ラナエクストラクティブが明かす、創造力を高める独自メソッド

株式会社ラナエクストラクティブ

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ユーザーの共感と発見につながるコミュニケーションデザインを得意とするラナエクストラクティブ(以下、Rex)。WEBサイト、プロモーションの企画提案・実施、デジタルサイネージ、ワークショップ開発、店頭連携施策など、さまざまな手法で優れたクリエイティブを生み出している。

その背景には、スタッフ個々の特徴と能力を活かしきる、同社ならではのメソッドがある。アジャイル開発の手法を仕組み化した「JAM」、プロジェクトの予算にとらわれず大胆なアイデアを生むための「VC」など、ユニークな手法が満載だ。

それらはトップダウンではなく、現場のメンバーたちが自ら提案し、全員で実践するなかで根づいていったものだという。「ボトムアップ型」の理想形にも思える組織づくりの秘密について探るべく、シニアプランナーの魚住勇太さん、アートディレクターの今冨紗和子さん、シニアエンジニアの西尾康平さん、プロデューサーの松野陽介さんにお話をうかがった。
  • 取材・文:榎並紀行(やじろべえ)
  • 撮影:有坂政晴(STUH)
  • 編集:服部桃子(CINRA)

メソッドその1「JAM」。全員でタスクを仕分け、プロジェクトの自律性を最大化する

―まずは、Rexの仕事内容について教えてください。

松野:もともとはデジタル系のクリエイティブエージェンシーとして、WEB制作およびWEBを使ったプロモーションを強みとしてきました。現在はそれらに加え、地域のブランディング、企業の新規事業開発支援、メディアの立ち上げから運営までアプローチを広げ、総合的なクリエイティブを担っています。スタッフは現在40名ほどで、アカウントチーム、デザイナーチーム、プランナーチーム、テクニカルチームと職域ごとに分かれています。

アカウントチームのサブチーフ / プロデューサー松野陽介さん

―質の高いアウトプットを生み出し続ける背景には、Rex独自のメソッドがあるとうかがいました。代表的なものを挙げていただけますか。

松野:プロジェクトを進めるにあたって、最も大きな軸になっているのが「JAM」という手法です。ジャムセッション(楽譜、アレンジにとらわれず即興的に演奏すること)のように、みんなで話し合い、プロトタイピングをしながらかたちにしていくやり方ですね。

―具体的に、どんなやり方なのでしょうか?

魚住:何かしらのプロジェクトを始める際には、はじめに、それに関わる全員で「目標達成に向けてやるべきこと」を白紙のカードにばーっと書き出します。カードはデジタルな仮想のものでも、リアルな付箋などでも構いません。

書き出す時点では、それを誰がいつやるかは一切考えません。それを最初に考えてしまうと、みんな守りに入ってしまいますからね。そして出そろったカードのなかから、各々がやりたいものを自分で引いていく。それがプロジェクトのキックオフになります。

その後、週1ないしは隔週で集まって進捗状況を振り返るとともに、毎回カードを「次にやること」「次の次」「その後」の3つのグループに分け、「次にやること」のカードをみんなで取り合います。このサイクルを高速で回すことで、状況に応じて変化するプライオリティーに対し、柔軟に対応できるわけです。いわば、コミュニケーションデザインにおけるアジャイル的な手法を仕組み化したものですね。

シニアプランナーの魚住勇太さん。Rexにはアート分野、研究者としての活動の傍ら、週2回勤務している(ハーフフリーランス制度)。「自由な働き方ができるのもRexの魅力です」

シニアプランナーの魚住勇太さん。Rexにはアート分野、研究者としての活動の傍ら、週2回勤務している(ハーフフリーランス制度)。「自由な働き方ができるのもRexの魅力です」

―なぜ、そのような手法をとっているのでしょうか?

魚住:プロジェクトにはさまざまなやるべきことがありますが、それらが可視化されていなかったり、誰が何をやるかが明確でなく「お見合い状態」になってしまいがちだと思うんです。特にバタバタしてくると、「これ、誰がやるの?」という事象が必ず出てくる。そうなると、やるべきことに気づいていても誰も言わなくなり、大事な要素がこぼれてしまう。そこで、JAMのような手法を使うことで、タスクを効率的に、かつポジティブに分け合うことができるんです。

松野:ちなみに、カードに書かれたタスクは、自分の職域以外のものを選んでもOKです。たとえば、エンジニアがデザインに関わるカードをとってもいい。

―職域にとらわれず、多様な視点やアイデアが集まる。社内のリソースを、余すことなく活かしきることができそうです。

松野:そうですね。ぼくもアカウントチームに所属しながら、ときどきは企画に意見することもあります。最終的には自身のプロフェッショナルな領域を担当することが多いのですが、専門以外のタスクを「気軽に」とれるのはいい環境だと思います。

西尾:できるかどうか若干あやしくても、いったんチャレンジできるのがいいですよね。仮にできなかったとしても、次のミーティングですぐさまその専門領域の人にフォローアップしてもらえます。

ぼくの本職はエンジニアですが、とあるサービスのユーザーテストで参加者に内容を説明するための紙芝居をつくったことがあります。じつは、前職で絵コンテを描いていたこともあったので手を挙げました。現在の職域には関係ない、ちょっとしたスキルを活かせるのもいいですね。

テクニカルチームのサブチーフ / シニアエンジニア西尾康平さん

テクニカルチームのサブチーフ / シニアエンジニア西尾康平さん

メソッドその2「VC」。案件の予算に縛られず、自由な発想を育てる

―JAMのほかにも、Rexならではの制度やメソッドはありますか?

魚住:バーチャルコスト(以下、VC)という制度があります。年間でそれなりにまとまった金額を「バーチャルの予算」として確保し、必要に応じて個別のプロジェクトの予算に上乗せするものです。

たとえば、チャレンジングな試みを提案したくても、予算枠を優先せざるを得ないケースはどうしても発生します。結果、確度優先のアイデアに落ち着いてしまう。このため、新たな価値創造を仕組み化しないと、いつか我々は化石化してしまいます。そこで、VCの申請制によって助成し、挑戦のハードルを引き下げているんです。

―それは、たとえば「予算500万円の案件にVCから100万円を上乗せして、600万円分の仕事ができるようにする」といったイメージでしょうか。

松野:そうですね。より詳しくいうと、追加資金を会社が負担するというわけではなく、稼働工数を売上に計上し、さらに稼働した分もしっかり各プレイヤーの評価に反映するということです。

魚住:Rexでは「LEAP!(跳躍)」というスローガンを掲げていて、一足飛びに「跳躍」するように未知なる体験をつくっていきたいと考えています。そのためにはつねに挑戦をする姿勢が必要ですが、実際に挑戦できる環境を整備しないと単なるお題目だけで終わってしまいますよね。

未知の挑戦って、真っ暗な闇のなかにジャンプするのに似ていると思うんです。真っ暗なうえに、その先にはたまに落とし穴があったりする。しかも、遠くに飛べば飛ぶほど、穴は増えていきます。だから、怖くてなかなかLEAPできない。

そこでVCやJAMのような制度があると、いきなり飛ばずに「石を一回投げて様子を見る」ことができる。コンという音がして、こっちの方向には穴がなさそうだから一歩だけ進んでみようと、そういう動きができるわけです。

―実際にVCが有効に活用された事例はありますか?

魚住:ソニー・ミュージックエンタテインメントさんと企画から共同で「VOLLY」というプロダクトをつくったのですが、まさに「VCオン案件」を象徴するものですね。

これは、転がすと音がなる、キッズ向けのガジェットです。当初の予算では絶対に実現できませんでしたが、私たちは、Rexがコストを負担してでも挑戦する意義があると考えました。結果、プロダクトやコミュニケーションにまつわる知見を獲得でき、会社としてWEBの外へ踏み出して案件を広げていくきっかけにもなりました。

子どもが楽しみながらプログラムを学べる「VOLLY」。周囲の音や声を録音し、地面を転がすことで音が鳴る。Rexは企画やイベント脚本・ハード及びプログラム開発など、トータルで担当

子どもが楽しみながらプログラムを学べる「VOLLY」。周囲の音や声を録音し、地面を転がすことで音が鳴る。Rexは企画やイベント脚本・ハード及びプログラム開発など、トータルで担当

松野:「PARFUM ROPÉ」も良い例ですね。これは、新カテゴリ製品のローンチにあたり、プロモーションとしてポップアップイベントを実施した案件でした。

担当するにあたり社内で話し合ったところ、とても良いアイディアが出て。未知の部分も多々ありましたが、だからこそチャレンジしたいと思ったんです。そこで、先方に「うちにはVCという制度があり、それを社内で利用する前提でこのプロジェクトを進めたい」ということまで説明し、見事実施につながりました。

ボトルを模したポップアップストア。ユーザーがボトルを覗くと、ディスプレイやディフーザーなどが反応し、香りの世界を体感できる

―それなら個別の案件ではペイしなくても、十分にやる価値はありますね。それに、プランナーやデザイナーのモチベーションも上がりそうです。

今冨:そうですね。初動の見えにくい部分の働きもきちんと評価される安心感からか、自信を持ってプラスアルファの提案ができるようになりました。

私も、これまでは予算の枠に縛られがちというか、「これくらいのデザイン、演出なら予算内に収まるかな」という考え方をしてしまうことがありました。でも、VCを活用することで、予算をすっ飛ばして幅広い発想ができるようになりましたね。これまではA案とB案とC案を出していたところを、3つ目のC案はかなりチャレンジングな「Z案」に変えてみるとか。自由度が各段に上がりました。

デザイナーチームのサブチーフ / アートディレクター今冨紗和子さん

松野:人員的なリソースの問題でZ案が出せず、コンペもなかなか通らない時期もあったのですが、VC制度を導入してからはうまく回るようになりましたね。

メソッドその3「Rex Air」。PDCAを回し続けて、本当に役立つ制度のみ残す

―こうしたユニークな制度は、どのようにして生まれるのでしょうか?

魚住:毎週の定例会議で提案されることが多いですね。「こんなのやってみませんか」と自発的に発表する人が多いですし、それを受ける会社側にも「じゃあ試しにやってみようか」という文化が根づいていると思います。

松野:あとは、「Rex Air」という年2回のオフサイトミーティングの場でも、新しい制度が生まれています。Rex Airは、毎回テーマを決めて会社の未来についてスタッフ同士でアイデアを出し合い、一緒に考える場です。ちなみに、欠席禁止の全員参加で、1日みっちり話し合います。

―その場で、制度の振り返りや見直しも行われるのですか?

今冨:Rex Airは現状を振り返るというより、「未来に向けて突き進むためのアイデア」を出す場という位置づけです。そのため、現状の制度に不備や不満を感じている場合はあらかじめ改善策をまとめ、Rex Airの場でリニューアル案を提示するようなイメージですね。そうやってブラッシュアップを重ね、実際の業務でしっかり機能するものだけが制度として定着していきます。逆にイマイチなものは、自然と消えていきますね。

一人の「天才」より、それぞれの創造性を活かせる組織でありたい

―スタッフの業務に役立つものだけが残るから、皆さんがクリエイティブに集中できるんですね。ところで、Rexにはどんな人がマッチすると思いますか?

松野:オールラウンダーよりは「でこぼこがある人」のほうが合っていると思います。それはスキルでも趣味でもいいのですが、明確に好き・嫌いや、得意・苦手がハッキリしている人がマッチするんじゃないでしょうか。

西尾:そういう「でこぼこがある人」が働きやすい職場でもあると思います。

たとえば、ぼくは初対面の人とコミュニケーションをとるのが苦手なんですけど、違うところを伸ばせば認めてもらえる。不得手な部分があっても、別のはみ出した「何か」があればよくて、その部分をほかの人のパーツとくっつければ強いチームになる。そんな考えが浸透しているように思います。

今冨:私が所属するデザイナーチームも、何でもこなせる人より、特定分野に秀でている人のほうが多いですね。グラフィック出身の人、WEBしかやってこなかった人、さらには得意とするデザインの方向性もさまざまです。案件ごとに、それぞれのデザインの傾向を考慮して、相性のいい人をアサインしてくれるので、各々が実力を発揮しやすい環境だと感じます。

デザイナーってモチベーションに左右されやすくて、ノっているときにはすごくいいアウトプットができると思うんです。でも、自分の得意なデザインとあまりに異なるアウトプットを求められると、途端にパフォーマンスが落ちてしまう。その人らしさを活かしてくれるのは、とても有難いですね。

松野:何かしらの個性や得意分野を持っているうえで、さらに柔軟性があると良いですね。自らの主張に固執せず、周りの意見にうまく乗っかれる人。自分の得意分野と仲間の得意分野を上手にくっつけられる、くっつけようとする意志がある人と一緒に働きたいです。

―魚住さんはいかがでしょう?

魚住:ブライアン・イーノというイギリスの音楽家は「genius(天才)」と対比する存在として「scenius(シーニアス)」という造語を提唱しています。クリエーションにおいては大きく分けて2つのスタイルがあり、一つは類まれな才能を持つ天才に依存するスタイル。もう一つが、創造性を持った個人の集まりが各々のバックグラウンドを連鎖させることで物をつくっていくシーニアスなスタイル。そして、Rexは完全にシーニアスな人たちの集まりだと考えています。

もう少しわかりやすくいうと、ジーニアスは『三国志』です。張飛や関羽など、スーパーな武将が圧倒的な力を誇示して戦う。一方、『水滸伝』はシーニアスです。梁山泊という岩山に、さまざまなバックグラウンドを持った者たちが集まってくる。彼らがお互いの事情を踏まえつつ、力を合わせてレジスタンスしていく。

―Rexもそんな、水滸伝のような組織だと。

魚住:はい。ですから、Rexには大御所の「先生」はいらないんです。そういう人に居座られて、従来のやり方をずっと曲げずにやられると困ってしまう(笑)。シーニアスな人がたくさん来てくれると、さらに強い組織になるのではないかと思います。

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    株式会社ラナエクストラクティブ

    私たちラナエクストラクティブは、2007年に設立したコミュニケーションデザインカンパニーです。デザイン、テクノロジー、PR、学術分野など様々な視点を持ったプロが在籍し、世の中の課題をクリエイティブで解決することを目指しています。

    ソリューションは、WEBサイトや印刷物の制作・プロモーション企画実施・メディア運営・映像や音楽の制作・ワークショップ設計・メディア運営・イベント連携など、多岐に渡ります。

    デジタル発想を強みとしていますが、ソリューションはその時々でさまざま。なぜなら、課題の本質を見極めそれを解決しようとすると、思ってもみなかったところに行き着くことを私たちはよく知っています。

    時には大手企業と、時には官公庁や自治体と、時には教育機関と「普通の未来」を「ワクワクする未来」に変えられるよう、悩みながら本気で向き合っています。

    発注側・受注側という枠を超えて、プロジェクトに関わるすべてのメンバーが、楽しみながら、想像を超えたところへいく。
    そして、社会にその価値と楽しさを伝える。そんな姿勢を大切にしています。

    自分のスキルをもっと活かしたいと思っている方、新しい発想のクリエイティブを生み出したい方、私たちと一緒に、ちょっといい未来を作りたいと思ってくれる方を歓迎します!

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