「副操縦士」の社名に見る、これからのWEBディレクターが果たすべき役割とその価値とは
- 2016/10/31
- FEATURE
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- 取材・文:加藤将太
- 撮影:鈴木渉
依頼先が多様化しても目的は変わらない
以前、CINRA.JOBの特集記事に登場したコパイロツト。3年前の当時、さらに遡れば2005年の創業時から、WEBサイトやアプリケーションなどデジタル領域のマーケティングやプロモーションを軸に、いわゆるプロジェクトマネジメントに特化してきた。社内で制作チームを作らず、周囲のパートナーと協業してチームビルディングをしている。
依頼元はクリエイティブ面で課題を抱える企業や広告代理店が多かったが、近年では逆に、これまで発注先であった制作プロダクションから依頼を受ける機会も増えてきたのだという。依頼先が多様化することで何か変化はあったのだろうか。
堀田:今まで仕事をお願いしていた制作プロダクションから、逆にご依頼をいただく機会は確かに増えました。広告代理店がついている場合は、クライアントの様々な情報集積や、その他諸々のことを調整してくれるので、その点WEBディレクターとしてはとても助かります。しかし最近は制作プロダクションが直接クライアントとのコミュニケーションを取って対応するケースも出てきて、WEBディレクターの業務負荷が相当高くなってきました。そのために、制作プロダクションから依頼されるケースが増えたんでしょう。コパイロツトは、クライアントとのコミュニケーション部分を担って、WEBディレクターが制作側に集中できる状況をつくることを得意としています。時には、依頼元のWEBディレクターが直接クライアントとのコミュニケーションを取る場面で私たちがサポートをすることもあります。制作側の進行管理を円滑に進めることが目的なので、関わり方はさまざまですが、プロジェクトの推進やチームビルディングに関しては依頼元が多様化しても大事にしているところですね。
上流を見に行くことで、何が本質的な問題なのかを明らかにする
依頼内容をヒアリングしてWEBサイトを納品する。クライアントと制作チームの窓口としてその折衝を担当する職種を、いわゆるWEBディレクターという。プロジェクトを司るコパイロツトは、外部のWEBディレクター的なポジションに位置することもある。堀田さんはデジタル市場が発展してクライアントからの期待値が高まる今、WEBディレクターに求められるスキルの範囲が広がっていることを指摘する。
堀田:WEBディレクターに求められるのは、プレイヤー要素とマネジメント要素の両面からアプローチする視点だと思います。デザイナーやエンジニアと一緒に現場でプレイヤーとして進行管理をする。さらに、どのようにしたらプロジェクトを円滑に目的達成まで進められるのか、他のプロジェクトとの連携をどのように図るのか、プロジェクト終了後、どのように次に繋げていくのかなどを俯瞰して考え行動しています。
依頼内容に基づいた目の前の課題を解決できても、そこに潜んでいる根本的な課題に気づけないことも珍しくない。
高津:川からごみがたくさん流れてくるとしますよね。僕らはそれをひたすら拾い続けるのではなくて、そもそもごみが流れてくること自体に疑問を抱き、上流からごみを止める必要があります。舞い込んでくる課題を解決することの繰り返しでは疲弊する一方じゃないですか。流れてくるごみをいつまでも拾うだけでは、他のことができない。ある程度拾い終わったら、上流の様子を見に行って、そもそも何が起きているのかを把握しなければならないんです。
堀田:あるプロジェクトで、「なぜ、この情報はいつもこのタイミングに届くんだろう?」と疑問に思って、クライアントにその理由を聞いたことがあるんです。すると社内の定例ミーティングが火曜日に開かれていることがわかったんですね。クライアントが毎日のルーティンの中で気づかないことを、社外の人間だから客観的に見られるんじゃないかということで、僕はそこに出席することで状況を把握できると思いました。実際に出席してみると、なるほどとはじめて理解できることが多かったです。また、プロジェクトの課題の発見や解決のための取り組みを早く行うために、クライアント先に席を借りて業務を行うこともあります。担当者と同じ場所で時間を過ごすことで内部の体制や進め方、人間関係が見えてきて、何を解決したらよいのかがクリアになりました。クライアント側のチーム体制の構築を提案したこともあり、長期の関係構築を意識するようになりましたね。
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- 競合とのコンペに参加する側から、主催する側に変わることもある
競合とのコンペに参加する側から、主催する側に変わることもある
高津:暗黙の了解などを知らない第三者が立ち入ることで、課題の根本が見えてくることもあるので、どこかで壁にぶち当たるなら、早めに手を打っておいた方がいいんですよ。他にも、プロジェクトに変化をもたらすという意味で、定例ミーティングの議事録をクライアントの担当者も含めた持ち回り制にしました。すると参加者全員に緊張感が生まれて、ミーティングの質が上がったんです。
単にクライアントに求められた成果物を納めるだけでなく、根本的な事業課題を把握し、納品物のクオリティだけでなくプロセスの改善を共に考える。コパイロツトのようなポジションになると、それはまさに、社名が意味する「副操縦士」というクライアントの事業パートナーのような関係性になる。お互いの間に共通認識が生まれると、必然的にお互いの距離は縮まり、依頼内容も変わってくるのだろう。
堀田:一番驚いたのはRFP(提案依頼書)を作ってほしいという依頼ですね。クライアントはグローバルにも展開する一部上場企業。最初は数千ページにもわたるブランドサイトのフルリニューアルのコンペの参加という形でご相談をいただきました。数回ヒアリングした上で、「普段はこの規模のコンペを開くときにRFPを作るんですよ」とアドバイスしたんです。そしたら、「じゃあ作ってください」と依頼をいただいて、思いもしない展開に発展してしまいました。RFPをクライアントと一緒に作るということは、いわばコンペを「主催する側」の立場になるということ。クライアントが達成したい目標を何度もヒアリングして、分解しては整理しながら一緒に考えてRFPを完成させました。また、RFP完成後は実際にコンペに立ち会って、発注先が決まった後も制作の打ち合わせに参加。制作プロダクションの提案がRFPの内容と乖離していないかをチェックする立場でした。WEBサイトを作るよりも大変でしたね(笑)。
このようにコパイロツトでは、当初依頼された担当範囲が途中で変わることも少なくない。しかしプロジェクトの規模にかかわらず、既に進行している別プロジェクトとのバランスを取っていくのは難しいはず。コパイロツト全体の動きに影響はないのだろうか。
堀田:担うべき役割が最終的に変わったとしても、それは日常茶飯事というか。むしろ僕は飽き性なので、変わったほうが嬉しいです(笑)。別プロジェクトへの影響という意味では、僕は全てのプロジェクトに自分自身を巻き込んでいくというよりは、それぞれに最適な人材をアサインしたり、プロジェクト内の別のメンバーの役割を最適に調整したりしています。「僕よりもこの人がやった方がベストです」と、平気で提案しちゃいます(笑)。
高津:社内ではそれを“アジャイル的な進め方”と言っています。ゴールは変わり得るものだし、最初からゴールが見えないからやらないというよりは、まずはやってみて、わからないことは検証していこうというスタンスですね。
ケーススタディ:Bリーグのプロジェクトに見るコパイロツトの役割
今秋スタートして開幕戦が話題になったプロバスケットボール『Bリーグ』。コパイロツトは、WEBサイトの制作に関わっていた。その役割はプロジェクト参加当初と現在では大きく変わったというが、一体どんな入口から、どんな出口に変化したのか。実際のプロセスを聞きながら、コパイロツトらしさを探ってみよう。
堀田:最初は、BリーグのWEBサイトリニューアルにおける全体の制作ディレクションという依頼でした。リーグが新しくなることもあり、Bリーグ全体のWEBサイトとリーグに所属する36チームのサイト全てが対象だったので、結構な規模感だったんです。また比較的新しいシステムで作られたサイトで、なおかつ納品までの時間も限られている。しかしバスケは世界的に競技人口がかなり多いスポーツ。日本でも新しいリーグが立ち上がり、これからもっと世界に通用する選手を輩出していくことを目指していく時期に突入します。それは子どもたちの新たな夢を作っていくきっかけになるので、とても意味がある取り組みだと感じました。
Bリーグの開幕戦は上述したように大きな話題を巻き起こした。依頼を受けた時点ではどこまで話題になるかは未知数。想像を遥かに上回った盛り上がりの余波は、さっそくWEBサイトに迫るほどのものだった。
堀田:WEBサイトをリニューアルした7月は新リーグができるという発表が中心だったので、アクセス数もユーザーも想定できるものでした。ただ、9月の開幕戦後の反応には正直焦りました。大至急、当初のKPIを見直したり、計画していたことの見直しをクライアント担当者と一緒に行いました。
高津:Bリーグのプロジェクトは堀田が主体となって担当しています。ただ、一人で業務を担当しているとどうしても客観的に見れないところや業務で得た知見を汎用的に展開することが難しいと考えたんですね。そこでプロジェクトを進めながら、堀田と毎週決まった時間に一週間の業務を棚卸しながら、業務の改善や汎用的に使える知見がないかの振り返りを行っていました。
堀田:おかげで一人で思考が凝り固まることもなくなりましたし、開幕以降も継続的にクライアント担当者と一緒にサイトの改善やアクセス解析を行ったり、担当者がこういうことをしたいという想いを聞きながら実現できる方法を考えて、形にしています。
クライアントと同じ目線を意識して伴走する
制作物の納品にとどまらず、クライアントの事業をより良い方向に導くコパイロツト。言い換えれば、彼らはプロジェクトの最適化を通じて、クライアントの事業課題を解決しているわけだが、一つひとつのプロジェクトで培ったナレッジはコパイロツト全体の仕事の最適化にも繋がっている。
高津:Bリーグの案件でもそうでしたが、あるプロジェクトで起きた事象や原因の対応策は、もしかしたら他のプロジェクトでも使えるんじゃないか。そのテンプレート自体は使えるんじゃないか。そういった気づきを抽象化して汎用展開することで、世の中のプロジェクトを全体的に良くしていきたいと社内で言っています。プロジェクトのゴールとして制作物は納品しますが、同時にプロジェクトのプロセスを最適化していくのがコパイロツトなんです。そのためには、クライアントと同じ目線でいることを心がけています。それは言い換えると、「僕らはなぜコパイロツトなのか?」ということにこだわれるかということなんですね。
堀田:副操縦士を意味する社名のとおり、プロジェクトをクライアントと一緒に進めていくなかで、先々を見据えたプロセスを提案していきます。必要であると判断すれば、クライアントに言いたいことをしっかりと伝える。それがチームにいい空気の流れをもたらしてくれると思いますし。クライアントによってはどうしたら良いのかと答えをすぐに求めてくることもあります。また、ご依頼いただいた内容に対してコパイロツトが関わるよりも、クライアントの社内に人材を採用して配置した方がよいことだってある。僕らはそれが最適解ならそれでも良いと思っています。一番の理想は、クライアントが「それは本当にいいのかな」と答えを自分自身で考えて行動してくれること。だから、僕らは必死になってクライアントに伴走するんです。
Profile
株式会社コパイロツトは広義のプロジェクトマネジメント(チーム作り、プロセスアドバイス、ナレッジマネジメントなども含む)に特化した会社です。
「Knowledge Based Project Management」を今年のタグラインとして掲げ、常に最適なチームで、ナレッジマネジメントを活用しながらプロジェクトを成功に導きます。プロジェクトオーナーと限りなく近い外部パートナーとして、伴走しながら最適なプロセスを提供できる会社を目指しています。
WEBサイト最適化をはじめとしたデジタルマーケティング・新規事業開発において、プロジェクトオーナーの副操縦士:コパイロットとなっていきます。