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クリエイターが考える「未来の仕事場」。コワーク界の先人co-labに聞く

春蒔プロジェクト株式会社

2017年にオープンした「渋谷キャスト」は、クリエイターが集い、イノベーションを生み出すクリエイティブな複合施設。オフィス、カフェ、住宅、ショップなどが集積するここは、先端的な文化の生まれる渋谷を象徴する場所として注目されている。そしてその中核の一つが、クリエイター専用のコワーキングスペース「co-lab」だ。世界的にも先駆けて2003年より通算10か所でコワーキングスペースを展開してきた彼ら。その背景には、ただ場所を貸し出す「不動産業」とは一線を画した哲学が込められている。他に類を見ない同社の取り組みと、多くのクリエイターたちに場を提供してきた彼らが考える「未来の仕事場」について聞いた。

取材・文:萩原雄太 撮影:相良博昭(2018/12/05)

co-labによる「いま」の集大成。「co-lab渋谷キャスト」に込めた思いとは?

—「渋谷キャスト」は、これからの渋谷を象徴する施設として注目を集め、2018年度のグッドデザイン賞も受賞しています。現在、co-lab渋谷キャストは、どのような方に活用されているのでしょうか?

栗原:デザイン、映像、建築をはじめとするクリエイターの他、AI、ロボット、クラウドなどを扱うIT系の会員が多いことに特徴があります。

私は美術大学の出身で、働きながら作品制作をしていたこともあるのですが、こういう環境に身を置いているとクリエイティビティーを触発されることも多いですね。

クリエイターのための複合施設「渋谷キャスト」内にある、co-lab渋谷キャスト

さまざまな職種のクリエイターの仕事場として使われている

佐藤:co-lab二子玉川のように職住近接している拠点の場合、自宅から徒歩で通えるサテライトオフィスとして使われるケースが多いのですが、渋谷は、さまざまなビジネスが集積し、立地が良いこともあって本社としての利用が多いです。

co-labは、クリエイター専用と謳っていますが、いわゆる絵が描けるような狭義のクリエイターだけでなく、クリエイティブワーカーと呼んでいる研究職やビジネスクリエイターのような広義のクリエイターもいらっしゃいます。

クリエイティブワーカーは、その発想の仕方や、目指すべき未来に向けて新しいものをつくっていく部分にクリエイティブな思考方法を持っています。狭義と広義のクリエイターがバランスよく同居している空間にすることで、新たな視座や能力が加わり、多様性からまた新たな発想が生み出されていますね。

左から、栗原那津子さん、田中陽明さん、佐藤千秋さん

—co-lab渋谷キャストは、クリエイティブ産業の発展支援をテーマとした「渋谷キャスト」の中核施設の一つとして位置づけられています。どのような経緯からco-lab渋谷キャストは立ち上げられたのでしょうか?

田中:そもそものきっかけは、東急電鉄さんをはじめとした複数企業との協働で、この敷地を東京都から借りるコンペに参加したことでした。

コンペ用の資料作成をco-labクリエイターにサポートしてもらい、受注後は、渋谷キャスト全体の施設コンセプトの提案や施設デザインディレクションを春蒔プロジェクトで担当しました。

開発計画を策定する段階から、co-labが入居することになっており、運営フェーズでの施設ブランディングに何らかのかたちで関わることになっていたんです。

普通、大規模開発の場合、計画策定の段階から、運営会社を決めることはあまりありません。しかし、コンセプトづくりの段階から運営まで一気通貫して関わることによって、施設の魅力を最大限高めていくアイデアが生み出せたのではないかと思っています。

渋谷キャストの場合、コワーキングスペースにクリエイターが集まり次々とアウトプットを生み出していくことで、活動が外に発信され、渋谷の魅力を高めていくというサイクルを生み出すことに成功しています。

渋谷キャスト外観

—計画段階から関わっているからこそ、ハードからソフトまでブレない施設ができあがったんですね。

田中:このように開発から運営までを一気に手がけることは、じつは約25年前、新卒で大林組に入社した頃から理想として考えていたものでした。

当時、設計部に在籍し、大規模な都市開発を行っていたのですが、そこではハードをデザインすることしかできず、完成した後の運営にはタッチできなかった。

そこで、会社を辞め、慶應義塾大学(SFC)の大学院でコミュニケーションアートを学び、卒業後にco-labを立ち上げたんです。約25年を経て、ようやく開発からデザイン、運営までを手がける理想的な仕事ができるようになりましたね。

不動産ディベロッパーが、「アート」や「信念」という新たな価値を求めはじめている

—これまで、co-labとして10か所あまり(閉鎖した施設も含む)のコワーキングスペースを手がけています。田中さんがコワーキングスペースを構想するにあたり、特に影響を受けた空間はどのようなものでしょうか?

田中:いろいろありますが、SFCのときに過ごした大学院棟のイメージが強いですね。槇文彦さんが設計した建物なのですが、そこには研究室の境がなく、広々とした空間が机で区切られている程度。

だから、政治系の研究室のすぐ隣で人工知能の話をしていたり、さらに隣ではアート系の学生が議論していたり……と、異なった分野の人々によるさまざまな声が飛び交っていたんです。

インターネットでは、自ら情報を検索するために、興味のある分野の情報しか得られません。しかし、そのような空間に身を置くと、まったく別のジャンルの情報が入ってきたり、まったく関わりのなかった人々との会話からアイデアが生まれることもありました。

大学を卒業後、SFCのような雰囲気の場所が世の中にないことに気づき、森ビルの文化事業部さまに「そんな場所をつくりたい」とプレゼンをしたところ、六本木の空いているビルを貸してもらうことになった。ここから、co-labの歴史がはじまったんです。

co-lab代官山の様子

—田中さんの発想の根幹にあるのは、大学院のオープンなスペースだったんですね。

田中:不動産賃貸業をしたいと考えていたわけではなく、友人や親しいクリエイターを集め、コラボレーション型で仕事をしていきたいというのが、co-labを立ち上げたいちばんのモチベーションです。当時は、まだコワーキングスペースなんていう言葉もない時代でしたね。

—設立から15年を経て、コワーキングスペースという文化はどのように変わっていったのでしょうか?

佐藤:私が美大生の頃に、友達から教えてもらって知ったco-labは「大人のクリエイターが集う秘密基地のような場所」というイメージで、知る人ぞ知る憧れの存在でした。

コワーキングスペース元年といわれた2010年ごろから、徐々にコワーキングスペースが一般化し、言葉自体の認知度も高くなりました。

その頃、われわれと事務機メーカーのコクヨさまと共同で「KREI / co-lab西麻布」を設立し、コクヨグループのインハウスクリエイターとco-labメンバーが協働する場所をつくりました。ついに、インディペンデントなクリエイターだけでなく、大企業もコワーキングスペースから生まれるイノベーションに注目しはじめたんです。

co-lab二子玉川の様子

—そんな時代を経て、コワーキングスペースを活用する新たな働き方が一般的になっていったんですね。

田中:この15年を振り返ると、常に新しい働き方の実験をしてきたように感じます。語弊を恐れずに言えば、そこには、ビジネスとしての側面だけでなく、社会実験的なアートという側面もあるんです。

co-labは、アートとしてのコミュニティーづくりと、建築としての空間づくりの両方を手がけているプロジェクトだと言えるかもしれません。空間を用意し、ファシリテーターを配置することによって、どのような場がつくられ、どのようなアイデアが生まれてくるのか? ということに興味があるんです。

そこに至ったのは、ぼく自身、アーティストとして活動をしていた経験があったことが大きいと思います。アートの本質は、自分の「信条」を探し出し、それによって共感を得ることであり、資本主義社会とは少し外れた軸にあるもの。じつは、いまの大規模開発では、こういった「アート」という価値観が求められるようになりつつあるんです。

渋谷キャスト外観。ガーデンは、訪日外国人などの観光客やワーカー、学生、地域の方々も訪れる、賑わいの場となっている

—都市計画に「アート」が求められているのですか?

田中:これまでの都市開発では、計画の「信条」となるコンセプトがないままに、何百億円もの資本が投下されて開発が進められることがほとんどでした。ビルのネーミングを決める際も、広告代理店が入り、広告としてのネーミングをしていたんです。

そんな巨大建築ばかりが増えてしまった状況に違和感を覚え、「建築にもっと魂を込めたい」「生きた建築をつくりたい」と長年考えてきたのですが、そこに共感していただけるディベロッパーが増えてきたのだと思います。

渋谷キャストは、「創造性を誘発する空間」という信条に基づいて生まれた施設です。この成功例を見て、多くのディベロッパーが「信条」の重要性に気づかれて、各地から話をいただくことも増えています。

ぼくらの仕事は、「信条」を軸にしながら、これに共感してくれる人と一緒に「アート作品」をつくるようなものですね。現代社会において意義のある活動だと感じています。

デザイン思考がきっかけになってデザイナーの存在や思考方法がビジネスの世界に浸透していったように、信条のようなものを表現するアートの意義が建築や空間を通して、多くの人に知られていけばいいなと思っています。

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クリエイター同士だからこそわかる、「ちょっと散らかった仕事場」がベスト

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