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お菓子業界を全力で盛り上げたい。BAKEがWEB強化で目指すビジョンとは

株式会社BAKE

株式会社BAKE

「BAKE CHEESE TART」「PRESS BUTTER SAND」「クロッカンシュー ザクザク」など洗練されたお菓子ブランドを手がける株式会社BAKE。設立7年目にして、店舗に長い行列ができる人気ブランドを次々生み出し、ブランディングに成功している同社だが、これからの時代を生き残るために、WEBでの発信をより強化するという。現にブランドサイトやSNSだけでなく、競合他社の商品まで紹介するオウンドメディアも運営しているというが、そこまでするのはなぜなのか?
情報発信を担当する方々にお話を聞くと、「発信力で菓子業界を元気にしたい」という熱い想いが見えてきた。
  • 取材・文:宇治田エリ
  • 撮影:柏木鈴代
  • 編集:吉田真也(CINRA)

10年先を見据えて動く。「発信の場」を強化し、末長く愛されるブランドへ

―BAKEの菓子ブランドといえば、店舗に長い行列ができ、フォロワー数1万人超えのInstagramアカウントも多く、設立わずか数年でブランディングに成功しています。前回の記事ではBAKEのデザイナー陣にお話をうかがいましたが、あらためて、ブランディングへのこだわりを教えてください。

貞清:一生かけても食べきれないほどの菓子商品が、世界中にあふれています。われわれは、まだ設立して7年目。老舗の大企業に比べたら弱者です。そのなかで自社商品を食べてもらうには、味や安全性を最重要視するのは当然で、あとは「いかに知ってもらうか」が肝になります。ぼくらの場合は、デザインやクリエイティビティーで他社との違いをつくろうとしています。

クリエイティブ部 チーフクリエイティブディレクターの貞清誠治さん

クリエイティブ部 チーフクリエイティブディレクターの貞清誠治さん

―とはいえ、いまはブランドの認知もかなり広がり、ファンも増えてきていると思います。

貞清:ありがたいことに、順調に認知度は広がっています。これまではとにかく「知ってもらうこと」に必死でしたからね。ですが、ここから先は認知をさらに広げるだけでなく、ファンに長く愛されるためのブランディングや発信方法を練らないといけないと感じています。

いまの時代、ITが進化してサービスのあり方や商品の届け方も、どんどん変わってきています。ぼくらもITを駆使して、新しいブランディングやサービスのかたちを生み出していかないと、この先10年も生き残れないでしょう。WEB発信の機能と内容をより充実させていくために、制作を担当しているWEBチームの強化は急務と考えています。

WEB上だけで、いかに「おいしそう」と思わせるかが腕の見せ所

―WEBチームの具体的な業務は、どういった内容なのでしょうか?

小野澤:いまは、コーポレートサイトや各ブランドサイトの構築・運用・メンテナンスをはじめ、新フレーバーやキャンペーンサイトのLP制作がメインです。あとは、SNSと連動させたアニメーションの制作、店舗のデジタルサイネージの管理と映像制作、インナー向けのイベント映像なども担当しています。

『BAKE Inc. 5周年パーティー』で360°映像を制作。「BAKEの各スイーツブランドを擬人化したら?」というコンセプトのもと、個性豊かにお菓子を擬人化し、ランウェイでお披露目したときの様子(画像提供:BAKE)

『BAKE Inc. 5周年パーティー』で360°映像を制作。「BAKEの各スイーツブランドを擬人化したら?」というコンセプトのもと、個性豊かにお菓子を擬人化し、ランウェイでお披露目したときの様子(画像提供:BAKE)

―業務が多岐に渡りますね。そのなかでも、いまもっとも力を入れているのは?

小野澤:やはり、お客さまにとっての入り口となる各ブランドサイトの構築・運用ですね。サイトを見た人に持ってもらいたいイメージ・世界観をデザインに落とし込むので、ブランディングにおいても重要な役割を果たしています。

クリエイティブ部 WEBディレクターの小野澤慶さん

クリエイティブ部 WEBディレクターの小野澤慶さん

―ブランドサイトをつくるうえで、こだわっているポイントを教えてください。

小野澤:各ブランドサイトは、商品の世界観と「本気度」を伝える場。まだ商品を食べていない人に向けても魅力を伝えなければならない。だから、「本気でおいしさを追求した商品」というのを表現することが重要です。

テキスト、グラフィック、モーション、動画など手段はさまざま。商品のおいしさを伝えるために、ブランドのアイデンティティーや商品の魅力を可視化することにこだわっています。

左側は「BAKE CHEESE TART」のブランドサイト。右側は「POGG」のブランドサイト(画像提供:BAKE)

左側は「BAKE CHEESE TART」のブランドサイト。右側は「POGG」のブランドサイト(画像提供:BAKE)

―「おいしさ」を、ビジュアルだけで体現するのは難しそうです。

小野澤:そうですね。でも、難しいからこそやりがいがありますよ。WEBサイトができるのを楽しみにしてくれるお客さんもたくさんいらっしゃいますし、ほかのPCサイトからの流入もかなり多いんです。PCの大きな画面だからこそ、使える表現の幅も広い。WEBチームの腕の見せ所だと思ってます。

「RINGO」のLPサイト(画像提供:BAKE)

「RINGO」のLPサイト(画像提供:BAKE)

小野澤:とはいえ、外出先からスマホで店舗情報を見る場合なども想定して、手軽に使いやすい仕様にすることも大切。スマホとPCともに、ブランディングと使いやすさの両軸を考慮してサイト構築・運用をしています。

―WEBの構築・運用にとことんこだわれるのは、インハウスの魅力ですね。

小野澤:そうですね。また、実装面などでご協力いただく外部パートナーの選定にもかなりこだわっています。より各お菓子ブランドのおいしさや、楽しさがWEBで伝わるように外部と連携を取りながら、新たな発信方法を日々模索しています。もっと新しい表現を探り、WEB業界からも一目置かれる存在になりたいです。

店舗で焼きたてのお菓子の匂いを嗅ぐと、商品を買いたくなりますよね。それと同じくらい、WEBサイトを見て「おいしそう」「食べてみたい」と思ってもらいたい。WEBを通じて、BAKEのファンになっていただける方が増えたら嬉しいです。

―WEBサイト以外のIT領域も今後強化していくのでしょうか?

小野澤:そのつもりです。ただ、現状のブランド数や作業量に対してWEBチームのメンバーが足りていないので、新たなチャレンジには手が回っていません。体制が整ったら、「次の時代に流行しそうなこの方法を試してみよう」とか「いま、このクリエイターとコラボしたら面白い発信ができそう」とかお客さまがワクワクするようなコンテンツをどんどん仕掛けていきたいですね。

貞清:ECでの展開も、一部ブランドですでにトライしています。今後は利便性に特化したWEB展開を本格的に検討していきたいと思っています。

デジタル技術を軸に、サイエンスやデザインを掛け合わせるなど「やれたら面白そう」と思うことはたくさんあるので、WEBチームの役割はこれからどんどん大きくなっていくはず。「とりあえずやってみよう」という社風もありますし、デザイナー・エンジニア・ディレクターなどいろいろチャレンジをしたい方には、かなりやりがいのある環境だと思います。

いまやブランディングに欠かせないインスタ。SNSで意識すべき、細部へのこだわり

―BAKEではSNSでの情報発信も活発ですよね。ブランドサイトなどのほかのメディアと比べて、ターゲットの特徴はありますか?

名和:ブランドのInstagramを見てくださる方は、新規顧客というよりファンが多いんです。だから、すでにあるブランドイメージを損なわずに、ますますエンゲージメントを高めていく意識が大切です。

メディア・イベントチーム 編集者の名和実咲さん

メディア・イベントチーム 編集者の名和実咲さん

名和さん:SNSでは、お菓子だけでなく、ノベルティーやパッケージデザインなどを含め、一枚一枚の写真をしっかりとつくり込んで定期的に更新しています。最新情報の発信と同時に、世界観を打ち出すことを心がけています。

2万5000人のフォロワー数を誇る「RINGO」のInstagramアカウント(2019年10月現在)

2万5000人のフォロワー数を誇る「RINGO」のInstagramアカウント(2019年10月現在)

装飾の配置や構図まで、こだわり抜いている(画像提供:BAKE)

装飾の配置や構図まで、こだわり抜いている(画像提供:BAKE)

―たしかに、細部までこだわってますね。

名和:WEBサイトと違い、フォロワー数の変動やコメント欄などでお客さまの反応をダイレクトに感じられるのがSNSの魅力。こだわった分だけ、反応が返ってくるのでやりがいも感じます。反応を分析して、臨機応変に伝え方を変えていくことが大切ですね。

また、BAKEではブランドサイトやSNSのほかに、「THE BAKE MAGAZINE」と「CAKE.TOKYO」という2つのオウンドメディアも運営しています。「発信の場」が多いので、それぞれの役割を明確にすることを意識しています。

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ライバル社の商品も紹介!? お菓子屋BAKEがオウンドメディアを運営する理由とは

ライバル社の商品も紹介!? お菓子屋BAKEがオウンドメディアを運営する理由とは

―「THE BAKE MAGAZINE」と「CAKE.TOKYO」は、それぞれどういった位置づけのオウンドメディアなのでしょうか?

名和:「THE BAKE MAGAZINE」は、BAKE設立から3年目の2015年に立ち上げたオウンドメディアです。その背景には、「もっと私たちの会社を広く知ってもらいたい」という狙いがありました。

基本的には、BAKEの事業や社員にフォーカスした記事を発信しています。ただ、ときにはビジョンに親和性を感じるスタートアップや老舗企業、職人さんなどを紹介することも。似た価値観を持つ人々の取り組みや努力を伝えることで、弊社が大事にしている想いの発信にもつながると考えています。

「THE BAKE MAGAZINE」のトップページ(画像提供:BAKE)

「THE BAKE MAGAZINE」のトップページ(画像提供:BAKE)

名和:一方、「CAKE.TOKYO」はBAKE色を打ち出さず、製菓業界全体を盛り上げるために運営している「お菓子専門メディア」です。こちらは、「おいしさの裏側にストーリーがある」というコンセプトのもと、さまざまなお菓子を紹介しています。

「CAKE.TOKYO」のトップページ(画像提供:BAKE)

「CAKE.TOKYO」のトップページ(画像提供:BAKE)

―2つのオウンドメディアを4年間運営してきて、発見や効果はありましたか?

名和:「THE BAKE MAGAZINE」でいちばん効果が現れたのは、採用ですね。BAKEはブランドや商品をメディアに取り上げてもらうことは多いものの、会社自体を深く掘り下げて紹介してもらうチャンスはなかなかありません。BAKEの価値観やビジョンを明文化したことによって、求職者の方々とのミスマッチを最小限に減らせたと思います。

小野澤:お菓子業界で働いている人の顔が見えることって、いままであんまりなかったですからね。社員が積極的に顔を出すことで、親しみすさや信頼感にもつながっていると思います。

名和:BAKEはまだまだ成長途中です。この会社にどういうルーツがあって、何をしようとしていて、ほかのお菓子屋さんとはどういう違いがあるのか知ってもらうには、自分たちで発信するしかありません。そのストーリーや想いに共感してくれる方が、一緒に働きたいと思ってくれるのは嬉しいですね。

―「CAKE.TOKYO」では、どのような効果がありましたか?

貞清:アウトプットの場でありつつ、インプットのツールとしてかなり役立っています。普通は、同業他社やライバル会社に話を聞く機会なんてなかなかありませんからね。自分たちだけでは見つからないような新たな発見や、思わぬヒントにつながることもある。取材がきっかけで、他企業と深いおつき合いが始まることもあります。

時代に逆行してでも、発信したいことがある。取材がきっかけで新ブランドも誕生

―実際にどのような関わりが生まれたのでしょうか?

名和:取材がきっかけで、鎌倉にある「ca ca o(カカオ)」というチョコレート屋さんと仲良くなりました。2019年2月にBAKEから誕生したガトーショコラ専門店「Chocolaphil」は、原材料の調達やレシピ開発を、ca ca oと協力してつくったブランドなんです。

「チョコレートよりもチョコレートなガトーショコラ」をコンセプトに生まれた「Chocolaphil」(画像提供:BAKE)

「チョコレートよりもチョコレートなガトーショコラ」をコンセプトに生まれた「Chocolaphil」(画像提供:BAKE)

名和:ほかのお菓子屋さんからしてみれば、BAKEはいわば競合他社。だけど私たちは争うのではなく、「本気で製菓業界を盛り上げる」という同じビジョンを持ちながら共創していきたいんです。

コラボによって「Chocolaphil」が生まれたように、これからほかの製菓会社と手を組む流れも増えると信じています。そのためにも、お客さまだけでなく同業他社に共感してもらえるようなオウンドメディアを継続していきたいですね。

―しかし、近年は費用対効果の関係で、良質な記事をアップしていたメディアのクローズも相次ぎ、「オウンドメディアブームの終焉」ともいわれる時代です。BAKEも「発信の場」を継続していく難しさは感じますか?

名和:もちろん弊社でも、オウンドメディアを継続していくのか、これまで議論がなかったわけではありません。でも、BAKEはオウンドメディアをとおして、伝えたいことがまだまだあるんです。お菓子の魅力を発信するためなら、時代に逆行してでもやりたいと考えています。

費用対効果は、数値だけで測れるものだけではない。菓子職人や製菓会社のこだわりを発信し、菓子の奥深さを知ってもらえることの「価値」は、数値化できなくてもたしかに存在すると思います。「菓子の魅力を発信し続け、製菓業界に貢献したい」というのは、全社員の共通認識。同じ価値観で事業の継続を検討できるのも、インハウスの良さですね。

小野澤:伝えたいことがなければ、そもそもオウンドメディアをやる必要はないですからね。逆に、心から伝えたいことがある以上、自分たちのメディアを持って発信するという選択は、ぼくたちにとっては自然なことかなとも思います。

先を予測して行動するチャレンジャー求む。WEBチームが必要とする人物像とは

―BAKEにとってのWEBは、各ブランドとお客さんをつなぐ入口でもあり、お菓子自体の魅力を発信する場でもあるんですね。WEBの強化をとおして、BAKEを今後どのように発展させたいですか?

小野澤:われわれの想いや価値観に共感してくれる全国の企業ともっとつながりたいですね。私たちの究極の目標は、お菓子をとおして社会に貢献すること。そのチャンスを広げられたら嬉しいです。

貞清:実際、いまはネットワークも広がってきて、地域と連携することも増えています。「この原材料を使って何かつくってほしい」という依頼もあります。そういった課題にも少しずつ取り組み、地方創生にもつなげていけたらいいですね。

また、ゆくゆくはWEBの強化にとどまらず、新しいテクノロジーも積極的に取り入れていきたいです。たとえば、フードテックで原材料を進化させたり、製造工程や購買体験にテクノロジーを導入したり。

ITを含むテクノロジーの力で、もっと大きな仕組みづくりを考えていきたい。WEBチームの業務範囲も、時代の変化に伴って拡大していくと思います。

―どんな人がBAKEのWEBチームに向いていると思いますか?

小野澤:柔軟な発想力と行動力を持った人ですね。BAKEが製菓業界を引っ張る存在になっていくには、時代の先をいくWEBの見せ方や工夫がカギになります。未来を予測し、つねに新しいチャレンジができる人と働きたいですね。

名和:BAKEは、熱量を持ってロジカルな思考で話せていれば、意見を聞いてもらえる会社です。たとえば、現在クライアントワークのWEB運用をしている人で、KPIや予算の兼ね合いに縛られ、やりたいことができない人もいると思います。でも、BAKEでは周りを説得できれば、自分のやりたいことができる。しかも、スピード感を持って実行に移せます。

それが、インハウスならではのやりがい。「社内だけでなく、社会を巻き込んでやる」くらいの気概を持っている人には、働きやすい環境だと思います。

貞清:流行を追うだけではなく、さまざまな角度から「良質なお菓子」を発信したい。その想いは、きっとこれからも変わりません。お菓子の魅力を世の中に広めるために、あらゆる方法をみんなで一緒に考えてチャレンジしていきたいですね。

Profile

株式会社BAKE

私たちは、2013年の創業以来、お菓子のつくり方・見せ方・届け方にこだわり、関わるすべての方々のしあわせに繋がるブランドづくりに取り組んできました。

社内には製菓業界だけでなくアパレルや外食、ITなど幅広い業界からスペシャリストが集まりそれぞれが持つ専門性や経験を活かして働いています。

様々なバックグラウンドをもつメンバーと協同し、お客様へしあわせを届けるため、お菓子を、そして会社を進化させる仲間を募集しています。

会社のMission・Vision・Valueはコーポレートサイト、働く人に関する情報はRecruitサイトTHE BAKE MAGAZINE、Brandsは下記ブランドサイトをご覧ください。

BAKE CHEESE TART
CROQUANT CHOU ZAKUZAKU
RINGO
PRESS BUTTER SAND
Chocolaphil
八 by PRESS BUTTER SAND

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