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CMのストーリーをつくるエディターとは? カットバックの4人から知られざるその仕事の面白さに迫る

株式会社カットバック

株式会社カットバック

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映像業界とひとくちに言っても、それが映画なのか、テレビ番組なのか、CMなのか、ジャンルごとに制作の裏側で起きていることは異なる。たとえば「編集」と呼ばれる業務ひとつを取っても、ディレクターと呼ばれる人が行なうのか、編集専門職が行なうのかは、ジャンルをまたいだ途端に「常識」が変わる。これも映像業界の面白さと言えるだろう。

カットバックはテレビCMのビデオコンテやオフライン編集に特化してきた映像制作会社。最近ではテレビCMにくわえ、仕上げ作業までを一手に担うWEBやSNSなどの CMもとても増えてきたという。CM業界における「エディター」の仕事が一体どんなものなのか、カットバックで働く泉達夫さん、小松有美子さん、伊集高大さん、前田佳佑さんにうかがいながら、仕事内容からその醍醐味までをひも解いた。
  • 取材・文:山本梨央
  • 撮影:玉村敬太
  • 編集:吉田薫・生駒奨

映像エディター?Vコン編集?オフライン編集? CM制作のプロセスをひも解く

―カットバックが手がける「オフライン編集」とは、全体の映像制作プロセスのなかでどんな役割を果たす職種なのでしょうか?

泉:そもそも映像制作と言っても、企業PR映像やテレビ番組の制作と、自分たちが担当しているCM制作では流れが大きく違うんです。なので今回は主にCM制作の話になりますが、流れとしては、まずはクライアントがCMを打ちたいと考え、広告代理店に声がかかります。そこで広告代理店が企画したCMを、プロダクションと呼ばれる制作会社がスケジュール管理や手配を進める。そこからさらに分業になるのですが、撮影した映像の構成や話の流れなどを整理していくのが、ぼくらが担当するオフライン編集です。その後、オンライン編集と呼ばれる、合成だったり、色みの調整だったり、映ってはいけないものを消したりする仕上げの工程があって、完成します。

伊集:映像編集の仕事といっても、撮影現場に足を運んで、その場で映像を取り込んで、仮で編集したりします。被写体のレイアウトを確認したり、決められた秒数内に収まっているかを確認したり。この仮で編集された動画をみんなで確認して、撮影し直すこともありました。自分の作業を待って、次の撮影がスタートするということもあり、「自分がチームに参加している」という実感が強く持てるのはいいですね。

小松:クライアント、広告代理店、プロダクション、タレント、事務所の方など、15人くらいに囲まれているなかでリアルタイムで編集していくんです。きちんとしたクオリティのものをどれだけ早く出すかが勝負ですね。自分が動かないと、ここにいる全員の仕事が進まない。正直、待たれているプレッシャーもそれなりにあります(笑)。

前田:撮影直後に行なうオフライン編集だけではなく、ビデオコンテ、通称Vコンと呼ばれるものもつくります。これは、いろんなCMや映像作品から素材を集めて制作する、いわば動く絵コンテのようなもの。世に出るものではないけれど、ストーリーを決めるうえで大切なプロセスです。受注をかけたコンペでクライアントへのプレゼン用に使われたり、撮影前に検証用として使われたり。支給された映像だけではパーツが足りない場合、個人的に気に入って集めていた映像などを素材として差し込むこともあって。ぼくはまだ入社2年目ですが、自分の感性が活かせるようで、楽しいですね。

WEBやSNSの広告制作で、守備範囲が広がった

―最近はWEBやSNSの広告映像も手がけていらっしゃるとうかがいました。テレビCMとは制作の方法も違うのでしょうか?

泉:基本的な流れは同じですが、広告入れ替わりの回転が早いので、Vコンをつくらなかったり、オンライン編集を入れなかったりするパターンもありますね。求められるスピードや予算の都合もあり、テレビCMよりもプロセスが少ないのは特徴のひとつかもしれません。

伊集:テレビCMに付随してSNSやWEB用に動画を制作する場合などは、テレビCM用で撮影していた素材をつなぎ合わせて編集していくこともありますね。

小松:ほかにも、撮影したものをカット編集するだけでなく、イラストやタイトルを動かすこともあります。私は撮影もの(実写)だけじゃなくモーショングラフィックスにも興味があったので、ソフトの勉強をして、実際に案件で活用できるようになったのは嬉しかったですね。

SNSやWEBの動画は、予算の都合上、仕上げの工程まで自分たちが請け負うことも多々あり、作品の最終アウトプットへの裁量が増えた実感があります。

カットバックが仕上げまで手がけたSNS用CM。サントリー「おいしいラーメン餃子にはパーフェクトサントリービール」

泉:最近で言うと、TikTok向けのCM動画を仕上げの工程まで担当する案件がありました。タレントさんが自分で撮っているような感じに仕上げるために、TikTokのお作法を事前に見て学んでから編集しました。こういった新しい種類の編集方法にチャレンジできるのも、カットバックとして受ける仕事の幅が広がった醍醐味だと思います。

カットバックが仕上げまで手がけたTikTok向けCM。株式会社J-オイルミルズ「暑い日はアイスパンダ!」

小松:新しい技術を学んでいくのは、カットバックの社内はもちろん、グループ会社のSTUDという映像制作会社とも、雑談しながら情報共有をしています。「こういうプラグイン使うと便利ですよ」と教えてもらったり、完成系の見た目は同じでも、つくる工程を相談したら3倍くらい早くなる方法を教えてもらったり。

泉:この業界って、フリーになっていく人も多いんですよ。だけど、そうすると技術共有の場も減ってしまう。制作の幅が広がっていることもあって、こういうプラットフォームを活かせるのは会社で働く強みと言えるでしょう。

カットバック流・エディターの腕の磨き方

―みなさん、未経験という状態で入社したとのことですが、そもそもなぜエディターになろうと思ったのでしょうか?

小松:私はもともと、テレビ番組のアシスタントディレクターをしていました。当時の業務は、いわゆる雑用から撮影・編集まで、かなり幅広く担当するんです。そのなかでも編集を極めてみたいという気持ちがあって、カットバックに入社しました。

伊集:もともと映像業界の現場の仕事をしていたのですが、実際に手を動かしてものをつくり上げていく方に関わりたくて、オフラインエディターになりました。

前田:ぼくはエディターの具体的な仕事内容も知らないまま、飲食業界から入りました。高校のときに部活紹介ビデオの制作を担当したんですけど、そのとき見た人からすごく褒めてもらえたんです。その体験が自分のなかに残っていて、映像編集をやってみたいという想いがあり、カットバックの求人に応募しました。

―まったくの別業界から入られたのですね。泉さんはいかがですか?

泉:自分は、大学卒業後、クライアントの要望に合わせて映像やWEB、イベントまで企画制作を行う会社に入社して、企画営業として働いていました。その中で、あまり費用が割けない案件では企画と営業だけでなく、時には映像の編集まで自分でやることがあって。そういった業務を通して、映像編集の面白さに気づきました。同時に、当時はコピーライター養成講座にも通っていて、そこでテレビCMのコンテを描く授業があったんです。映像編集の仕事や、コンテの授業を通して、映像の構成をつくる面白さにハマっていって、これを仕事にしたいなと思い転職を決めました。

―入社したあとは、どのように仕事を覚えていったのでしょう?

前田:入社して半年くらいは研修期間として、先輩の過去の作品の素材を使わせてもらいながら、ソフトの使い方を覚えたり、座学で業界について教えてもらったり、現場に連れて行ってもらったりしました。

小松:座学で基本を身につけた後は、現場に出ている先輩のアシスタントとして連いて行って覚えるかたちでしたね。

伊集:もともと映像業界と関わりがあったので、入社してからしばらくはCM業界に慣れない部分もありましたが、徐々に慣れていった気がします。

―独り立ちしたときは、いかがでしたか?

前田:基本的に映像エディターって現場にひとりで行くものなので「会社の名前を背負っている!」という緊張感がすごかったです。現場の監督やプロデューサーから、会社が信頼されて指名をもらって受ける仕事なので、とにかく失敗してはならない、と。でも、さすがにわからないことなどが出てきてしまったときは、こっそりチャットで先輩に相談して……。

泉:前田が初めてひとりで現場に行くときは、自分と小松で「大丈夫かなぁ」と言いながら、一応会社でいつでもフォローできるようにスタンバイしてましたね(笑)。

小松:それと編集用ソフトも最新のものがどんどん出てくるし、極たまにですが、毎日パソコンを使っていると、突然のマシントラブルもあります。なので、私もいまだに現場から詳しい人にヘルプを出すことも。お互いに得意分野で都度教え合えるのがカットバックらしさかもしれません。

後輩でも尊敬して「対等な選手」と思う

―現場での作業が多いとなると、映像編集の技術だけではなく、取引先とのコミュニケーションの面でもスキルが問われそうです。

伊集:ひとつCMをつくって放送するのにも関係者がたくさんいるので、一度に全員のOKをもらって完成することはほとんどありません。一人ひとり役割の違う方々に順番に確認をとって次のステップに進んでいく感じです。まずはCMの監督さんのOKをもらう。次にプロデューサーさん、広告代理店さんと。最終的にクライアントのOKをもらう。チームで仕事をしている意識で皆が納得できるように最善をつくしたいと思っています。伝え方もそのひとつだと考えています。

泉:伊集の仕事を見ていると「これだけのボリュームのものを、こんな早さで終えられたの!?」と驚くことがたびたびありますね(笑)。それはその丁寧なコミュニケーションがあってこそなんだと思います。自分も、たとえば場合によっては「こっちの方が好きです」と個人の主観を伝えた方が、相手が迷わずに選べる、ということがあったりします。

小松:編集の腕だけではなく、伝え方などの人柄で指名がもらえるのも、この仕事の面白さですよね。私は、撮影をしたときの「演者さんのこの表情や光がいいな」と感じる部分やストーリーを映像制作で大事にしたくて。たとえば求められているコンテとは別で、自分がいいと思うものも編集して「こんな見せ方も印象良く感じたんです」と並べて見せて、採用されたこともありました。自分の工夫で映像が良くなる瞬間は、やっぱりすごく嬉しいです。

前田:社内での日々の雑談のなかで、この現場のこういう人にはこういう伝え方がいいよ、というノウハウも教えてもらえるんです。先輩からのアドバイスを持って現場に出る度に、編集技術だけでなくコミュニケーションの部分もスキルアップを実感できることが多いのは達成感がありますね。

―映像エディターは、技術力と人柄、どちらも求められる職種なのですね。では最後にこれから、どんな方と一緒に働いていきたいですか?

小松:この仕事って、基本的にみんなソロプレイヤーなんです。現場で、ひとりでなんとかしなくちゃいけない。忙しいと、1か月くらい社内の人には誰にも会わない、ということもありました。だからこそ向上心があって、つねに自発的に努力し続けることを楽しめる人だといいですね。いまも、伊集と前田は社歴でいえば後輩ですが、ちゃんと尊敬している。対等な選手、という気持ちで働いています。

前田:現場での仕事も多いからこそ、映像エディターはサービス業に近いと感じることもあります。現場にひとりで行って、大勢を相手にしなければならない。だからこそ、気遣いができる人は向いていると思います。

伊集:映像が好きな人ですね。ジャンルはなんでもいいのですが、「〇〇のここが最高にかっこいいよね!」みたいな話ができると楽しいと思うし、それが仕事に対してのモチベーションにつながると思っています。

泉:もちろん、つらい局面を迎えることもある仕事です。でもそれを、「どうすればよかったんだろう」とか、周りに聞いてみようとか、いろんなことに着目できる人は自分で学んでいけるんだろうと思っていて。苦しいなかにも建設的なことを考えて見つけられる人は、目の前のことに興味を持って走っていたらいつの間にかレベルアップしていた、というケースが多いと思います。映像が好きで、自分なりに得意なことを見つけられる。そういう人こそ、長く続けられる仕事なんじゃないでしょうか。

Profile

株式会社カットバック

カットバックは、映像制作会社STUD(スタッド)から派生してできた会社です。ビデオコンテ(通称Vコン)と呼ばれる、いわば絵コンテの動画版の制作に特化してスタートした会社ですが、最近ではテレビCMやWEB用、SNS用などの映像において、オフライン編集も行なっています。

そもそもCM制作の流れをまだ知らない、だけど映像は大好き、という方も大歓迎。そんな方に向けて、まずは流れをご紹介しましょう。

■CM制作の流れ
最初はクライアントから広告代理店やプロダクションに企画立案の依頼が入ります。しかし、絵や静止画だけではなかなか映像のイメージが伝わらない。そんなときこそ私たちの出番。企画を通すため、クライアントがイメージをつかめるようにとVコンを制作をするためにプロダクションからエディター手配の依頼が入ります。無事に企画が通ると、実際に撮影を行ない、オフライン編集を経て、最後の仕上げのオンライン編集を行ない、ようやくテレビやWEBで流せるようになるのです。

※オフライン編集:マスター素材をコピーしたワーク素材を使って行なう仮編集作業
※オンライン編集:色調整や特殊効果など、映像の見た目の仕上げの作業

カットバックが担当するのは、このVコンやオフライン編集。つまりCMづくりの土台とも言える部分です。一見、裏方に徹しているように見えるかもしれないけれど、実はCMのストーリーテリングに関わる最も重要な仕事なのです。

カットバックは設立から7年が経ち、教育体制も徐々に整ってきました。現メンバーも、前職は飲食店で接客係だったりボクサーだったり企画営業だったりと多種多様です。共通しているのは「映像が好き」ということ。一人ひとりの得意分野や人柄、コミュニケーション力や知識・センスを活かした、属人的な仕事ぶりが、次の指名をいただけるチャンスに繋がっています。

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