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経営スキルも身につく。EPOCHスタッフが自由と自立を大切にする理由

「プロデューサー職は自分の事業計画を発表し、給料も自分で決められる」――そんな独自の制度と方針を掲げる会社がある。クリエイティブワーク、プロダクションワーク、ディレクターマネジメントを軸とするEPOCH(エポック)だ。企業のプロモーションやブランディングにおける「Why(なぜやるのか)」を発見し、WEBサイト制作や映像制作、グラフィックデザインなど適切なアウトプットで課題解決をしている。 EPOCHは職種に関わらず、一人ひとりの裁量が大きい。メンバーには責任が課せられる一方で、さまざまな仕事に挑戦できる仕組みがある。代表の石澤秀次郎さんは、「個人の自立性」をとにかく重視している。その理由を聞くとともに、現場で働くメンバーの川島佳峻さんと夢田朝美さんの声もお届けする。
  • 取材・文:宇治田エリ
  • 撮影:豊島望
  • 編集:今井大介(CINRA)

クライアントと一緒にWhy(なぜやるのか)を大切にすることで生まれた変化

—2013年に創業したEPOCHですが、数年前からは、映像やWEBの制作会社という域を超え、第2フェーズに入ったとうかがいました。どのような変化があったのでしょうか?

石澤:もともとEPOCHは、映像監督やWEBディレクターなど、才能あるクリエイターをマネジメントし、どちらかというと制作寄りの会社でした。そこから数年前、ちょうど川島さんが入社する直前に第2フェーズに移行しました。現在はブランディングとトータルプロモーションを行う会社になっています。

代表の石澤秀次郎さん

川島:ぼくが入社したのは3年ほど前だから、2018年ごろからですね。

ビジネスプロデューサーの川島佳峻さん

石澤:「ゴールデンサークルの法則(※)」になぞらえると、以前のEPOCHは「what(何を提供するのか)」の部分を担う会社でした。一方で現在のEPOCHは、WEB、映像、グラフィックと、whatの領域を増やしつつも、「why(なぜやるのか)」の部分から関わり、クライアントと一緒に考えたうえで、最終的なアウトプットを提案しています。

—フェーズが変わると、プロデューサーの役割も変化するのでしょうか?

川島:そうですね。実制作寄りのプロデューサーの場合、映像自体のプロデュースをして、アウトプットにさえ気を配っていればいい。その一方で、仕事がぼくらに降りてくるまでの工程は、知らない場合がほとんどです。でもいまのEPOCHは、もっと視座が高く、クライアントが抱えている課題の洗い出しからプロデューサーが関わることができます。

実際に、映像プロデューサーやWEBプロデューサーといった実制作寄りのポジションだけでなく、ビジネスプロデューサーというクライアント寄りのポジションも設けています。ぼくはいま、ビジネスプロデューサーとして働いていますが、いままでと違う筋肉を使っている感じですね。商流の川上から関わることで、クライアントにとっていま本当に必要なものは何なのか、根本から議論できるので、のちの制作工程にも先方の意向を汲んで円滑に進めやすいです。結果として、アウトプットのクオリティーが上がっているのを実感しています。

※マーケティングコンサルタントのサイモン・シネック氏が提唱した「why・how・what」の三つの要素を円で表した、物事の本質を説明するための理論

PMとして転職して半年。EPOCHで感じた求められるスキルの違い

—夢田さんは、PM(プロジェクトマネージャー)の仕事をしています。仕事に対する意識は転職前と変わりましたか?

夢田:PMはプロデューサーと違い、実制作に関わるポジションです。私は社会に出た最初の数年間、映像系の大手プロダクションでPMとしての経験を積み、その後事業会社に勤めたのですが、そこでは、ある程度決まった枠組みのなかで制作を進めていくという、わかりきった仕事内容がほとんど。一方EPOCHは、組織としては小規模な会社です。PMの仕事がメインといっても、半分はプロデューサーのような役割を任せられることも多く、広い視野が求められます。ひとりのプレイヤーに対して求められる仕事内容がずいぶん違うんですよね。

プロジェクトマネージャーの夢田朝美さん

—役割がわかれているといっても、そこに上下関係があるわけではないのですね。

石澤:そうですね。プロデューサーは「大枠をつくってそのなかでやるべきことを決める人」、PMは「プロデューサーが決めたことを実現する人」。日本の制作会社ではPMになったあとでプロデューサーに昇格する流れが一般的ですが、EPOCHの場合はそこに上下関係を置かず、夫婦関係のようにお互いを補い合う職種としてとらえているんです。

プロデューサーが経営計画書を作成!? 給与も自分で決められる理由とは

—EPOCHでは、自立性を育てるような仕組みが多々あると聞きました。特に給与制度がユニークですよね。

石澤:PMとプロデューサーで給料形態は異なりますが、どちらも上限なく、給与を上げていくことができます。PMは案件の出来高が良ければ給料を上げられるし、プロデューサーの場合は自分で給料設定をして上げることができます。

夢田:採用面接で給料の希望額を伝えたときも、「そのためには、こういう仕事のやり方をすれば達成できるし、さらに上を目指すこともできるよ」と会社側から提案してもらえたので、入社後も給料アップを目指しやすそうだなと感じました。

石澤:EPOCHの場合、売り上げが良ければ直に給料に反映される仕組みです。

夢田:そのわかりやすさがいいですよね。PMは自分で給料設定はできませんが、どのくらい頑張ればどれだけ金額が上がるかは、明確になっているんですよね。

—プロデューサーは自分の給料を自分で決められるということですが、それはなぜですか?

石澤:この仕組みは、「メンバーの普段の働きぶりをすべて見ているわけではないぼくが、評価を下すのはおかしい」という考えから、4、5年前にスタートしました。売り上げを基準に評価をつけようと思い、いろいろと逆算して考えた結果、自分で給料を決めてもらったほうがいいとなり、始まりました。

この制度を取り入れるにあたって、毎年1回プロデューサーに事業計画書を書いてもらい、「自分は今年、こういうことにチャレンジし、このくらい売り上げるためにチームを動かしていく」と、目標をプレゼンしてもらうようにしました。時にはその事業計画書をもとにPMがチームの異動を申し出ることも可能です。また、会社側も各プロデューサーのやりたいことがわかるので、仕事が振りやすくなります。給与については、希望金額に合わせて予算を組み、それに応じて支払う仕組みにしています。

実際の事業計画書

実際の事業計画書

実際の事業計画書

川島:プロデューサーが自分の給料を決めることは、一見良いように見えますが、給料を上げればその分課せられる売り上げが大きくなります。自由に決められる反面、自分がどれだけ仕事をこなせるか見極める必要があり、さらに自分のチームが抱えるPMの人たちをどう食べさせていくか、算段を立てていくことも必要とされます。ぼくの場合は、ワーク・ライフバランスを慎重に考えて、頑張ったら到達できるような目標に設定しています。

石澤:本来ならこれは、経営者が孤独に考えることですが、このような制度を設けることで全社員が経営者的な意識を持ち、同僚とは違う側面で仲間意識を持つことができます。だからこそ、会社も社員も成長を続けられているのだとも思います。

川島:「具体的な数字を背負うのは荷が重い」と感じる人もいるかもしれませんが、ぼくは公平な仕組みだと思うし、わかりやすくて良いと感じています。

石澤:今後は目標を達成できたらインセンティブをプラスするような仕組みも加えて、アップデートしていきたいですね。

—プロデューサーは自分でどういうことをしていきたいかをアピールし、PMも申し出ればチームの異動も可能。それが社員の自立性を育てているのでしょうか?

川島:そうだとも言えますが、EPOCHのメンバーは最初から自立している人が集まりやすい傾向にあるとも言えます。特にプロデューサーの場合はそれが顕著です。自立心が高く、与えられる裁量の大きい環境を望む人にとっては、とても良いバランスの会社だと思います。

石澤:大きい会社の場合、自分にあわない仕事を振り当てられてしまうことも多々あります。売り上げが良く給料も十分に払われていても、モチベーション高く仕事に向き合えなければ自立心は育たない。だからこそ、「その仕事は嫌です」とはっきりと断れる、風通しの良い雰囲気を大切にしています。

—社員の自立性を育てることで、独立する人も増えてしまうのでは?

石澤:EPOCHでは、独立のために辞めることはむしろプラスにとらえています。プロデューサー陣には独立するためのノウハウを積極的に提供しているし、PM陣には新規ビジネスの開拓に立ち上げから関わるなど、幅広い経験値を身につける機会を提供しています。

川島:ぼくも、まだ独立までは考えていませんが、自分でやってみたい思いはありますね。

石澤:たしかに、前にそう言っていたよね。ぼくたちは「メイクシーン」という言葉を大切にしているので、メンバーにはぜひ新しいことにチャレンジしてもらい、自分のキャリアシーンもつくっていって欲しいんです。EPOCHからジャンプアップしてくれることもまた、会社の価値としてとらえています。

自立は助け合わないことではない。フラットな仲間意識がチームを成長させる

—現場ではチームワークも多いと思いますが、どのような雰囲気なのでしょうか?

石澤:EPOCHのメンバーは縦割りではなく、横に広いつながり方をしています。例えば、「パッケージデザインの制作が未経験だけどやってみたい」と申し出たメンバーがいた場合、経験のあるメンバーが、制作に適した人を紹介したり、進め方などをアドバイスしたりして助け合っています。

夢田:PMの場合は、直属のプロデューサーだけでなく、さまざまなチームのプロデューサーと一緒に仕事ができるチャンスもあります。先日社内のグループチャットに「IT系のライターを探しています」と書き込んだら、メンバーから「こんな人がいますよ」とすごくたくさんのレスポンスをいただいて。それぞれが自立しているけれど、助けを求めたら手を差し伸べてくれる。みんな違う経験を持っているからこそ意見の幅も広いんですよね。

—自立しているけれど、気軽に相談しあえる雰囲気があるから、チームとして成立するのですね。

夢田:風通しがいいんですよね。私は出社するときに毎日コーヒーを買って飲むのですが、それを会社で負担してくれたら嬉しいなと思い、福利厚生にならないか提案したらすぐに採用されました(笑)

石澤:体育会系のチームというよりは、その人のスタイルを尊重し、フレキシブルに対応できる、劇団型のチームでありたいと思っています。地方に住んで月に1回だけ会社に来る人、産休から明けたばかりの人、それぞれの状況に応じて働きやすい環境づくりを心がけています。

—EPOCHに入社して、働き方で変わった部分は何ですか?

夢田:EPOCHで働いていると、毎回新鮮な発見があります。WEBはもちろん、映像でもモーショングラフィックスとアニメーションの制作では段取りの仕方やお作法が違います。例えば最近は、メイクアップアーティストであるイガリシノブさんのオンラインサロンをEPOCHが運営していますが、自分にとっていままで未経験だったけど興味のあった仕事に近いと感じました。希望を言えばやらせてくれるし、挑戦しやすい環境だと思います。

石澤:それは他社に比べて、PMとプロデューサーの格差が少ないからかもしれない。よくプロデューサーがすごく偉そうで、PMがとても萎縮している現場を見かけますが、うちにはそれがありません。ぼくのことをすごく偉いと思っている社員はいないと思います。

夢田:たしかに(笑)。EPOCHはプロデューサーもある意味プレーヤーですよね。

川島:小規模な会社だからこそ、完全分業ではなくお互いに補える。それが強みになっているのかもしれないですね。

—EPOCHではいままで見たことがないような斬新な仕事も数多く手がけています。そういった仕事はどのように入ってくるのですか?

川島:知り合いからの紹介もあれば、EPOCHならやってくれそうとお声がけいただくこともあります。もちろん、こちらから営業をかけて仕事にしていくこともあります。

石澤:クリエイティブをクライアントに直で提案できる仕事は、自由にアイデアを出せるぶん斬新な仕事になる場合が多いですね。例えば川島さんが映像プロデューサーだったころに担当したMicrosoft Surfaceの仕事はその一つです。

川島:音楽から影響を受けることが多いZ世代がターゲットだったので、ボディコピーに多数の有名アーティストの代表的な楽曲タイトルを忍び込ませて『まだタイトルのない君へ』という広告を打ってみようとなったんです。

石澤:イースターエッグ広告という手法ですね。アーティストのファンなら気づくことができるというものです。

川島:タイトルには著作権がないとはいえ、広告なので裏取りして許可をとる必要がありました。CMの映像も楽曲のMVをオマージュするものだったのですが、許可を取られる側もいままでにない案件だったので判断できないと言われたりして(笑)。なんとか許諾をとって、進めていくことができました。いま思えば、制作前にもう少し検討すべきことがたくさんあった。でも、臨界点を超えた感じがしましたね。

さらにチャレンジの幅を広げていく。それがEPOCHにいる理由

—最後に、今後EPOCHで何をしていきたいか教えてください。

夢田:私はもともと、制作の現場に関わることがすごく好きで、プロデューサーよりもPMの仕事をしたくて入社しました。今後も、現場でスタッフと関わりあってアイデアを実現していきたいですね。

川島:いまはビジネスプロデューサーとして、クライアントに寄り添いながら、営業するだけでなくアイデアを一緒に広げ、計画するパートナーとして動いています。EPOCHの社員であり、半分はクライアントの社員でもあるという感覚で、案件を制作サイドのプロデューサーに回していく。そうしていくなかで、キャンペーンに限った関係ではなく、何年も併走できるような、太く長い関係性をつくっていくことが直近の目標です。それは同時に、第2フェーズのEPOCHに必要なアプローチでもあると考えています。

石澤:クライアントにも社員にも、逐一向き合いながら、彼らの思いに寄り添ったシーンづくり、環境づくりをしていきたいですね。EPOCHで働いている人には、いままでいた環境よりもたくさんのチャレンジをして成長してもらい、自らキャリアシーンをつくってほしいです。

会社としては、今後スタートアップに寄与できる会社になっていきたいと考えています。これまでの経験から、彼らをユニコーン企業にしていくために、広告は大きな追い風になると確信しているからです。悩んでいる経営者に寄り添いながら、会社の成長に貢献していき、利益は後からついてくるものと考えて、積極的に関わっていけたらと思います。またそこで得た知見を、将来独立したい、会社を立ち上げたいと考えている社員にも還元していくつもりです。

EPOCHに、クリエイティブの「源」を聞いてみた

—クリエイターにおすすめの本を教えてください

磯崎哲也『起業のファイナンス』

これからはクリエイターでもお金に詳しくなるべき時代のため。(石澤さん)

—人生の哲学がつまった映画を教えてください

『大脱走』

各所のプロ達がコツコツと穴を掘り続け脱獄という共通の目標に向かうところが、いまの仕事に似ているかなと。(川島さん)

—あなたにとってのヒーローを教えてください

おかざき真里さん

CM制作の職を目指したきっかけをつくってくれた漫画家さんです。『サプリ』という漫画を高校生のときに読み、それに影響されてCM業界を目指した結果、いまその世界で働くことができています。私の人生を決めた漫画です。(夢田さん)

—ルーティン(験担ぎ)を教えてください

寝際に青木真也さんと三浦崇宏さんのポッドキャストを聞く

格闘技と広告の話を通して人生への学びがあるから。(石澤さん)

—普段、どんなものから情報収拾をしていますか?

ラジオ

自分の興味のなかった分野や知らなかったことなど、幅広いジャンルを扱うラジオは、垂れ流しで聞きつつ、気になるワードが出てくると検索して情報を集めたりします。(夢田さん)

—最近注目しているものを教えてください

おかねチップス

弊社で手がけているわかりやすくポップにお金について学ぶWEBサイトです。(石澤さん)

撮りフェスin室蘭

ライフワークとして毎年やっている地方創生イベント。少しずつ規模を拡大中。一緒に企画してくれる方を募集中です。(川島さん)

Profile

株式会社EPOCH

私たちEPOCH(エポック)は、「映像」「WEB」「グラフィック」の企画・制作とディレクターのマネジメントをすべて一括で行っている“トータルクリエイティブカンパニー”です。

一般的なプロダクションや代理店だと、得意領域が決まっていることが多く、クライアントへ提供できるソリューションの選択肢の幅が限られてしまいます。それ故にエンドユーザーであるお客様にクライアントの想いを100%伝えることができません。 

だからこそ、映像とWEB、グラフィックを一貫してシームレスに企画提案することで、唯一無二で表現できるクリエイティブの制作を目指しています。そのために私たちはクライアントからの要望に対して本質的な部分をしっかりと把握して最善の提案を行うことを常に大事にしています。

また、私たちは日々クライアントの“ビジネスシーン”をより良いものにするお手伝いをしています。そのためにはクライアントの魅力の本質を理解し、そこを最大化するためオーダメイドでチームを組成し、映像やWEBやグラフィックなどでシーンを丁寧につくっていくことで、クライアントの魅力をより多面的・魅力的に見せるのが私たちの使命です。

この使命があるからこそ一人ひとりの裁量が大きく、今まで経験したこともない幅広い業務を担当できるのも特徴のひとつです。

案件は、基本的に「やりたい」と強く思った人に担当していただきます。そうすることで、手を挙げた仕事に対して責任の重さを実感でき、仕事に真剣に向き合い成長に繋がります。

その仕事と経験があなた自身のキャリアシーンをより魅力的にすると思っています。

クライアントのビジネスシーンの拡大することはもちろん、あなた自身のSceneも豊かにできるようになるためにぜひ、EPOCHのメンバーの一員になりませんか?

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