自分たちがインターフェイスになる覚悟

ハイジ・インターフェイス株式会社

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モノや情報が溢れる現在、それらに込められた想いを人から人へキチンと「伝える」ためには、なにが必要なのか。このことを考えるとき、「インターフェイス」というキーワードはデジタル・クリエイションの世界を超えて重要な要素のひとつとなる。設立当初からこの言葉を社名に掲げるハイジ・インターフェイスは、今も発展を続けている気鋭の制作会社。外部パートナーと柔軟に連携をし、UNITED ARROWSのカタログサイトから「文化庁メディア芸術祭」公式サイトまで多様な開発案件、さらに『ヱヴァンゲリヲン』の世界観を小さなスマホに詰め込んだ特別モデルの開発や、ファッション展での幻想的な投影ショーウィンドウまで、彼らの手がける「インターフェイス」は想像以上に幅広い。そのすべてに共通するのは、送り手・受け手を結ぶ仲介役としての、独自のアイデアと覚悟。同社を牽引する二人の代表取締役、美馬直輝さんと蒲澤宏さんに、その想いを聞く。

インターフェイスを作る仕事って?

日常にある「境界面」こそ可能性の鉱脈

小田急線・代々木上原駅からの線路沿いに伸びる商店街を抜け、静かで親しみやすい雰囲気のある一画へ。そこにハイジ・インターフェイスのオフィスはある。ドアをくぐった先で3層の空間に分かれる、メゾネット住宅を利用したちょっとアットホームな空間。この場所で働く10人のスタッフの手で、ジャンルもスケールもさまざまな「インターフェイスづくり」が日々行われている。

設立は2010年。代表取締役の美馬直輝さんが、前職のライトニング社を独立後、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(通称SFC)時代の同窓生である蒲澤宏さん(代表取締役)、蓮研児さん(取締役)に声をかけてスタートさせた。WEB制作など幅広いクリエイティブ業務を手がけてきたライトニング社がコンサルティングを主軸に舵を切ることとなり、すでに制作現場で複数クライアントと仕事を進めていた美馬さんはこれをベースにハイジ社を発展させていったという。若くして表向きにも華やかなプロジェクトを少なからず経験したという彼だが、起業においてはそのベクトルを少し(大いに?)変更した。そう、社名に冠するくらいに「インターフェイス」を重視したのだ。その理由とは?

ハイジ・インターフェイス株式会社 代表取締役 美馬直輝さん

ハイジ・インターフェイス株式会社 代表取締役 美馬直輝さん

美馬:新しい会社でやりたいことを一言で集約してくれるのが、広い意味での「インターフェイスづくり」だと思ったんです。また、当時はiPhoneのようなスマートフォンが普及してきたり、TVが普通にインターネットにつながり始めたりと、時代的にも今後この分野がいっそう重要になるはずとの意識もありました。PC閲覧用のスペシャルサイトなどは初見のインパクトや面白さがあるけれど、携帯電話やスマホは毎日繰り返し使うもの。だからこそ、その利用における便利さ、快適さは必須で、かつそのうえで飽きのこないデザイン性や、楽しさが求められる。ここには大きな可能性があると感じたんです。

美馬さんはこの方向性を定めた上で、そこで必須となるシステムとインフラ周りに強い仲間がそれぞれ必要と考え、蒲澤、蓮両氏に合流を呼びかけた。蒲澤さんはすでに音楽アプリなどを手がけるシステム開発会社で役員の立場にいて、蓮さんも大手通信企業の系列会社で大規模システムのインフラを手がけるなど、お互い順調にキャリアを積んでいたという。

だが、根っからの「ものづくり好き」な彼らはキャリアを順調に積む中で、管理側の立場に進みつつあることに違和感も覚えていた。「まだまだ現場にいたい」という気持ちは共通していたようだ。

代表取締役 蒲澤宏さん

代表取締役 蒲澤宏さん

蒲澤:今でこそUI(ユーザ・インタフェース)やUX(ユーザ・エクスペリエンス)などインターフェイス周りの重要性が注目され、いわば流行りみたいに持てはやされている感じはちょっとイヤなんですが(苦笑)、当時はまだそんな追い風もないころ。だから「社名に掲げて10年続ければ『本当だったね』といってもらえる」といった想いで、ハイジをスタートしたのを覚えています。

ヱヴァの世界観をスマホに詰め込む

そんな彼らの「インターフェイスづくり」とは、どんなものか。いくつかの事例とともに紹介していこう。まずはNTT docomo NEXT series ヱヴァンゲリヲンコラボモデル『SH-06D NERV』のコンテンツ企画・開発。人気アニメーション大作の世界観を、1台のAndroidスマホの中に徹底的に詰め込んだ異色作だ。

美馬:ヱヴァンゲリヲンに登場する特務機関「NERV(ネルフ)」の官給品という設定で、ライトユーザーにもコアなファンにも納得してもらえるものを目指しました。企画のアイデア出しから実際の開発まで担当できた点で、やりがいの大きかった案件ですね。

NTT docomo NEXT series ヱヴァンゲリヲンコラボモデル『SH-06D NERV』

美馬さんのトレードマークのヒゲ(ハイジ=HYGE=ヒゲ?)をたくわえた口元からは淡々とそうした言葉が繰り出されるが、携帯メーカーではない制作会社。しかも新進の彼らが、スマホそのものの開発に携わるのは異例といっていいはず。実際に見せてくれた完成品は、Androidでの開発におけるメリットのひとつ、UI自体をつくれることを最大限に活かした一台だった。

ホーム画面はファンならおなじみ、組織の頭脳となるスーパーコンピュータ・MAGIをモチーフとし、裸眼立体視ディスプレイを活かした3D画面でユーザーを迎え入れる。さらに多数の専用ウィジェットや特別映像、ゲーム、アプリなど、ヱヴァンゲリヲンの世界観を極限まで追求した仕上がり。美馬さんが前職時代に第一弾に関わった縁で実現した仕事だが、それだけに前回からの期待値を超えるものを、と創意を凝らした。

美馬:よく見ると時計やメールなど、スタンダードな機能で構成されていますが、中には機体のメモリ使用率を示すバーがあったり、ちょっとマニアックな機能もあります。そのどれもがすぐにヱヴァの世界だとわかるのは、多くの関係者のサポートがあったから。限られた開発期間の中でも、いかにこの世界観をユーザーに届けられるかをこだわり尽くしました。僕自身も作品の大ファンですし、作品に乗っかっただけのダメなコラボものでユーザーをがっかりさせたくなかった気持ちも強いです。

そのこだわりぶりは、あの「Google検索バー」にさえひるまない。同社側との粘り強い交渉の結果、ホーム画面での検索バーは異例ともいえるオリジナルの色調になり、MAGIのイメージによる統一感を達成している。また、docomo側のサービスアプリのアイコンにも同様の課題があったが、こちらはユーザーが購入後にカスタマイズできるよう、オリジナルのアイコンを多数制作し、提供するという徹底ぶりだ。

hyge4蒲澤:完成品はこうした機能を過激なくらい盛り込んだ一方で(笑)、かつ当たり前のように日々使えることを担保しないといけません。「使いたい気持ち」を「使いづらい」が上回っては意味がない。かなりたくさんのウィジェットを搭載したリッチなUIになっていますが、快適な動作感や、電池の減りを抑制するための対策も可能な限り追求しています。美馬も関わったエヴァのコラボスマホの第一弾は、事後調査でユーザーの使用期間がとても長いというデータが出ていました。ファンの方にじっくり使ってもらいたいものだからこそ、ストレスを感じず楽しんでもらえることは重視しましたね。
  

映像インスタレーションも「インターフェイス」?

そんな職人仕事の一方で、ファッションイベントにおける新しいショーウィンドウの形を実現することも彼らの仕事の範疇だ。アパレルブランド「nano・universe」が大型ファッション展示会「ZOZOCOLLE」で見せた「Holographic Show Window」は、最新ファッションが並ぶ会場でもひときわ目を引いた。ブース内のショーウィンドウに、最新アイテムを身につけて動くモデルたちが浮かび上がる試みだ。技術的には透過スクリーンにモデルたちの映像をプロジェクションするというもの。その作り込みから映像の演出にわたる細かい工夫によって、ホログラフィ(3次元像)のような演出効果を生み出した。

Holographic Show Window

美馬:nano・universeさんとはサイト制作などでお付き合いが長く、この年のZOZOCOLLEで最大面積のブースを借りるので、何か来場者を引き付けるものができないかという相談がありました。検討を進めるなかで、ただ映像をスクリーンに投影するのでなく、ショーウィンドウという「箱」の中に像が現れるというアイデアが出てきました。広い会場で、100m以上離れていても「ん? あそこに何かある!」と思わせられるもの。先ほどのスマホ開発みたいな仕事からはずいぶん振れ幅があるように感じられるかもしれませんが、人とモノを繋ぐ装置という意味では、これもまたインターフェイスづくりの1つと考えています。

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自由な試みを支える、会社のブレないスタンス

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前例のない挑戦は、ものづくりだけではない?

こうしたインターフェイスづくりの他にも「文化庁メディア芸術祭」の公式サイトや、UNITED ARROWSのカタログサイトなど、幅広い世界での実績を積み続けている美馬さんたち。技術面での造詣の深さと、先入観にとらわれない挑戦心が彼らの下地を支えている。しかし本人たちに言わせれば、「手がけたことのない試み」への挑戦は大前提であるという。  

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美馬:Androidのスマホアプリなども当初はまともに作ったことがなくて、「何とかしよう」という所からここまできています。これは僕の性格もあって、自分たちの成長につながると思えば、まずは引き受けてみようというところもあります。

蒲澤:ヱヴァスマホも、最初はゲームアプリを入れるにしてもシンプルに「使徒のブロック崩し」とかがいいんじゃない? という意見が出たけど、美馬は「いや、もっとできる」と言って(苦笑)。でも、そうやって経験を重ねる中で、だんだんとわかってきたことがあります。よかった仕事、つらかった仕事、色々あるけれど、最終的にはクライアントの想像を上回る「伸びしろ」があるのがいい仕事なのだろうなって。

美馬:もちろん毎回一番いい形を目指しているけど、ユーザーの反応や数字から色々なことを学ぶので、次はもっといいものをと思う。単にデザインとかプログラムの善し悪しだけでなく、各々のフィールドが交わるところにジャンプする瞬間があるし、最初は見えていなかったゴールが、外部パートナーとの協働の中で見つかることだってあります。その意味で僕らのつくるインターフェイスには、決まりきった「売り」はない。でも、ユーザーの視点/体験まで含めてデザインできる、そんなところを自負しているし、そこがやりがいでもある。僕らと一緒に働く仲間も、そういった部分に興味をもって考えられる人がいいですね。

社内風景

社内風景

その柔軟な姿勢は、組織論にも反映されていた。現在の訥々とした温和な話し振りからは想像しにくいが、もともと美馬さんは前職では、曰く「周りに怖がられていた存在」だったという。それは、若くして重要な仕事を任せられ気を張るあまり、知らず知らずそうなっていたのだとか。ハイジの立ち上げにおいてそんな自分をリセットするため、自然体でいられる旧知の仲間と新しい挑戦を始めた背景もある。

美馬:世の中の既存のルールに合わせるのではなく、僕らに合った働き方や会社の成長の仕方があるんじゃないか——その気持ちは創業以来ずっと大切にしています。しばらく前から日本は高齢者社会に向かっていて、人口比が大きく変わると、これまでの仕組みやルールも通用しなくなってくる。だとすれば、もうそこにとらわれる必要はないんじゃないかと。

蒲澤:現在、美馬と僕の2人代表取締役制をとっているのも、その試みのひとつです。2人で代表としての業務を分担して、互いにまだまだ現場に貢献しつつ、より仕事を楽しめるようバランスをとるのが狙いです。

美馬:働き方についても、僕は3年前から家族と熱海に住んでいて、そこから会社に通っています。環境さえ整っていれば日本中どこでもいい、と探してみた結果です。状況にしっかり向き合った上でなら、会社全体としても、新しい試みはどんどんしていくべきだと思っています。

自分たち自身が「インターフェイス」になる

そんな彼らへの最後の質問として、デジタル・クリエイションの世界でインターフェイスづくりを行う自らの仕事のやりがいについて聞いてみた。美馬さんはそれを「多くの人が、長い間使ってくれるものを作れる喜び」と語る。たまたま会った古い友人が、偶然自分の手がけたアプリのヘビーユーザーだと知ったとき、また、街角でハイジの関わったスマホを手にする人を見かけるとき、この仕事ならではの嬉しさがあるという。その喜びもまた、彼ら自身の日常の中に息づいているものだと言える。

そして、それを実現するには、自分たち自身が「インターフェイス」となる意識が必要ではないか、と美馬さんは言う。

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美馬:特に規模の大きなプロジェクトでは、関わる人同士をつなげていく仕事も大事なこと。その意味で、ハイジのスタッフはそれぞれ「自分自身がインターフェイスになる」という意識でいてほしいと思います。それは、人や組織の「間」に付く人間として「覚悟」を持つということ。クライアントとの間に立って、ただ相手の言葉を右から左に伝えるだけなら、その存在は要らないわけですから。だから僕はクライアントにもらった意見を制作陣に伝えるときは自分の責任として話すし、逆もまた然りという気持ちでいます。

企画や仕様の変更も、それぞれが納得の上で気持ちよくできるには、「適切に伝える」ことも重要になる。意図を伝わりやすい言葉に置き換えるという点では、翻訳のような性質も持つものだ。そこには、制作者として単にインターフェイスをつくるだけではなく、最終的には自分自身が全ての人やモノを繋ぐインターフェイスになるべきだ、という彼ららしい理想もあるだろう。

蒲澤:もちろん、クライアントの要望が前提の受託制作という意味では、超えられない壁もあると思っています。それでも「もっといいものができる」という確信があれば、その理由を説明して、クライアントに納得してもらうのも僕らの仕事。そういうと戦いみたいですけど(苦笑)、実はプロジェクトに関わる人々全体のベクトルを、視点を整えていくことなんですよね。「自分たちがいいと思うから」ではなく、「使うお客さんがいいと思うはずだから」。最終的には、それが関わるみんなのためになる。僕らは常にそう思って仕事をしてきたし、これからもそうでありたいと思っています。

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    ハイジ・インターフェイス株式会社

    私たちハイジ・インターフェイスは、人と人、人とモノをつなぐ、インターフェイスをつくる会社です。

    ■事業内容
    WEBやアプリだけではなく、インタラクティブな展示装置、モーショングラフィックスやVR、ロボットなど、インターフェイスを幅広く捉え、企画 / 制作に取り組んでいます。

    ユーザビリティに配慮したUIはもちろん、ビジュアルを重視したデザインと、その裏側を支える高度なシステム開発まで、制作工程のすべてを担当できます。それによりクライアントとの継続的な信頼関係を築き上げ、事業を拡大してきました。

    ■働く人や環境
    20〜30代の、自律したメンバーが集まっています。
    案件によっては社外のプロともチームを組むこともあるので、社内外からの学びが得られます。
    オフィスは閑静な住宅街にある一軒家です。時間や場所を各自が選択できる、自由な就業環境づくりに取り組んでおり、リモートワークや複数拠点あるリモートオフィスでの作業も可能です。