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オンラインなのに温かみが感じられるハンドメイドマーケット。minneの次の一手とは?

アクセサリー、衣類、雑貨など手作りしたアイテムをオンラインで売買できるハンドメイドマーケット市場が賑わっている。そんな中、登録作家数20万人、登録アイテムは250万点を超える、圧倒的な支持を得ているサービスがある。GMOペパボが運営する「minne(ミンネ)」だ。minneは今年、WEBメディアの立ち上げと、取扱いジャンルの拡大という新たな挑戦をする。この2つの取組みにおいて、どんなビジョンを描いているのだろう。同サービスの産みの親であり、「minneのエバンジェリスト」としてサービスを広める阿部雅幸さんと、作家支援チームの小田有里佳さんに話を伺った。

「手作り市」や「蚤の市」の空気を、ネット上で再現したい。

minneのサービスがスタートしたのは2012年1月。GMOペパボ社内で、新規事業の公募が掛かり、阿部さんの企画・提案が採用されたのが始まりだった。阿部さんの趣味は、神社の境内や公園などで行われている「手作り市」へ出かけること。作り手と直に話せて、作品を手に取ることができるから好きだったのだという。しかし同時に「作家さんの作品がネット上で販売されていないことにもったいなさを感じていた」と振り返る。

阿部:僕自身がネット上で作品を見たかったし、素敵なものを生み出している作家さんたちの作品がインターネットのサービスを通して広がっていくような世界を作れたらいいなという気持ちからminneを企画しました。minneをリリースする1年くらい前から、ハンドメイドにまつわる他社のサービスが出てきてはいたんです。でも、それらは機能が多く複雑で、もっと使いやすくならないかなぁという印象でした。実際に手作り市で作家さんと話をしても「ブログはやっているけれど、販売するのは敷居が高い」とおっしゃる方が多かったので、もっと機能を絞り込んで、シンプルに設計しました。

阿部雅幸さん

阿部雅幸さん

もう一つminneが他サービスと大きく異なるのは、利用料のシステムだ。minneは基本料・登録料が無料で、作品が売れた時だけ販売価格の10%(税抜き)が手数料としてかかる。さらに作家と購入者、両者の手間を省くため、CtoCサービスでありながらも、通常のECサイトのように気軽に作品を購入出来るようにしたことが後の支持に繋がる大きな要因になったと分析する。

阿部:基本料や手数料を抑えたのは、作家さんの負担を減らすためです。そこでハードルが高くなると出品してもらうことすら難しくなるだろうと考えました。金額の交渉については、まず購入者さんが作家さんに連絡を取って、送料込みの金額を待って……というやり方が一般的だったんです。でも、欲しいと思ったときにすぐに購入できるようにしたくて、間にminneが仲介として入り、お金のやりとりを管理して、担保するように整備していきました。

オンラインサービスなのに、人のぬくもりを感じる理由。

サイトを開いた瞬間に感じる「minneらしさ」「minneの世界観」は、どのように作られているのだろう。

阿部:見ていてワクワクするようなサービスにしたい、とサービス作りにおいて意識しています。サイトを訪れたときに「お気に入りに出会えそう」と思っていただけるような画像の並べ方、サイズにこだわっています。毎日20〜30作品をその日のオススメとしてトップページやSNSでピックアップするのですが、作品のもつ魅力やクオリティの高さがある程度選別されたものにしたいという想いがあるので、新着順ではなく、必ず目視で選ぶようにしています。

ハンドメイドと聞くとつい、優しく、ぬくもりのある作品を想像しがちだが、minneに出品されている作品の中には、シンプルなデザインの革小物や、繊細な細工が施されたアクセサリーなども多くあり、そのバリエーションの豊富さが目を引く。 ピックアップする作品の共通点を、今年の2月に入社したばかりという小田さんに聞いた。

「minne」 トレンド作品ピックアップページ

「minne」 トレンド作品ピックアップページ

小田:「ピックアップはどうやって選んでいるんですか? 壮大な作品じゃないといけないんですか?」と質問をいただくことがあるのですがそんなこともないんです。ご自分で描かれた絵をポストカードにしているものを選ぶこともありますし、プロフィールに詳しく経歴が書いてあるとその熱意を感じて応援したくなることもあります。

阿部:手作りのよさは「他にはない」という点だと思うので、僕は作品として特徴があるものを選んでいます。あとは写真が綺麗なもの。見せ方も含めてきちんと考えられているかがポイントですね。

1日にアップされる作品は1万点を超える。膨大な作品の中からキラリと光る作品を見つけ出し、オンライン / オフライン問わず、ピンとくる作品に出会えば、積極的にコンタクトをとる。minneはオンラインサービスでありながら、あらゆるところにしっかりと「人」の手が加わっているのだ。また、世田谷区にあるIID世田谷ものづくり学校内では、「minneのアトリエ」というスペースを構え、作家支援チームのスタッフが常駐し、作家からの相談に対応しているのだという。

小田有里佳さん

小田有里佳さん

小田:登録の仕方から値段の付け方、写真の撮り方まで、悩みや相談があれば来ていただいてお話をします。作家さんだけではなく小さなお子さんが作品を見にきてくれたりもするんですよ。先日は新潟から相談に来てくださった方もいます。作家さんはお一人で作っている方が多いですし、不安や心配ごとは出てくるものだと思うんです。私たちも作家さんのお悩みを聞くことで、サービスの改善に活かすこともできるのでもっと注力していきたくて。今は、神戸にも関西初のアトリエをオープンすることが決まり、準備を進めているところです。

小田さんはもともとminneのユーザーだった。自身もものづくりが好きで、minneに夢中になっていたひとり。運営側に回り、意外だったのは「イメージとギャップがなかったこと」だそう。

小田:仕事なので「売上げを」という部分はもちろんありますが、スタッフの「作家さんを盛り上げたい」という気持ちを感じられる職場なので、入る前と後でギャップを感じなかったんです。表だけを見ていいなと思っていても、実際には「あれ?」みたいな場合もあるじゃないですか。minneの場合はそれがなくて、「スタッフブログの印象どおりだ!」みたいな(笑)。

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minneが新メディア立ち上げで目指す「体験の最大化」とは?

minneが新メディア立ち上げで目指す「体験の最大化」とは?

先日2号目が発売されたばかりのムック本『みんなのハンドメイド本 minne HANDMADE LIFE BOOK』や、テレビCMなど、昨年からユーザー獲得のためのアプローチに力を入れてきたminne。今年は新たにWEBメディアを立ち上げるという。

『みんなのハンドメイド本 minne HANDMADE LIFE BOOK』

『みんなのハンドメイド本 minne HANDMADE LIFE BOOK』

阿部:2016年のテーマのひとつが「お買い物体験の最大化」なんです。そこで、アプリをブラッシュアップしたり、運用方法を変えたりしているところなのですが、ハンドメイドとの出会いの最大化を実現するためにWEBメディアという「場」を創出していきたいという話になりました。現在minneをご覧いただいている方に向けたものです。ハンドメイドが生活にどんな潤いをもたらしてくれるのか、というところを伝えきれていない現状があるので、新しいメディアでは丁寧に伝えていきたい。作家さんへのインタビューはもちろん、弊社で作品の使用感を確かめて紹介していく予定です。

4月28日から3日間開催される「minneのハンドメイドマーケット」も、「体験の最大化」の一環だ。minne史上最大の作家・作品が一堂に介する対面販売イベントだ。同時開催の第40回2016日本ホビーショーとチケットが共通のため、これまでにminneと関わりがなかった層との出会いも期待できる。

阿部:イベントは作家と購入者さんにお会いしていただく体験でもあり、作家さんとminneスタッフとのコミュニケーションによる体験でもあります。購入者さんはきっと作家さんと直接お会いすることで、よりその作家さんと作品を好きになると思います。イベントでは販売できる数に限界があるので、次の新作はminneで販売・購入という流れになり親和性が高まります。その場で終わりではなく、その後の動きにも期待できます。

こうしたリアルマーケットはこれまで何度も開催してきたが、昨年から作品を目当てにした行列ができるようになったという。それは阿部さんにとって心動かされる光景だった。

阿部:昨年の夏に目黒のクラスカでイベントを開催したときに、我々スタッフが到着する前から並んでいる方がいました。正午開始のイベントにも関わらず、なんと始発で来てくださったんです。それを見たときは衝撃的でした。手作り市では考えられない。すごいことになってきたぞ、と。minneをやってきて、印象的だった出来事のひとつです。

リアルな「場」で生まれた新しい出会いと同じように、これから立ち上げるWEBメディアでもさらに「もの」と「人」の出会いを加速していくのだろう。

趣味だったハンドメイドが仕事になる。
ユーザーの「人生」を変えるサービスに。

WEBメディアの立ち上げに加え、今年はもうひとつ大きな決断をした。「もっと楽しいマーケット」になるために、クッキーやコーヒー豆といった加工食品の販売をスタートさせるというのだ。「口に入るものなので、今は慎重に条件を定めているところです」と阿部さんは話すが、そこに至った根底には、ものづくりへの熱い気持ちがあった。

阿部:ものづくりって、すごく身近なモノだと思うんです。ハンドメイドマーケットがたくさん出てきて、以前よりは身近になっているという実感はありますが、もっと楽しく作っていただきたいし、それを継続して楽しんでいただけるよう、minneもアトリエもWEBコンテンツも、全てにおいてうまくサポートできる体制を整えていきたいです。

アプリのUI / UXについては、iPhoneアプリを中心にUIデザインやインタラクティブデザイン制作で活躍するTHE GUILDの深津貴之氏を外部顧問に招き、毎週施策のためのワークショップやフィードバックを行っている。そこにはインターネットサービスを提供するGMOペパボだからこそのプライドのようなものさえ感じられる。

阿部:大きなことから小さなことまでテストしていきながら、アプリのアップデート申請のタイミングにあわせて1週間から2週間のスプリントのなかで機能改善をしています。中でも重視しているのは好みのものにきちんと出会えるよう、うまくマッチングすること。250万点を1日で見ることはとてもできないので、履歴をもとにユーザーの好みに合わせて情報を提供できるようにしていきたいです。

最後に、阿部さんがこれまで一番うれしかったというエピソードについて教えてもらった。

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阿部:いやぁ、いろいろありすぎて一番を決め難いのですが……(笑)。サービスがスタートしたばかりの頃、トップページに掲載するピックアップ作品を選んでいたときに、素敵な作品を作っているのに販売はせず、展示だけされていた作家さんがいました。minneでは、展示だけすることもできるのですが、ピックアップする以上、購入できて誰かに届く作品がいいというのが僕の考えなので、「作品をピックアップしたいのですが販売してみませんか?」とお声掛けしたんです。3年後、その作家さんがminne主催の「ハンドメイド大賞」で賞を受賞されたことはうれしかったですね。さらに、受賞した作品は誰でも作れるキットになり、ふと立ち寄った手芸店で販売されているのを見たときは泣きそうになりました。以前は趣味でやられていたという作家さんも、熱心なファンが出てくることで、ものづくりで生計を立てられる方が出てきています。「minneで人生が変わりました」。そう言われることもありますね。

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GMOペパボ株式会社

GMOペパボ株式会社は2003年の創業以来、個人向けインターネットサービスを通じて個人の表現活動を支え、インターネットと表現の可能性を追求し、誰もがクリエイターとして楽しめるサービスを多数展開しています。

レンタルサーバー『ロリポップ!』、ドメイン取得サービス『ムームードメイン』などのホスティング事業、オンラインショップ構築ASPサービス『カラーミーショップ』、オリジナルグッズ製作販売サービス『SUZURI』などのEC支援事業、CtoCハンドメイドマーケット『minne』と『tetote』からなるハンドメイド事業、無料・有料ブログ作成サービス『JUGEM』などのコミュニティ事業の4つを柱に事業展開しています。

なかでも、2012年1月にスタートしたハンドメイドマーケット『minne』は、サービスの認知度拡大とアプリダウンロード数増加のみならず、ハンドメイド市場自体の拡大を図るため、2015年から積極投資を行いました。その結果、2016年10月にはアプリダウンロード数が650万を突破し、現在国内最大のハンドメイドマーケットとして、多くの方にご利用いただいております。

GMOペパボは「インターネットで可能性をつなげる、ひろげる」をミッションとし、一人ひとりが持つ力や可能性を広げるために、インターネットと表現の可能性を追求しながらサービスを運営しています。私たちは場所や背景にとらわれず、いろいろな人たちがインターネットで可能性を開花し、活躍できるための新たな環境を創造していくことを目指しています。

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