クリエイター集団がなぜ結婚式をつくる?幸せをかたちにするCRAZYの哲学

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「no other experience —人生が変わるほどの結婚式を—」。株式会社CRAZYによる「CRAZY WEDDING」は、結婚する二人の個性をクリエイターの手によってかたちにするオーダーメイドウェディング事業。初年度から売上1億円を達成、毎年200%超えの急成長を遂げている。結婚式業界にイノベーションを起こした彼らだが、じつはウェディング事業だけをやっているのではない。型破りのクリエイションを生み出す彼らが大切にすることとは?

新事業であるCRAZY CREATIVE AGENCY(以下CCA)のクリエイティブディレクター林隆三さんとCRAZY WEDDINGのアートチーム マネージャー染谷和花さんに、会社が持つ使命と、いまCRAZYが求めるアートディレクター像について取材した。
  • 取材・文:AYANA
  • 撮影:岩本良介

「結婚式ってクリエイティブじゃないよね」という大きな誤解

「Lapis Lazuli」「染み込む」「大結宴」——これらはCRAZY WEDDINGプロデュースの結婚式でつけられたコンセプト名だ。

スノードームのような空間や、映画の受賞式をイメージした演出、バンドマンだった2人に思い出の卒業ライブを再現するなど、新郎新婦の個性を活かして世界に一つだけの結婚式をつくっている。目の前の人を幸せにしたいという思いから生まれるクリエイティブは、アートディレクターにとって「とてもエモーショナル」だと語る。

ー「CRAZY WEDDING」にとって、アートディレクターの役割とはどのようなものですか。

染谷:結婚するお二人が歩んで行きたい人生背景や大切にしている価値観などをプロデューサーが深くヒアリングし、新郎新婦の理想に寄り添いながら「個性と人生背景が詰まったコンセプト」をつくり上げます。それをデザインに落とし込み、クリエイティブで表現するのがアートディレクターの仕事です。

結婚式のコンセプトは「snow dome」 / ウェディングプロデュース事業「CRAZY WEDDING」(画像提供:CRAZY)

結婚式のコンセプトは「snow dome」 / ウェディングプロデュース事業「CRAZY WEDDING」(画像提供:CRAZY)

林:単に結婚式をデザインする仕事ではありません。新郎新婦にとって本当に意味のある、心を動かす要素を組み合わせて、空間をつくります。ですから、目の前にいるお二人とは深くしっかり向き合いますね。私たちはヒアリングをとても大切にしているので、コアな部分を引き出すために、感情的にも論理的にも話しを聞き続けます。実際、親にも話したことがないエピソードを話してくれる方もいらっしゃるなど、密なコミュニケーションがあったうえでのクリエイティブなので、非常にやりがいがありますよ。

染谷:当日、新郎新婦に目隠しをして、つくり上げた会場を「せーの」で見てもらうのですが、その瞬間はいつもエキサイティング。多くの方が涙してくれるのですが、それを受けてアートディレクターも間違いなく泣いてますね(笑)。

林:じつは黒子であるスタッフが泣くことは、業界的には御法度とされているらしいんです。裏方に徹しろということだと思うのですが、目の前で喜んでくれる人の姿を見て泣いてはいけないだなんて、それは無理だと思うんです。ぼくたちはウェディングをつくっているのと同時に、「感動」をつくっているのだから。

結婚式のコンセプトは「NON LIMIT」 / ウェディングプロデュース事業「CRAZY WEDDING」(画像提供:CRAZY)

結婚式のコンセプトは「NON LIMIT」 / ウェディングプロデュース事業「CRAZY WEDDING」(画像提供:CRAZY)

—やはりCRAZYの考えはウェディング業界に変革を起こしていますね。

林:自分たちのクリエイティブが人の幸せに役立っていて、それを目の前でダイレクトに体感できるってすごいことですよね。一般的にクリエイターは、アウトプットの結果や評価が見えにくかったり、モニターに向かって作業しているうちに、なんのために、誰のためにデザインしているかわからなくなってしまったりする経験が少なからずあると思うんです。CRAZYの仕事はその対極です。

ウェディングにはコンサバティブな印象がありますが、結婚というものは人生のターニングポイントであり、一人ひとりのウェディングは異なっていて当たり前。本来はめちゃくちゃクリエイティブにできるはずのものなんですよね。

—責任もやりがいも大きな仕事だと思いますが、目の前の人に感動してもらうために、CRAZYのアートディレクターは、どのように仕事と向き合っているのでしょうか。

林:クレイジーのアートディレクターに雛形はありません。どういう結婚式にするかは完全に自由。「二人にとって本当に素晴らしい1日って何だろう?」ということを突き詰めて考えながら、一つの世界観に落とし込んでいきます。

だから、クライアントのために自分の能力を惜しみなく注ぎたいと思えることは大切です。新郎新婦に深く入り込んで、一緒に喜びを分かち合うので、親族のような距離感になっていきます(笑)。だからこそ、CRAZYのスタッフは、これもつくれる、あれもつくれるという技術力だけでなく、「気持ち」も大事になってくるのだと思います。

CCAクリエイティブディレクター 林隆三さん(左)、CRAZY WEDDINGアートチーム マネージャー 染谷和花さん(右)

CCAクリエイティブディレクター 林隆三さん(左)、CRAZY WEDDINGアートチーム マネージャー 染谷和花さん(右)

「自分を生きるっていいよね」と伝えていく

徹底したヒアリングなどによって、クライアントと真摯に向き合ったクリエイティブをつくり続けるCRAZYのメンバーたち。その結果、染谷さんのようにCRAZYで挙式を挙げた後、その仕事や人柄に魅了されて転職してくる人も多いという。

いっぽうで、CRAZYが問うのはクリエイティブだけではない。その実現のために、社員一人ひとりの人生設計や、生き方についての考えを求めることもあるという。なぜなら、クライアントの人生にとって大きなターニングポイントとなる「結婚」をかたちにするという仕事には、自分の人生観がとても影響するからだ。

林:CRAZYのメンバーによく話すのが、「自分を生きている」感覚を大事にしてほしいということ。それはお客さまやCRAZYに関わるすべての人に対して思っています。

「自分を生きる」というのは伝わりにくい表現なのですが、つまりは、ものごとに対して「自分で見極められる力を持つ」ということ。現状や当たり前とされることに違和感を持つ敏感さと、その疑問をもとに行動できるかどうか。

CRAZYにはそんなメンバーが集まっていて、そのうえでクリエイティブな仕事を実現している。人生のターニングポイントであり、人の心を震わせる感動が毎度のように生まれるウェディングには、「あ、自分を生きるってこういうことなのか、めちゃくちゃ楽しい!」と思える場面がたくさんあるんです。

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染谷:じつは私自身、ウェディングをCRAZYにお願いしたのですが、そのときの経験があまりにも印象的だったため、ここに転職したんです。

それまではずっと大企業で働いていて、業務内容も勤務形態も会社から与えられるのが当たり前だと思っていました。そんななかで「私の人生、このままでいいのかな?」とふと考えたときがあって、気がつけば結婚式というプロセスを通して、自分の人生を考えさせてくれたCRAZYに足が向いていたんです。

でも入社してみたら、なんでも自分で決めていい、会社に期待するなという社風で、これまでとあまりに違う環境に、最初はずいぶん面食らいました。

林:「会社に期待するんじゃなくて自分に期待しろ」という話をしましたね。でもそれは自分の可能性を信じろという意味なんですよ。変化に肯定的であれという。

染谷:誰だって自分のなかに好きじゃない部分や変えたい部分を持っていると思います。でもそこに向き合い、変えようとするのは苦しさを伴う作業。いっそのこと、逃げてしまったほうが楽かもしれない……。

実際に私も、型にはまった働き方をする大企業病が抜けず、苦労しました。だけど、それを乗り越えたときに、自分で選択しながら生きる喜びがあった。CRAZYのみんなはそれを知っているから、もしそこでつまずく人がいたとしても協力的なんです。

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林:かつて、出産と仕事の狭間で悩んでいた時期もあったよね。仕事もしたいけど子どもは絶対に産みたい、そのときは仕事をあきらめたほうがいいのかなと言っていて。

染谷:仕事をしていると子どもが産めない、出産したら仕事ができない、そう思い込んでいました。でも、どっちもやればいいんじゃない? そういう仕組みをつくろうよ! とみんなが言ってくれて。聞いたときは、そんなことしていいの? と半信半疑でした。出産して戻ってきたら、本当にベビーシッターの制度ができていて。自分も変化したいと思ったし、自分を信じて待っていてくれたメンバーの存在があったから、いまここに立てているんだと思います。

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互いにリスペクトしながら、いちアーティストのように個々が自分の足で立つ

互いにリスペクトしながら、いちアーティストのように個々が自分の足で立つ

「自分を生きる」メンバーが集まったCRAZYでは、社内コミュニケーションに関しても徹底している。それによって、ものづくりの効率化だけでなく、人の本質を抽出する力、編集する力を日常的に磨いているのだという。そういった社内で磨き上げたスキルを、新たなビジネスに活かそうと動き出しているようだ。

—個々についてはお聞きしましたが、株式会社CRAZYとしてのヴィジョンはいかがでしょうか?

林:CRAZYは、未来に向けて「2,000社(事業)、100万人の雇用」という構想を掲げています。ウェディングは個人向けサービスのため、CRAZYの価値を多くの人に届けるためのスピードはどうしても遅くなってしまう。そもそもウェディングは重要な仕事ですが、CRAZYはそれだけをするための会社ではありません。

構想を実現するための一つの手段として、私はいま、ウェディングの経験を活かして、法人向けクリエイティブサービスを手がける「CCA」という事業に携わっています。だからいま「CRAZY WEDDING」のアートディレクターを務めているメンバーも、ゆくゆくはCRAZYらしさを、新しい事業で実現したり、個人がもっと立ったりしていくような働き方になると思います。

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—「自分を生きること」「当たり前を疑うこと」を徹底しながら、さまざまな新事業を展開されていますが、メンバーのモチベーションを保つためにしていることはありますか?

林:染谷も先ほど話していましたが、「もっと新しいことをしたい」といった強いエネルギーを持って入社したメンバーでも、最初はCRAZYが持つ自由な働き方や、強烈なカルチャーに萎縮してしまうことがありました。そこをサポートし、使命感を思い出してもらうために社内コミュニケーションの文化が確立されています。

うちの会社のコミュニケーションには2軸あって、ひとつはクリエイティブ。これは共通言語として機能していて、もっといいものをつくりたいという目線で語れる部分です。たとえばPDCAサイクルをクリエイティブな面でも採用しています。反省点を次に活かすにはどうしたらいいか、いいアイデアがあったときは共有するなど、先輩後輩関係なく意見を出し合う環境をつくっています。

CRAZY社内にあるオブジェは、実際にお客様が結婚式を挙げたときの高砂を再現

CRAZY社内にあるオブジェは、実際にお客様が結婚式を挙げたときの高砂を再現

林:もうひとつは、一人の人間同士としてのコミュニケーションです。メンバーそれぞれの「自分の生き方」を見つめ直し、共有し合う目的から、シーズンごとに2泊3日の合宿を行っています。どんなヴィジョンを持って、どう生きていきたいかという思想を出しあうことで、あらためてお互いを深く知り、仕事に活かす機会をつくっています。

染谷:あとは創業時からいちばん大事にしているのが、毎日の食事です。なぜなら、経営の優先順位の1番目に「健康」をおいているから。CRAZYでは昼の12時になったらどんなに仕事が忙しくても手を止めて、会社のダイニングチームがつくった昼食をみんなで食べます。

栽培法や調理法にこだわった自然食は、クリエイティブな仕事にもっとも必要な要素である「健康」をビルドアップしてくれるもの。また社員が一堂に会する機会でもあり、豊かなコミュニケーションが生まれます。人間関係の構築にはかなり投資をしている会社だと思いますね。

林:クリエイティブの社会でしか生きてこなかったので、CRAZYに入社するまでは、忙しさの合間をぬって、夕方に食べるランチがかっこいいと勘違いをしていたのですが(笑)、それは違うんだと考えが変わりましたね。

社員全員が食卓を囲む(画像提供:CRAZY)

社員全員が食卓を囲む(画像提供:CRAZY)

—ちなみに、主体性を強く持ったクリエイター同士は反発し合わないのでしょうか……?

林:たしかに、みんなが主体性を持っているから、言うことにも遠慮がないです(笑)。でも、全員がその道のプロフェッショナルで、お互いをリスペクトし合っているから、ただ我を通すだけという人間はいないですよ。ただ仲良しというのではなく、「相互リスペクト」という気持ちがすごくあります。

染谷:フリーランスの集まりみたいなところがあるかもしれません。みんな自分の足で立っていて、集合するとものすごいものができるみたいな。主体性と協調性って相反するようですけど、日々コミュニケーションを取ることで、信頼関係も築けています。

じつは、朝礼で全社員が一人ひとりと挨拶しながら握手をするんです。毎日肌と肌をふれ合っているので、なにか変化があったら察知できるほど。エネルギーの交流は激しくて、異常値かもしれませんが(笑)、それがCRAZYらしさだとも思っていて。

林:いろいろなコミュニケーションを通して、相手の考えていることとか、本質はどこにあるのかといったことを自然に読み解く筋力がついていくんです。そしてその力が「CRAZY WEDDING」に活かされていく。結婚するお二人の深いところを理解する必要があるわけですから、とても重要な能力です。

いまはCRAZYという物語の新たな1ページが始まるタイミング

一人ひとりの生き方とも密接した、妥協のないクリエイティブのあり方。メンバー同士の能力をより引き出し合うための、コミュニケーションのつくり方。それらによって自らの社会的価値を高めつつあるCRAZYは、これからどんなアクションを起こそうとしているのか、あらためて聞いた。

林:これまでのCRAZYは「時間をじっくりとかけて、集中していいものをつくる」というところに意識を向けてきました。だからこそCRAZYのクリエイティブをある程度、世の中に認知してもらえたと思っています。

設立6年目を迎えた今年は第2フェーズに進み、より多くの人にCRAZYの価値を届けていきたいというところに来ています。そうしたときに有限である時間やリソースをどう使っていくか、効果的に拡散するにはどうしたらいいか……というビジネススキルがメンバー全員に求められます。

その方法はそれぞれでいいと思うんです。セミナーで話すのが得意な人間もいれば、SNSでの発言に注目が集まる人間もいる。大切なのは、CRAZYの社会的価値をもっともっと上げていくヴィジョンを持てること。

染谷:林が言う通り、やりかたはクリエイターそれぞれの自由です。でも、無責任にやりたいことをやればいいというわけではない。それは「CRAZY WEDDING」も同じです。少し大げさかもしれませんが、「人の人生を預かっている」という自覚があれば「自分だけで完結するクリエイティブ」はありえないはずなので。

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林:結局クリエイティブと生き方ってリンクするんです。自分の哲学を育んでいくことで、クリエイティブのスキルも上がっていく。ウェディング会場に置く装飾物一つひとつに意味が込められている必要を、毎秒問われていくわけですから。「なんでこれをここに置いたの?」と立ち返って考えることをおろそかにしない。

染谷:新たなメンバーを迎え入れることで社内には人が増えていきますけど、「組織を大きくして、役割を切り離していく」という意識はなくて。新たな観点を持った人が入ることでコミュニケーションがもっと楽しくなって化学反応が起こり、新しいCRAZYに進化していくというイメージを持っています。社内では、異業種であっても距離はすごく近いです。クリエイターと経理担当が熱く語りあう環境はなかなかないんじゃないでしょうか。

林:新しくクリエイティブエージェンシー事業を立ち上げるなど、会社的にもおもしろいタイミングですよ。アートディレクターという肩書きもあってないようなもので、もっと個人の働き方、モチベーションが立っている環境です。同じアートディレクターでも仕事の仕方はまったく違います。

染谷:CRAZYの仕事で得られる「人を幸せにする」という経験は、単純にめちゃくちゃおもしろくて素敵なことです。また、コミュニケーションの構築や、自分の人生と真剣に向き合える環境は、キャリアにおける大きな財産になるだけでなく、自分自身の変化も自発的に楽しめると思います。

法人向けクリエイティブエージェンシー「CCA」として、商業施設「NEWoMan」1周年をプロデュース(画像提供:CRAZY)

法人向けクリエイティブエージェンシー「CCA」として、商業施設「NEWoMan」1周年をプロデュース(画像提供:CRAZY)

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    株式会社CRAZYは、既存の考え方・働き方にとらわれず、新たな可能性や真に理想だと言える組織運営の取り組みを発明しています。

    私たちの活動の根幹は、理想から物事を「本質的に 美しく ユニークに」再定義する営み。そして「クレイジーと言われるレベルでそれを行うこと」が、未来に必要な新しいサンプルをこの社会に生み出すことだと信じています。

    現在、コンサル、広告、IT、商社、デザイナーなど、様々な業界から仲間が集まり、これまで世の中になかった事業の展開を行っています。

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