CINRA

第3回:「編集者は、どれだけ修羅場を経験できるか?いい加減な奴がいい」サイバーエージェント・尾田和実【前編】

しばらく時間が空いたこの連載。その間に恩納さんは株式会社AbemaTVに転職され、現在は同社が立ち上げたインターネットテレビ局『AbemaTV』を中心に動画に関するニュースを扱うWEBメディア『AbemaTIMES』の編集者に。

そして今回、2人目のゲストは尾田和実さん。尾田さんは、メディアジーンにてWEBメディア『GIZMODO』の3代目編集長を務め、その後サイバーエージェントに転職。同社の『エディトリアルアドスタジオ』の初代スタジオ長や、カルチャーメディア『SILLY』を立ち上げるなど、精力的にご活躍中です。

WEB編集に長年携わってきたお二人から、編集者はどんな人が向いているのか、採用面接時で見ている3か条など、いろいろと暴露していただきました。

    Profile

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    恩納力

    3度の飯より仕事が好き!仕事は断らないプロ社畜です。ブラック企業や様々なダーティー&ハードワークを経て、2016年4月から株式会社AbemaTVに入社。やっと試用期間が終わりました。好きな言葉は「最低でもランナーを進めろ」。好きなプロ野球選手は、ブライアント(近鉄)。

    恩納:「Ameba、尾田さん獲得へ!」プロ野球で例えるとロッテから中日にトレードされた落合級のインパクトでしたね。

    尾田:「オフィス見学に来ない?」って言われたの。で、行ったらさ、まだ最終返答してないのに「今度来る尾田さんです。」ってみんなに紹介されちゃったんだよ!

    恩納:外堀から埋める(笑)!Amebaで尾田さん何するの?ってかなりバズってましたよ。

    尾田:まあ、でも最初は勝手が違いすぎてね(笑)。中華料理の料理人だったんだけど、いきなりフランス料理のシェフになれって感じ。中華鍋とか無いからなんとかやって!みたいな(笑)。最初は戸惑ったけど、ようやく良い感じになってきたよ。

    恩納:SILLY(尾田さんが社内で立ち上げた新メディア)はお世辞抜きに面白いっすよ。よくあんな尖ったのブッこめたなと(笑)。SILLY TVもヤバいですからね。

    尾田:AbemaTIMESもいきなり自由にやってるじゃん。

    恩納:古川さん(古川政博氏:AbemaTIMES編集責任者)がいますからね。もう10年来の付き合いだし阿吽ですよ。古川さんが近藤勇で俺が土方歳三なんです。あと、そもそもAbemaTVが結構面白いんで記事化しやすいんですよ。

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    尾田:恩納さんがやってるって感じも出てるよ。特にヒップホップとか。

    恩納:AbemaTVに「フリースタイルダンジョン」あるし、なんと言っても我らが藤田社長(藤田 晋氏:サイバーエージェント代表取締役社長)がいらっしゃいますし(笑)。サイバーがヒップホップやらねえで誰がやる!と。

    俺がAbema入社したのは藤田社長への恩返しですから。

    俺的に藤田社長ってキングギドラとかBUDDHA BRANDと変わらないんですよ。「証言」(LAMPEYE)の8人目って噂ですよ。今度の『さんピンCAMP』も出るんじゃないですか?

    CINRA:違いますよ!IT業界の経営者ですよ!

    尾田:藤田さんってカッコいいよね。スタイルがある。ヒップホップって「B‐BOYっぽい服装してるから」「ケンカ強いぞ」とかそういうのじゃないんだよね。

    恩納:そうなんですよ!生き様、行動、リアルさなんですよ。Zeebra、K DUB SHINE、宇多丸が認めてる男ですからね。ハンパないですよ。

    (ヒップホップトークが続きカット)

    尾田:藤田さんが凄いなと思ったのは、俺がfacebookで「サイバーでこんな変なメディアを出せたのは自分でも快挙だし、誇りに思う」みたいな事を投稿したら、沢山いいね!ついてる中で藤田さんもいいね!してたんだよね。許容するっていうかさ。

    で、人づてで聞いた話なんだけど。「編集者って社員なんだけどフリーランスみたいなもんだから、とにかく自由にやってもらう」って言ってたらしい。

    やっぱり自分でもブログとか書いてるし、勘所とか分かってらっしゃる方だからセンスも良いよね。

    恩納:間違いない。細かいところもよく見てらっしゃいますよね。AbemaTIMESもサイトローンチ前に見てくださって、かなり具体的な指示頂きました。まあ俺は緊張しすぎて、ずっと床見てましたけど(笑)。でも、めちゃくちゃ気が楽になりました。

    尾田:凄いよね。よく見てる暇があるよね(笑)。ヒップホップとかもよく見てるしなあ。あとさ、売れてるミュージシャンってとんでもない暮らしして……とか見えるけど実際は小さいことを一つひとつ積み重ねてやってるんだよね。スタッフはパーソナルな人が多くて少人数で大きなものを動かしてる。Ameba来て、藤田さんを見て、ますますそうだなって思った。

    CINRA:尾田さんってどういうキャリアだったんですか?

    尾田:シンコーミュージック、インフォバーン、MTV、メディアジーン。

    恩納:平仮名が無いじゃないすか!

    尾田:シンコーは、本当は洋楽がやりたかったんだんけど、邦楽 / J-POP担当になって。「えー分かんねえなあ」とか思ってたら、いきなりGLAYとかVロック系の波がドカンときて。勢いがとにかく凄かった!

    恩納:名前も過去も心でさえもいらない 求め会う2つのカラダがある それだけでいいわけですね。

    尾田:ちょっと分かんないけど。で、いきなり「ロスに行ってYOSHIKIのインタビューやってきて」って言われて。

    恩納:電波少年じゃないですか!

    尾田:今だったらあり得ないよね(笑)。マネージャーの電話番号だけ渡されてさ、準備も何もできないし。でも、荷物も向こうで揃えればいいやぐらいで行って。……いい経験だったなあ。

    恩納:メチャクチャ嫌ですよ(笑)!

    CINRA:新卒で入られたんですか?倍率も高いですよね?

    尾田:そうだね。当時シンコー、ロキノン、ソニーマガジンは3大出版社って言われてて、100人受けて1人受かるかどうか。

    サイバーエージェント・尾田和実さん

    サイバーエージェント・尾田和実さん

    CINRA:凄い!面接とかはどういう感じなんですか?採用の担当は人事部みたいな人が来るんですか?

    尾田:すごい面白いやり方でさ。各編集部ごとにテーブルがあって、面接受ける人がそれぞれ座ってて、そこを編集部がぐるぐる回って話すの。例えば、『WOOFIN’』だと質問が「アナログレコード何枚持ってんの?」、『GIGS』だと「楽器経験あるの?」とか。

    周りはみんなリクルートスーツとかだったけど、俺は短パンにTシャツで行っちゃった。

    恩納:信頼できる男ですね。

    尾田:で、もう一人、Tシャツとジーパンでカメラぶら下げたヤツがいた。編集職募集なのに変な奴だなあって。でも残ったのは俺とそいつだけだったね。会長(故・草野 昌一氏:シンコーミュージック・エンタテイメント元会長)もフリーキーだから、会長って分からないぐらいだった。

    俺『CROSSBEAT』行きたかったんだよね。「なんでこの雑誌がいいの?」って聞かれた時に「広告が少なくて読みやすいから」って言っちゃったんだよね(笑)。

    恩納:パンクですね!

    尾田:バカだと思わない?広告入ってるって事は売れてて良い雑誌ってことじゃん?そんなことも分かってなかったから。そういうバカをとる器もあったんだよね(笑)。そういうところからキャリアが始まったのもラッキーだったね。

    恩納:誰かれTシャツ短パンで挑んだら死にますけどね(笑)。
    でも、編集職の募集をするとミーハーな動機で応募してくる人も多いんじゃないですか?

    尾田:うん。時々、編集の講師とかやると、「誰と会ったんですか?」「GLAYとかラルクはどうでしたか?」とかよく聞かれるんだけど、そういうスタンスの人は編集職は難しいと思う。

    あと、希望の配属じゃなくてもやった方が良い。逆に好きすぎるジャンルだとバランス取れなくなるし。いつか好きなことってできるから。

    恩納:間違いない。やりたいことなんて最初からできるわけないんですよ。新人やそこらの奴なんてストーム・トルーパーなんですよ。

    尾田:今の人ってすぐ辞めちゃうじゃん?電話番号だけ渡されてYOSHIKIに取材に行けとか言われてもやってみるしかないんだよ。

    恩納:それは辞めたくなりますけどね(笑)。

    尾田:でも、そういう場面っていっぱいあるじゃん?そういう修羅場みたいなのに対応できるかって大事じゃない?不慮の事態だらけじゃん。どんだけ反射神経あるか、が大事。だから編集者っていい加減なほうがいいんだよ!

    俺も恩納さんもそんなピチッとしたタイプじゃないじゃん?そういう俺たちみたいな人種でもできるってのが編集者の良いところでもあるよ。こういう人たちが生きていけるんだって仕事があっていいじゃない(笑)。

    恩納:クリティカルヒットですわ……。

    <後編に続く>

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