おいしさの次にデザインが大事。BAKEがこだわる、ブランド世界観のつくり方

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「おいしさの次に、デザインが大事」。そんな文化が根づくのは、「BAKE CHEESE TART」「クロッカンシュー ザクザク(以下、ザクザク)」などのオリジナルお菓子ブランドを手がける株式会社BAKE。近年、海外出店も活発に行い、女性を中心に絶大な支持を得ている。人気の理由のひとつは、ファッションブランドのように洗練された「デザイン」にある。パッケージ、店舗の内装、ウェブサイトなどトータルブランディングによって、シンプルなお菓子の魅力をデザインで引き立てている。デザインにとことんこだわるのは、全ブランド「専門店」展開というビジネスモデルが大きく関係しているそうだ。各ブランド「らしさ」をデザインで表現するために、どんな工夫をしているのだろうか。BAKEのインハウスデザイナー4名にお話を聞いた。
  • 取材・文:宇治田エリ
  • 撮影:柏木鈴代
  • 編集:吉田真也(CINRA)

おいしさの次に、デザインが大事。急成長を遂げるBAKE社内の共通認識とは?

以前(2016年2月)にCINRA.JOBでBAKEを取材させていただいた際、「デザインの力で、他社ともっと差別化していきたい」というお話をうかがいました。あれから3年以上経ちますが、デザインにこだわる姿勢は変わらないですか?

柿崎:そうですね。創業期から根づいている「おいしさの次に、デザインが大事」という社風は、企業が大きくなったいまも変わっていません。

新ブランドも増えましたが、どれもお菓子自体はシンプルな見た目。だからこそ、デザインの力で商品の魅力を引き出すことをいまでも心がけています。

社員数もかなり増えましたが、「デザインが大事」という共通認識があるおかげで、さまざまな部署がデザイナーの意見を尊重してくれますね。

クリエイティブ部 部長 デザイナーの柿崎弓子さん

―インハウスデザイナーとしては、働きやすい環境ですね。

井手口:ただ、その分、デザインに対する責任は重くとらえています。それは、製品づくりから販売まで一気通貫で行う菓子メーカーならではかもしれません。

たとえば、デザインが不評で売上が上がらなければ、おいしいお菓子をつくった製造部門に申し訳が立たない。パッケージ納品のスケジュールが押してしまったら、販売部門に迷惑がかかる。

企業として重要視しているデザイン部門をインハウスで任せてもらえるからこそ、やりがいと責任の両方を感じます。

クリエイティブ部 デザイナーの井手口直也さん

全ブランドが「専門店」展開。ひとつの商品を突き詰めるBAKEのモットーとは

―デザイナーの並々ならぬこだわりと覚悟が、BAKEの各ブランドの個性につながっているんですね。ブランド立ち上げの際、デザイナーはどのように関わるのでしょうか?

柿崎:私はバターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」とガトーショコラ専門店「Chocolaphil」の立ち上げに携わりました。いずれも商品開発から、パッケージや店頭販促ツール、内装のデザインに至るまで、ほぼすべての工程に立ち会いました。

最初に担当した「PRESS BUTTER SAND」は、既存の他ブランドのデザイン業務と並行しながら、6、7か月でオープンにこぎつけました。このスピード感は、前職のクライアントワークでは考えられませんでしたね。

―たしかに、ほぼすべての工程に関わったことを考えると、かなりのスピード感ですね。

柿崎:しかも、スピードだけでなく、ちゃんと満足いくものができた。それは同じ社員として、上層部や関係部署に直接意見を聞きながら、ブラッシュアップしていけたからです。

インハウスの利点のひとつは、さまざまな立場の人がフラットかつスピーディーに意見交換できること。だからこそ、短期間でも「デザインの絶妙なさじ加減」を追求できたんだと思います。

―「PRESS BUTTER SAND」の店舗は、パッケージが店頭に積み上がっている光景にインパクトがあります。

「PRESS BUTTER SAND」東京駅店の外観(画像提供:BAKE)

柿崎:BAKEには「1Brand = 1Product」というモットーがあります。ひとつの製品を突き詰めて、おいしさを追求する。だからすべて「専門店」形態なんです。ひとつの製品にこだわるからこそ、その「こだわり」をあらゆるデザインに落とし込み、ブランドの世界観を表現する必要があります。

パッケージひとつとってみても、商品に合った箱のかたちをはじめ、紙質、印刷手法まですべてがブランドの世界観を表す大切な要素です。商品棚も特注でつくることがほとんど。お金もその分かかりますが、それくらい、ブランディングにはデザインが重要なんです。

「無難」なデザインだと伝わらない。各ブランドの「らしさ」を追求し、世界に発信する

―ブランド立ち上げ後、デザイナーはどのように関わるのでしょうか?

柿崎:現在は基本的に1ブランドに1人、アートディレクターをつけています。外部のデザインファームとも連携しながら、ブランドごとのデザインワークを牽引する一方で、プレイヤーとしても、イベントシーズン用の限定パッケージやショップバッグなどのデザインを手がけます。

河西:ぼくが担当しているのは「RINGO」という焼きたてカスタードアップルパイ専門のブランドです。フレーバーやバレンタインデーシーズンは、期間限定のパッケージをデザインします。

印象的な円の配置とカラーリングにこだわった通常時のデザインに対して、期間限定パッケージは「無難」なデザインだとお客さまを惹きつけることはできないので、カラーリングや円を生かした新しいパターンに挑戦しています。

ちなみに、印刷もすごく珍しい特殊加工。印刷所の人と相当綿密に話し合って完成しました。

クリエイティブ部 デザイナーの河西宏尚さん

河西さんが担当した「RINGO」のボックス。特殊なフレキソ印刷機を使い、印刷の版ズレを限界までなくしている(画像提供:BAKE)

井手口:ぼくは「ザクザク」を担当しています。食べ歩きしやすいため国内外の若者に好評で、現在海外だけでも30店舗を構えています。BAKEとしても、まだまだ伸びしろがあるブランドと位置づけています。

ですので、ブランドの魅力を世界へさらに訴求するために、現地でお客さまの様子を見ている社員ともアイデアを出し合いながらデザインに落とし込んでいます。

井手口さんが担当した「クロッカンシュー ザクザク」のポスター。シズル感とキャッチーさが表現されている(画像提供:BAKE)

―BAKE全体では、現在何か国にブランド展開しているのでしょうか?

Cheng :現在BAKEのブランドは、アメリカ合衆国や中国、タイなど8か国の地域で展開しています。まだまだ広めていくために、現地のデザインファームと協力しながら、その土地に適した効果的なプロモーション方法を考えて実践しているんです。

クリエティブ部 デザイナーのAki Chengさん

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海外であえて「日本語標記」も。現地の人をファンにするデザイン術とは?

海外であえて「日本語標記」も。現地の人をファンにするデザイン術とは?

―具体的にどのようなプロモーションを行いましたか?

Cheng:たとえば、中国の旧正月シーズンには、象徴である「赤」を取り入れた限定パッケージをつくったことがあります。このように、地域ならではのイベントや風習に沿ったデザインを施すことで、現地のお客さまに深くアプローチできると考えています。

とはいえ、国ごとにローカライズし過ぎるのも危険。ブランドイメージが正しく伝わるようにするためにも、「ブランドらしさ」を損なわないのが大前提です。

―「ブランドらしさ」と「地域の特性」を考慮しながらデザインするのは、バランス感覚が必要そうですね。

Cheng:そうですね。その見極めは非常に難しいですし、やってみないとわからないことも多いです。また、逆に日本の製品が好まれる地域には、あえて「日本のブランドらしさ」を意識的に打ち出すこともあります。

たとえば日本の若い女性のあいだでクリアバッグが流行っていたときに、台湾の「ザクザク」でオリジナルのクリアバッグをノベルティーとして限定配布したことがありました。さらに、あえて「ザクザク」のロゴを日本語標記のままデザインしたんです。

すると、「クリアバッグ、おしゃれ!」「『ザクザク』という日本語のロゴがかわいい」と若い女性から大好評。反響も予想以上に大きかったので、そのあと日本のプロモーションでも取り入れることになりました。

「日本らしさ」を打ち出して、海外で反響を得られた体験は新鮮でしたし、デザインの面白さをあらためて感じましたね。

Chengさんが担当した「クロッカンシュー ザクザク」のクリアバッグ。ザクザクをより身近に感じてもらうことを意識したノベルティー(画像提供:BAKE)

「良いデザイン」の感覚がみんな似ている。BAKEらしさが生まれる秘訣

―BAKEのインハウスクリエイターには、若手から中堅まで、国際色豊かで個性的なメンバーが揃っているそうですね。多様なバックグラウンドにもかかわらず、デザインには一貫した「BAKEらしさ」を感じますが、その秘訣は?

柿崎:そもそも私たちがデザインする際は、「BAKEらしさ」より、ブランドごとの「らしさ」を追求しているんです。でも、どのブランドにも共通して「BAKEらしさ」を感じると、いろんな方々から言われます。

その要因は、もともとBAKEブランドのデザインが好きで入社したメンバーが集まっているからだと思います。「良いデザイン」に対する感覚がみんな似ているんです。逆に言うと、個性豊か過ぎて、共通点がそれくらいしかない(笑)。趣味とか性格は、みんなかなりバラバラです。

井手口:「BAKEらしいデザインが好き」という共通点を軸に、それぞれの個性を発揮できるから面白いものが生まれるのかもしれません。デザインチーム内でのコミュニケーションも活発なので、新しい企画も生まれやすいですし。

経営陣もデザイナーやクリエイターにリスペクトがあるので、提案をオープンに聞いてくれます。ぼくらから生まれた新しい企画も、内容が面白ければ採用してくれるんです。

―たしかに、経営陣がクリエイティブを重視しているのは大きいですね。BAKEでは、社内行事も精力的に行っているそうですが、そこでもデザインを重視しているのでしょうか?

河西:もちろんです。ワークショップや社内イベントのデザインワークにも、毎回力を入れています。ほかにも、勤怠管理システムのオリジナルアイコンをつくったり、社内の自動販売機をデザインしたり、オフィスの棚をDIYしたり……もはや社内で目に入るものは、全部オリジナルにしたいくらいです(笑)。

勤怠管理システムのアイコン。「申請承認」は「いいね!」ボタンを連想させる鍋つかみになっていたり、「打刻申請」がチーズタルトになっていたり、お菓子に絡めたアイコンになっている

社内の自動販売機。クリエイティブ部内でコンペを開催しオリジナルに仕上げた(画像提供:BAKE)

―デザインに対するこだわりが半端じゃないですね……(笑)。

河西:販売スタッフ向けに、アンバサダーブックを作成して配布したこともあります。販売スタッフは、ブランドの魅力を直接お客さまに伝える宣伝大使。気持ちよく働いてもらえるよう、ブランドの概要や店頭での立ち振る舞いなどを記しました。

会社が成長し組織が大きくなってくると、どうしても縦割りになってしまうもの。まず社内の人間全員が、会社やブランドのベースにある考えを知って、愛着を持つことが大切だと思うんです。

社員同士の距離が近く、風通しのいい風土を保つためにも、デザインの力で環境づくりから働きかけるように意識しています。

「遊びに行く感覚」で会社に行く。チャレンジを楽しめる環境がここにはある

―皆さん忙しくも楽しんで働いているような印象があります。最後に、BAKEのインハウスクリエイターとしてのやりがいを教えてください。

井手口:一般的に洋菓子は女性向けのパッケージが多いですが、BAKEは枠にとらわれないデザインができる。ターゲットよりも商品を主体にしたデザインを重視しているからです。

だから、男女問わずかっこいいと思ってもらえるデザインが多いんですよ。そこは他社の菓子メーカーにない魅力だと思います。

あとは、アートディレクターとして、デザイナーとして、川上から川下まで手がけられるのも魅力。それがインハウスクリエイターのいいところだと思います。

Cheng:戦略からデザインまで一貫して携れるのは大きな魅力ですよね。「会社やブランドをもっと良くしていきたい」という思いをもとにアイデアを出し、それを主体的にデザインに反映できる。

責任もあるけど、やりがいのほうが強いです。私のミッションは、アジア以外の海外にもBAKEブランドを広めることなので、語学もさらに磨いていきたいですね。

河西:ぼくはBAKEに入社してからいままで、良い意味で「遊びに行く感覚」で会社に行っています。それくらい、仕事を楽しめています。遊び心を大切にしている会社だから、いろんなことにチャレンジできる。「自分が楽しむこと」を出発点にして、会社やブランドのことを考えていけるのが面白いですね。

柿崎:やろうと思ったことは、だいたい何でもできる会社です。自発的に提案して楽しめるメンバーが多く、ほかのチームのいろんな人と気軽に意見交換できるのもBAKEの良いところ。

いまは国内外の出店も加速させていて、さらに多様なメンバーを募集している最中です。新しい仲間が増えるのが楽しみですね。

  • Profile

    株式会社BAKE

    株式会社BAKEは、「お菓子を、進化させる。」というミッションを掲げ、焼きたてチーズタルト専門店『BAKE CHEESE TART』やバターサンド専門店『PRESS BUTTER SAND』など、7つのスイーツブランドを提供しています。商品のおいしさをより多くのお客さまへ伝えるために、クリエイティブの面から力を貸していただけるクリエイターを募集します。

    おいしさへのこだわりを突き詰めた結果、私たちはチーズタルトやカスタードアップルパイといったシンプルなお菓子たちにたどり着きました。これらの魅力をさらに引き立たせるためには、デザインに「攻め」や「遊び心」を取り入れることも必要。だから私たちは、おいしさのつぎにクリエイティブを大切にしています。パッケージから店舗デザイン、SNSにいたるまで、あらゆるコミュニケーションにデザインの力が不可欠なのです。

    BAKEで働く最大の魅力は、商品が誕生してからお客さまの手に届くまでを、一貫して見届けられること。コンセプトの立案からプロモーションの内容まで、すべての過程にクリエイターが深く関わります。「ただ手を動かす」だけではない経験を重ねることで、成長できる環境があります。

    より楽しく、働きやすい会社づくりを、クリエイティブ面から提案できるのも大きな特徴です。たとえば牛乳パックを模した社内の自動販売機は、デザイナー主導の社内コンペから生まれたもの。熱い想いのこもったアイデアが多数寄せられ、デザイン選びも盛り上がりました。自分たちが使うものだから「こうしたらもっとユニークで便利になる」という積極的な提案も大歓迎です!

    アウトプットは多岐にわたるので、あなたのスキルや経験を活かせる仕事がきっと見つかります。クリエイティブを通じて、お菓子や会社の新たな一面を開花させる。そんな仕事にやりがいを感じる、冒険好きなクリエイターを募集します。

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