国もジャンルも垣根はない。イメージソースが語るインタラクティブ広告の真髄
- 2016/03/31
- FEATURE
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- 取材・文:阿部美香
- 撮影:豊島望
インタラクティブ広告を18年作り続けて見えてきたこと
カンヌライオンズ、One Show、D&AD Awards、ADFEST、Spikes Asia……。世界に名だたる賞を数々受賞しているイメージソースは1998年の設立以来、デザイン×テクノロジーを基本に様々な領域を横断、融合しながら、常に新しいケミストリーを生み出してきた。その基盤作りを推進してきたのが、代表取締役社長 / クリエイティブディレクターの小池博史さんだ。
小池:今は会社全体の方向性や業務方針を決めながら、個々のプロジェクトのプランニングとディレクションを務めていますが、もともとはキャンペーンサイト作りのクリエイティブディレクターをしていました。
小池さんの足取りは、そのままイメージソースのデジタルクリエイティブの進化と変化に繋がっている。WEBクリエイティブと平行しながら、先陣を切って取り組み始めたのが“体験”を軸にしたインスタレーション領域だ。プロジェクションマッピングやデジタルサイネージをインタラクティブに展開するアイデアは今でこそ、当たり前のように活用されているが、イメージソースは12〜13年前から精力的に取り組んできた。
小池:いわゆるインスタレーションに取り組み始めたのは、競合他社と差別化するためにも、弊社の得意なデジタル領域を活かして何か新しいことはできないかと考えたからです。最初はビジネスになるかどうかも怪しい実験だったので(苦笑)、しばらくは担当も僕しかいなかった。業界では先駆けとして動いたこともあって徐々に軌道に乗り、今ではインスタレーション専門で担当するチームができるほどになりました。
「インタラクティブならイメージソースに」と、ここ数年、国内外から多数のオファーが舞い込んでいるのだとか。その礎となった初期のプロダクトは、どんなものだったのだろう。
小池:GUCCI銀座店開店時(2006年)にスタートし、今でも運用されている店頭サイネージ「GUCCI Intelligence Store Media」は、印象深かったですね。それまで、モニターはあってもDVDを流しっぱなしというのが多かった。僕たちが作ったのは、タッチスクリーンやお客様の動きを感知して案内映像などを切り替えるサイネージシステムです。レジの前やエレベーターなど場所ごとに違う案内をさせて、店舗内をインタラクティブな空間として活用。東京だけでなく中国・北京店にも採用されました。
小池さんが培ったアイデアは、その後もイメージソースの中核をなすプロジェクトに、進化を遂げながら継承されている。取締役 / ディレクターのこいけ雄介さんが手がけた、2013年W杯ブラジル大会のアジア最終予選応援企画「adidas the highest goal」はユーザー参加型のプロジェクションマッピングと自社開発のスマートフォンアプリのシステムを連動させた、斬新なプロジェクトだった。
こいけ:当時アディダスがサポートするサッカー日本代表を盛り上げようというオーダーがありました。アディダス本社ビルの壁面に13台のプロジェクターを使って巨大な香川真司選手の映像を映し、専用スマホサイトにアクセスし、スローインするように振って日本代表への応援メッセージを送ると、映像の香川選手がメッセージ入りのボールを受け取ってゴールに蹴り入れる。うちのエンジニアが業務と関係なく開発した、写真をネット共有する「Paparacci me」というアプリのシステムを流用したんです。ただボタンを押すだけでなく、本当に写真が手元のスマホからビルの壁面に飛んでいくような、身体的な気持ち良さも追求しました。
デザイナーの目線から、最新テクノロジーを使ったインタラクティブなプロダクトをクリエイトしているのは取締役 / アートディレクターの藤牧篤さん。昨年手がけたウェザーニューズグローバルセンターのエントランス「Weather Street」のデザインは、55インチ12面のモニターと透過スクリーンを組み合わせた画面でデジタルサイネージ×インタラクティブコンテンツを体験できるものだ。
藤牧:このプロジェクトは、大型モニターと透過スクリーン、さらにカードリーダーとハンドトラッキングセンサーの組み合わせをいかに効率よく利用してもらうかが最初の課題でした。オフィスの入口として必要となるのが、まず社員の方々が毎日ICカードで行う出退勤管理のシステム。来客者に対して、自社の衛星から見た地球を再現した映像で事業規模を訴求したり、さらに世界規模で観測される気象、海流、地震などの情報をビジュアライズして事業領域のプレゼンテーションもできるようにと、大きさと使用用途が多岐にわたります。目的が複雑だからこそ、たとえば一本指や二本指など簡単なハンドサインをセンサーにかざすだけで表示を切り替えられるよう、UIやコンテンツの中身もエンジニアと相談し、アイデアと実現性をトライアンドエラーしながら作っていきました。
デザイナーの範疇を超える仕事も、デザイン×テクノロジーを標榜するイメージソースらしい活躍の場だ。
藤牧:今の時代のコンテンツ制作はどんどんデジタルが主流になってきているので、エンジニア抜きでは成り立たなくなっています。デザイナーといえども、プログラミングの知識や仕組みをある程度理解できないと、質の高いものは作れなくなっている。アウトプットになるべく近い形でデザインを検証するために、使用するツールから制作するステップまで柔軟に選択していくことも必要になってきます。デザイナー自体の在り方が、どんどん変わってきていますよね。
小池:それはデザイナーだけの話ではないかもしれません。既に、かっこよくて強いビジュアルさえあれば広告が成り立つ時代ではなくなっています。今は、伝えるもののクオリティが高いことはもちろんですが、「いかに伝えるか」「どうやったらユーザーに届くか」を工夫しなければならない時代。そのためにどんなツールやどんなメディアが最適なのか。そのノウハウが、我々には必要なんです。
言葉を必要としない「体験型」広告は、国境を越えても通用する
イメージソースはインタラクティブ、インスタレーションにこだわる。ただ眺めるだけよりも、格段に人々の印象に残り、感情を揺さぶる体験型の広告は、ユーザー主導のメディアにおける拡散力に直結するからだ。
小池:珍しいもの、面白いものを観た・経験したという体験型コンテンツは、SNSなどを通じて「拡散したい」と思える“ネタ”にもなるんです。ユニークでインタラクティブなインスタレーションは、それ単独の広告効果、アピール効果を超える力があると思います。
日々イメージソースが磨きをかけるインタラクティブ広告は、海外戦略にも威力を発揮する。2012年、上海に設立した初の海外拠点・IMG SRC SHANGHAIは、現在も業績を伸ばしている。昨年6月、上海市のショッピングモールで、グリコのイベント「自享其乐」を行った。実寸のポッキー箱型模型(1344個分)にモーターを取り付けて角度を動かし、来場者の顔をリアルタイムに巨大ディスプレイに表示するという体験型インスタレーションも大好評を博した。
小池:日本と違って上海の人達は人前で目立つのか好きなので、写真を撮るような参加型のイベントは大変喜んでいただける。イメージソースが得意とするインタラクティブやインスタレーションは、言語に頼らず、表現をフィジカルに伝えることができるので、海外でも日本のノウハウや技術をそのまま活かせるのが大きなメリットなんです。とはいえ、中国企業から求められることには、やはり日本との違いもあります。企画の開発期間がわずか3週間ばかりと極端に短かかったり、とりあえずローンチしてから不具合を直せばいいというラフさがあったり。文化の違いは感じますが、人口が多い分、ビジネスチャンスも大きいことは実感します。
さらに今年は、アラブ首長国連邦にも進出。国際的なデザインとブランディングコンサルティング会社「PIXONAL」からのオファーを受けて業務提携を果たし、中東・北アフリカ地域におけるサービス展開に取り組んでいる。
小池:PIXONALは、世界各国の企業に声をかけていて、デジタル分野では日本企業が何社か候補に挙がった中から、イメージソースが選ばれたという経緯があります。今はまだ、様々な企画提案をしている最中なので、本格始動はこれからですが、ドバイという土地も上海と同じように求められるものが日本と違うのが面白いですね。
藤牧:大きなビルひとつを建物丸ごと、最新のテクノロジーを全部詰め込んでデザインしてほしいとか、デジタル技術てんこ盛りなのが喜ばれるらしいんです(笑)。もともと富裕層がとても多い土地なので、中国同様にビジネスチャンスは大きく、やりがいもあると思います。
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- 最先端を走り続けるために欠かせない自社開発
最先端を走り続けるために欠かせない自社開発
イメージソースでは自社主導の企画開発も積極的に行っている。昨年秋のTokyo Design Week(TDW)や今年のMEDIA AMBITION TOKYO 2016への出展も大きな話題となったのが「3D GRAFFITI」。実空間をキャンバスにして、人間の手で3Dの立体的な絵を描くことのできる新しいデジタル表現ツールだ。
小池:「3D GRAFFITI」は社内スタッフ3人で開発に当たっています。これは6台のモーションキャプチャカメラを用いて手の軌跡をセンシングして、仮想空間の3Dグラフィックをアプリ上に表示。現在発表しているものはまだプロトタイプなので、「3D GRAFFITI」の完成度を高めるとともに、それを使って何ができるか、どういう表現がさらに可能になり、何にどう活かせるのかを含めて、これから考えていきたいですね。
こうした自主開発の新しい技術や実験的なデバイスを、クライアントや広告代理店をはじめとしたパートナー企業などを招いて発表する「オープンラボ」も、イメージソースでは年に2回開催している。
こいけ:「オープンラボ」は、仕事に結びつくイメージソースの技術プレゼンテーションという意味が大きいですが、僕らとしては、うちのクリエイティブに興味を持つ学生さんにもたくさん来て欲しいんです。発表を見て、技術を活かすアイデアが浮かんだり、自分ならこんなものも開発できるという人が、仲間になってくれたら嬉しいですしね。
インタラクティブの次なる源泉は“アナログ”な世界
もちろん国内でも、常に新しいチャレンジを続けている。インスタレーション、インタラクティブデザインに積極的に取り組んでイメージソースの業務拡大を牽引してきた小池さんが、いま取り組んでいるのは、「コミュニケーションデザイン」だという。
小池:うちが今までやってきた様々なプロジェクトを横串で貫くことでひとつにし、もっと大きな枠組みでユーザーとコミュニケーションするデザインをやっていきたいんです。紙メディアもイベントもWEBデザインも体験型インスタレーションも、今まで培ったノウハウ、技術を最大限にいかして、企画から何からワンストップで何でもやりたくて。
まさに今、それを実現化するプロジェクトが進行している。2017年9月に石川県珠洲市で開催される「奥能登国際芸術祭」の公式サイト企画制作だ。
小池:ここではWEBデザインだけでなく、開催準備から密着して、奥能登国際芸術祭公式プロジェクトの活動の様子を伝えるフリーペーパーを作ったり、開催地のみなさんと協力してワークショップやイベントを開いたり、芸術祭のアーティストの現地視察をレポートしたりと、かなりアナログな手法でコミュニケーションを試みています。
デジタルなクリエイティブで名を馳せているイメージソースが、あえて今、アナログ的な手法に着目しているというのも面白い。聞けば、小池さんは最近、バイオアートにも興味があるのだとか。命ある生物を題材とするバイオアートには、人という生物とその情動に深く、広くコミュニケートするクリエイティブワークへのヒントが隠されているのかもしれない。
小池:バイオアートが、今の仕事に直結するかどうかは僕にも分からないですし、理解するのも難しいので今まさに勉強中といった感じなんですが(笑)、興味あることを追求することが、また新しい表現に繋がるかも知れない。僕らは、けっしてアーティスティックな作品を目指してはいなくて、もっと身近で分かりやすく楽しめるクリエイティブを提供し続けたいと考えます。
そして、小池さんが目指す横串を貫いたワンストップなクリエイティブをよりよく実現するために、イメージソースは今、幅広く仲間を求めている。
こいけ:うちで扱う案件は、今後ますます幅広くなっていくと思うので、何かを極めている人、趣味や自分のスタイルをしっかり持っている人の活躍できる場は多いと思います。
小池:自分から物事を発信すること、拡散することが好きな人。プライベートと仕事を切り分けてしまうのではなく、興味のあることをいろいろな面から追求しながら、それを仕事に活かしていけたら。きっと面白いものを一緒に作っていけると思いますね。
Profile
イメージソースは、デザイン×テクノロジーの可能性を追求し、常に新たな体験を創出することをミッションとしている「クリエイティブブティック」です。
WEBサイトやアプリ、デバイスのほか、インスタレーション(デジタルクリエイティブを融合させた豊かな体験づくり)を強みとして、デザインと最新のテクノロジーを駆使した、最適なデジタルコミュニケーションを企画・制作しています。