Takramにデザイナーが集まる理由。スキルを拡張する「学びの場」とは?

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東京、ニューヨーク、ロンドンに拠点を持ち、多種多様なものづくりに取り組むデザイン・イノベーション・ファーム、Takram。彼らの抱えるプロジェクトは、企業のビジネスデザインや、商品のブランディング、プロダクトのデザインなど多岐にわたる。その幅広いアウトプットを可能にしているのが、メンバーの「ものづくり」への意欲と、絶え間なく学び続ける姿勢だ。

Takramには、独自のスタディープログラムや、一人につき年間25万円の書籍代補助など、個々の探究心と継続的なスキルアップをサポートする環境が整えられている。メンバーは、それをどのように活用し、クリエイティブに還元しているのか。アートディレクター・山口幸太郎氏、UIデザイナー・長谷川昇平氏、グラフィックデザイナー・真崎嶺氏、デジタルプロダクトデザイナー・河原香奈子氏の四名に話をうかがった。
  • 取材・文:宇治田エリ
  • 撮影:kazuo yoshida
  • 編集:𠮷田薫(CINRA)

「学び」に貪欲な人が集まる、Takramの気質

―ビジネス、テクノロジー、デザインなど幅広い分野を横断しながら、ゼロからイチを生み出し続けているTakram。どのようなメンバーが多いのでしょうか?

長谷川:デザイン×エンジニアリングのように、複数のスキルを多くのメンバーが持っているということもあり、ひとつの領域だけではなく、複数の領域からものごとを見ることができるのが特徴です。ぼくの場合はUIが専門ですが、グラフィックデザインにも興味があるし、ビジネスのことも知りたいので、自分の専門領域以外にもアンテナを張って、インプットしたり、面白いトピックがあればメンバーに共有したり、ディスカッションをしたりしています。

UIデザイナー・長谷川昇平さん

真崎:ぼくは2017年までニューヨークに住んでいたこともあり、日本の企業は「おかたい」印象があったのですが、Takramは柔軟かつフラットで良いですね。去年、Black Lives Matterについて考えていることを社内で話したときも、代表の田川(欣哉)さんが親身になって聞いてくれて、実際のアクションまで一緒に考えてくれた。個人の社会的意識をこんなにも尊重してくれるのかと驚きましたね。

グラフィックデザイナー・真崎嶺さん

長谷川: Takramは部署やチームがなく、プロジェクトごとにチームを組むというかたちをとっていることもあり、みんながフラットで意見交換も活発なんだと思います。

―2020年に入社された河原さんはいかがでしょう?

河原:コロナの影響で、入社してすぐにリモートで働く環境になったので、基本的にメンバーとはZoomやSlackでやりとりしているのですが、本当にものづくりが好きな人が多いなと日々感じています。以前はスタートアップの企業に勤めていて、ビジネス色の強いなかで仕事をしていたので、ものづくりが中心にある空気が新鮮ですね。自分自身もその楽しみを思い出せたという感覚でしょうか。仕事以外でも積極的に自主制作している人が多くて、そういった話を聞くのも面白いです。

デジタルプロダクトデザイナー・河原香奈子さん

山口:たしかに、「ものづくりが好き」というのはベースにあるね。しかも考え方のルーツが違うから、一言に「ものづくり」と言っても、主義主張がそれぞれにある点が非常に面白い。

あと、早く着実に学びを深めていく人も多いです。例えば、普段UIやWebデザインをやらないエンジニアも、グリッドシステムやグラフィックデザインの基礎を教えると、最初は拙くても、数週間後にはグリッドシステムをベースにした画面につくり直していたりして(笑)。驚くほどのスピードで実践で展開して、自分のものにしていく。

アートディレクター・山口幸太郎さん

―みなさん「ものづくり」が好きだからこそ、学ぶ意欲が高いのですね。

山口:そうですね。とはいえ、ずっとクリエイティブに関する話ばかりしているわけではないですよ。会社の雰囲気も、全然シリアスではないです。ワンちゃんネコちゃんを熱く語らうだけのSlackチャンネルもあるくらいですからね(笑)。

河原:たしかに。私も入る前は「どんな話をしようかな」と身構えていたところがあったのですが、入社してみたら、いろいろと気楽に話すことのできる雰囲気で安心しました。

真崎:前に櫻井さんにオーディオの機材について相談したら、1時間以上、詳細な説明をしてくれて(笑)。そういうニッチで深い話をする人も結構いますね。

長谷川:こだわりが強い人が多いかもしれないです。

制度をフル活用して知識を深め、視野を広げていく

―Takramでは、社員が成長するためのさまざまな制度があります。皆さんはどのように制度を活用していますか?

長谷川:ぼくは仕事における個人のパフォーマンスの向上や、仕事環境改善の費用をサポートする制度「Life Design」を使うことが多いです。最近だとタイポグラフィーの講座に参加したり、社内では英語を使う場面もあるため語学の勉強をしたりしています。

真崎:ぼくも、まだ移住して間もないため漢字の読み書きが苦手で、同じ制度を活用して、毎週プライベートレッスンで日本語の勉強をしています。コロナ禍の前はタイポクラフィーのワークショップを受けたりもしていました。あと、一人につき年間25万円まで書籍代が補助される「Book Purchase」は、基本的に全額使い切ることを推奨されています。ぼくは、アートやタイポグラフィー系の書籍を買うことが多いですね。

―年間25万円もの書籍代が支給されるのはすごいですね。補助以外にも、特徴的な制度はありますか?

河原:業務時間内に月5時間程度の勉強時間を確保できる「T2T」という制度や、プロジェクトとは関係なく、同じ興味関心を持った人たちが集まり、深堀りやアウトプットをする「Markat」という制度があります。私の場合は、UIを深ぼるチームに参加していて、読書会でそれぞれの見解を交えながらディスカッションしたり、国や行政の仕事に関わることもあるので、世界の行政のUI事例をみんなで分担してリサーチしたり。チームで行うことで学びが深くなりますし、共通認識を揃えることができるので、プロジェクトを進める上でも効率の良さを感じていますね。

山口:ちなみに「Markat」はTakramを逆から読んだ言葉です(笑)。

―なるほど(笑)。山口さんは「Markat」でどんな活動をされているのでしょうか?

山口:ブランディングを学ぶチームに参加していて、活動の一環でクラフトコーラのブランドをつくりました。良いものができたので、そのうち公開できればと思っています。個人的には「Markat」が一番エクストリームな学びだと思いますね。そこに月10時間程度費やすことができるし、活動費が出るのも魅力です。

長谷川:「Markat」ができてからは、同じ興味を持つ人たち同士で、最近気になっているアプリや手法の紹介、改善点を探るディスカッションなどがさらに活発に行われるようになりましたね。

―Takramに入ったことで、これまでの仕事に対する意識に変化はありましたか?

河原:視座を高く持てるようになったと感じています。それぞれのプロジェクトをビジネスとして成功させるという視点だけでなく、「自分たちがつくっているものが、世の中でどういう意味を持つのか」という課題意識をメンバー全員が持っている。だからこそ普段から社会課題についてのディスカッションも多いのだと思います。Takramにいると、目の前の課題だけではなく、世の中の潮流を視野に入れながらデザインに取り組む姿勢の大切さを学べますね。

真崎:社会課題への意識は高いですね。Takramには社外のプロジェクトだけではなく、自分たちが取り組むべきテーマを社内プロジェクト化し参加する「Task Force」という仕組みがあるのですが、ぼくはソーシャル・フェアネスのチームに参加していて、そのチームで、ソーシャル・イシューについて、Takramならどう取り組んでいけるかを話し合っています。

スタディの試行錯誤が仕事にも活かされる

―グラフィックデザイナーやUIデザイナーは、どのように仕事やプロジェクトを進めているのでしょうか?

長谷川:最近のプロジェクトだと、山口さんと河原さんと自分の三人が参加している、「KINS」というブランドがわかりやすいかもしれません。

山口:「KINS」は常在細菌の適切なバランスをサポートするサプリメントの新規ブランドを立ち上げるプロジェクトです。ぼくは普段、アートディレクターとして参加することが多いのですが、今回はプロジェクトリーダーとして、もう少し上流の部分から参加させていただいています。

リサーチ、エグゼクティブインタビュー、ブランド・コアの構築といった流れで、ブランディングをゼロからスタート。ブランドのミッションやビジョン、価値観などをデザインコンセプトに落とし込み、プロダクトをつくっていきました。一番貢献できたと思うのは、「KINS」というネーミングを提案したことですね。このネーミングがあったことで、ブランドのスタートからアウトプットまでを繋げていくことができたと思います。プロジェクトスタートからローンチまで3か月という早いスピードで進み、いまも継続してお手伝いしています。

「KINS」のビジュアル

―長谷川さんと河原さんは、「KINS」にどのように関わったのでしょう?

長谷川:ぼくは、WebサイトとECサイトのデザイン設計を担当しました。今回はクライアントへのヒアリングから関わって、スタートアップの方々の思いを聞けたのも、普段のUIデザインでは関われない部分だったので新鮮でしたね。そこからどうかたちにしていき、Web上でどう見せたら伝わるのか、価格はどうするかというところまで、みんなで考えて提案していくことができたのは良かったです。

河原:私も長谷川さんと同じくUI周りのデザインをしつつ、現在進行中のサイドプロジェクトのリーダーを担当しています。通常、メインビジュアルの写真はグラフィック系のメンバーが計画することが多いのですが、今回Webサイトのデザインと合わせて、写真のディレクションにも関わることができたのが楽しかったですね。分野をプチ越境できたという感じです。

長谷川さん、河原さんが担当したKINS SKIN TEST画面

―プロジェクトごとに仕事内容が変わることも多いのでしょうか?

河原:はい。入社から1年で、すでにいろいろなプロジェクトに関わっていますが、それぞれまったく別のことをやっています。UI / UXをデザインする仕事だけでなく、既存アプリのアドバイザリーや、デザイン組織に対するコンサルティングなど、幅があります。いままでやってきたことだけでは通用しないので、つねに学びながら取り組むことが必然となっていますね。

―真崎さんはグラフィックデザイナーですが、分野をまたがることはありますか?

真崎:そうですね。ぼくは「J-WAVE」のブランディングのプロジェクトのときに、ジングルに合わせて波形が反応するというモーションロゴを制作しました。ぼく自身はもともとモーショングラフィックの勉強をしていたけれど、仕事で実践したことはなかった。でも以前から、本プロジェクトリーダーの弓場(太郎)さんと「Webやブランディングでのモーションロゴの有用性」について話をしていたので、「やってみたら?」と、弓場さんに背中を押していただきました。

学ぶ姿勢が新たなチャレンジを生み出していく

―社内の制度は、プロジェクトにおいてどのように活かされていると思いますか?

山口:やっぱり、「やってみたら?」っていう文化の醸成に活かされていると思います。例えば、「T2T」でCADを使った3Dモデルのつくり方を教えてもらっていると、「じゃあプロジェクトでもやってみて」と実践に繋げてくれる。最初のステップを踏み出すチャンスをくれるから、より本格的な学びに繋がっていくし、困ったら社内の詳しい人のところに行って教えてもらえば良い。制度があることでチャレンジがしやすく、自分の領域を拡張できる環境になっていると思います。

―最後に、みなさんが今後どのように自分の仕事を広げていきたいか、教えてください。

真崎:デザインリサーチや、教育分野でグラフィックデザインを哲学的に考えたい気持ちがあるので、春から海外の大学院に通い始める予定です。あとは日本語の精度も上げていきたいですね。バイリンガルであることを活かして、学びを発信することが理想です。

河原: 私はUI領域がメインの仕事ですが、今後はブランディングも併せて取り組むことによって、魅力的なデジタルプロダクトをつくっていきたいです。UIデザインは便利さや使いやすさにフォーカスされがちですが、それだけでは人の心はつかめませんから。

長谷川:ぼくもUIデザインを専門的にやってきましたが、世間的にもUIがやれる範囲は広がってきたし、使いやすいアプリやツールも出てきています。一方でまだまだデザインが必要な業界や人もいると思っていて、そういった人たちににデザインで貢献していけたらと思っています。UI / UXやグラフィックを考えたり、どうブランディングをしていくか、どう売っていくか。Takramなら、みんなと力を合わせながらできると思います。

山口:ブランディングというのはすごく奥が深くて、デザインだけの話じゃなく、マーケティングやビジネス、エクスペリエンスデザインなどさまざまな分野が関わります。だから、まだまだ学ばなきゃいけないし、エクスペリエンスデザインの観点からビジュアルやグラフィックデザインがどう位置づけされていくのかも考えていかなきゃいけない。そういったことに取り組み続けることが、自分のスキルを拡張することにも繋がると感じています。

Profile

株式会社Takram

Takramは、世界を舞台に活躍するデザイン・イノベーション・ファームです。未来をつくる人や組織のパートナーとして、プロダクトからサービス、ブランドにアイデアまで、デザインの力で変化を生み出していきます。

■プロジェクト事例
https://ja.takram.com/projects/

■Clients
TOYOTA / SONY / TAMRON / Google / moovel / ISSEY MIYAKE / Cartier / Panasonic / docomo / NIKKEI / 帝国データバンク / YAHOO JAPAN / mercari / Preferred Networks / J.LEAGUE / イオン銀行 / MAUIIGROUP / ORBIS / J-WAVE など多数

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