CINRA

一般企業からアートをわかりやすく紹介するインフルエンサーに。Aviが『耳で聴く美術館』で伝えたいこと

アートの情報や楽しみ方を動画で発信する『耳で聴く美術館』。ショート動画で1分以内に、わかりやすくをモットーに開催中の展覧会や全国の美術館、若手アーティスト、アート技法などを紹介するプロジェクトだ。

TikTokとYouTube、Instagramをメインに活動し、学生など25歳以下の世代を中心にTikTokで18.9万人、YouTubeで19.3万人のフォロワーを抱え、アート関係者の注目を集めている。

今回のインタビューでは『耳で聴く美術館』を運営するAviさんに、一般企業に就職した後に活動を始めたきっかけや、人前で緊張しやすかったというAviさんがショート動画で発信している理由、アートを初心者にもわかりやすく伝えるために動画づくりで意識していることなどを聞いた。
  • インタビュー・編集:生田綾
  • テキスト・撮影:廣田一馬

【本記事は、Podcast番組「聞くCINRA」の収録内容とその後のインタビューをもとに構成しています。番組視聴はこちらから。】

一般企業からアートを紹介するインフルエンサーに。『耳で聴く美術館』のプロジェクトを始めたきっかけとは?

─Aviさんはもともと一般企業で働かれていたとのことですが、どのような経緯で『耳で聴く美術館』のプロジェクトを始めるに至ったのでしょうか?

Avi:新卒で働いてた会社を辞めてからギャラリーや美術館に入っているお店などで働いていたのですが、コロナの時期に暇を持て余し、TikTokを見て何か自分でもできるんじゃないかなと思いまして、そこから始めてみたのがきっかけです。

@mimibi301 からくりを知った時、あなたはこの絵画がもっと好きになる。 #ベラスケス #美術 #芸術 #アート #耳で聴く美術館 ♬ オリジナル楽曲 – 耳で聴く美術館

─手応えを感じて、ショート動画に賭けてみようと思ったタイミングは、いつ訪れたんでしょうか?

Avi:数本目からこれはいけるんじゃないかなと思いました。本当に運が良かったです。自分で何かを調べて、それを人に伝えるのが好きだし、動画をつくることも好きだし、デザインを考えたりサムネのデザインを考えたりと、好きな要素が散りばめられていたのが続けられた理由だと思います。

─動画を使って世の中に発信することはもともと得意だったのでしょうか?

Avi:じつは、人の顔が見える場で話すことはすごく緊張します。就活で面接を受けたときは自己紹介で緊張しすぎて名前を噛んでしまいましたし、大学の頃の教育実習では学生の前で話すとめちゃくちゃ緊張しちゃって、「私、先生向いてないわ」って思いました。でも、スマホだったら何回でも撮り直しできるし、自分がどのように映るかも自分で調整できるので、それが合っていたのかもしれないですね。

─大学は美術系だったとお聞きしているのですが、どのようなことをされていたのでしょうか?

Avi:総合大学なんですが芸術系の学科がありまして、私は美術教育について学んでいました。

中学の頃に美術がすごく得意で先生がめっちゃ褒めてくれて、中学生の頃は褒められたら「自分が天才なんじゃないか」って勘違いを起こして(笑)。

─勘違いじゃないと思います!

Avi:高校を卒業するときは心理系とかを目指していたんですが、高校3年生の秋頃に「本当に自分がやりたいことってそっちなのかな?」と思って方向転換しました。

大学にいる人たちはすごく多様で、みんな思い思いの格好をして、それを否定する人もいません。教授の人たちも、例えば彫刻家をしながら教壇に立っている方もいらっしゃったり、音楽家の方もいらっしゃったり、ダンサーの方もいらっしゃったり、各々が表現をしながら教えてくれるので、「みんな同じじゃなくていいんだよ」ということをすごく強く感じさせられた4年間でした。

アートにまつわる仕事は、意外にたくさんある

─大学卒業後Aviさんは一般企業に就職されていますが、大学のころに見えていた選択肢といま見えている選択肢には違いがありますか?

Avi:せっかく美術について学んだので、それを活かして仕事をしたいと思ったんですが、そのときに私の中であった選択肢は、中学校や高校の美術の先生になることか、美術館や博物館に入ることでした。

ですが、美術の先生は教壇に立ったときに向いてないことがわかりましたし、美術館学芸員は人材が不足したタイミングでその美術館の専門分野を研究された方を採用する方式なので、毎年求人があるわけでもなく、私は一般の会社に就職しました。

いまの仕事で気づいたのは、アートと何かを掛け合わせた仕事をしている方たちが非常に多いことです。たとえばSNSのプラットフォームの中のアートの担当の方や、美術館の広報のお仕事、文章を書くのが得意ならライターさん、力に自信があって展覧会の搬入のお仕事をされている方たちもいらっしゃって、得意分野と美術を掛け合わせてお仕事をしているんだなというのを感じますね。

私のコンテンツを見ている方の中には学生の方たちもいます。「美術の大学に入ってその後どうしよう」という悩みを持つ方にひとつでも仕事や展示の選択肢を提案できたらという思いで、コンテンツをつくっている部分もありますね。

─逆に、好きなことを仕事にするしんどさはありますか?

Avi:しんどくないですね。しんどいこともあるんですけれど、これまで好きじゃないことをやっていたので、その苦しい時間を知っているからこそ、好きなことをやれるのは本当に幸せなんだなっていうのを感じて、いま仕事をさせてもらっています。

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