「違和感」が唯一無二のデザインを生む。マサムネのデザイナー哲学に迫る

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『ファイナルファンタジー』、『キングダムハーツ』、B’z、ONE OK ROCK、ディーン・フジオカといった誰もが知っている作品やアーティストの商品パッケージ、プロモーションツールなどのデザイン制作を手がけてきた株式会社マサムネ。得意とするのは、ずばり「シックでかっこいいデザイン」だ。同社の制作物には、どれも独特の「マサムネらしさ」が漂う。その背景には、クリエイティブをとことん突き詰める同社の「デザインの哲学」があるという。代表の中園さんと主要デザイナー4名にお話を伺った。
  • 取材・文:田嶋章博
  • 撮影:公家勇人
  • 編集:吉田真也(CINRA)

デザイナーとして、いろんな物事に対して自分なりのこだわりや考え方を持つべき

エンタメ業界において、新商品にまつわるすべてのクリエイティブワークを丸ごと任されるほど、幅広い領域を手がけるマサムネ。なかでも、もっとも得意としているのがパッケージデザインである。ゲーム・アニメ・映画・アーティストなどの作品のイメージを決定づける重要な仕事だ。コアなファンが多い作品ばかりのため、ハッと驚くようなアイデアやデザイン力が必要とされる。

中園:ある作品のプレミアムBOXの仕事では、制作期間が2年に及んだこともあります。エンタメ領域のデザインは、さまざまなメディアで取り上げられたり、SNSで話題になったりと、たくさんの人の目に触れます。自分がこだわり抜いてつくったものが、多くの人に届いたことを知るとやっぱり純粋に嬉しいですよね。

また、最近は国内だけでなく、グローバルに商品販売計画を展開する作品のデザイン案件も増えてきています。世界に展開していくなかで、現地製造を視野に入れる際には、各国の印刷機の種類や印刷技術、紙質などをふまえてデザインを設計していくこともあります。各国での好みも違うので、世界中に展開されることを考慮してデザインや設計に挑めるのは、デザイナーとしてものづくりの視野も広がりますよね。

代表取締役/アートディレクターの中園亮太さん(画像提供:マサムネ)

代表取締役/アートディレクターの中園亮太さん(画像提供:マサムネ)

受託案件でデザイン業務を遂行するクリエイティブ事業部がある一方で、アパレルブランドを自社展開しているのも同社ならでは。元有名ブランド出身のデザイナーが立ち上げたこのアパレル事業部では、クライアントワークでは表現しきれない「マサムネらしいかっこよさ」が存分に溢れたデザインを生み出している。そして、そのファッションデザイナーのこだわりが、クリエイティブ事業部のデザイナーにもいい影響を与えているそうだ。

中園:アパレル事業部では、自社ブランドのブランディングをはじめ、コレクションごとのビジュアル制作、ルックブックの撮影、ホームページ制作、印刷物の手配も社内で行っており、クリエイティブ事業部のデザイナーにも関わってもらっています。

同じデザイナーでも、主にグラフィックを担当しているデザイナーとは異なる「ファッションデザイナー」がいることで、社内にいい刺激が生まれています。専門領域外のデザインに触れることで、自分とは違う発想や感性を見つけることができるので、とてもいい関係性ですよね。

デザイナーである以上、洋服や小物はもちろん、時間の使い方・遊び方・生き方などを含めて、いろんな物事に対して自分なりのこだわりや感性を持つべきだと私は思っています。クライアントからしたら「自分よりデザインにこだわりがなさそう」と思う人に、仕事を任せるのは不安じゃないですか。身の回りのアイテムに、自分なりのデザインのこだわりを取り入れることは、デザイナーの信頼度にも関わると思うんです。

自社のアパレルブランド「SUS-SOUS」

自社のアパレルブランド「SUS-SOUS」

最初に感じる「違和感」こそ、唯一無二のデザインを生むために必要なきっかけ

制作物の形態は多岐にわたるが、デザインには一貫した「マサムネらしさ」が漂う。モノトーンを基調とし、男っぽいロックな空気を醸しつつも、スタイリッシュで突き抜けたかっこよさだ。この独特の尖ったテイストは、いい意味で「違和感」を生み、他社が手がけるデザインとは一線を画す。マサムネの「らしさ」はどのように生まれるのだろうか。

山岸:クライアントにデザインを提案する際は、先方が求めているものをきちんと満たしたうえで、そこにマサムネらしいかっこよさやひねりを加えるよう心がけています。そのエッセンスが、特有の尖りを生んでいるんだと思います。

そして、その独自のデザイン性こそ、マサムネがクライアントから期待されていることでもあります。コンペの結果、たとえ選ばれなくても、「マサムネではこんなアイデアや見せ方もできます」ということを提示できるし、それが結果的にほかの案件受注へのきっかけとなっていきます。

左:チーフデザイナー 吉田慎之介さん / 右:チーフデザイナー 山岸鑑曜さん

左:チーフデザイナー 吉田慎之介さん / 右:チーフデザイナー 山岸鑑曜さん

中園:たとえば、車や家具、パソコンでも、従来のデザインと逆行する新しいモデルが出たときに「うわ、なにこのデザイン!?」って違和感を感じることがありますよね。人は、従来の価値観に沿うものには安心感を覚える反面、新しい価値観を提示してくるものには違和感を覚えると思うんです。

でも、他人が使っているのを見たり、実際に自分で使ってみたりすると、次第にそのデザインが馴染んでくる。最初は反発を受けたとしても、本当にいいデザインであれば、だんだん受け入れられて、多くの人にとって唯一無二の宝物にもなり得ます。

だから、弊社がデザイン制作に取り掛かる際は、ベースの思考ややり方が果たしてベストなのか、ほかの考え方や方法はないのかと、「現状への問い」からスタートします。

斬新なデザインを提案するのは、「違和感」を与えかねないので勇気がいること。でも、その最初に感じる「違和感」こそが重要なんです。それを意識しながら、自信と責任を持ってチャレンジすることが「新しいデザイン」につながる。「違和感」がユーザーに受け入れられたときに愛着が生まれるのだと思います。

古島:その姿勢は、社内のデザイナー全員に共通していますね。ぼくはいくつかの会社を経てマサムネに入社しましたが、入ってすぐに「これまで経験したなかで、いちばん攻めている会社だな」と感じました。そしてその感想は、入社から数年経ったいまでも変わっていません。

デザイナー 古島清正さん

デザイナー 古島清正さん

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プロのデザイナーとして、世の中に届けるための見せ方や方法論もデザインする

プロのデザイナーとして、世の中に届けるための見せ方や方法論もデザインする

「新鮮さにつながる違和感」を大切にしているからこそ、マサムネらしい尖ったデザインが生まれる。デザイナーたちに共通する「攻めの姿勢」の根本には、「デザイナーは、相手の想像を超える思考やアイデアを持ち、それを具現化する力が必要」という中園さんの哲学がある。

山岸:クライアントから言われたとおりのものをつくるだけでは、デザイナーとはいえないと思うんです。クライアントのニーズをふまえたうえで、相手が知らない色や見せ方、アイデアを提示する。「自分たちだけでは考えつかないものができあがった」と言われる仕事をすることが、プロのデザイナーの役目だと思うんですよね。

中園:それが実現できている結果として、ここぞというときにぼくらにご相談してくださるクライアントさまがいらっしゃるのだと思いたいですね。

また、デザイナーという職業が若い世代の人たちにとって「憧れの職業」であってほしいという想いもあります。デザイナーは、普通の人には思いつかないものを生み出し、社会貢献や経済活性化に貢献できる。人に喜びや幸せを提供する素晴らしい職業だと思います。その役割を果たすからこそ、相応の対価が得られることを示したい。それを体現することで、うちで働く若手デザイナーや、これからデザイナーを志す人たちに夢や目標を見せ続けたいんです。

そのためには、独創的なアイデアやデザインを生み出し、弊社ならではの付加価値を与える仕事をし続ける必要があると思っています。

中園さんの理想とするデザイナー像やデザイン哲学は、社内にも浸透している。とはいえ、当然ながらビジネスの現場では、デザイナーの提案がすべて通るわけではない。受託案件の場合、どんなにデザイナーの自信作であっても、クライアントが納得しない限り、それが製品として形になることはない。その部分の折り合いは、どうつけているのだろうか。

中園:当然、クライアントの意向や商品の目的を度外視した「見た目がかっこいいだけ」のデザインでは、こちらのエゴになってしまいますよね。また、押しつけがましい提案をするつもりもありません。あくまで先方が納得し、ビジネスとしても成功をイメージできる形に落とし込む必要がある。要は見た目のかっこよさだけでなく、デザイン性・時代性・機能性・品質面、そしてビジネス面を含む「意図のあるかっこよさや、センスの良さ」を提案できるかどうかが、マサムネのクリエイティブワークだと思っています。

吉田:抑えの案と攻めの案の両方を提案することもよくありますね。まずは「おっしゃっていた要件をすべて満たしたものをお持ちしました」と抑えの案を提示する。そのうえで「でも、こんな新しいアイデアややり方もあるかもしれません」と、弊社ならではの攻めの案を提案するんです。

突き抜けたアイデアや感性をデザインに落とし込むだけでなく、それをクライアントや世の中に届けるための見せ方や方法論もデザインする。それこそが、デザイン会社として高いバリューを発揮し続けるために必要なことではないでしょうか。

自己満足ではない、クライアントを納得させる思考力とデザイン力が身につく

マサムネではアートディレクター、チーフデザイナー、デザイナー、アシスタントデザイナーがひとつのチームを組み、各プロジェクトを遂行していく。さまざまな立場や経歴のデザイナーと仕事をともにすることで、発想力や感性、スムーズな仕事の進め方などを学ぶことができる。

高橋:デザイン面で尊敬できる先輩が多いのは勉強になりますし、刺激にもなりますね。また、チームで動くといっても、個々のデザイナーに任される仕事の幅は大きいので、デザイナーとして成長できる環境だと感じます。クライアントとのやりとりから任せてもらえますし、相手を納得させる「自己満足ではないデザイン力」が身につきます。デザインを突き詰めたい人にとっては、とても居心地がいいと思います。

デザイナー 高橋絵梨奈さん

デザイナー 高橋絵梨奈さん

古島:逆に、仕事やデザインに対して受け身な人には厳しい環境かもしれませんね。デザインが好きで能動的に仕掛けていきたいという人にはぴったりハマる環境ではないでしょうか。

高橋:仕事は各々の特性と希望をふまえて任せてもらえます。あくまで「一人のデザイナー」として見てもらえるので、後々のデザイナー人生をふまえ、若いうちにキャリアを積んでおきたいという人にとってはいい職場だと思いますね。

中園:デザイナーからアートディレクターにステップアップするには、デザイン力だけでなく、コミュニケーション力、マネジメント力なども必要。だからこそ、デザインだけではなく、人間性や社会性も磨き続けられる環境づくりは、つねに意識しています。

そして、ずっと心に決めているのは、どんなに会社が大きくなっても、能動的にデザインを行う「クリエイティブカンパニー」であり続けるということ。もし弊社が「つくらされる」とか「やらされる」という感覚で、「作業」をするような組織になったら、志の高いデザイナーも育たなくなり、一気に色あせてしまうでしょう。

だからこそ、遊び心やチャレンジ精神を持ってデザインにとことん向き合いたい。「楽しくクリエイティブを突き詰めること」をこれからも大事にしていきたいですね。

  • Profile

    株式会社マサムネ

    マサムネはブランディング戦略を基本思考とし、ロゴ制作からキービジュアル、パッケージ・WEBデザイン、印刷、イベント企画まで様々な企画・制作を手がけています。ジャンルを限定することなく、アニメ・ゲーム・音楽・ファッションとエンタメ系が得意分野です。

    他社と違う個性は、エンタメ作品の限定BOXなど、パッケージ・デザインの第一線を走り続けていることにあるかもしれません。そこには、意外と知られていないパッケージ制作の魅力があります。

    たとえば、アニメやゲーム系の人気タイトルにはコアなファンが多く、デザインへのこだわりを求められることが実は多いのです。中には、3年にも及ぶ制作期間で作り上げたプレミアムBOXなんかもあるんです。「どんな形状がいいか?」「手に持ったときの重さ、触り心地は?」「取り出し方のギミック・演出は?」など、コレクター心をくすぐるものづくりのため、多くの経験と新しいアイデアを取り入れて、丹精込めて作っています。

    どの制作でも大切にしている、“マサムネらしさ”があります。それは、安定感のあるデザインではなく「新鮮さにつながる違和感」を編み出すこと。たとえばゲーム商材であっても、ゲームっぽくないテイストだと喜んでもらえるのは、普段からエンタメ・カルチャーをはじめ、国内外を問わずあらゆる分野の経験から審美眼を磨いてきているため。

    こうしたデザインの引き出しの多さがクライアントからの期待につながり、今では大きな仕事もどんどん増えています。最近はコンセプト作りからアウトプットの提案、実制作はもちろんのこと、納品にいたるまでワンストップで請けられる体制へと拡大しました。

    また、安心感のある取引のためプライバシーマークを取得していたり、社員への福利厚生にも力を入れていたりと、制度・環境面も充実させています。社員研修では、全員でハワイやバリ島へ行きました。エンタメ好きな方も、誰かの「宝物」になるようなものづくりがしてみたい方も。安心して飛び込んでいただける環境です。