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広告代理店と協力するからこそ挑戦できるプロダクションの新たな可能性

映像、編集、音楽など、世の中には様々な制作プロダクションが存在する。商流としては、広告代理店を介したクライアントワークもあれば、クライアントとの直接取引もある。後者の場合は間に一社も挟まない故、クライアントとのコミュニケーションが伝わりやすく、制作予算と営業利益も前者より潤沢に。いわゆる“クライアント直”を自社の強みとしてアピールする制作プロダクションが増える中、映像制作を中心に扱うストライプスは“代理店経由”を強みとしているプロダクションだ。広告代理店と二人三脚で培ってきた独自のクリエイティビティについて、取締役社長の遠藤耕太さんに訊く。
  • インタビュー・テキスト:加藤将太
  • 撮影:岩本良介

「もはや何屋かわからない」状態から、必ず解決策を与えられる独自の集団へ

ストライプスの設立は2015年11月とまだ新しい。遠藤さんによると、前職の映像制作会社・エンジンフイルム在籍時に、「CM制作以外に様々な案件の相談を受けるようになった」ことが、ストライプス設立のきっかけになっているという。

遠藤:エンジンフイルムで働いていた頃、今のパートナーである大磯がCM制作から独立した部隊として、インタラクティブを中心にプロデュースを行うエンジンプラスという別会社を立ち上げ、僕もそこに参加しました。エンジンプラスではNTTドコモさんの『森の木琴』というWEBムービーなど、従来の30秒・15秒の枠にとらわれない映像もたくさん作っていましたが、単純な映像制作以外のお仕事も多数やっていました。例えば案件全体のコミュニケーションプランの作成、WEBサイトやアプリの制作、ライブストリーミングやプロジェクションマッピングのプロデュースなどコンテンツにまつわることの全てです。前社を辞める直前にはデバイスの開発を相談されることも増えて、もはや自分が何屋なのかわからない状態になってきました(笑)。

取締役社長 遠藤耕太さん

取締役社長 遠藤耕太さん

ストライプス代表取締役の大磯俊文さんはエンジンフイルムの先輩にあたる。遠藤さんと同時期に、偶然にも大磯さんも同じ悩みを抱えていたそうだ。二人は「自分たちは従来型のプロデュースという枠を超えて、仕事をしているのではないか」と気づき、「プロジェクトを設計・デザインする」というコンセプトの下、ストライプスの設立に至った。

変わりつつある「制作会社」と「広告代理店」の関係性

ストライプスが始動して1年弱。彼らの特徴のひとつに、広告代理店経由で請ける仕事が多いことが挙げられる。それも、いわゆる“下請け”ではなく“クリエイティブパートナー”として。いわゆる「下請け」になりがちな広告代理店との関係を良いものにしていく秘訣はどんなところにあるのだろう?

遠藤:どなたとお仕事をさせていただく場合でも、プロフェッショナルとしてきちんと仕事をするスタイルは変わりません。とはいえ、広告代理店の方とのお仕事で有り難いことがあるのも確かです。たとえば我々が自社のサービスを売り込まなくても、「いかなる状況においてもプロジェクトに対応できる」という我々の能力を理解した上で、マッチした仕事を供給していただける安定感はありますね。僕達の会社に依頼が来るケースというのは、ただ映像を制作する、WEBコンテンツを制作するという類のものは少なく、広告代理店の方と今の条件にはまる最適解を探りながらのプロデュースがほとんどです。それは最終的に映像になるかもしれませんし、インタラクティブになるかもしれませんし、イベントになるかもしれない。その間、必然的に密にコミュニケーションを取る機会が多くなるので、広告代理店の方とは良質な関係性を築く土壌が出来上がっているのではないかと思います。

世の中では、制作プロダクションは広告代理店の下請けというネガティブなイメージで語られることが多いようにも感じられる。ストライプスは、そんな従来から抱かれているイメージに縛られた「プロダクション」と「広告代理店」の関係が、徐々に変わってきていると言う。広告代理店と制作プロダクションの関係は、「営業チーム→社内クリエイティブチーム→制作プロダクション」という順に発注が降りてくるのが従来の流れであったが、最近は広告代理店の営業チームなどクリエイティブを扱わない部署からストライプスに直接依頼が届くケースもあるらしい。

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遠藤:広告代理店には優秀な方が数多くいらっしゃいます。彼らと一緒に仕事をすることで、当たり前の人格形成や広告の基礎的な考え方、クリエイティブへの意識など、非常に勉強になる場面が多いです。自分では思いもつかないようなアイデアを持っている方にお会いできますし、日々成長をさせていただけているという実感もあります。我々は課題解決を実際に動かすためのチームでありますが、広告代理店の方は、それを守ってくれる方々でもありますので、本当に良いチームに巡り会えたときの楽しさというのは言葉に尽くしがたいですし、従来のイメージとはちょっと違った広告代理店の方とのお仕事を当社は実践できている気がします。

クリエイティブパートナーとして認識されるだけのクオリティと提案力を担保する上で、どんなことを意識してきたのだろうか?

遠藤:月並みですが、NOとは言わないことですね。僕らは「明らかに現時点ではできない」という依頼も引き受ける場合があります。それは、話を掘り進めていくと、実は依頼とは違う形で解決できるんじゃないかと気付くケースも多いからです。プロダクションといえば、ひとえに物言わず依頼通りのものを作るだけ、というイメージを持つ方が多いかもしれないですが、弊社は自らも考えて最適な形を提案したい。クライアントのプロジェクト全体の予算や、制作にかけられる時間も加味して、最適な解決策を考える。そうした経験を積み重ねてきたので、たとえプレゼンや打ち合わせの場で予算が見合わなくても、その場で代案を提案できるんです。そのスピード感は、クライアントや代理店の営業担当の方にも評価をいただいています。

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スピード感のある提案ができる秘訣は「マルチタスク」

スピード感のある提案ができる秘訣は「マルチタスク」

スピード感のある提案ができる背景として、現在は8名という少数精鋭でありながら、映像、インタラクティブ、イベントなどのクロスメディア案件を長年請け負っている歴史も大きいだろう。メンバー個々の肩書きはプロデューサー、ディレクターといった具合に基本的にはひとつだが、少人数だからこそ一人が複数の役割を担うマルチタスクを意識して、「真の意味でのプロデュース、ディレクションとはなんだろう?」という本質を突き詰めてきた。

遠藤:以前は誰が何をやればいいのかわからないカオスな状態だったんです。例えば、スケジュールを立てるという作業ひとつとっても、映像業界では「プロデューサー」と呼ばれる人が、WEB業界では「ディレクター」と呼ばれる人が担当する。その時点でちょっと異なりますよね。映像・WEB・イベントの三軸を跨ぐプロジェクトでは、我々がそこを統括することも多くなりました。様々なタスクを同時に進めながら、その能力を身に付けていたんです。こういう働き方は20代から始めなければ、1人2役を手にするのも難しいと考えています。その分、若いうちからWEBも映像もアプリもイベントも引き受けるストライプスで働けば、絶対に力をつけられると思っています。

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ストライプスには4つのルールがある。

1.ものづくりを楽しむ
2.人の気持ちに立つ
3.結果を残す
4.新しいことに挑戦する

その全てを意識・実践してきたからこそ、様々な案件の依頼が舞い込むようになった。依頼のされ方も、「こういう映像を作ってください」ではなく、もっと川上にある課題から相談されることが今ではかなり多い。エンジンプラス時代には、巨大コンテンツのサーバーを立てたり、45日間の生放送に耐えうるインフラを設計し放映したり、森の中を駆け巡る44mの木琴を作ったり。今ではアウトプットの形が映像の枠を超えても驚かないが、ここまで手掛ける領域が広がるとは思いもしなかったそうだ。

遠藤:正直、幅が広すぎてもう訳がわからないと思うこともあります(笑)。でも、僕らの仕事って絶対楽しいし本当に面白いですよ。だって毎日同じことがないですから。映像だけ、WEBだけをやっていても毎日同じことは起きないですけど考えることが違う。例えば僕の今の仕事では、コミュニケーションプランのプレゼン、映像のプロデュース、アプリの開発、WEBページの監修、あとはデバイスの開発を同時進行でやっているんですね。そうなると、頭の使い方が必然的に違ってくるじゃないですか。「こんなものを作って欲しい」と言われて最高のものを作る職人がいることも素晴らしいことですが、「作るものは決まってないのですが、一緒に考えませんか?」と言われる職人がいても良いと思うんです。

これから必要なのは、クリエイティブの力で誰かを幸せにすること

世の中に変わらず存在し続けて、なおかつ多様化していくもの。それに対しての知見を蓄積しながら、まだ見ぬイノベーションにどう関わっていくのか。これまでアウトプットの形を都度変えてきたように、ストライプスは新しいものへの興味関心を絶やさない。

遠藤:最近では、広告代理店の方たちと月2回集まって、どんなデバイスを作れるかという実制作に向けての意見交換をしています。クリエイティブの力で誰かを幸せにすることは、今後すごく必要だと思っていて。課題解決の視点からのプロダクトアウトは今後やっていかなくてはならないでしょうね。そのためにはまた勉強しなくてはいけません。

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デバイスのプロダクトアウトとしては、スマートフォンと連動するベビーカー『Smile Explorer』のプロジェクトマネジメント、テクニカルコーディネート、プロモーションムービーの制作を担当している。『Smile Explorer』は現在プロトタイプ。前職を含めて、これまでに様々な黎明期の仕事に携わってきた遠藤さんにとって、『Smile Explorer』は新たな気付きをもたらしてくれたプロジェクトだという。

遠藤:これはもともと、スマホで制御できるベビーカーというアイデアでした。しかし開発していくうちに、親と赤ちゃんがコミュニケーションをとれるベビーカーにしようということになっていきました。具体的には、スピーカーが内蔵されていて親の声が赤ちゃんに聞こえたり、笑顔になったところでシャッターが切られたり。それらが蓄積されて、グーグルマップと連動して笑顔になった場所にピンを立てていく。家族の思い出にもなるだろうし、ここに行くと喜んでもらえるという記録にもなる。サービスを提供している側として、その情報はビッグデータになりますよね。本来の目的だけではなく、制作途中で思わぬ方向に分岐することもあるんだなと、プロデュースをしながら広告代理店の方の柔軟な発想力と対応力に、久しぶりにグッときた仕事でした。

プロジェクトを先導するのは物事を考える人たちだ。ある種の制限がある中で、飛び交う様々なアイデアとプロジェクトを整理して、きちんとした形に導く。プロデュースという枠に収まらず、プロジェクトを設計・デザインすることで、人と社会に貢献していくこと。それが、ストライプスが果たす役割なのだ。

遠藤:そういったことができるのは本当に楽しいですし、仲間が楽しいと思ってくれていることがまた嬉しい。僕にとって社長業自体は自分のリソースのひとつでしかないと思っていて、会社全体がもっと楽しく仕事ができる環境作りという大きな案件を抱えているプロデューサーです。関連会社がスポーツ系の案件に強いので、2020年東京オリンピックに向けての仕事も増えてきました。これからは、いかに社員にもっと面白い場を提供していけるのか。新しい領域とアウトプットへの挑戦が、きっと僕らをまた一段上のステージに押し上げてくれると信じています。

Profile

株式会社ストライプス

ストライプスは大手映像プロダクション出身のメンバーを中心に、2015年8月に設立したコンテンツプロデュースに特化した新しい会社です。

私たちの仕事は、映像、デジタル、デバイス開発などを、広告、プロモーションの分野でプロデュースをすることです。

コンテンツプロデュースの最前線においては、私たちはその枠に収まらず、プランニングやテクニカルコーディネートも含めて、プロジェクトをデザインするという意識で挑戦をし続けております。

新しくて、刺激的で、自由なプロジェクトで、皆さんと一緒に仕事ができるのを楽しみにしております。

株式会社ストライプス

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