アイデアと実現の橋渡しをする。イメージソースにおけるディレクターの働き方

株式会社イメージソース

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デザイン×テクノロジーの可能性を追求し、新しいクリエイティブを創出し続けているイメージソース。デジタルに特化した「体験型」のものづくりを得意とし、ウェブサイトやアプリ開発から大規模なインスタレーション、デジタルサイネージなどを手がけ、国内外から高い評価を受けている。同社クリエイターのアイデアを世に出すために欠かせない存在が、ディレクターだ。ときに社内の意見を外に伝える通訳になったり、プロジェクトの旗振り役になったりと、その役割は多岐にわたる。クリエイターファーストに見えるイメージソースのなかで、ディレクターとして働く醍醐味はどこにあるのだろうか? 同社のディレクターをはじめ、エンジニアとデザイナーの3名に話を聞いた。
  • 取材・文:大狼章弘
  • 撮影:大畑陽子
  • 編集:服部桃子(CINRA)

エンジニアやデザイナーの想いを言語化し、クライアントに納得してもらう

イメージソースは、創立当初からR&Dに力を入れているため、エンジニアやデザイナーが新しい技術やアイデアを実現しやすい。しかし、それを実際の案件に落とし込むためにはディレクターという橋渡し的存在が不可欠だ。具体的に、どのような役割をはたしているのだろうか。

池子:まずは、エージェントやクライアントから依頼をヒアリングし、その内容をもとにどのようなアウトプットが良いかを社内でまとめていくことから始まります。ケースバイケースですが、社内のエンジニアやデザイナーとチームを組み、それぞれの分野からアイデアを持ち寄り、ブレストを重ね企画を練りあげていくことが多いですね。

ディレクターの池子英興さん

ディレクターの池子英興さん

たとえば、企業のコーポレートサイト制作では、企業側にイニシアチブがあり、制作会社側が考えたユニークなアイデアを反映しにくい場合もある。実績のひとつ、TDK株式会社のコーポレートサイト制作においてもいくつかの課題があったという。

池子:この案件では、クライアントからいくつかのレギュレーションを課せられていました。一つ目は、すでに制作済みの事業のコンセプトムービーがあり、その素材を使うこと。二つ目は、日本語以外にも英語、中国語対応のサイトにしたいから、テキストメインではなく、ムービーをメインに企業のメッセージを伝えたいということ。

また、セキュリティー対策など技術的なところでもレギュレーションがあり、そのなかでどんな提案ができるかが課題でした。

社内に持ち帰り、デザイン担当の小山さんと相談し、7つのムービーをホイール型のデザインに収めるユニークな案ができあがった。

小山:ムービーがメインということだったので、YouTubeをはじめ、動画再生サイトのUIを研究して、どうやったら直感的に伝わるのかを徹底的に考えました。何個かバージョンをつくりましたが、ホイールの周りに動画を配置したUIは最初に考えたアイデアでした。

アートディレクター / デザイナーの小山潤さん

アートディレクター / デザイナーの小山潤さん

池子:キャプチャーボタンが並んでいるだけのUIでは、ユーザーは能動的にクリックしようとしません。小山の案は、いかにユーザーの興味を引きつつ、サイト内を回遊してもらえるかという難題を見事にクリアしていました。クライアントにも気に入っていただき、大きな修正もなくローンチまでこぎつけられました。

小山:とはいえ、私だけでは叶えられなかったと思います。このアイデアの面白さを池子とともに先方にしっかり伝えられたからこそ、円滑に進められたのかなと。

梅園:技術職の人は物事を理論で説明しがちです。でも、その分野に詳しくない人にとっては、理論で説明されると逆にわかりづらい場合もある。特にイメージソースでは新しい技術を次々用いているので、ディレクターが介在し、専門的な部分を伝わりやすい言葉で説明してくれるのは、とてもありがたいですよね。

デザインエンジニアの梅園孝さん(左)

デザインエンジニアの梅園孝さん(左)

「企画」と「現実」のちょうど良い落としどころを考える

ディレクターの仕事は、クライアントと制作チーム間の調整以外にもまだまだある。2019年に行われた「AI(エーアイ)だみつを」では、インスタレーションを得意とし、さらに新しい技術を扱うイメージソースならでは経験ができたという。

池子:「AIだみつを」は、ネスレ日本株式会社さんと代理店と組んだプロジェクトです。相田みつをさんの詩を文章生成AIが学習し、ユーザーの心の状態に合わせて、オリジナルの言葉を届けるというサービスで、私たちはEmpath(エンパス)という音声感情解析AIを利用した特設サイトの制作と、ネスレカフェ原宿にてPRイベント用アプリケーションの開発を担当しました。

「AIだみつを」のイベント会場(撮影:イメージソース)

「AIだみつを」のイベント会場(撮影:イメージソース)

池子:私は全体のディレクションを担当したのですが、特に印象に残っているのが、音声感情解析AIの技術検証です。このゴールは、ユーザーがAIだみつをに語りかけ、AIがその声からいまどのような感情なのかを分析してそれに合わせた言葉を生成する、ということでした。

梅園:ぼくはAIを組み込んだアプリ開発を担当したのですが、AIがとったデータをどうやってわかりやすい感情に落とし込むか、という部分が一番大変でしたね。

池子:そう。音声感情解析AIは意図して「嬉しい」「悲しい」といった結果が弾き出されるわけではないんです。エンパスは「言葉」ではなく、「声」の状態を解析し、パラメーター(数値)を出してくれるので、こちらが「感情」を定義して、条件分岐させていく必要がある。でも、エンパスがどういう基準で数値を算出しているのかはわからないんです(笑)。

だから、スマホに開発中のアプリを入れて、自分の声を何回も入力して、結果を全部メモし、分岐を考えていました。社員にも協力してもらい、性別や年齢ごとにパラメーターを分析したりして、なんとかかたちにすることができました。

会場では、語録をラテアートしたドリンクが提供された(撮影:イメージソース)

会場では、語録をラテアートしたドリンクが提供された(撮影:イメージソース)

「AIだみつを」のプロジェクトでは、エンパスの技術検証のほかにも、スマホやラテアートに語録をアウトプットするためのイメージを考えたり、リアルイベントで会場の設備チェックを行ったりなど、ディレクターの担当範囲は多岐にわたったという。

梅園:クライアントからのリクエストも多々ありましたが、そもそもの企画と実際にできることのちょうど良い落とし所を、池子と一緒に見つけることができましたね。

ディレクターが「その技術はそもそも何なのか」「うちがそれを取り入れることで何ができるのか」を把握してくれていることは、技術者にとって、とても心強いと思います。

池子:前職では関わったことのない技術や手法が、イメージソースでは頻繁に用いられています。新しいことに関われるのはとても楽しいけれど、理解するまでが結構大変ですね(笑)。

インスタレーション経験がなくてもOK。多様なバックグラウンドが仕事に活きる

「入社当初はわからないことだらけだった」と語る池子さん。では、それまでどのようなキャリアを積んできたのだろうか。

池子:もともと、大学では空間デザインを学んでいました。在学中はワーキングホリデーでカナダに渡航したり、将来は海外で仕事をしたいと思っていました。そのため、卒業後はシンガポールに支社がある広告制作系のデザイン会社へ入社。営業兼ディレクターというポジションでした。

正直、最初は広告デザインにそれほど興味はなかったのですが、そのうちデザインやコピーに「人を行動に移す力」があることを知り、どんどんのめり込んでいきました。1年後には念願の海外支店へ転勤もできました。

当時のシンガポールは広告に高いクオリティーを求める会社が少なく、営業は苦労したがその分やりがいもあったと語る。その経験を経て、次のステップとして目指したのがイメージソースだった。

池子:空間デザインを学んでいたこともあり、空間を使って体験を拡張できるインスタレーションに興味が湧いたんです。WEBサイトの制作に限界を感じていたのも、理由の一つでした。それで転職を考え、偶然見かけたCINRA.JOBで「海外」「インスタレーション」と検索してみたら、イメージソースがヒットしたんです(笑)。

前職でもプロジェクションマッピングに関わったことはありましたが、イメージソースが手がける最新テクノロジーを使ったインタラクティブなプロダクトとはまったく別物。自分が知らない技術を使って新しい体験を生み出したい。それがイメージソースに入社した決め手でした。

梅園:ぼくもインスタレーションがやりたくて入社しました。前職は広告系のWEBサイトをつくるエンジニアでしたが、次第に、自分がつくったものを使用しているユーザーの顔が見えないことに物足りなさを感じていたんです。

また、基本平面で表現するWEBのデザインは、もはや成熟期にさしかかっていて、まったく新しいものをつくるのが難しい状況にあるというのもジレンマでした。一方で、インスタレーションは立体表現のため、体験したユーザーの顔も見られるうえに、さまざまな可能性を秘めている。そういう表現を学ぶことで、WEB上のコミュニケーションに活かせることがあるかもしれないと思って、入社を決めました。

小山:私は、結構飽きっぽい性格だからここにいると言えるかもしれません(笑)。もともとは書籍制作が中心の編集プロダクションにいて、その後CM制作会社へ転職。でも現場が過酷過ぎて辞めて、映像や写真系の会社の新規事業を手がける部署に入りました。

そこで、新しい事業が世に出るまでを見届けてまた退職。半年ほど海外をぷらぷらしていたときに、漠然とデザインをやりたいと思ったんです。未経験ながらWEB系の制作会社に入社し、デザインについて大方学んだタイミングで、イメージソースに転職しました。

それまで一つの会社に長く勤めたことがなくて、最長で2年ほどだったのですが、イメージソースにはもう4年います。新しい表現にチャレンジすることをつねに求められる環境なので、飽き性な自分にぴったりだと思っています。

相談しやすい環境だから、気持ち良い「交渉力」が身につく

インスタレーションそのものや、新しい領域にチャレンジすることに興味を持ったスタッフが所属するイメージソース。最後に、どのような人が同社のディレクターとして活躍できるかうかがった。

池子:そうですね……。個人的には、「人に頼る力」はディレクターには必要だと思います。

ディレクターは複数の案件を抱えていることが多いので、一人で抱え込むとよくない場合があります。自分ではわからないことがあったとき、一人でなんとかしようせずに、早めに専門の人に相談したり、ボールをパスしたりするほうが案件は円滑に進みます。そのときに意識しているのが、いかに快く引き受けてもらうか。この「快く」という部分がポイントです(笑)。

でも、ただ闇雲に頼るわけではありません。誰が答えを持っているかを明確にわかっていないと問題が発生して、余計にややこしくなるので。コミュニケーションを取りながら、誰にどのタイミングで相談すれば良いかをつねに考えています。

小山:とはいえ、イメージソースでは、企画の時点からエンジニアやデザイナーとともに考えていくので、わからないことや進行に困ったときなどは、気軽に相談しやすい環境だと思います。

梅園:そうですね。エンジニアとデザイナーとディレクターとで、チームは分かれていますが、パーテーションで区切られているわけではないので、風通しが良いです。プロジェクトを飛び越えて相談することは多々ありますよね。

小山:あとは、さまざまなバックグラウンドがプラスに働く会社だと思います。ディレクターのなかには、もともと大学で演劇を学んでいて、そこで得たコミュニケーション力を買われ、いま活躍している人がいますが、まさに過去のスキルが活かせています。

池子:必ずしもインスタレーションを担当した経験が必須というわけではなくて、新しい技術に対して興味があるとか、それを外に出す手助けがしたいとか、そういう想いがあると頑張れるはずです。

また、インスタレーションは関わっている人数や会社が多いため、完成したときはWEBとは異なった達成感を感じることができますし、ユーザーの喜んでいる表情を直接見ることができるので、とてもやりがいを感じます。自分が面白いと思ったものを、自分の手で外に出すことに喜びを感じる人は向いているかもしれませんね。

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    イメージソースは、デザイン×テクノロジーの可能性を追求し、常に新たな体験を創出することをミッションとしている「クリエイティブブティック」です。
    WEBサイトやアプリ、デバイスのほか、インスタレーション(デジタルクリエイティブを融合させた豊かな体験づくり)を強みとして、デザインと最新のテクノロジーを駆使した、最適なデジタルコミュニケーションを企画・制作しています。

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