Column 連載

その仕事、やめる?やめない?

「仕事のやめどき」をどう掴む? 編プロ→国家公務員→企画会社の会社員に聞く

大学卒業後に新卒で就職し、定年まで勤め上げるーー。かつては当たり前であったそうした働き方も、すでに「絶対」ではなくなった。働き方や価値観が変わり、好きなタイミングでやりたい仕事を選べるようになった。しかし、そうした「選択の自由」があるからこそ、「好きなことを仕事にすべきか否か」で悩む人も少なくないのではないだろうか。そこで、本連載では「その仕事、やめる?やめない?」と題し、多様な人物の「選択」をうかがうことにした。第1回目は、企画会社でプロジェクトマネージャーを勤める廣田沙羅さん。編プロや国家公務員を経て、現職に行き着いた彼女の決断力の秘訣とは?

プロフィール

廣田沙羅

大学卒業後、女性ファッション誌やカルチャー誌を担当する編集プロダクションへ入社。ファッション誌の編集者として経験を積んだあと、30代のライフプランを考えるため退職を決意。経済産業省にて国家公務員の非常勤職員として働いたのち、現職にたどり着く。

取材・文・撮影:辻本力 編集:吉田真也(CINRA)(2019/7/2)

編プロ、国家公務員、企画会社……。直感に従って渡り歩いてきた、ちょっと特殊な仕事遍歴

今回お話をうかがった廣田さん(29歳)は、クライアントに応じた企画やコンサルタント事業を行っているTK-LAB(ティーケーラボ)に勤めている。同社は、広告企画や企業ブランディングなど幅広いクリエイティブワークを手がけるPOOL.INCの代表 小西利行氏が設立した会社だ。入社して8か月目の廣田さんは、プロジェクトマネージャーを担当し、幅広い業務を行っている。そんな彼女の職歴はじつにユニークだ。

大学卒業後、編集プロダクションでファッション誌の編集(24歳から28歳まで)

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経済産業省で事務アルバイト(28歳から29歳まで)

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企画会社のプロジェクトマネージャー(29歳から現在)

一見すると「ん、なんで?」と訊きたくなるような、やや脈絡のない連なりに見える(失礼!)。

廣田:小・中学生のときからファッション誌が大好きで、お気に入りの画像を何千枚もパソコンのなかにコレクションしていました。雑誌に関わるさまざな人たちの仕事を束ね、1冊のかたちにまとめ上げる役割に魅力を感じ、編集者を志望しました。

新卒で大手出版社を目指したのですが、なかなか内定をもらえず……。在学中にファッション誌を扱う編プロにアルバイトとして入り、卒業と同時にそのまま就職しました。

第一志望ではなかったものの、憧れの仕事に就いた廣田さん。担当することになったのは、30代から40代がメイン読者層の女性ファッション誌だった。「ハイブランドばかりを扱う雑誌だったので、良質なものを見抜く力が身につきました」と当時を振り返る。

その編プロは、少数精鋭のスタイル。企画はもちろん、撮影の立ち会い、原稿執筆まであらゆることをこなした。ときには担当外の仕事をカバーすることも。やりがいは感じていたものの、忙殺される日々に疲れ、次第に「このままでいいのだろうか」という気持ちを抱くようになっていった社会人2年目。マンネリを感じ始めたのもこの頃だったという。

廣田:その雑誌は世界観が明確に決まっていたので、スタイリストさんもカメラマンさんも常連メンバーで固定されていました。私が担当できるのはその一誌だけだったこともあり、同じ世界観だけでなく、異なるテイストや別ジャンルの世界にも触れてみたいと思うようになりました。

また、ご一緒するのは年上の大御所ばかりだったので、同じくらいの歳の人たちと仕事をしてみたいという気持ちも芽生えてきました。たくさんのことを学ばせていただきましたが、徐々に「やめる」という選択肢が頭に浮かぶようになってきて。仕事を続けるには、刺激や新鮮さが重要です。それが日々のモチベーションにもつながることに気づきました。

「とりあえず」では働けない。異業種に飛び込むために必要なこと

しかし、「とりあえず3年やってみる」と決めて仕事を続けた廣田さん。3年勤めた段階で続けるかやめるかを考えた結果、「まだ一人前じゃない」と思い至り、もう少しだけ続けることを決意。

そして4年経ったとき、「この会社で学べることは学べた」と思えた彼女は、仕事をやめる。紙媒体以外での編集の仕事に興味が出てきたことも、その判断を後押しした。次の仕事は未定だったが、とくに不安は感じなかったという。

廣田:ひとまず千葉にある実家に帰るつもりだったので、不安はありませんでした。燃え尽きていたので、新しい仕事を探す気力もありませんでしたしね(笑)。

そもそも私は、好きなことしかできないタイプ。「とりあえず」が向いていない。それに、軽い気持ちで転職して半年で辞めるのも会社に失礼じゃないですか。そんな思いもあって、自分の腹が決まるまで、正社員として働くのは待つことにしました。

仕事をやめて2か月。「正社員として働くなら、自己成長できる環境に身を置きたい」ーーそう考えていた廣田さんは、次の仕事が見つかるまで、一旦アルバイトを挟むことを決める。バイトなら、期間限定で働くのもアリかも、と思ったからだ。

廣田:いろいろな仕事を経験をすることは、「次」を考えるうえでも役に立つんじゃないかと思って。で、「通勤は都内、残業がなく、福利厚生がしっかりしていて、交通費全額支給……」ーー求人サイトに条件を打ち込んだ結果出てきたのが、経産省の非常勤の仕事でした。どうせなら、ファッション誌の仕事では絶対に出会えない人たちと仕事をしたいと思っていたこともあり、試しに応募してみたんです。そしたら、採用していただけました。

普段触れることのない世界を知ることで、また新たな「やりたいこと」に出会える可能性もある。しかし、「世界が広がる」というメリットがあるとはいえ、完全なる異業種に行くことへの不安はなかったのだろうか。

廣田:これが意外となくて(笑)。異業種であることは間違いありませんが、仕事内容は事務職だったので、電話をとる、出張の手続きする、そのとき頼まれたことに対応する……みたいな感じ。それって編集の仕事をしていればだいたいできることですからね。

「異業種」と聞くとハードルが高いと感じますが、やっていることは意外と似ていたりもします。「新しい世界」に飛び込むのは勇気がいる。でも、思い切って飛び込んでしまえばこれまでの経験が役に立って、意外とどうにかなることも少なくないと思うんです。

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「偶然」の捉え方で人生は変わる。現職に出会えた運命の出来事

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