CINRA
|
マイページ「応募履歴」機能追加のお知らせ 詳しくはこちら

スマイルズのWEBデザイナーに学ぶ、本気の上流クリエイティブ術とは?

食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」やセレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」をはじめ、業界の枠にとらわれず事業を展開するスマイルズ。最近では、さまざまな職能をもつ社員が自分自身を「商品」として提供するサービス「業務外業務」をスタート。そんなユニークとも、キテレツともいえる発想を実現させる要となる部署が、クリエイティブ本部だ。アーティストとしての顔も持つ代表の遠山正道さんが強烈な個性を放つスマイルズだが、ともに働くスタッフたちも一筋縄ではいかない熱いクセ者ぞろい。そんな彼らが今回、WEBデザイナーを募集している。いったい、どんな人材を求めているのだろうか?
  • 取材・文:島貫泰介
  • 撮影:豊島望

スマイルズ流クリエイティブのルール「職種に依存しないこと」

中目黒駅から徒歩5分ほどのビルに、スマイルズの本社はある。春には桜が咲きほこる目黒川沿い。同じビルには病院が入居し、通院するおじいちゃんおばあちゃんとエレベーターに乗り合わせることも多い。「世の中の体温をあげる」はスマイルズが掲げる理念の一つだが、ここもなんとなく人の体温を感じさせる場所だ。

今回話を伺ったのは、取締役でクリエイティブ本部本部長の野崎亙さん、WEBデザイナーの福永英樹さん、広報・PRの蓑毛萌奈美さんの三名。今回、彼らはWEBデザイナーを新たに募集したいと考えている。しかし理想の人物像を聞くと、これもまた一筋縄ではいかない、確固たるこだわりがあるという。

ー単刀直入に伺います。スマイルズが求める理想のWEBデザイナー像を教えてください。

野崎:スマイルズはクライアントワークも行いますが、「Soup Stock Tokyo」をはじめとした自社事業を中心に展開してきた会社なので、そもそも「WEB業界」「デザイン業界」に属していないんです。もちろん弊社のデザイナーは、アウトプットとして、WEBも紙もデザインするのですが、いわゆる「WEBデザイン」という括りで仕事をしていない。というか、その括りを先入観として抱いている限り、スマイルズでの仕事は成り立たないと思っています。

取締役・クリエイティブ本部本部長 野崎亙さん

取締役・クリエイティブ本部本部長 野崎亙さん

ーそれはどういうことでしょうか?

野崎:WEBの技術が進歩してきたなかで、デザイナーやエンジニアなどの職域が細分化されて、それぞれがプロジェクトの全体像を把握しながら仕事をする機会が減っていると思っていて。プロフェッショナルであるという意味ではとても良いことですが、スマイルズではもっと一人ひとりがプロジェクトに包括的に関わってもらいたい。たとえば、「私はWEBデザイナーだからグラフィックはわかりません」というのはアウトなんです。

スマイルズが仕事をするうえで大切にしているのは「目的」。「何のためにするのか?」を起点に、「問い」を立てられる人材を重視しています。だから、専門領域としてWEBデザイナーでありながらも、クライアントやその先にいるユーザーが求めている価値を発見できる人に来てほしい。極論を言えば、最終的なアウトプットはWEBじゃなくてもいい。プロジェクトという名の大きな川の上流までさかのぼって、ときとして「WEBはいらない!」と言い切れる人に出会いたいんです。

身体に染みついた「WEBデザイナー」というプライドや考えを捨てることで、殻を破ることができた

ークライアントの課題解決において、WEBは数ある手段の一つでしかないということですね。WEBデザイナーの福永さんは、そんなスマイルズで働いてみていかがですか?

福永:入社して7年が経ちますが、前職はグラフィックとWEBを専門とする制作会社に勤めていました。スマイルズに転職して明らかな違いを感じたのは、周囲の人たちの多様さですね。

たとえば「Soup Stock Tokyo」には、商品部や営業部など、いろんな部署があり、クリエイティブ本部のなかにも店舗開発を担当するスタッフが在籍している。そういった人たちが席を並べる環境ですから、WEBやデザイン業界のマナーに則った仕事のやり方では、そもそもコミュニケーションできないことが多くあるんです。正直言うと、入社当初は環境になじめず、殻に閉じこもっていた「暗黒時代」がありました(笑)。

WEBデザイナー 福永英樹さん

WEBデザイナー 福永英樹さん

野崎:一般的な制作会社の場合、プロデューサーやディレクター、デザイナー、エンジニアなどの役割分担があって、業務上のコミュニケーションも定型化されますよね。でも、スマイルズでは「ひょっとしたら、あなたならできるかも?」と、自分の職域外の仕事を丸投げされることがざらにある。だから制作会社とは仕事のなり立ち、関わり方がまるで違うんです。あえて強い言い方になりますが、お題に対して職域の範囲内でしか対応できない人に「あなたには何もできないんですか?」と思っちゃうこともあって。

それは入社当初の福永もそうでした。そのころ、私が何度も伝えていたのが、お題に対してWEBデザインの範囲で答えようとするのではなく、「Why(なぜやるのか)」「What(何をやるのがベストなのか)」をとことん考え抜いて、クライアントに問題解決のストラテジーから逆提案すればいいということ。そのやりとりのなかからいくつものアイデアが生まれ、やがて「How(いかにやるのか)」に編まれていく。「WEBデザイン」の専門性は「How」として必要になったときに発揮してくれればいい。まずは「Why」と「What」を思考することが大切なんです。

スマイルズが考える「クリエティブのたしなみ」(画像提供:スマイルズ)

スマイルズが考える「クリエティブのたしなみ」(画像提供:スマイルズ)

福永:その思考のスイッチが入るようになって、仕事が自ずとドライブするようになりました。それまでを振り返るといろんな衝突がありましたね……。たとえば「ブログを立ち上げたい」という他部署からの依頼がありました。でも、自分の経験からすると、絶対にあとでつまずくのが手に取るようにわかったので、「いまの段階でブログはつくりたくないです」と断ってしまったこともありました。

ーWEBデザイナーの視点から、リスクを発見して断ったわけですね。

福永:でもいま思えば、依頼してくれたスタッフは、経験や知識のないなかで、これまでにないかたちのアウトプットを必要として「ブログがほしい」と言っていたのかもしれない。そこを「Why」や「What」で掘り下げていけば、ブログだけにこだわらず、他の解決策があったかもしれませんよね。だからこそ、依頼主の想像を超える提案をすることが大事なんです。

ぼくの肩書はWEBデザイナーですが、イベントやワークショップの制作を担当することもあります。自らの職域に依存しないという考え方は、クリエイティブ本部のスタッフ全員に共通する考え方だと思いますね。身体に染みついた「WEBデザイナー」というプライドや考えを捨てることで、ぼくは殻を破ることができました。

Next Page
「Soup Stock Tokyo」の成功体験にこだわることが、本当に大切なのか? を自ら問い直した

「Soup Stock Tokyo」の成功体験にこだわることが、本当に大切なのか? を自ら問い直した

では、そんなクリエイティブ本部の理念を実践に落とし込むと、どのようなものづくりが生まれるのだろうか。広報・PRを担当する蓑毛さんが挙げてくれたのは、スマイルズが手がけるファミリーレストラン「100本のスプーン」のリブランディングプロジェクト。新店舗となる「100本のスプーンFUTAKOTAMAGAWA」の立ち上げがきっかけだったという。

ー「100本のスプーン」のリブランディングにいたった経緯は何だったのでしょうか。

蓑毛:もともと「100本のスプーン」は、「Soup Stock Tokyo」のブランドを引き継ぎつつ、子ども連れのお客さまでも気軽に楽しめるレストランを目指していました。でも、そもそも「Soup Stock Tokyo」を知らない方もいますし、ファミリーレストランという異なる業態に応用するのにも限界がある。「Soup Stock Tokyoを引き継ぐことが、本当に正解なのか?」という「Why」や「What」が生まれ、一度原点に立ち返ったんです。

一般的に広報は、でき上がったサービスを受けて、「誰に」「何を」「どうやって」伝えるかを考えるのが仕事です。でも「なぜやるのか?」までさかのぼって考えると、PRのアプローチも変わってきます。「ブランドの本質的な価値や魅力は何なのか?」「なぜ、このブランドがあるのか?」を野崎や福永たちと一緒に考えました。これも私たちからすると当然のことなんです。

広報・PR 蓑毛萌奈美さん

広報・PR 蓑毛萌奈美さん

野崎:そこでぼくたちは、あらためて「100本のスプーン」の世界観をつくることから思考をはじめました。二子玉川は、家族連れやママと子どもの組み合わせが圧倒的に多く、そのお客さまに喜んでもらえるサービスを提供しなければ意味がない。

そこで新たに「コドモがオトナに憧れて、オトナがコドモゴコロを思い出す。」というブランドコピーをつくり、合わせてフードメニューもゼロから開発し直しました。ほぼすべてのメニューをハーフサイズでも用意し、大人と子どもが同じ食事を一緒に楽しめるようなシーンを演出したんです。

ファミリーレストラン「100本のスプーン」公式サイト(画像提供:スマイルズ)

ファミリーレストラン「100本のスプーン」公式サイト(画像提供:スマイルズ)

ー既存のブランドイメージをつくり直すのは、新たにブランドをつくるよりも大変な仕事のように思います。

蓑毛:そうですね。それは二子玉川店の採用活動にも大きな影響を与えました。そもそも、飲食業界において「100本のスプーン」の知名度はほぼないに等しい。また「Soup Stock Tokyo」と違って、フルサービスを提供する大型飲食店なので、50〜60名ものオープニングスタッフに加わってほしい。どうすれば新しい仲間に私たちの想いを届けられる採用活動ができるのか。これはクリエイティブチームにとって大きな課題でした。

福永:単に人を採用するのではなく、「100本のスプーン」の世界観に共感し、想いを広げてくれる人たちを採用すること。これを採用活動のテーマとしました。大手の求人媒体を活用することも一つの手段ですが、情報は届けられても、ぼくたちの想いを届けることは難しい。そこで採用だけに主眼を置かず、想いを伝えるためのティザーサイトをつくり、自ら情報発信することにしました。どんな人が、どんな想いでブランドをつくっているのかを、文字と写真をとおして伝えようと。

ー具体的にどのような工夫を?

福永:ブランディングのためのティザーサイトでよくある手法は、凝ったデザインとコピーで世界感を演出するというものですが、それだと少し弱いなと感じて。そこで考えたのが、Instagramを使った仕組み。店舗オープンに向けた日々の模様を、関わっているスタッフに自ら撮影してInstagramにアップしてもらい、その写真がティザーサイトに反映するようにしたんです。

テストキッチンでメニューの試作をしている様子や、エプロンのデザインについて試行錯誤している様子をアップしていったのですが、そこで伝えたいのは「スタッフのひたむきさ」。和気あいあいと仲良くしている写真だけじゃなく、ときに熱く議論している写真などもアップしました。まったく飾っていない自然な表情ばかりの、ありのままを伝えることができたと思います。

ファミリーレストラン「100本のスプーン」のティザーサイト(画像提供:スマイルズ)

ファミリーレストラン「100本のスプーン」のティザーサイト(画像提供:スマイルズ)

蓑毛:その結果、面接に来てくれた人のほぼ全員が、ティザーサイトを見てくれていました。しかも「仲間としてお店を盛り上げていきたい」という高いモチベーションを持つ人たちからの応募が多かったんです。「私たちは、なぜこれをやるのか」「どんな人に、何を伝えたいか」という本質を見失わないコミュニケーションをつくれたことが、より良い採用につながったと思います。

体温がある、生きたコミュニケーションを目指して

このように、福永さんや蓑毛さんがスマイルズで行っている仕事の大半は、WEBデザインや広報・PRの技術を駆使したものばかりではない。課題や問題を俯瞰的にとらえ、それを本質的に解決するためのディレクション、あるいはもっと踏み込んで表現すると「カウンセラー」のような役割を担っている。

ー福永さんの考え方は、まったくWEBデザイナーの職域に固執していませんよね。あくまでも顧客やユーザーとの最適なコミュニケーションを大事にしている。

福永:そうですね。もともと前職のころから、「もっと上流から仕事に関わりたい、そうすればもっといいデザインができるのに」という思いがあって、スマイルズに転職したんです。でも、それはまだまだ甘かったなと、いまではしみじみ思います。

「ものづくり」を深く追求していこうとすると、WEBの技術・知識だけでは到底追いつきません。幅広い好奇心と思考力を持ち、専門外の領域にもどんどんアクセスしていくことで、どんな問題にも打ち勝つスキルを身につけることができるのではないかと。

野崎:代表の遠山がよく言うのは、「この先にいる誰かとつながるために、さまざまな想いをどうやって届けるか」「誰かが抱いている想いをどうやって汲み取るか」。ぼくらにとって「Why」「What」を追求することは当然ですが、「How」もアウトプットすればいいわけでなく、そのクオリティーも重要。ぼくは、それを「思考と実行」と呼んでいます。だからこそ、これからは何かを表現し、伝えるために必要なコミュニケーション手法をすべて扱えるチームでありたい。

smiles_7

ーWEB、グラフィック、映像、広報・PRなど、クリエイティブに関わるすべての手法を越境しながら、最適解を見出すスタンスが大切、ということですね。

野崎:そのとおりです。WEBデザイナーであっても、広報であっても思考しなければならない課題は本来一緒であって、縦割りになる意味は1ミリもないんですよね。プロフェッショナルでありつつも、必要となれば店舗にも立つ。これは当然のこと。取締役のぼくでさえ、皿洗いのために店舗に立ちますからね(笑)。仕事の専門領域にとらわれないからこそ、ぼくたちは体温のある生きたコミュニケーションを提供することができると思うんです。

Profile

株式会社スマイルズ

わたしたちスマイルズでは、身近にあるけれど「なんでこーなっちゃうんだろう?」と思うモノ・コトを磨き上げて新しい価値に変えることを「世の中の体温を上げる」と呼んでいます。

1999年当時、女性が一人で入れるファストフードを作りたいと始まった、食べるスープ専門店『Soup Stock Tokyo』。リサイクルショップのように安さではなく、個人の思い出を価値にして交換できないか? という想いから2009年に始まったセレクトリサイクルショップ『PASS THE BATON』。その他にも、ネクタイやレストランなど、既成概念や業界の枠にとらわれず、現代の新しい生活の在り方を提案する事業を自ら作っています。

すべて切り口や扱う商品は違いますが、「生活価値の拡充」という理念――生活自体に価値を見出して、立ち止まって見つめ、少しでも生活を拡げて充たしていけるお手伝いをしていきたいという想いは、創業当初から変わりません。

近年は、自社事業を通して培ってきた知見を活かし、企業や行政などの外部からブランディング・企画・プロデュースを依頼されることが増えてきました。また、個人の想いを形にする社内外のビジネスへの出資など、妄想を実業にしてきたスマイルズならではの取り組みを手がけています。

社内外のビジネスを通して「世の中の体温をあげる」ことを目指しているスマイルズのクリエイティブ本部にて、WEBデザイナーとして活躍してくださる方を募集します。

株式会社スマイルズ

気になる

おすすめ求人企業

PR