GREENFUNDINGとTSUTAYAが切り拓く、クラウドファンディングの未来

株式会社ワンモア

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ここ数年で、クラウドファンディングを使って資金を集め、プロジェクトを実行したり、作品を作り上げるという手法が浸透してきた。日々多くのプロジェクトが、様々なクラウドファンディングサイトで立ち上がっている。 そんな中、『GREENFUNDING』は、「モール型」というコンセプトを掲げるクラウドファンディングサイトで、2015年7月にTSUTAYAやTポイントなどの運営を行うCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)グループとの資本業務提携を発表し、『GREENFUNDING by T-SITE』としてブランドリニューアルを行った。
『GREENFUNDING by T-SITE』の代表である沼田健彦氏は、今回の提携をどのように捉え、さらにはクラウドファンディングの未来をどのように描いているのだろうか。

ネット上でも店舗でも同じ。「偶然の出会い」を生み出す価値

国内でも様々なクラウドファンディングサイトが生まれ、しのぎを削っている。そんな中、『GREEN FUNDING by T-SITE』はどのような想いでサービスを展開しているのだろう。沼田健彦氏はこう語る。

沼田:フレッシュで綺麗なお金に色があるとしたら緑色で、その「GREEN」なお金が世の中を変えていくんじゃないか? そんな気持ちを込めて、『GREENFUNDING』というサービス名を付けました。直接、みんなから託されたお金で作られたものは、新鮮な水で作られたお米がとても美味しいように、素晴らしい価値を生み出すと信じています。

サービス開始から4年、このポリシーを曲げることなく続けてきた彼らは2015年7月、TSUTAYAの運営などをしているCCCグループと提携し、『GREENFUNDING by T-SITE』として新たなスタートを切った。

沼田:元々、僕は個人的に代官山蔦屋書店(代官山T-SITE)が好きで、よく足を運んでいました。しかし、訪れるのは明確な目的があって買いに行くというより、たとえばギャラリーの展示を見に行くような感覚に近い。もしくは、なんとなく近くに来たから寄ってみて、なにか出会いがあったから買う。おそらく僕だけでなく、そういう形で来ているお客さんが多いと感じています。代官山T-SITEに限らず、CCCグループはこうした「偶然の出会い」を企画し、作っている印象がありました。

沼田氏がCCCグループのような店舗展開をする企業に惹かれたのには、日々クラウドファンディングを運営する中で得た気付きも関係しているという。

株式会社ワンモア代表取締役 沼田健彦氏

株式会社ワンモア代表取締役 沼田健彦氏

沼田:今までほとんどのインターネットサービスは、検索されて上位に表示されることが入り口になっていました。たとえば、WEBサイトならSEO対策をするとか、とにかく検索対策をすることで入り口をしっかり作るというアプローチ。でも、クラウドファンディングサイトを運営していて面白いなと思うのは、支援を目的にわざわざ検索してサイトを訪れる人はほとんどいないこと。TwitterやFacebookなどのSNSやメディア記事で見かけてたところから、直接プロジェクトのページにアクセスされる。あれだけ大勢の支援者がいるにも関わらず、大半の人が偶然に近い形でサイトを訪れているんです。

「偶然の出会い」をどう生み出すのか? SNS上で口コミを広げるための仕掛けが大切だと考える沼田氏は、そこにCCCグループが掲げる「生活提案」との共通点を見出した。

沼田:CCCグループの増田宗昭代表は、自社のことを「生活提案をする企画会社だ」と表現していて。以前から「人の想像を上回る企画を作り、偶然の出会いを創造する」という理念にシンパシーを感じていました。また最近共感したのは、ニッチでもニーズのある商品を、消費者と共に作っていくという点。クラウドファンディングの強みは、1000円のものを1万部売るのではなく、1万円の単価を支払ってくれる人を1000人集めること。T-SITE各店舗では既にこの発想を、リスクを取りながら実践されていると感じています。

GREENFUNDINGとCCCグループだからできる、「資金」だけじゃない支援の仕方

『GREENFUNDING』とCCCグループが具体的に提携に向けて動き出したきっかけは、CCCグループが2015年に始めたスタートアップ育成支援プログラム「T-VENTURE PROGRAM」だった。

沼田:たとえば「100億円渡すからKickstarter(アメリカ発の世界最大のクラウドファンディングサイト)を超えるサービスを3年で作って」と言われても、それってかなり難しいと思うんです。お金を使えばクラウドファンディングの起案者と話題になりそうなプロジェクトを集められるというわけではありません。プラットフォームとして大切なことはお金をばらまくことではなく、プロジェクトの起案者に新たな価値を提供できることです。

代官山T-SITEなど、CCCグループの仕掛ける企画に親和性の高さを感じていた沼田さんは、「T-VENTURE PROGRAM」への参加を機にCCCグループと一緒にできることを具体的に考えていった。

沼田:CCCグループや代官山T-SITEやTSUTAYA各店舗を通じ、リアルな場でDVD・CD・本などのレンタルや販売をしています。これをどうやってデジタルと融合させていくか。先にデジタルで公開した映像を後でDVDパッケージとして販売するなど、すでにいろいろな取り組みが行なわれています。であれば、『GREENFUNDING』としては企画会社であるCCCグループの、「企画段階」のデジタル化を支えることができるのでは、と考えたんです。

さらに沼田氏が着目したのは、日本最大規模の会員データを有するTポイントのデータベースだ。膨大な会員の購買データからプロジェクト支援のレコメンド機能が開発できると考えている。

沼田:Tポイントなどのデータを活用すると、会員さんの趣味嗜好がある程度わかります。たとえば、ある映画をTSUTAYAでレンタルしたことがある人に対して、その映画の続編を作りたいというプロジェクトが『GREENFUNDING』に掲載されたことを伝えたとしたら、支援が集まりやすくなるのは間違いありません。

こうしたTポイントが持つビッグデータとのシナジーも大きそうだが、やはりクラウドファンディングにとっては、リアル店舗と繋がることによって可能性が広がることのメリットも大きいと言う。

沼田:T-SITEの施設やTSUTAYAのような実店舗で、クラウドファンディングを活用して完成した映画をいち早く先行販売したり、写真集を独占展開したり、トークイベントやサンプル展示をしながら資金を集めるなど、リアルな場所と組み合わせることで、クラウドファンディングの可能性は広がります。

すでに、元AKBのアイドル・森あんなが『GREENFUNDING by T-SITE』で資金を集めて完成させた写真集の販売イベントをSHIBUYA TSUTAYAやTSUTAYA EBISUBASHIで開催するなどの動きが始まっている。

森あんな写真集『ANNA』発売記念イベント 画像提供:GREENFUNDING by T-SITE

森あんな写真集『ANNA』発売記念イベント
画像提供:GREENFUNDING by T-SITE

沼田:クラウドファンディングを活用する起案者の目的は、資金集めに限りません。特に『GREENFUNDING by T-SITE』に共感してくれて、使ってくださる起案者たちは、資金も欲しいけれど、自分たちの作品を見てもらうためのアウトプットをしたいという人も多い。たとえば、プロジェクトの最後に代官山T-SITEで作品のお披露目ができたりしたら、起案者はクラウドファンディングにまさに単なる資金集めだけではない「価値」を感じるだろうなと考えています。

起案中のプロジェクトの告知ができたり、完成した製品の販売イベントができるとなると、プロジェクト起案者たちにとっても大きな利点となる。これこそが『GREENFUNDING by T-SITE』が提供できるプラットフォームとしての「価値」になるだろう。

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クラウドファンディングのキュレーターに求められる資質

制作過程を支援者と共にする。より良質なものづくりを目指して

クラウドファンディング全体ではハードウェアからコンテンツ、様々なプロジェクトが掲載されているが、『GREENFUNDING by T-SITE』では今年に入って映画・出版・芸能などに関するプロジェクトの掲載数が増えてきているという。

沼田:今年の春くらいから、映画・出版・芸能といったコンテンツにまつわるプロジェクトが増えてきました。そこにCCCグループとの提携も決まり、今後はさらにそういった方面に強みができると考えています。

この6月にCCCグループもエンターテイメントコンテンツを創り出すクリエイターを支援する「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」をスタートすると発表した。この取り組みとも『GREENFUNDING by T-SITE』は連携していく動きを見せている。

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沼田:「コンテンツ制作のオープンイノベーション」を考えています。今までのコンテンツって、制作過程がある種ブラックボックスで、世に出るまでわからなかったんですよね。例えば映画だったら3億円くらい使った作品がいきなり制作され、公開初日にはほとんど成功失敗の結果が見えてしまうという流れは非常にリスキーだったと思うのです。「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」は、こうしたやり方とは全く別のアプローチで、アイデアや制作段階から可視化をし、ファンと一緒にコンテンツを共創するという挑戦。その過程でクラウドファンディングを活用し、ファンと一緒にアイデアを磨きながら作品を作っていこうと考えています。

作品自体をユーザーと共に作り上げていく。沼田氏が想像する未来のモノづくりは、これまでの方法とはずいぶん異なるようだ。

沼田:そもそも、「あの人はビジネスサイドで、自分は作るサイドの人間」みたいな、自分の関わる範囲を狭めるような考え方はなくしていくべきだと思っています。編集者や建築家の方のように、ビジネスもクリエイティブも両方考えてしかるべきなのです。クリエイターは自分が作っている作品が、世の中にどう受け入れられるのかを、大きな形になる前に知っておくことができると、いろいろと軌道修正ができ、リスクも減らせるし、クリエイションへの洞察が深まるんじゃないでしょうか。

企画段階をデジタル化するという発想からは、制作する過程から透明性を高めることで良質なコンテンツを生み出していきたい、という想いが感じられる。

クラウドファンディングのキュレーターに求められる資質

クラウドファンディングのプラットフォームにとって、他のサイトとの差別化を図る上で重要なことの一つに、キュレーターの存在がある。現在彼らが人材を募集しているこのキュレーターというポジションには、どういった資質が必要とされるのだろうか?

沼田:キュレーターは、書籍や雑誌の編集者みたいな人がいいと思っているんですよ。各プロジェクトの魅力を引き出すためには、起案者や起案者が作り出そうとしているモノ・コンテンツに関心を持たないといけません。そのためには、知的欲求が高いというか、興味の対象が凝り固まっていないことが大切です。全てのことを好きになるのは難しいかもしれませんが、できるだけ好き嫌いせずに、むしろ自分が不得意なところにも積極的に興味を持って飛び込んでいく姿勢が大切だと思います。

キュレーターに求められるのは、プロジェクトの魅力を引き出すこと。そのためには、多角的に勉強することが必要になる。ネット上で情報収集をすることはもちろん、アート展示に足を運んだり、アイドルのライブや、最新のITイベントにも積極的に参加してみるなど、幅広い好奇心が大切だ。

沼田:キュレーターには、プロジェクトを広めるための広報戦略の勉強も必要でしょうし、人脈の広さや人脈を広げていく人間力が必要になります。オフラインでのイベントも増えてくるので、うまくイベントの企画に落としこむ力もほしいですし、映像や出版物などの制作についても広く知見を持っていることが望まれます。

編集者のような仕事、そう沼田さんは表現した。それは企画やネットワークだけに留まらない。プロジェクトを掲載するクリエイターのプロデュースやモチベーションアップなども含まれる。

沼田:書籍の編集者の仕事は、著者のモチベーションをうまく上げて、どうやったら本が売れるのかを考えること。キュレーターも、プロジェクト起案者をきちっとモチベートして、どうしたらプロジェクトが成功するかを考える人である必要があります。プロジェクトだけではなく、どうしたらこのクリエイターが引き立つのかを、「プロ」として考える仕事だと思っています。

目指すはアジアNo.1のクラウドファンディングサイト

日本のクラウドファンディング黎明期からサービスを運営してきた『GREENFUNDING』は、今回CCCグループとの資本業務提携を行ったことで、一旦の区切りを迎えた。「これからは第二創業期」と、沼田氏は語る。『GREENFUNDING by T-SITE』として生まれ変り、次のステージとしてどこを目指していくのだろう。

沼田:アジアを中心としてグローバルな支援を集められるクラウドファンディングサイトを目指していきたいと考えています。今回の提携で『GREENFUNDING by T-SITE』が強みを持つことになったコンテンツはアジア圏でも受けがいい分野。映画・音楽・アイドル・ファッションなどなど、カルチャーは、文化的な背景が近い方が受け入れやすいので、近い将来日本発のプロジェクトがアジアで支援を集めるようになる可能性が高いと予想しています。もしかしたら、ハードウェアなどは欧米のカルチャーの方が先行しているかもしれません。しかし、初音ミクに見られるようなカルチャーとミックスしたテクノロジーなどにおいては日本のクリエイターの多様さが強みになると思っています。アジア各国も急速に経済的にも成長してきているので、アジアNo.1のクラウドファンディングサイトのポジションが取れたら面白いかなと思っていますね。

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「アジアNo.1のクラウドファンディングサイトって言葉でまとめちゃうと軽く聞こえちゃうんですけどね」と沼田さんは笑いながら話す。支援者対応のカスタマーサービスなど、一部拠点シンガポールに進出させることなども真剣検討しているそうだ。『GREENFUNDING by T-SITE』を、日本のコンテンツやプロジェクトが集まる基地にして、アジアに向けて発射していく、そんな未来を描いている。

沼田:日本の株式市場じゃないところに上場してみるとか、他の人がやったことないことに挑戦することにワクワクするんです。今そんなことを言っても夢に近いくらい遠い目標ですし、あまり夢みたいなことを言うのは好きではないんですが、最近、うっすらとだけその未来が見えてきました。

Profile

株式会社ワンモア

ワンモアは「未来を企画する会社」です。

CCC(TSUTAYA)グループのスタートアップとして、クラウドファンディングサイト『GREENFUNDING by T-SITE』を運営。2013年4月のサービスイン以来、720を超えるプロジェクトと総計11億円以上の資金調達 / マーケティングをサポート。

代官山蔦屋書店・SHIBUYA TSUTAYAなど全国約1,500のリアル店舗 / 約6,000万人のTポイント会員と連携し、革新的なプロダクト・ワクワクするコンテンツをインキュベーションしています。

2017年からはクラウドファンディングを活用したコンテンツ開発事業をスタート、チーム一丸となって世界を動かす「企画」の創造に挑んでいます。

■信条(クレド)
1:人と人の縁を仕事に
2:良心に問う
3:チームワークこそ重んじる
4:知性を武器にする
5:生の情報を知る

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