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生き方をデザインする会社

株式会社フラップ

人生誰だって、自由に生きたい。けれども、組織に属しながら自由に生きることは容易いことではない――。昨今、“働き方”というトピックをよく目にするように、ただ利潤のみを追い求めるのではなく、より充実したライフデザインをスタッフと一緒に探していく会社が多くなってきた。それは、社会の構造が複雑化している中で個人の、ひいては組織の目指す“幸せのカタチ”が、より多様化しているということなのかもしれない。働くこと、そして生きることとは何か。そんな問いと真摯に向き合いながらも、設立から15年間成長し続けてきたデザイン会社がフラップだ。代表の永井大志さんと、アートディレクターの吉田裕司さん、神馬理さんにお話を伺った。

取材・文:宮崎智之 撮影:西田香織(2013/09/03)

数字ありきの売上げ目標は立てない

フラップは1998年に設立。Maison de ReefurやEGOIST、N.HOOLYWOODなどアパレルブランドを中心に、WEBサイトやグラフィック、アイテムを手掛けるデザイン会社だ。

一般的に、こうした制作会社では会社で請けた案件を、ディレクターやデザイナーなど複数のスタッフたちが関わって回していくもの。経営者は自社の方向性にあった案件かどうか、ひいては、利益率はどうかなどを確認し、人員を割り振っていく。そしてどんな案件でも質の高いクリエイティビティを発揮するのが、一流の作り手には求められているともいえる。しかし、当然の如くすべての案件が「やりたい仕事」である訳ではもちろんない。これはクリエイティブな仕事であろうとなかろうと、社会人である以上、どんな職種にも当てはまることかもしれない。

しかし、フラップではすべてのスタッフが「やりたい仕事」をすることを最終目標に据えている。誰もが自由に、自分の好きなことだけをやっていたい――。これはひとつの理想論ではあるが、フラップはそんな「理想」を諦めたりはしない。むしろ、そんなスタンスを貫きながらも創業から一貫して成長し続けているのだ。

株式会社フラップ 代表取締役 永井大志さん

株式会社フラップ 代表取締役 永井大志さん

永井:僕は大学を卒業後、フリーランスのデザイナーとして働いていました。デザイナーをやっている限り忙しいのは仕方がないこと。でも、その忙しさの延長線上が「自分の想像する未来」に近づけることなのかどうかを考えると、やっぱり、そうではないなと思いフリーランスに限界を感じ始めたんですね。だから「働き方」というより、「生き方」を考えた結果の起業だったんです。より自由に「働きたい」ではなく、より自由に「生きたい」。僕はそれを一人で実現できるほど器用な人間じゃないので、同じ想いを共有できる仲間達を集めて、そういった環境を作りたいと思いました。一人では難しいけど、力を合わせていけば、理想に近づけるじゃないかって。

フラップでは、力のあるスタッフは自ら営業を行い、受注から制作、請求書の作成まですべてに携わり、すべてに責任を持つ。あくまで個人個人の裁量は自由であり、「与えられた仕事をこなすオペレーターでなく、クリエイティブに真摯に向き合い、自分の名前を売ることを考えられるクリエイターの集まり」を目指し、会社はスタッフの「やりたい仕事」をサポートする役割だ。しかし、会社員である以上、組織の利益を追求しなければいけないはずだが?

永井:もちろん、最低限の売上げを確保してもらわなければ困ります(笑)。会社には給料を出さなければいけない責任がありますから。でも、フラップでは「毎年、120%ずつ利益を上げていく」などというような数字ありきの売上げ目標は立てていません。政府が予算を決める時のように、どれだけ歳出(給料など)があれば国民(スタッフ)が幸せな生活が送れるかを社内で話し合い、その年々で目標を決めていきます。「これだけの給料が必要なら、これくらい働かなければいけないよね」といった感じです。各々が求める生活水準を満たしつつ「生き方」を中心に考えるんです。

つまり、「どういう生き方をしたいか」が会社の経営理念にも繋がるものなのだ。スタッフがどのようなライフプランを持っているかによって、売上げ目標は変わってくる。またスタッフに力がついてくれば、より大きな案件をしたくなってくるかもしれないし、そうすれば自ずと会社の形も変化する。つまりは、会社のエゴではなく、個人のエゴを中心に見据えた上で会社というものが成り立っている。

自由を追求すると自ずと「責任」がついてくる

さらに、スタッフの「やりたい仕事」を会社がサポートすることは、スタッフのモチベーションやスキルを上げることだけに留まらない利点があるという。

(左)デザイナー/アートディレクター 神馬理さん

(左)デザイナー/アートディレクター 神馬理さん

永井:自分の「やりたい仕事」をやれば、当然、クライアントへの対応もきめ細かく親身になる。クライアントとも、プライベートでお付き合いするほど仲良くなることもありますし、仕事外の話しの中から新しいビジネスが生まれたりもする。本来、会社という形態で利益を上げるためには、確かにきちんとしたマネージメントが必要ですし、そのほうが効率いいことはわかっています。でも、例えばお金が良いだけで仕事を請けても、それっきりで終わってしまうのでは意味がない。ならば、自分たちが本気でのめり込める仕事を選び、信頼関係を築いていったほうが次に繋がると思うんです。

神馬:自分が好きな仕事を、自分の好きなクライアントとして、顔を突き合わせて一緒にサービスやデザインを作っていけば、自ずと責任感は沸いてきます。自由と責任を両立することが大切だと世間ではよくいわれているけど、ただ単に「相手をガッカリさせたくない」という想いが強いかもしれませんね。だから、予算のない案件だけど、その人のためにやっていきたい、となればやることだって多々あります。

アートディレクター 吉田裕司さん

アートディレクター 吉田裕司さん

そんな仕事を「やらされている」という感覚がないからこそ、自然と力が入るし、責任感も生まれてくるということだろうか。ただ、こうなってくると各々がフリーランスで働いているのと同じように思えなくもない。「自由」を標榜しながらも、あえて、「会社」の形態をとるのにはどのようなメリットがあるのだろうか?

吉田:やはり、「集団」であることで、いろんな仕事が集まってくるメリットがありますよね。自分に合わない仕事でも他の人には合うということもありますし、スケジュールの問題でどうしても受けられない仕事があったとしても、社内で同じ文脈やニュアンスを共有しているので、安心して他の者に任せられたりもする。例えば、フリーランスだとそうはいきませんよね。人を紹介するのも、会社という肩書きがないと信頼度も当然変わってきますし。だから、僕らが会社でやっていくメリットは大きいと思っています。

自由な空気を支える十人十色のメンバー

それぞれの「個性」を活かし、「組織」を強くしていくことだろうか。そんな取材中、会社の通路には外国人の姿が通りすがった。聞けば、彼はベネズエラ人のデザイナーという。

社内風景

社内風景

永井:各々の個性が会社の個性になっていくことが理想型だと思うんです。ですから、採用するときは、なるべく既にいるスタッフとキャラクターがかぶらない方を採るようにしています(笑)。僕はデザイナーに「天才」なんてそうはいないと思うんです。例えば、いま第一線でスマートに活躍しているデザイナーでも、若い頃は血の滲むような努力をしてきたはず。だから、根性があってキャラさえかぶらなければ、入社してから育てていけばいいくらいに思っていますよ。

当然、誰でも「自由」な働き方ができる訳ではない。現在のフラップにいる社員全員がはじめからそういう働き方を実現しているとは言えないだろう。だから、理想の「働き方=生き方」ができるように育てていくのである。

吉田:自分が管理されないで育ってきたので、後輩を管理するのは何か矛盾した感じですけど、やっぱりちゃんとやり方を教えてしごかれるというのも、デザイナーにとって上達の近道だとは思うので。いずれ管理しなくてもいいように管理しているという状態ですね(笑)。理想は、本当の意味で皆が自由に仕事することです。自分で仕事を選べるということは、キャリア形成も選べるということだし、結果論からすれば、それに準じて自ずとスキルも延びてくる。

そんな3人が口を揃えていったことは、「会社だけど、会社みたいにはしたくない」ということ。いわゆる既存の「会社」というものとは違う形を目指しているのだ。フラップとしてのクリエイティブのクオリティを保ちつつ、スタッフ全員が自由に働けるよう、日々フラップ流のマネージメント術が活かされる。

常に「野良犬」でいることへのこだわり

ではフラップのこうした考え方は、どのようにして生まれてきたのだろうか。代表の永井さんは、大学時代からカメラマンやスタイリスト、デザイナーなどのアシスタントとして働いてきた。高校の頃までは通知表に「協調性がゼロ」と書かれるような青年で、学校の行事にも気が向かなければ出席しなかったという。親の願いで大学には進学したものの、学校に行くよりも仕事にのめり込み、「学校で学んだことなんてほとんどない」のだとか。

こうした生い立ちから、社長になった現在でも既存の価値観を疑う、いわば反骨精神というべきものは忘れないようにしているという。その一つの表現として、「自由に生きる」というコンセプトがあるのだ。

永井:僕たちは血統書付きの犬ではありません。バックに大きい企業がいるわけでも、資本が入っているわけでもない。起業したての頃は、子どもが集まっていただけのような状態で、仕事が終わったあとに皆で遅くまでゲームをして、といった生活をしていました。今思えば、よく仕事ができていたな、と(笑)。でも、矛盾しているかもしれないけど、ある程度子どもで居続けることは、よりよいクリエイティブを発揮する上で大切なことなんです。人間は大人になると、高いレストランにいきたくなったり、気取ったり知的な話をしたくなったりする。でも、もともと野良犬の僕たちがそんなことをしても何の意味もない。お行儀よく血統書付きみたいに振る舞ってもたかが知れているんです。

自分たちの立ち位置を見極め、自分たちだから出来ること、そしてやりたいことをやる。そんな永井さんいわく、人間のデザインリソースは二種類しかないという。それは、歴史や民族性に根ざした伝統的な表現か、カウンターカルチャー、反体制的なものだ。

永井:長い歴史がある日本に生まれた以上、前者の表現は誰でも持っていると思うんです。でも、後者はある程度、意識的に持つようにしなければ身に付かない。僕は、後者にこだわることで、自分のパーソナリティーを発揮できるのではないか。そういった僕の考え方が、現在の社風に影響しているのかもしれませんね。

吉田さんや神馬さんも、永井さんの言う野良犬の根性を持ち合わせていると言えるかもしれない。吉田さんは中学生のころからゲームを制作するほどで、大学時代からフリーランスのWEB制作者として実績を積んできた。フラップが初めての就職先という、永井さんの右腕的存在だ。対する、神馬さんは元タワーレコード渋谷店のバイヤーという経歴の持ち主。「もっと刺激的な仕事がしたい」と、社会人になってから専門学校などでデザインを学び、フラップに就職した。

神馬:僕はもともと真面目な学生でもなかったので、いわゆる、スーツ着てネクタイして、みたいなサラリーマンになることは将来像にはなかったんです。じゃあそうならないには、どうしたらいいか? という結論が今でもあるんです。もちろん、生きていく選択肢は沢山あるだろうけど、その中の消去法で今の選択があるんだと思ってます。

日本のクリエイティブの「力」を

そんなフラップは、これからどのような未来を目指していくのだろうか?

「Maison de Reefur」 ブランドサイトとアイテムのグラフィックを制作 http://www.maisondereefur.com/

「Maison de Reefur」
ブランドサイトとアイテムのグラフィックを制作
http://www.maisondereefur.com/

永井:震災後は特に「日本」のことを考えるようになりました。日本人が日本人である理由は何なのか。日本人はセンスも技術もポテンシャルもあるのに、なぜ世界の市場で負けてしまうのか。やはりこのまま負けっぱなしでは悔しいという想いがあるので、海外で勝負するような仕事がしたいです。すでに具体的に動き出していて、ロンドンやニューヨークの媒体と組み、日本のデザインリソースを提供していくイメージで進めています。

もともと永井さんは日本の良き所は吸収しつつも、いわゆる日本人っぽいことはやめようと思っていたという。だからこそ日本だけに留まる会社にはしたくないし、もっと自分たちの得意なところを増やしていきたいとも話す。

永井:ニューヨークの美容室に行っても日本人のほうが器用だし、技術があるなと思うことが多々あります。でも、彼らはクリエイティブをカルチャーにまで昇華させ、カッコ良くみせていくブランディングが非常に上手い。そこが日本には出来ていないのかもしれない。だからこそ僕は、日本人の良さを押さえつつ、そういった海外の市場で勝負していきたいと思っていて、今も海外向けのプロジェクトを続けています。

日本のクリエイティブが世界を渡り歩くポテンシャルはまだまだある。しかしそれがまだまだ出来ていない状況だからこそ、永井さんはそこに仕事が生まれるのではないかと考える。今後の日本人、ひいては日本の企業として、仕事の軸を国内だけではなく、海外へ広げていくことは、重要な課題である。

共に戦う同志たちと共に

そして、「自由に生きる」「やりたい仕事をする」の理念が行き着く先として、フラップでは独立を推奨している。社内ではベテラン立場となる吉田さんも、ことあるごとに永井さんから、「いつかは独立を」とせっつかれているという。


永井:経営者として会社を大きくしていくというよりも、同じ理念や志を持った仲間が横に展開していくことに魅力を感じています。分社化みたいなイメージかな。野良犬同士が集まって偉くなって、偉い野良犬同士で助け合っていくみたいな(笑)。僕がやって来たことを、どんどんノウハウとして共有していきたいですね。

吉田:やはり、いずれ独立するとなると、仕事に取り組む姿勢も変わっていきます。経理など自分が苦手と思っている仕事にも、興味を持って学ぼうとしたり。永井自身が代表だから、僕にも同じことをやらせて、また違った形で仕事をしたいっていう感じですかね(笑)。

神馬:僕も今は考えていませんけど、ゆくゆくは海外で仕事をするなど、自分が求めることをもっとやってみたいとは思っています。

そんなフラップの働き方を見ていると、「自由であることで統制を失い、非効率的な組織になる」という常識的な組織運営の考え方は間違っているように思えてくる。言い方が悪いかもしれないが、常にそんな常識に合わせるのではなく、自分たちで常識をつくるとでもいうべきか。そんなスタンスが一貫して伝わってくる。

永井:僕一人の考えなんて、本当に小さくてたかが知れています。もちろんいままで自由であるが故に、失敗はたくさんしていますが、挫折はないんですよ。その人の生き方が、会社に依存せず、自分らしく生きていければいい。「生き方」=「自分の好きなこと」をする。単純だけど、それをこれからも突き詰めていきたいし、そのほうがずっと楽しい人生を送れると思っているんですよ。

まとめ

自由だからこそ責任が重いし、厳しい競争に晒されるのは言うまでもない。それでも、フラップらしくあるために、自由を守るために戦い続けているのだろう。取材中永井さんは「デザイナーは次を考える仕事だから」とも語った。ただ単純に目に見えることだけをデザインするのではなく、生き方もデザインする。そんなことを感じられる発言であった。会社の形として、フラップがやりとげたいこと。それは働く人が誰しも思うことを愚直に体現しているからこそ、私たち1人ひとりの「働き方」=「生き方」について、問いかけてくるのかもしれない。