
制作会社がクライアントを選ぶ時代へ。NEWPEACEが請けるのは「社会を変える仕事」だけ。
- 2016.12.30
- FEATURE
PR
- 取材・文:阿部美香
- 撮影:永峰拓也
ただの広告ほどダサいものはない。大事なのは、新しいビジョンを創って社会課題を解決すること。
NEWPEACE代表の高木さんは、大手広告代理店出身。しかし「未来を幸せにしないような企業活動も無理矢理良いところを見つけて伝えなければならない」という広告業の使命に疑問を感じて1年で退社。その後自らが旗振り役となって、シェアハウスやネット選挙解禁運動など様々なソーシャルムーブメントを仕掛けた後、NEWPEACEを創業。まず会社のポリシーとして「誰と仕事するか」、「新しいコンセプトがあるか」、「どんな社会課題を解決できるか」応えられる仕事だけをしようと決めたという。
高木:僕はこのCINRA.JOBを見ているような人に言いたいことあるんですよ。それは、なんでそんな素晴らしい制作スキルがあるのに、クライアントを選んでないんですかってこと。例えば、買い替えを促すために企業のエゴで不要な機能が付け加えられた家電とか、よく分からない不動産とか怪しい商材って沢山あるじゃないですか(笑)。本当にそれが売れたり広まったりして誇らしいですか、と言いたい。結局、広告代理店を筆頭に、クリエイティブワークが経済活動の奴隷になってしまっているんだと思うんです。本当は、ビジョンを具体化する最も重視されるべき仕事のはずなのに。僕はそんな状況を変えたいんですよ。

代表 高木新平さん
NEWPEACEでは、いわゆる単発の制作案件はすべて断るという。それどころか、相手は経営者、年間フィー+制作費での契約を基本とし、案件によってはNEWPEACEから出資を持ちかけることもあるという。
高木:僕は上場を控えたベンチャー企業を相手に、企業ロゴとかスローガンとかいわゆるCI(Corporate Identity)開発をやっていたんですけど、制作するだけじゃ何も変わらないんですよね。むしろビジョンを具体化するためには、大胆なアクションを仕掛けることが必要。でもそれには、クライアントの意思決定と長期的なコミットが不可欠です。そういうビジネスコンディションを作ることが重要だと思っていて、だからNEWPEACEではクリエイティブディレクター=営業という位置付けにしているんです。フィーと制作費をしっかりともらい、エージェンシーとプロダクション機能を、一気通貫でやれることに価値があると思っています。
クライアントではなく社会を見て仕事をする
「新しいビジョンを創って社会課題を解決する」を体現する仕事のひとつに、DeNAとZMPのジョイントベンチャーで自動運転タクシーのサービス提供を目標とするロボットタクシー社のブランディングがある。2020年、公道での完全自動運転実現を目指して、NEWPEACEはクリエイティブパートナーとして、企業理念からブランドイメージ、PR施策まで一貫して構築した。論点は、自動運転実現の壁になっている道路交通法をいかにして改正の流れに持っていくかだったという。
高木:無人タクシーが社会にとってどういう存在なのかは、社内でも明確になっていませんでした。自動運転という技術自体インパクトがあるので、東京でプロモーションするなど様々な案が錯綜していたんです。その中で、本質的価値は「移動を楽にすること」だと定義し、電車やバスが消滅していく過疎地域を舞台に、コミュニケーションを展開することにしました。700万人ともいわれる「移動弱者」を救う存在としての「ロボットタクシー」。それが当たり前になる2020年の未来をムービーで描き、実証実験を行うキャンペーンです。これが政治家や自治体関係者にまで波及し、安倍首相にもムービーを見て頂けました。最終的に、政府が2020年までに自動運転を実現すると宣言するまでに至っています。
小川:自動運転は確実に訪れる未来なんです。ただ、世間では自動運転が一般化した世界がイメージできていないがために、既得権益を守る人と恐怖論を唱える人の声が大きくなりがち。もう少し広い視点に立てば、実現することによって解決する社会問題も多いはずです。最近、高齢者の自動車事故がよく話題にのぼりますが、車がないと生活できない人々がいること自体がそもそも問題の本質なのではないかと思っています。その解決策として自動運転という解があり得るということを、社会的な議論を先取りして、誰にでもわかる形で提示できたという自負はあります。NEWPEACEはクライアントワークをしていますが、見ているのは自分たちにとっての目先の利益ではなく、社会にとっての利益です。でもそれが最終的にクライアントの利益になる、そんな時代がきていると思うんです。

テクニカルディレクター 小川楓太さん
クリエイティブを武器とした会社が政治領域にアプローチするのは、日本では特に珍しいが、NEWPEACEは積極的にチャレンジしているという。
高木:日本は政治や宗教に関する教育が欠落しているから、みんな食わず嫌いしているけれど、政治は世の中の感情を取り扱う仕事だから、本来は僕らのような人間が価値を発揮すべきフィールドなんです。実際に、アメリカ大統領選を見ていると、すごく刺激的じゃないですか。一流のディレクターやデザイナー、エンジニア、データサイエンティスト、PRプランナーが集結して、世界最高峰のクリエイティブ合戦が行われている。ああいうことを日本でもやりたいんです。国民全員を相手に、未来についてコミュニケーションし、結果として世の中が動くというのは、いちばん難しくやりがいのある仕事だと思うんです。
例えばNEWPEACEでは、シェアリングエコノミーを日本で浸透させるために業界団体を立ち上げて、メディア立ち上げからイベント、まちづくりまで仕掛け、世論喚起することでルール変革を進めています。他にも、国や自治体から頻繁に相談があります。深刻な社会問題は、未来のある若い人にこそ届けるべきなのに、公共領域の人は彼らにどうアクセスすべきなのか分からない。そのアプローチを手助けし、公共領域の価値を引き上げることこそ、NEWPEACEの役割だと思っています。
- Next Page
- 「大胆な発想」「何をやり出すか分からない」クライアントがワクワクするパートナー
「大胆な発想」「何をやり出すか分からない」クライアントがワクワクするパートナー
そんなNEWPEACEの仕事のひとつに、お金のデザイン社が運営する、10万円からスマホではじめるグローバル資産運用サービス「THEO[テオ]」がある。これまで中高年の富裕層を中心にしてきた金融の常識から脱却し、アルゴリズムによる自動化で誰でも少額から投資を始められるサービスだ。その立ち上げからNEWPEACEはクリエイティブパートナーとして参加し、ネーミングからコンセプトメイキング、BI、PR、キャンペーン、WEB、パンフレットなどすべての制作に携わってきた。お金のデザイン社のCMO・馬場康次さんは言う。
馬場:僕は、MicrosoftやGoogleなどの企業に勤め、マーケティングの仕事をしてきました。これまでの経験から、仕事相手として重要なのは自分と違う人間だと思っています。NEWPEACEの人たちは若く常識に囚われてない。デジタル・ソーシャルネイティブで、大胆な発想を持っていて、何をやり出すか分からないところにワクワクしていますね。

「株式会社お金のデザイン」CMO 馬場康次さん
そんな「何をやり出すか分からなさ」を馬場さんが感じたのは、高木さんの、ストーリー性豊かなコンセプト発想の瞬間だったそうだ。
馬場:会議中「思いついた!」と言って急にどこかへ行ってしまって、一気に書いてきたのが、「Goodbye Bank.」という日本人の常識とは正反対のコンセプトでした。さらに、「THEO」は「アウトライヤー(=異端児)」のためのブランドになろうと。そもそも、なぜ誰でも資産運用できるサービスを作るのか。それは “異端”であってもお金の心配をせずに、生きていけるためじゃないかと。それを「THEO」が金融サービスとして異端だということに重ね合わせているんです。金融サービスだからこそ、エッジを効かせるブランドづくりが必要だという考え方は新鮮でした。
また、NEWPEACEとお金のデザインの深いコラボレーションを、馬場さんはこんな例えでも語ってくれた。
馬場:お金のデザインとNEWPEACEさんの関係は、NikeとWieden+Kennedy(ワイデン・アンド・ケネディ)に近いんですよ。彼らは、広告だけでなく、商品であるシューズのアイデアなどについても一緒に考えるそう。NEWPEACEは僕らにとって、Fintechというジャンルで、一緒に社会をアップデートしていくパートナー。最初は僕も、NEWPEACEをブランディングのエージェンシーのような位置づけで考えていたけれど、いまはそれを超えてプロダクト開発や、経営合宿などにも参加する、お金のデザインという会社にとって欠かせない存在になっています。
NEWPEACEの仕事ぶりにも、感じ入ることが多いそうだ。
馬場:最初は数名だった会社が、どんどん成長していく姿を見てきましたが、高木さんの言いなりで動いている人は一人もいない。デザイナーの方も主張が強いです(笑)。言った通りにしかやらない人、クライアントの意見を一生懸命聞いているだけの人は、パートナーとして信用できないし、一緒にやる意味がないですからね。その意味で、僕が考えてもいなかったことを良きフィードバックとして実現してくれるNEWPEACEは、一緒に仕事していてとても楽しい。関わる人全員が刺激し合っていて、いいものが作れているという実感があります。
デジタルアートから雑誌まで。経験がなくても挑戦する制作体制と企業風土
NEWPEACEには、パートナーとして深く広くクライアントに関わる長期的案件が多い。そうなると状況によって最適な企画・表現は変わるため、必然的にアウトプットは多岐にわたるのだという。10人程度の規模でありながら、どのようにして実現しているのだろうか。
高木:基本的には気合いです(笑)。というのは冗談で、多種多様なプロダクション、フリーランスの方々に協力してもらってます。内製化したほうが儲かるのですが、自分たちでできることを念頭に考えると、本当にいいアウトプットができなくなる恐れがあるので。
例えば、ブランディングのお手伝いをしているメンズビューティーブランドの海外進出があり、その一貫で世界最大級の美容展示会にてブースのデザインを行いました。普通はおしゃれな装飾をしますが、僕らは、通る人を凝視し続けるインタラクティブな目玉60個の壁を作りましょう、と提案したんです。ただ時間的にも制作条件的にもかなりハードな内容だったので、このときはデジタルプロダクションのBIRDMANさんにお願いし、タッグを組んで進めましたね。
小川:また雑誌などのメディアを作る場合もあるのですが、そのときはフリーの編集者やライターさんを集めて編集部を作りますし、イベントなどをやる場合は現場のオペレーションを得意な会社さんにお願いすることが多いです。あくまで僕らの価値は社会を前進させるコンセプトを作り、体験に変えていくことだと考えています。
「コンセプトの実験と失敗と発明をしまくる」NEWPEACEが仕掛けるプロジェクト
「『新しいコンセプトがあるか』にこだわっている」という、高木さんの言葉は、現在、小川さんが中心となって開発中の自社プロジェクト「VWALL(ヴィウォール)」にも繋がっている。これは、最小でも60インチディスプレイ8枚程度の大きさの巨大ディスプレイを、オフィスのエントランスの壁に敷き詰めたデジタルサイネージシステム。そこにリアルタイムでアニメーションに変換されるインターネットを介して取得された情報や、企業のアイデンティティーを表現したアニメーション、ムービーなどが表示されるという。システムとコンテンツの両方をNEWPEACEで開発・制作し、セットで販売しようというプロダクトだ。
高木:もともと構想は昔からあったんです。ビジョンを伝えるCIの表現ってどんどん豊かになってきているのに、使う場所はWEBか名刺かパンフレットか……と非常に限られていてもったいない。それじゃ、どんなに展開を考えてもプレゼン資料の上でしか成立しない、デザイナーの自己満足で終わってしまう。さらに、どのクライアントと話をしても、オフィスのエントランスをどう個性的に演出するか悩んでいる。だったら、CIをアクティブに見せる比較的低コストなデジタルサイネージシステムを作れば、みんなのニーズに合致するなと思ったんです。
小川:例えば、渋谷ヒカリエなどもそうなのですが、大きな商業施設ではエントランス演出の一環として様々なデジタルサイネージを作っています。しかし、結局は一点物なのでコストが高すぎて多くの企業では導入できないのが現実です。その問題を解決するために、様々な環境で活用できる汎用性の高いシステムを目指しています。
現在はシステムを開発中。2017年の春には初期モデルが、NEWPEACEがブランディングを行っている、シェアをテーマにした永田町のビル「GRID」に導入予定とのこと。このビルもまた、イシューにこだわり手法に囚われない、NEWPEACEらしい取り組みだ。
また最近では、市販予定のリアルプロダクトも開発中とのことで、NEWPEACEの仕事の領域は急速に広がっている。今後の展望を、高木さんはどう考えているのだろうか。
高木:時代を創る仕事がしたい。新しいコンセプトを提示し、社会の凝り固まったルールから人々の創造性を解放したいんです。そのためだったら手段や方法は何でもありなのが、NEWPEACE。2017年は、受託だけではなく自社事業も投資も境目なく仕掛けていきます。だから、ただ受け仕事をこなすような人はチームに必要ありません。クライアントに答え合わせするようなクリエイターではなく、社会に問いを投げかけていくクリエイターがいい。そんな人には最高の環境だと思いますよ。「社会を変える仕事」にフォーカスしてますから。クリエイティブを仕事にしながら、クライアントやスキル、アウトプットに囚われてしまっている、そんな状況に健全な疑問と強い意思を持っている人は、ぜひ一度NEWPEACEに遊びに来てほしいです。
Profile

NEWPEACE Inc.は「思想をカタチにする」クリエイティブ集団です。
「思想をカタチにする」とは、ビジョンを描き、具体化することによって、想いを社会の共通認識にしていくこと。私たちはそれを“VISIONING”と呼んでいます。
何かを実現したいリーダーの想いを受け止め、新しいコンセプトを開発し、最適なアプローチによって様々なアプトプットに変えていく。デザインやエンジニアリング、コピーライティング、映像制作、空間演出、キャンペーン展開など、手法にはこだわりません。
クライアントは大手企業からITベンチャー、政治・行政まで様々ですが、基本的には「社会を前進させるコンセプト」を発明・実装できる仕事しかやらないというルールを決めています。ですから、新しい概念や文化に関わるようなワクワクするプロジェクトばかりです。
さらに最近では、自社でリアルプロダクトブランドの立ち上げや新たなビデオウォールの開発なども行っており、クライアントワークの業態を超えたクリエイションを行っています。