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プロジェクトの成功を影で支える「光」

「28歳の若手映像プロデューサー」なんて聞くと、いかにも業界人ぽいイメージを持つものだが、この度、ご登場いただく加島貴彦さんから漂う空気は時に穏やかであり、またある時は人懐こい。一般的に映像業界では”花形”といわれるのがディレクターだが、その仕事を支えているのは、まぎれも無く、プロデューサーであり、プロダクションマネージャーであったりする。「元々制作プロダクションというところがなにをやっているのかあまりわからなかった」というように、加島さんは未経験から、壇を踏んで責任を全うするプロデューサーとなった。世の中の人々を”アッ”といわせる作品の裏には、センスや技術だけではない所で、活躍する人が多くいるのが事実。そんな、ピクスのプロデューサー、加島さんにお話を伺った。
  • インタビュー・テキスト:森オウジ
  • 撮影:すがわらよしみ

Profile

加島貴彦

1984年生まれ。音響技術専門学校(現:音響芸術専門学校)卒業後、映画録音部での録音助手を経て、2005年株式会社ピクス入社。プロダクションマネージャー職などを経て、現職。Perfume MV「Spring of Life」、AXE DRY「HOT ANGLE」、BACARDI PR EVENT 「THE PARTY」「BATNIGHT」、SONY BRAVIA TV-CM「スマート高画質」篇、WEB動画「スマタツ」等を手がける。

結局は「段取り」でしかない

―映像のプロデューサーと聞くと、いかにも大御所なイメージがありますが…。

加島 貴彦

加島:たしかに肩書きだけですと、派手なイメージがあるかもしれないですね(笑)。ただしプロデューサーという肩書きもいろんな職種に存在しますし、映像業界に限って言っても人によって様々なので、一概には「こういう仕事だ」ということは言えません。僕自身は案外裏方の仕事なんですよ。

—なるほど。では、実際はどのようなお仕事なのでしょうか?

加島:いろんなプロデューサーがいますので、これはあくまで僕の場合ですが、仕事をとる営業であり、プロジェクトの責任者というのがメインかと思います。もちろん企画の段階からアイディアを求められることもありますが、基本的には、代理店さんやレコード会社さんなど映像コンテンツを企画する方々から仕事をいただいてくるというのが主となります。それに加えてクオリティー管理や予算管理等があります。いわゆるディレクターが行う“映像監督業”的なことはやらないのですが、クライアントや監督が目指すものにどれだけ答えられるか、ということを仕事としています。また、兼任する場合もありますが、アーティスト事務所やスタッフにアポイントをとったり、スケジュール管理や制作の進行管理を行うプロダクションマネージャーという役職があります。そのプロダクションマネージャーの管理もしながら、さらにいくつもの案件を管理していきます。

―実際の現場ではどんなことをしているんですか?

加島:現場では、いかようにでも予期せぬ事が起こりますので、常に臨機応変な対応が重要になります。そして、限られた予算と時間の中でクオリティーを最大限にまで上げないといけない。そんな中で、例えば空調の調節からちょっと美味しいお弁当をお出しするとかの気配りだけでも、実は全然雰囲気が変わってくる。なので、現場ではみんなが気持ちよく進められるようにするのも重要な仕事だったりします。結果的にその現場の空気感が作品に影響を及ぼすこともありますからね。

―そうなんですね。では、案件を進めていくにあたって気にかけていることは何でしょうか?

加島:事前準備と各スタッフとの密なコミュニケーション。どの仕事でも言えることだと思いますが、これはもっとも大切なことだと思います。簡単に言ってしまうと結局は「段取り」でしかないのかもしれませんが、現場ごとに、人数も変われば、撮影する場所も、用意するモノもすべて変わる。それをいかにゴールに向かって滞り無く進められるかシュミレーションすることが、仕事の中で一番大切だと思っています。

プレッシャーの中から生まれる作品

―まさに、縁の下の力持ちですね。では、お仕事をされていて快感を感じる時ってどんな時でしょうか?

加島:事前準備どおりに段取りが進んで、みんなが気持ちよく仕事を進め、終われることですね。これが一番嬉しい。この達成感は関わる人が多ければ多いほどありますね。後は、僕は今でもプロダクションマネージャーとして兼任をして動く場合もありますけど、プロデューサーになれて良かったと思うのは、企画の段階から案件に携われる事でしょうか。

―最近のお仕事でいいますと?

加島 貴彦

加島:『バカルディ― モヒート』『バカルディ― キューバリブレ』が最近発売されましたが、そのローンチイベントでモデルの菜々緒さんを起用したフラッシュモブ(※インターネットを通じて広く呼びかけられた群集が公共の場に終結し、あらかじめ申し合わせた行動を取る即興の集会)を六本木ヒルズアリーナでやりました。ダンサーの数は200名。振り付けはPerfumeを手がけてらっしゃるMIKIKOさんにお願いしました。僕がもともとミュージカルが好きだったというのも一部企画の発端にありまして。

—ミュージカルといいますと?

加島:実は会場では、200人のダンサーが警備員や一般観客にまぎれて配置されていたんです。それまで観客だと思われていたひとたちが踊りだすことで会場に独特の一体感が出るんです。ここがミュージカルっぽい。そしてこのフラッシュモブは一発撮りの撮影でもあったのですが、去年の年末から4ヶ月間以上準備を進めてきたものがいい形で実現できて、ほんと嬉しかったですね。プロデューサーは常に責任がついて回りますし、プレッシャーもありますが、こうして企画段階から参加させていただけることは何よりの楽しさであり、喜びですね。

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辞めたいと思った事は何度もあった

辞めたいと思った事は何度もあった

—では、加島さんを映像の世界に導いたきっかけは何だったのでしょうか?

加島:そうですね…元々映画や音楽は好きで、漠然とこういった業界を夢見ていたような気はするのですが、きっかけは、AAA(ACCESS ALL AREAS)のパスが欲しかったんですよ(笑)。フェスとかでAAAのパスをつけてると、バックステージはもちろん、どこへでも入れる、あのパスです。高校生のときに、初めてフジロックに行ったんですが、そのときにAAAのパスをつけて、何やってるのか分からないけど楽しそうなお兄さん達を見て「いいなぁ」と思ったんですよね。それで…

—この世界に入ったと。

加島:結果的にそうなってしまいました(笑)。

—(笑)。きっかけは人それぞれですよね。では、なぜ映像だったのでしょうか?

加島 貴彦

加島:もともとはレコーディングエンジニアを目指して、音響の専門学校にいったのですが、あいにく就活がうまくいかず、卒業後は映画の録音部の仕事に就きました。よくテレビとかで出てくる、マイク持ちの人がいますよね?あの仕事です。これが相当大変で、毎日ほぼ家にも帰れず、超薄給だったために、1年目で….

—逃げ出してしまったと(笑)。

加島:はい(笑)。その後、友達と飲食店をはじめることになって、自分たちでお店を作って、そこで働いていたんですけど、自分が料理人になるのは何か違うな、って辞めたんです。それで、今後どうしようかなとなったタイミングで、以前録音部だった時に「制作部って作品に深く携われそうだから面白そうだな」って印象を持ったことを思い出したんですよね。それで、具体的に何をやるかはわからないけど、今度は制作部で働いてみたいなと思って。それこそ、「映像 制作 求人」で検索して一番上の方にあったのが、今の会社だった。それが、映像業界に入ったきっかけといえばきっかけですね。

—そんな経緯があったんですね。同じ現場とはいえ、働き方はけっこう変わってくるかと思いますが、実際に入られてどうでしたか?

加島:最初の仕事は弁当の注文からでした。もともと制作部が何の仕事をするのかがあまり分かっていなかったので、「なんで僕が弁当を注文するんだろう?」って所から入りましたね(笑)。それから、現場の雑用から何から何までをプロダクションマネージャーとしてひたすらこなしていきました。もちろん、辞めよう思った事は何度もあったし、泣きそうになったことだってありました。それを6年続けてその甲斐あってか、去年からアシスタントプロデューサーという役職をいただいて、自分で仕事を受けていいということになりました。すると、ありがたい話で今までお付き合いのあった方からお仕事をいただけるようになって、今年からプロデューサーになりました。プロデューサーとしてはまだまだ新米です。

資格も試験もないし、模範解答は存在しない

—段階を踏んで、成長していったのですね。

加島:制作部っていうのは、とにかく何でもやらないといけないんです。現場で日常を再現するなら、日常を再現するために家を借りたり家具をいれたりと、ありとあらゆるものを用意する。衣装もふくめ、キッチンだったら料理も用意しないといけないとか、壁を色づけたしたり、スーパーカーを発注するとか、今度は警察や役所からの許可周りとかをとったりなど、普段だったらなかなかやらない事も何でもやらなきゃいけない。そういう意味で、僕がやってきた事は、生活の知恵にもなっている気がしますし、毎日が勉強だなと思っています。頭も使うけど、体で覚えるといいますか。

—そうなんですね。今プロデューサーになって感じた事ってなんですか?

加島 貴彦

加島:やっぱり現場や状況によってすべてが変わるのが、この仕事だと思っています。今はまだまだ手探りですし、プロデューサーである先輩を見ていても、ひとりひとり仕事のとり方も違えば現場での動きも全然違います。見習うべきことは、多くありますが、やり方としてはっきりとした正解がないと思うんですね。この仕事には資格も試験もありませんし、プロデューサーとして何が必要かってなると、コミュニケーションや人との関わりを踏まえ、総合的な人間力はとても大切だなって思ってます。

—では最後の質問になりますが、そんなプロデューサー・加島さんの今後の目標をお聞かせください。

加島:まだ何の予定も構想もありませんが、いつかは映画に何らかの形で関わってみたいと思っています。映画の録音部にいたときは現場だけでしたけど、2、3ヶ月かけて同じチームでひとつの作品を撮影していくので、その出来上ったものの感動が凄く大きかった。それを企画段階から公開まで携われたら、その感動も凄く大きいと思うんですよね。後はやっぱり、普段見るCMやTV、街頭ビジョンなどに自分が関わった作品が流れているのを見た時は、本当に嬉しいんですよ。僕らは裏方ですが、出来上がったものが世に出るのを見た時の達成感はやはり大きいんです。そんな影響力を持ったものや、インタラクティブな映像など、今までの常識に捕われない新しい映像表現に挑戦していきたいなって思っています。

Favorite item

ゴシップガール

『ゴシップガール』はジョシュ・シュワルツ製作総指揮による、ニューヨーク・マンハッタンのアッパー・イーストサイドを舞台とした名門私立高校生のヤング・セレブの過激な日常を描いたTVドラマ。ほんとに面白くて、BOXセットは夜通しで見てしまうこともしばしばです。女子で言うところの「あんな恋してみたい」願望的な、NYセレブへの憧れで見ていますね(笑)。『ゴシップガール』は、男性目性と女性目線の両方が適度に織り交ぜられているので、男女どちらにもオススメできます。ちなみに僕の顔の好みはブレア派です。本当は『glee』を紹介したかったのですが、手元になかったので…(笑)。

Profile

株式会社ピクス

■「独創性と革新性」を常に心がけ、新しい感受性を持った映像を通し、人の心に「楽しい驚き」を提供します。

CM、MVをはじめ、商業施設や各種展示会におけるVR、AR、サイネージなどの最新技術を駆使した空間映像演出なども数多く手がけ、よりフレームレスな映像体験を発信しています。近年では自社IPの企画、開発にも取り組んでおり、2021年に放送されたテレビアニメ『オッドタクシー』は大きな話題を呼びました。

国内最大規模の映像バリューチェーンを持つIMAGICA GROUP(東証プライム市場上場)の一員です。

■特色
私たちピクスは2000年の創業時より、常に新しい映像、他とは異なる映像制作にチャレンジしてまいりました。おかげさまで現在その領域はエンターテイメント・コンテンツ全般に広がっております。今後も映像の持つ限りない可能性を追求し、求められる多様なニーズにお応えしていきたいと考えております。

弊社では「MV部」「CM部」のようなカテゴリごとの制作部門を設けず、ジャンルを超えた知見を活かしながら独自の視点を持って映像をプロデュースしています。社内には【P.I.C.S. TECH】【P.I.C.S. LIVE】といったジャンルに特化したテクニカルチームに加え、多彩な才能が揃うクリエイティブマネジメントチームがあり、制作部と連携しながら新しい表現を常に追求しています。

■社風
平均年齢35歳。20代の若手が半数近くを占めています。幅広い領域のクリエイティブを手がけるため、常に新しいことにアンテナを立て、自らで発信していける実行力のある方に活躍いただける環境です。2020年10月にテレワーク規定の運用を開始しました。

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