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CM音楽制作は「チャンスだらけ」。ユゲ代表が語る、音楽で食っていく方法

株式会社ユゲ

東京キー局だけでも、1年間に1万6,000作品以上ものCMが放送されている。そして、そのほとんどにおいて映像を彩っているのがCM音楽だ。普段は見過ごされてしまいがちだが、視聴者の感情に訴え、商品やサービスの魅力を引き出すCM音楽は、CMにとって欠かすことのできない要素。そして、このCM音楽を専門的に手がけているのが、「CM音楽プロデューサー」の肩書を持つ戸波和義さんが率いる、株式会社ユゲだ。いったい、CM音楽制作とはどのような世界なのか? そして、そのなかで活躍する戸波さんの哲学とは?

取材・文:萩原雄太 撮影:豊島 望(2018/10/22)

普通の音楽制作とは「まったくの別物」。クライアントが求めるCM音楽の引き出し方とは

代々木上原のデザイナーズマンションをオフィスとして使用しているユゲ。ギターやベース、ターンテーブルなどの機材が並ぶその空間から、株式会社NTTドコモ、株式会社資生堂、トヨタ自動車株式会社といった有名企業のCMを彩る音楽の数々がつくられてきた。映像監督と作曲家、演奏家とのあいだに立ちながら音楽を制作するその仕事は、どのようなものなのだろうか? まずは、その仕事ぶりから伺ってみよう。

—戸波さんの肩書きである「CM音楽プロデューサー」とは、具体的にどのような仕事をするのでしょうか?

戸波:一言で「音楽プロデューサー」といっても、レコード会社と仕事をする音楽プロデューサーと、映像における音楽プロデューサーの仕事はまったくの別物。ぼくらの仕事は、映像監督から声をかけられ、絵コンテとともに「こういうCMをつくるんだけど、どういう音楽がいいかな?」と相談されることから始まります。

その相談をもとに、監督がつくりたいもの、広告代理店の意向や、クライアントが伝えたい商品のイメージなどを総合的に考えながら、「こういう音楽を乗せるとこう見えます」という提案をし、音楽の方向性を決めていくんです。

代表取締役兼CM音楽プロデューサーの戸波和義さん

代表取締役兼CM音楽プロデューサーの戸波和義さん

—映像監督とは、どのようにして音楽のイメージを共有しているのでしょうか?

戸波:案件によって違いはありますが、まずは監督からCMの絵コンテや商品情報などの事前資料をいただきます。これからつくっていく映像を頭のなかで想像しながら、それに合いそうな音楽をジャンル問わず考えていきます。打ち合せでは、ジャズやテクノ、ヒップホップ、演歌などを網羅したプレイリストをつくり、監督の持つイメージに近いものを探っていきます。

監督は音楽のプロではないので、「こういう音楽を使いたい」とはっきり伝えることが難しい。だから、イメージができるような音を用意しておくようにしています。ある意味では、コミュニケーションを取りながら、監督のカウンセリングをしていくという感じでしょうか。

—そのような「カウンセリング」によって、監督が意図する音楽の方向性を引き出していくんですね。

戸波:一言で音楽の方向性といっても、さまざまな目線があります。絵コンテから想像できる方向性もあれば、監督のなかにあるイメージや個人の好みに寄った方向性もある。一つの作品をつくるうえではどちらの方向性も考えながら、この場面で流したいのはこういう音楽ではないかと、提案していきます。

また、主役が悲しい感情を持っているシーンであれば、そこに悲しい曲を当てて、さらに強調するのか、それとも、あえて明るい曲を使って悲しさを際立たせるのかという演出も大切。音楽ひとつで、主役の表情の見え方をガラッと変えてしまいますから。

それらを検討して音楽の方向性が決まったら、次に、どの作曲家にお願いするか、どの演奏家、歌い手にお願いするかといった、実際にかたちにしていく段階に入ります。

数々の企業・映像監督とタッグを組んでCM制作を手がけてきたユゲ(株式会社ユゲのサイトより)

数々の企業・映像監督とタッグを組んでCM制作を手がけてきたユゲ(株式会社ユゲのサイトより

—作曲家や演奏家とのやりとりはどのように進めていくのでしょうか?

戸波:たとえば、「悲しい映像に、あえて明るい音楽を合わせる」という方向性だったとします。そのときの音楽に必要なのは、明るさのなかに忍び込んだほんのちょっとした悲しさ。作曲家や演奏家には、その微妙な塩梅を、言葉で説明するだけでなく音楽的にも説明する必要があります。

しかし、仕事をする音楽家の得意ジャンルはクラシックからヒップホップまでさまざま。クラシックの人であれば「この弦のハーモニーをこう修正したい」とオーダーしたり、ヒップホップの人には「このビートのずらし方をもっと別の方向にしたい」と伝えたりと、それぞれのジャンルに合わせた説明をするようにしています。

そもそも、普通に音楽をつくる感覚と、映像に合わせる音楽をつくる感覚はまったくの別物。普段、作曲家や演奏家は、映像のことを考えて音楽をつくるのではなく、音楽としていいものかどうかを考えますよね。そんな音楽家たちと映像との橋渡しをするのが、CM音楽プロデューサーの仕事なんです。

直球勝負はあえてしない。「少しズレた曲」が、映像との意外なマッチングを生み出す

—映像とのマッチング、音楽的な知識、それを言葉で伝える力など、さまざまな力が必要になる仕事なんですね。ところで、戸波さんは若い頃からCMをよくご覧になっていたのでしょうか?

戸波:いえ、じつは、CMにはまったく興味がなかったんです。むしろ、嫌いだったと言えるかもしれません(笑)。

—えっ、そうなんですか!?

戸波:若い頃はミュージシャンになりたいと考えていて、そのための勉強にすべての時間をつぎ込んでいました。だから、高校、大学とテレビをほとんど見ず、CMにもまったく興味がなかったんです。たまにCMを見る機会があっても、「この商品、すごくいいんです!」って宣伝しているのを「嘘っぽいな」と引いた目で見ていましたね(笑)。

でも、実際にミュージシャンとして生活するのはとても難しいんですよね……。だけど、音楽をつくる現場にいることを諦めたくなかった。ほかの道を考えたときに、広告業界の存在に気づき、CMの音楽制作という仕事に飛び込んだんです。

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—いまは、嫌いだったはずの仕事で活躍されているんですね(笑)。

戸波:ただ、当時感じていた「嘘っぽい」と思う気持ちは、いまの仕事に活かされています。いまだに、「この商品はいいですよ」とストレートに宣伝されると、押し売りされているようで、どこか抵抗を感じてしまう。だから、ぼくの場合は、感動路線の映像があるとしたら、そのまま感動的な曲を当てるのではなく、少しズレた曲を当てています。そうすることで生まれる、ささやかな違和感を大切にしたいんです。

—「ささやかな違和感」は、映像にどのような効果をもたらすのでしょう?

戸波:株式会社マウスコンピューターの乃木坂46が登場するCM楽曲をつくったときは、「商品のことをアイドルが歌う、よくあるCMソングはやめよう」という話しになりました。アイドルが歌わないような本物の洋楽っぽい曲にしようと思って、当時音楽通のなかで話題になっていたラッパーのアンダーソン・パークなどのトラックやビートのつくり方を研究して、その要素を取り入れながら楽曲をつくりました。そういう音楽をアイドルが歌っていたら、ファンだけでなく一般の視聴者も気になりますよね。

—ほかに工夫を凝らしたCM作品があれば教えてください。

戸波:YouTubeで1,000万回以上再生された資生堂のウェブ動画「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」では、10~20代の若者層をターゲットにしていました。音楽を制作するにあたって意識したのは「下心が一切ないもの」。自分の若い頃を振り返ってみると、大人がわかったような気でつくった、いわゆる「若者に受ける音楽」には心を動かされなかったし、音楽好きはそれを見抜いてしまうんです。だから、そういう音楽ではなく、若者に深く刺さるものをつくりたかった。

そこで、このCMでは10代の頃に背伸びをして音楽を聞いていた感覚を思い出し、洋楽的でジャズなどの要素が入ったコアな音楽ファンが聞くようなトラックを作成したんです。その結果、できあがったのは、陰鬱で、挑発的、玄人向けの音楽で、普通のCMではなかなか挑戦できない曲になりましたね。


資生堂の『High School Girl?』

—この業界に入ってから、CMに対するイメージは変わりましたか?

戸波:自分でCMづくりに携わると、視聴者としては見えなかった部分が見えてきて感動を覚えました。CMには、15秒や30秒といった短い時間のなかに、一流クリエイターたちのアイデアやセンスがこれでもかというほど詰まっています。その現場を目の当たりにすると、CMの制作がとても豊かな場所であることに気づき、楽しくなりましたね。

そんな第一線で活躍する一流クリエイターたちと、ビジネスライクな関係ではなく、ものづくりのパートナーとして一緒のチームで仕事をできるのは本当に刺激的です。そして、そんなクリエイターたちから「戸波さんの音楽はいいね」と名指しで言ってもらえる。こんなに嬉しいことはありません。

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「音楽が好き」は絶対条件。これからのCM音楽制作に求められる能力とは?

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