どんな要望にも「ザッツ・オールライト」の精神で耳を傾けてきた結果、手掛ける領域はどんどん拡大。現在では、お菓子の企画・開発や国産羊肉の普及促進、旅館のプロデュース、街おこしに至るまで、あらゆるジャンルの仕事が舞い込んでくるという。それらすべてのプロジェクトの要である、同社のプロデューサーに、未経験の領域に挑む際に必要なマインドや、仕事の喜びについて伺った。
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- 取材・文:榎並紀行(やじろべえ)
- 撮影:丹野雄二
- 編集:佐伯享介
総監督でありプレイヤーでもある、ザッツのプロデューサー職
―ザッツ・オールライトのクリエイティブ案件における、プロデューサー職の役割を教えてください。
梅田:一般的なプロデューサーの役割は、案件の特性に合わせて「誰が、何をやるのか」を決めて、全体をとりまとめながらプロジェクトを動かしていくこと。ただ、ザッツの場合は少人数のチームで動かす案件も多く、その場合はプロデューサー自身がコピーを書くこともあるし、クリエイティブディレクションやアートディレクションを担うこともあります。一般的なプロデューサーの仕事を含めて「あらゆることをやる」という感じでしょうか。
―そのなかでも、特に重要な役割というと何ですか?
梅田:やはり、クライアントとのコミュニケーションですね。ザッツには営業職がいないので、プロデューサーがお客さまとの接点になる。最初に案件の問い合わせが入ったときも、話を聞きにいくのは僕たちです。その内容を受け、社内のリソースやバランスをふまえてメンバーを決める。ですから、しっかりお客さまにヒアリングしてベストな形でプロジェクトを動かすのが、プロデューサーの最も重要な仕事だと思います。
―では、梅田さんがこれまでに関わってきた仕事で、特に印象に残っているものを教えてください。
梅田:大きな成果が出たという意味では、GENDYというお菓子ブランドの開発です。
商品開発の最上流工程から関わったという点でも、印象に残っていますね。先方からの最初のオーダーは「とらやの羊羹のように、高級な手土産として喜ばれるお菓子をつくりたい」というもの。そこで、まずはクライアントの社長とシェフ、そしてザッツ側から僕ともう1名で、ひたすら試食を繰り返しました。普段は北海道にいるシェフが東京へいらっしゃる度に4〜5個の試作を持ってきて、それに対してブランドのコンセプトやトンマナをすり合わせながら味を決めていく。ジャムセッションみたいなディスカッションを半年くらい繰り返しながら開発しましたね。
―時間もお金もしっかりかけた、すごく贅沢なつくり方ですね。
梅田:そうですね。ブランドづくりって、デザインやコンセプトなどのブランディング側が先走りして、肝心の商品の中身が追いついていないことや、その逆もあったりします。そうした齟齬が生まれないよう、今回はシェフと一緒に味づくりの部分から関わらせてもらって。最終的には圧倒的に素晴らしい商品ができて、これなら僕らがイメージしていた5千円から6千円の価格帯の高級手土産としてのブランド価値をつけられるだろうと考えました。
また、GENDYのような新興ブランドがブランドストーリーを語る際は、ビジュアル面でも説得力を持たなければいけません。世界観を写真でしっかりつくる必要があったため、キービジュアルはニューヨークとロサンゼルスで撮影しました。
―GENDYは現在、南青山と銀座で店舗展開し、贅沢な手土産として人気を確立しています。
梅田:じつは、1号店オープンから1年間は本当に売れなくて。それでも、広告を出したり、催事に出店してアピールしたりするのはやめようというのは決めていました。じっくりと商品の良さが口コミなどで広まっていくほうが、ブランドの足腰がしっかりするだろうと。そういったスタンスを取ることができたのは、母体であるクライアント企業のシュクレイさんに体力があったことと、ありがたいことに僕らのやり方を支持していただけたのが大きかったのですが、結果的に1年経ったあたりから徐々にブレイクし始めて、その後は予約だけで完売してしまうようなブランドに成長しました。僕らのやってきたことは間違いじゃなかったんだなと、プロデューサーとしての自信も深めることができた案件ですね。
―シュクレイさんといえば、ザッツはパートナーとして同社の設立当初からパートナーとしてお仕事をされていると伺っています。
梅田:そうですね。GENDYのほか、これまでに東京ミルクチーズ工場、メープルマニア、バターバトラー、フランセ、キャラメルゴーストハウスなど、シュクレイさんとともに約半年に1件のペースで新規ブランドをプロデュースしてきました。商品開発からネーミング、ロゴ、パッケージ、制服、店舗デザインなどのトータルブランディングを実施しており、現在はザッツ内にシュクレイさんの専属チームを設けるほど、深いお付き合いになっています。
―ザッツは「結果を出すクリエイティブ」にこだわりを持っていると伺いましたが、シュクレイさんとのお仕事ではどんな結果が出たのでしょうか?
梅田:シュクレイさんの売上高は、設立当時は約7億円だったのですが、2023年3月期の決算では200億円を超える過去最高の売上高となりました。僕らもその快進撃のお手伝いがしっかりできているという実感がありますね。これからも、ともに歩んでいきたいです。
プロデューサーに求められるのは「傾聴力」
―宮田さんは広告会社などを経て、3か月前(取材時)にザッツへ入社されたということですが、これまでにどのようなお仕事に関わりましたか?
宮田:まだ具体化する前段階のものが多くて詳細は明かせませんが、事業を立ち上げるフェーズのプロジェクトに複数関わっています。たとえば、海外飲食ブランドの日本初出店プロデュースや国内大手飲食会社の新規事業開発など、本当に幅広いです。
宮田:僕が関わっているお仕事の中でも、特にザッツらしくて面白いなと思ったのは、関ヶ原石材さんという昭和26年創業の石材専門企業のお仕事です。僕が入社する前からザッツで担当させていただいているのですが、石材をファッションのように毎シーズンテーマを定め、コレクション化し、カタログやホームページなどでブランディングしているんです。
これに僕もジョインして、これからほかにも多角的な取り組みを行なっていき、石材の魅力や可能性を更に広げていくことを計画しています。たとえば建築設計事務所さんと協業して、家具メーカーをはじめ様々なブランドとのコラボを提案・プロデュースしていたりもします。
―クライアント側から「こういった企業とコラボしてほしい」といった要望があるのでしょうか?
宮田:いえ、僕らから提案させてもらうことが多いですね。石材をブランディングするという目的の一環で、こういうことをやったら面白いんじゃないかという観点から、提案させていただいています。ザッツの場合、先方からは「なんとなくこういうことをしたい。こんな課題を解決したいんだけど、やり方はお任せします」といった、ざっくりとしたご相談をいただくことが多いんです。
―そうした相談があった場合、まずはどのようにアプローチしていきますか?
宮田:まずは先方と密にコミュニケーションをとります。現状や課題などの背景を聞き取りながら、解決の糸口を探っていく。そのうえで、自分自身やザッツが得意としていることをふまえてブランドをどのようにつくり上げていくか、具体的なアイデアを検討して一から提案するという流れが多いですね。ですから、ザッツのプロデューサーには特に、「聞き取る力、傾聴力」が求められるのかなと思います。
―ちなみに、傾聴力以外で宮田さんのプロデューサーとしての強みは何ですか?
宮田:1つはブランディングにおいて表現を生み出すスキル。これは広告会社でのクリエイティブ領域での業務に始まり現在に至るまで、自身としてこだわって培ってきたものですが、空間やグラフィック、デジタルなど各領域のデザイナーとともに表現を検討して自らディレクションをしながらブランドの表現方針を定めていきます。
もう一つは「場所」のプロデュースですね。広告会社を辞めた後、7年にわたり商業施設や店舗、イベントスペースなどの場所を開発する仕事をしていました。そのため、人が集まる新たな場所をつくり、その場所をブランディングし、集客などのプロモーションを行うといったプロデュースが得意ですし、個人的に関心の高いジャンルでもあります。
自由すぎる働き方は社員への信頼の証
―お菓子や旅館のプロデュース、果ては街おこしに至るまで、ザッツ・オールライトが手掛ける領域はとにかく幅広いですが、未知の領域の仕事でも果敢に挑戦する姿勢を大切にしているのでしょうか?
梅田:じつは、そんなに大層なことではなくて、実際には「頼まれたからやる」。それだけのことなんです。僕たちの仕事は、基本的に誰かのお手伝いなんですよね。クライアントから「力を貸してほしい」「手伝ってほしい」「一緒に考えてほしい」とお声をかけていただくことで初めて仕事が動き始めるし、その期待に応えたいという思いが最大の原動力。だから、どんな些細な相談でも、それがたとえ僕らにとって未知のことでも、耳を傾けるし、どうにかしたい。その繰り返しで、手掛ける領域がどんどん広がっていきました。
―プロデューサーの個人的な付き合いのなかから相談を受け、仕事に発展するケースも多いと伺いました。
梅田:多いというか、僕の場合はほとんどそうなんじゃないかな。たとえば、国産の羊肉を世の中に広める「羊SUNRISE PROJECT」という事業があるのですが、これも僕と個人的につながりがあった羊肉専門店のオーナーから相談を受けたのがきっかけでした。僕はオーナーを尊敬しているし、国産羊肉の普及にかける思いも知っていたから、ぜひ力になりたいと。
―そうした仕事を受けるかどうかの裁量は、個々のプロデューサーに委ねられているのでしょうか?
梅田:基本的には委ねられていますね。ほかの誰かから何かを言われたことはないし、たとえば僕が宮田くんの仕事に口を出すこともありません。とはいえ、そこには当然、数字の責任もあって。
ザッツでは全社員に「会社全体の売上」が共有されています。個々の売上ノルマとかはないんですけど、各々が意識して「最低でもこれくらいは稼がなければいけない」と認識している。だから、どんな仕事を受けても自由なんですけど、しっかり売上を立てる、収益を上げることは意識しなければならないですね。
宮田:そこは、ザッツに入社してよかったと思う部分の一つですね。僕自身も個人的なつながりをどんどん仕事にしていきたいタイプですし、ザッツは組織体制にはなっていなく、プロデューサー1人1人が自律して仕事を創り判断しているので、受け身だったり、仕事が降りてくるのを待っていたりする人には合わないかもしれません。
―会社という組織でありながら、自分の裁量でどんどん仕事ができるのは魅力的ですね。
宮田:裁量といえば、会社のクレジットカードを全社員が持ち、社員の裁量で経費を判断していたり、社員同士の飲み会ではカードを使えたりするということには驚きました。
―それはすごいですね。社員のことを信頼していないとできません。
宮田:統制しようとするのではなく、それだけ社員1人1人に自律した裁量を持つことを委ね、社員が働きやすい環境を会社がつくろうとしてくれている。そういった会社の姿勢や思いがあると、社員はそれに応えていこう、ちゃんと稼いでいこうという意識になりますよね。
セオリーが通じない案件をどこまで楽しめるか
―現在、ザッツ・オールライトではプロデューサー職を募集しています。宮田さんはどんな人がザッツにフィットすると思いますか?
宮田:僕自身が大事にしていることでもありますが、「好奇心」がある人ですね。ザッツの仕事は多領域にわたり、答えが決まっていない案件が多いので、未経験の領域でも楽しめたり、新たな事にも前向きに興味を持って楽しめる人が合っているように思います。
あとは「肌感覚」を大事にできる人。プロデューサー職は特にお客さまとの対話の中から答えを見出すことや、ザッツは商品やお店など人の生活や感覚に触れるアナログなアウトプットをする仕事のほうが多いので、そうした人の手触りのある肌感覚を大切にする人が向いていると思います。
―梅田さんはいかがでしょう? どんな人に入社してもらいたいですか?
梅田:やはり、会社に新たな刺激をもたらしてくれる人がいいですね。宮田も前職では商業施設のプロデュースに携わっていて、そこは従来のザッツがあまり関わっていない領域でした。そうした、僕たちにとって未知のジャンルを得意としていて、どんどん活かそうとしてくれる人だとありがたいです。特に、そのジャンルを突き詰めすぎて、その道の変態みたいな領域にまで達している人には惹かれます。
そのうえで、いろんなことをやってみたいと思っている人は、よりフィットすると思います。ザッツのプロデューサー職は、自分次第でどんどん仕事の領域を広げていける。そうした挑戦的なマインドがあれば、楽しく働けると思いますよ。
Profile
2010年の設立以来、どんな依頼にもザッツ・オールライトの心意気で応え、「結果」を出してきました。
・老舗旅館やホテルのリブランディング
・スイーツ、食品メーカーの商品、店舗、事業開発
・信州奥地の村おこし、京都駅前の町おこし
・コンサルティングファームの企業価値の再定義
・経営破綻した飲食店の再建
・歌舞伎役者のファンクラブやサロンの開設、運営
北海道から沖縄まで(ときに海外も)、多種多様な案件を担います。業種、ジャンル、予算、スケジュール……。ひとつとして同じプロジェクトはありません。
現場を訪ね、一次情報を立体的に収集し、ときに飲み明かし、意見を交わしながら腹落ちするまで課題を咀嚼します。
前例のない解決策が必要なため、プランはゼロから着想。社内外のメンバーを巻き込み、協議を重ね、機能するクリエイティブをカタチに。
着実に、果敢に、プロジェクトを成功へと導きます。
DRAFT、リクルート、McCann、サイバーエージェント、楽天野球団、産経新聞社、キヤノンなど前職さまざまな仲間が活躍しています。
難解なプロジェクトが山ほどあります。紆余曲折を一緒に楽しみましょう。