CINRA

そのSNS運用、本当に必要?ザッツ・オールライトのSNSプロモーション事業「PROFIT」が向き合う問い

株式会社ザッツ・オールライト

株式会社ザッツ・オールライト

企業やブランドがSNSアカウントを持つことは当たり前の時代。しかし、その目的がいまひとつ定まらず、おざなりに運用しているケースも少なくない。

単にフォロワー数やインプレッション数を増やすだけでなく、それを売上やブランディングといった「結果」につなげる。そんな、結果重視のSNS運用代行サービスを展開しているのが、PROFITだ。企業や商品のブランディングからデザイン、広告制作、さらには新規事業やサービスの開発まで幅広く手掛けるザッツ・オールライトが3年前からスタートさせた事業で、すでに20名ほどのチームにまで成長。とあるブランドのSNSからECサイトへの送客を激増させたり、10倍以上のエンゲージメント平均を生み出すアクティブなアカウントを生み出したりと、たしかな結果を残してきた。

この記事ではPROFIT事業のメンバーである小嶋さん、羽鳥さん、そしてオンラインで参加した吉田さんにインタビューを実施。事業が生まれた背景や大切にしていること、一般的なSNS運用サービスとは一線を画す、独自の戦略についてうかがった。

ザッツ・オールライトのプロデューサーの仕事に注目した記事はこちら
  • 取材・文:榎並紀行(やじろべえ)
  • 撮影:丹野雄二
  • 編集:佐伯享介

狙うのは「バズ」ではなくクライアントが望む「結果」を出すこと

―ザッツ・オールライトでは企業や商品のブランディングからデザイン、広告制作、さらには新規事業やサービスの開発まで幅広く手掛けています。3年前にはデジタルコミュニケーションに特化した「PROFIT(プロフィット)事業部」を立ち上げたということですが、これはどんなサービスなのでしょうか?

小嶋:簡単に言うと、「SNS運用代行」ですね。InstagramやX(旧Twitter)などの企業アカウント、商品ブランドのアカウントを活用して、その価値を高めるサービスです。一般的なSNS運用代行との違いは、ブランドのPROFIT(利益)に貢献することを最大の目的としている点です。着実にフォロワーや投稿数を増やすことも大切ですが、それだけではなく、SNSからECサイトへの送客、売上の増加、「いいね」をはじめとするエンゲージメント率の向上など、具体的な「結果」を出すことに主眼を置いた運用を行なっています。

小嶋竜さん。大学では建築を学ぶ。2009年に株式会社パラドックスに入社。ディレクターとして数々の企業の採用コンサルティングや各種ツールの企画・制作、ブランディングを手掛ける。2016年に株式会社ザッツ・オールライトに入社。ホテルや飲食、スイーツ、スキンケアなど、様々な業態のブランド開発、店舗・商品開発にプロデューサーとして携わる。

―そうした「結果」を出すためには、どのようなアプローチが必要ですか?

小嶋:SNSで話題になることも大事ですが、そこで終わりではなく、きちんとEC送客などの結果につなげるためには、ブランドごとのデジタル戦略を適切に設計する必要があります。つまり、SNSの投稿によって「どのようなお客さまに対して、どんなタッチポイントをつくり、いかにコンバージョンまで持っていくか」。まずはそこを整理します。

吉田:戦略を立てるうえで軸になるのが、クライアントが持っているブランドのオリジナリティです。どんな商品なのか。ほかにない特徴や魅力は何か。どんな人に支持され、どういうシチュエーションで買われているのか。それらを徹底的に掘り下げる。そのうえで、リアルな店舗で評価されている点をデジタル戦略にも落とし込み、そのブランドにとって最も適切で効果的なSNS運用を行ないます。これはブランディングをする際のアプローチとほぼ同じですね。

―つまり、ザッツ・オールライトが本業でこれまで培ってきたやり方・知見がPROFIT事業にも生かされていると。

小嶋:そうですね。SNS運用というと、「1日何件以上の投稿をする」「バズりやすい投稿内容はコレ」「閲覧されやすい時間帯はいつ」など、SNS上で目立つためのノウハウに偏りがちです。しかし、PROFITの場合はSNS起点で考えるのではなく、ザッツ・オールライトがこれまでやってきたようにブランド起点でSNSの戦略を立て、その都度、適切な施策を講じます。

羽鳥:バズらなくてもいいから、届けたいお客さまにしっかり情報を届け、売上の向上や、クライアントが望む結果を導き出す。企業がSNSを運用する目的って、本来そういうことなのではないかと。

羽鳥舞祐さん。エン・ジャパン株式会社に新卒入社。その後、株式会社良品計画に入社し、接客、イベント企画運営、銀座店のInstagram運用などを経て、2022年株式会社ザッツ・オールライトに入社。製菓メーカーやD2Cブランド、サプリメント、新聞社発行のマガジンや伝統芸能など、多種多様なブランド・企業のSNS運用にディレクターとして携わる。

リピーター狙いのSNS戦略で、ECサイトへの送客が20倍に

―具体的な事例を教えてください。

小嶋:大手百貨店を中心に焼き菓子や生菓子を販売する「シュクレイ」さんのSNS運用をサポートしています。シュクレイさんは「ザ・メープルマニア」や「東京ミルク工場」など10以上のブランドを展開していて、実店舗だけでなくオンラインストアでも販売しています。ECの売上そのものは好調だったのですが、SNSからの集客がそれほど見込めていないという課題がありました。そこで、もともとシュクレイさんのSNS運用を担当していてブランドについても理解していた私たちにご相談があり、SNS経由でのEC購入を増やそうと目標を一緒に立てて、SNS運用の改善に取り組みました。

―SNSからECサイトへの送客という「結果」を求められたんですね。

吉田:はい。私たちはまず、Google Analyticsを徹底的に分析するなどして、どんなお客さまがECサイトを利用しているのか調べました。すると、多くのお客さまはECサイトを利用される以前に、百貨店などの実店舗ですでに購入履歴があることがわかった。つまり、一度買ってみて美味しかったから、自ら検索してECサイトにたどり着いてくれた「リピーター」が大半だったんです。

羽鳥:この分析から割り出した仮説は「ECサイトのお客さまはすでに実店舗での購入実績があり、商品自体は良いものだと認識されている。でも、時間がなくて店頭に足を運べない場合にECを利用している」というものです。

であればSNSの方向性も、シュクレイさんを知らない新規のお客さまに向けてブランドをアピールする役割だけではなく、既存のファンの方が催事や新商品の情報を定期的にキャッチアップする役割もあると判断し、リピーターのお客さまが手土産や贈り物を買いたいと思ったときに、シュクレイさんのお菓子を「思い出してもらう」ための発信が望ましいのではないかと考えました。

―あえて新規開拓を狙わず、リピーターに特化したSNS戦略というのはおもしろいですね。具体的には、どんな発信を?

羽鳥:まず、毎日投稿することは目標にせず、特定の時期に絞って発信を強めるようにしました。

多くの人がお菓子を購入するクリスマスや年末、バレンタインなどに合わせてインスタのストーリーズで新商品や催事のお知らせを投稿するなど、最も効果的と思われるタイミングで一気に投稿量を増やしたんです。また、ブランドごとのアカウントをアクティブにして、常に投稿からECサイトへ飛べるようにしました。これにより「イベントに合わせてお菓子を買いたかったけど、実店舗に足を運べず機会を逃してしまった人」が、シュクレイさんのお菓子のことを思い出し、ECサイトに来てくれるのではないかと。

「フランセ」Instagram公式アカウントより

「ココリス」 Instagram公式アカウントより

吉田:結果的に、SNSの投稿を経由したセッションは昨年と比べて426%となり、SNS経由で購入ページまでたどり着いてくださった方は、昨対比2625%という結果になりました。仮説が当たり、SNS経由のコンバージョン率20倍以上という「結果」をしっかり残せたことでクライアントにも喜んでいただけましたし、結果にコミットする私たちのやり方に対して、より自信を深めることができました。

持続的にお客様に「利益」を提供できる環境を整えたかった

―PROFIT事業を始めた、そもそものきっかけは何だったのでしょうか?

小嶋:ザッツ・オールライトではシュクレイさんをはじめ、さまざまなクライアントの商品開発やブランディングなどを行なっていますが、そのなかで「SNS運用もお願いしたい」というご相談を数多くいただいていました。とはいえ、私たちは決してSNSマーケティングのプロではなく知見もなかったため、当初はお断りしていたんです。

ただ、お客さまから「SNS運用代行の専門サービスにお願いしても、私たちの思いや商品に対する理解が足りておらず、ブランドらしい発信ができていない」という声があり、どうしてもザッツ・オールライトにお願いしたいと。それなら日頃からおつき合いがあり、ブランドのことを深く知っているわれわれがやったほうがいいのではないかと考えました。

また、同じタイミングで、社内の労働環境を見直そうという動きもありました。ザッツ・オールライトは創業から10年以上が経ち、結婚して子どもができるなど、ライフステージが変化する社員も出てきた。そういったなかで、いかに従業員が仕事を続けていくか。そしていかにクライアントに価値を安定して提供し続けることができるのか。それらの課題を解決できる事業のあり方を模索すべきではないかと。

その点、SNSの運用サービスは、そうした条件にフィットする事業ではないかと考えました。もちろん簡単な仕事ではありませんが、リモートワークを導入しやすい事業なので、自宅勤務が行ないやすくなりました。

実際、PROFIT事業ではホワイトな労働環境の遵守を徹底していて、産休から復職したばかりの社員も無理なく働けていると思います。

―ワークライフバランスの見直しや、働き手のライフステージにあわせたキャリアプランの構築は、現代社会の重要な課題でもありますよね。羽鳥さんは1年前からPROFITのメンバーに加わったそうですが、働きやすいですか?

羽鳥:そうですね。前職では無印良品銀座店のSNSを担当していたのですが、それと比べても働きやすい環境だと思います。全員参加のミーティング一つとっても、必ず定時には終わらせるよう配慮してくれたり、メンバー都合で参加が難しい場合はリスケしてくれたり。

あとは、働く場所の自由度も高いです。じつは、私は2か月前まで名古屋にいたのですが、案件の都合と私自身の希望もあって東京オフィスに異動させてもらいました。希望や目的に合わせて柔軟に対応してもらえる点も、すごくありがたいですね。

「いまの運用のままでいいの?」「そのSNS投稿に意味はある?」メンバーに求めるのはSNSへの「渇き」

―現在のPROFITチームの体制を教えてください。

小嶋:社員・アルバイト合わせて20人のチームです。クライアントごと、ブランドごとに担当を分け、各自がさまざまなアプローチでSNSの運用を行なっています。それぞれ得意分野は異なりますが、総じて研究熱心で、SNSに関しての感度も高く、探究心を持って丁寧に仕事に取り組むメンバーばかりです。

―では、これからチームに迎えたいのはどんな人でしょうか?

小嶋:前提として、やはり普段からSNSを積極的に活用していること。また、活用するなかで「なぜこの投稿には“いいね”が多いんだろう?」「このアカウント、どうして人気なんだろう?」といった疑問を持ち、自分なりに仮説を立てて考察までできていると、なおいいですね。そこまで突っ込んで考える癖がある人は、きっとクライアントの課題に対してもしっかり向き合って、結果を出すための思考を身につけることができるでしょうから。

また、ブランディングやプランニングの部分だけでなく、丁寧かつ地道にSNS運用と向き合ってくれる方も歓迎です。

吉田:現在のSNSマーケティングに疑問を持っていたり、「渇き」みたいなものを感じている人がいいですね。

SNSの世界ではバズること、フォロワーを増やすことが是とされがちだけど、それって本質的じゃないと思うんです。たとえば「フォローしてハッシュタグ付きで投稿してくれた方に抽選で商品をプレゼントします」といったキャンペーンをやっても、一時的にフォロワーは増えるかもしれないけれど、それだけで満足して思考停止してしまったら、やる意味がないと思いませんか?

また、SNS運用では「定期的に投稿すること」や「インプレッションを増やすこと」自体が目的化してしまっている場合もありますよね。

でも、そういった施策・運用を、いかに売上などの具体的な結果へとつなげるかといった、いわば本質の部分に目を向ける必要があるはずなんです。私たちはまさにそこを真剣に考えて実践している会社なので、そんなふうに本質に目を向けられる人はフィットするのではないかと思います。

―羽鳥さんはいかがでしょう? どういう人と一緒に働きたいと思いますか?

羽鳥:チームプレイができる人ですかね。PROFITではメンバーごとに担当するアカウントが分かれていますが、完全な分業制というよりは、全員で意見を出し合ったり、協力してリサーチしたり、常に情報を共有し合ったりして仕事を進めることが多いです。自分の主張が全て正しい! みたいな感じだと、ちょっと難しいのかなと。クライアントによって課題もやり方も全くことなりますし、そこはある程度柔軟に、色々な意見を受け入れられる人のほうがいいのかなと思います。

―それでは最後に、PROFIT事業の今後の展望を教えてください。

小嶋:PROFIT事業がスタートして3年が経ちました。徐々に実績も出てきていますし、自分たちが提供しているソリューションには自信を持っています。ただ、もっともっと多くのクライアント、多種多様なブランドとご一緒したい。より多くの課題と向き合い、さまざまな打ち手を講じながら結果を残すことで、サービスとしての引き出しを増やしていきたいですね。そして最終的には、あらゆるジャンル、あらゆるクライアントの課題を、あらゆるSNSのプラットフォームで解決できる存在になっていきたいと考えています。

そのために、現在は東京・名古屋の2拠点で活動していますが、拠点拡大の構想を練っているところです。まずはクライアントの本拠地が多い北海道・九州から。世界に愛されるブランドを育てていくために、将来的には海外への進出も見据えています。SNSで世界中と繋がることができる時代なので、その可能性を無限に感じています。

クライアントだけでなく、ヴィジョンを共有して、未来を一緒に描くことのできる仲間との出会いも、SNSを通じて積極的につくっていきたいですね。

Profile

株式会社ザッツ・オールライト

2010年の設立以来、どんな依頼にもザッツ・オールライトの心意気で応え、「結果」を出してきました。

・老舗旅館やホテルのリブランディング
・スイーツ、食品メーカーの商品、店舗、事業開発
・信州奥地の村おこし、京都駅前の町おこし
・コンサルティングファームの企業価値の再定義
・経営破綻した飲食店の再建
・歌舞伎役者のファンクラブやサロンの開設、運営

北海道から沖縄まで(ときに海外も)、多種多様な案件を担います。業種、ジャンル、予算、スケジュール……。ひとつとして同じプロジェクトはありません。

現場を訪ね、一次情報を立体的に収集し、ときに飲み明かし、意見を交わしながら腹落ちするまで課題を咀嚼します。

前例のない解決策が必要なため、プランはゼロから着想。社内外のメンバーを巻き込み、協議を重ね、機能するクリエイティブをカタチに。

着実に、果敢に、プロジェクトを成功へと導きます。

DRAFT、リクルート、McCann、サイバーエージェント、楽天野球団、産経新聞社、キヤノンなど前職さまざまな仲間が活躍しています。

難解なプロジェクトが山ほどあります。紆余曲折を一緒に楽しみましょう。

気になる

Pick up
Company

PR