、インテリアデザインの道に進もうと決意しました。

山内が目にしたのは、坂巻が念願叶って手がけることになった、あの「Ozone」だった。軸芯となるコンセプトが基底にありつつも、視覚的な美しさ、そこから想起される楽しさがコンセプトを乗り越えていくかのような空間に一目惚れしたのだ。

山内:もちろん坂巻と会うのはずっと先のことです。告白すると、Wonderwallの名前さえも当時は知らなかったんですけど(苦笑)。写真を通して見た「Ozone」が自分の人生を左右することになったのは確かです。

新卒で入社した山内とは違い、瀬川は建築設計事務所での2年間の勤務経験を経て、今年1月にWonderwallに加わった。

左:山内夏広 / 右:瀬川慧理

左:山内夏広 / 右:瀬川慧理

瀬川:前職で大きい建築を作るダイナミズムや緻密さから学ぶところが多かったのですが、私の関心は身の回りの手に取れるものにあって。身近なところでリアリティを感じられ、もっと生活や趣味に関わる空間の設計をしたいと思ったんです。そんなときにふと思い出したのが、学生時代に聞いた片山の特別講義でした。インテリアデザイナーであると同時に、コーディネーターやコレクターの顔も持っている片山が、様々なジャンルの人たちとの交流からプロジェクトを展開することに惹かれました。それがWonderwallに入社を決めた理由です。

片山:瀬川はサカナクションの山口一郎さんが好きなんだよね(笑)。

瀬川:(照れながら)はい。インテリアデザイナーが音楽家とつながって、作品やプロジェクトを生み出せる場所ってそうはないと思うんです。Wonderwallの関心の広さは、自分の好きな音楽やアートと一緒に何かをつくれる予感に満ちていると思っています。

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博覧強記な片山正通とのブレストは、楽しくも厳しい?