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東京の仕事を続けながら地方移住。鹿児島クリエイターが語る、リモート処世術

鹿児島県鹿児島市

「お会いするのは2年ぶりですね!」。そんな会話から始まったWEB制作会社Lucky Brothers & co.(以下、ラッキーブラザーズ)の田島真悟さんと、DeNAでディレクターとして活躍する樋口耕正さんの対談。かつて、彼らは面白法人カヤックに在籍する同僚として仕事をしていたが、樋口さんはDeNA、田島さんは独立という別の道を歩むことに。以降も、発注側、受注側として定期的に仕事をしている。しかし、鹿児島を拠点とするラッキーブラザーズとDeNAの渋谷オフィスとの距離は1,000km。いったい、どのようにしてこの距離を越えて仕事をしてきたのか? 彼らに話をうかがうと、リモートで働くためのさまざまな工夫が見えてきた。
 
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プロフィール

田島真悟 / Lucky Brothers & co.代表

鹿児島高専、九州大学芸術工学部を卒業後、面白法人カヤックでエンジニア職に就く。2016年7月に独立し、同じく鹿児島県出身のディレクター下津曲 浩さんとラッキーブラザーズを設立。2017年2月に拠点を鹿児島に移す。JRAやアニメ作品のキャンペーンサイトのほか、アスクルの販売サイト、ロックバンドELLEGARDENのオフィシャルサイトなど、幅広いジャンルを手がける。

https://lucky-brothers.co.jp/
樋口耕正 / DeNAディレクター

面白法人カヤックでディレクターとして、LIFULL HOME’Sやベネトンなどのキャンペーンサイトなどを担当。3年間にわたり従事し、2015年からDeNAに在籍。『FINAL FANTASY Record Keeper』などのプロモーションを担当し、現在は新規ゲームタイトルの協業案件を手がけている。

https://ffrk.jp/

取材・文:萩原雄太 撮影:高木亜麗 編集:青柳麗野(CINRA)(2019/08/07)

クライアントとトラブルになることも覚悟して、鹿児島移住を伝えた

―田島さんは、2016年7月にラッキーブラザーズを設立し、2017年2月に鹿児島に移住しました。なぜ、移住を計画されたのでしょうか?

田島:もともとカヤックから独立するにあたって、いつかは実家のある鹿児島に戻ろうと決めていました。ただ、それまで東京のクライアントとしか仕事をしていませんでしたし、いくら地元とはいえ、鹿児島に仕事につながるコネクションもありませんでした。最初から独立と移住をするのではなく、東京のクライアントと信頼関係をつくってから移住をしたほうがいいと考えました。

そこでまず、東京で会社を設立して様子を見ていたんです。すると、おかげさまで仕事をもらえることがわかり、信頼関係も築けたのではと感じ、「これは大丈夫だ」と判断しました。実際に移住をしたのは会社設立から半年後でしたね。

―わずか半年で移住!?

田島:「いつか移住したい」と考えながらダラダラするのが嫌だったんです。移住が成功するか失敗するかはわかりませんが、遅ければ遅いほど、失敗したときに受ける傷は大きくなりますよね。「失敗するなら早いほうがいい」と、早々に移住を決断した。ぼくが、26歳の頃です。

ラッキーブラザーズ代表でエンジニアの田島真悟さん

ラッキーブラザーズ代表でエンジニアの田島真悟さん

―移住するにあたって、クラアントにはどのように説明したのでしょうか?

田島:よくお仕事をいただいていた樋口さんには、移住する1か月くらい前、案件の進行中に「じつは、来月から鹿児島に行くことになりました」と切り出しましたね。

樋口:聞いてすぐは、けっこうビックリしましたよ(笑)。

田島:「え、聞いてないんだけど!?」と、トラブルになるパターンも想定し、少しオドオドしながら移住の話を切り出したんです。しかし、DeNAさんに限らず、どこの会社でもこの決断を快く受け入れてくれましたね。

樋口:私が手がけている案件でも、大阪の会社をパートナーとしているものがあります。全然不安はなかったですね。それよりも、若い田島くんが頑張ろうとしている姿を、個人的にも応援してあげたいという気持ちでした。

鹿児島移住後にもスマートフォンゲーム『FINAL FANTASY Record Keeper』のキャンペーンサイトをはじめ、さまざまな案件を継続的に手がけてもらっています。また、自分の案件だけでなく、DeNAの別のディレクターの案件もお願いしていますね。

DeNAのディレクター樋口耕正さん

DeNAのディレクター樋口耕正さん

―樋口さんは、田島さんが鹿児島へ移住したことを、まったくデメリットとして感じていないんですね。

樋口:私自身、仕事をする場所にあまりこだわりはなくて、電源とWi-Fiさえあればどこでも仕事はできるのだから、働く場所に縛られる必要はないですよね。

メールやチャットだけの関係だとドライになりがち。信頼関係の築き方とは?

―距離が離れていることのメリットはありますか?

樋口:対面で打ち合わせをすることがないから、移動時間を節約できるのはメリットかな?

田島:そうですね。もともと渋谷に会社があったので、DeNAさんに限らず、打ち合わせをする場合、必然的に「会って話しをしましょう」となります。電車ですぐの距離だったり、歩いて行ける距離だったりするのに、「ビデオ会議をしましょう」と提案するのはお互い違和感ですよね。「嫌いなんじゃないか……」「会いたくないのかな……」と思わせてしまいそうだし(笑)。

しかし、鹿児島に移住すると、そもそも会って話すという選択肢がなくなり、ビデオ会議一択にならざるを得ないんです。

樋口:それにミーティングを予定していると、細かいニュアンスをオンラインで伝えず「会ったときにまとめて言えばいいか」と、考えてしまいがち。対面の打ち合わせがないと都度都度伝えていくようになるため、仕事の速度も上がります。

田島:テキストのやり取りが増えることによって、コミュニケーションの粒度が細かくなりますね。報告・相談・連絡を細かくやるようになりました。

―ただ、直接の会話と、メールなどのテキストメッセージでは、受け取るニュアンスも異なります。その差はどのように埋めていくのでしょうか?

田島:2年にわたってリモートで案件を進行しながら、テキストと会話の差の埋め方についてはノウハウを身に着けていきました。どうしても、テキストだとドライに受け止められ、関係がギクシャクしてしまいがちですよね。

しかし、そんな場合は電話をかけることによって解消できます。電話をすると込み入った問題も「なんだ、そういうことか」と、あっさり解決することは多いんです。コミュニケーションの齟齬によって違和感が生まれたら、すぐに電話をするように心がけていますね。

また、ウェブサイトの制作画面には、言葉でなかなか伝えにくい作業もあります。そんなときは、テキストと電話の中間の情報量として、動画を使っています。たとえば、システム開発の作業を録画してチャットで送り、「こうスクロールしたときに、このような動きになる」と、解説しながら共有すればオフィスで会話をするのと遜色ないやりとりができるんです。

―移住以降、2年以上にわたって細かなノウハウを蓄積していった。逆にいえば、当初は、コミュニケーションも苦労をされていたのでしょうか?

田島:基本的な修正依頼なのに、認識がすれ違っていて、一日の作業が無駄に終わる……なんていうこともしばしばでした。小さなミスを一つひとつ潰し、同じ失敗を繰り返さないようにしながらいまの環境にたどりついたんです。

樋口:そのように、田島さん自身が努力を積み重ねたからこそ、距離があることを意識せずに仕事ができているのかもしれないですね。

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「地方でクリエイターをしている」こと自体が、ブランディングになる