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地域×デザイン。デザインの力で社会の役に立つ、サーモメーターの仕事観

サーモメーター株式会社

桜並木が美しい目黒川から一本入った路地に佇む『SURMOMETER Laboratory』(以下『SML』)。ガラス張りの開放的な空間に所狭しと器や工藝品が並ぶ店だ。「現代の民藝」として日用品を扱うこの人気店を営むのが、サーモメーター社。プロダクトデザイン、地方のブランドデザイン、書籍のデザイン、イベント運営、そしてショップの運営と、13人で展開しているとは思えないほど幅広く事業を行っている。今回は、代表取締役の山本加容さん、アートディレクターの山城由さん、デザイナーの瀬戸えり子さんにお話を伺った。そこから見えてきたのは、地域の風土に根差した食文化やものづくりを、デザインによって応援する、という姿勢だった。

取材・文:羽佐田瑶子 撮影:松葉直(2016/06/30)

人々の食卓・生活を豊かにする「生活に根差したデザイン」

店舗に併設するオフィス、木目調の机に腰掛けると「どうぞ」と小さなお菓子とお茶が振る舞われた。ミーティングスペースの壁を1枚隔てたオフィスからは、社員同士の笑い声が何度も聞こえてくる。セレクトされた商品や、これまでにデザインしてきた制作物から感じられる「温かみ」は会社の雰囲気そのままだ。サーモメーターが設立されたのは2004年。元々はグラフィックデザインを生業とし、そこからお店、企画やイベント運営等、事業は徐々に広がっていった。

山本:サーモメーターでは、創業当初から、コトをつくる『SM』、モノを伝える『SML』、人と人をつなぎ「good meeting(良き出会い)」の場をつくる『SM-g』という3つの事業を柱としてきました。『SURMOMETER』では、企画デザイン、パッケージや商業施設でデザイン面のサポートをメイン事業とし、本や書籍の装丁なども行っています。『SML』では器と道具のお店、『SM-g』では作家の個展やイベントを運営しています。ただ、事業を広げたという感覚はあまりなくて、『SML』を始める前からオリジナルデザインのグラスをお中元で勝手に送ったり(笑)。自分たちが楽しむという感覚で企画をしていた延長線上に今の事業があると感じています。

代表取締役 山本加容さん

代表取締役 山本加容さん

当初は土木やファッション、音楽といった異色ともいえるジャンルのデザインを手掛けていた。しかし、目の前にある仕事に夢中になって取り組み、好きなことをやり続けてきた結果、現在のサーモメーターの根幹となる「食」と「地域」というテーマに自然と会社が向かっていった。

山本:元々、料理を作る方ではなくて、食べることが好きな食いしん坊が多い会社で(笑)。偶然のつながりでお料理教室の会報誌の編集ディレクションをさせていただいてから、レシピブックのデザイン、飲食店の立ち上げツールのデザインなど、だんだん食に関するお仕事が多くなりました。また『SML』で出会った作家さんの周りに、食や暮らしに関するお仕事をされている方が多くいらっしゃるんです。彼らの拠点が地方にあるので必然的に「食」や「地域」に関するお仕事につながっていったのだと思います。

意識的にテーマを絞ったわけではない、と笑顔で語る山本さん。自分たちが目指す方向に自然と会社の舵を取ることはそう簡単ではないはず。だが、しなやかに仕事を受け入れる姿勢があったからこそ、今の姿にたどり着いたようにも感じる。現在は公園のランドスケープ設計をメインとしたまちづくりプロジェクトも手掛け、スタッフからは「地域に関わるデザインをしたい」という声が上がるようになった。デザイナーの瀬戸さんも、地域に根ざしたデザインがきっかけとなり、サーモメーターへの転職に踏み切ったという。

瀬戸:サーモメーターのことは、デザインの資料本で見かけたのがきっかけで知りました。そのときに掲載されていたのが、山城のデザインした『真岡の桜みちくさマップ』で。調べてみるとバイトの募集をしていたので、応募することにしたんです。だけど少し提出するのが遅くなってしまい、「今から送ったら、到着日はバレンタインデーだな」と気付いたので、会社宛にラブレターというコンセプトで作品集を送りました(笑)。今は入社のきっかけとなった『真岡の桜みちくさマップ』と同じように、鳥取県の地域に根ざした仕事を担当しています。鳥取が好きな方、日本酒や鳥取の食べ物が好きな方、関わっているお仕事を通して来てくださる方々の興味を知れることもあり、毎年楽しみにしています。

デザイナー 瀬戸えり子さん

デザイナー 瀬戸えり子さん

サーモメーターが手掛けるデザインのジャンルは幅広い。酒、コスメ、インテリア用品などのプロダクトもあれば、イベントや商業施設のPRツール、NPO法人のWEBサイトまで多岐にわたる。一見、これらの事業テーマはそれぞれに関連性がないように見えるが、彼女たちの仕事の根底には一つの一貫した想いがある。自分たちが使いたいもの、食べたいもの、「一消費者である自分たちの暮らしが豊かになるデザインをしよう」という想いだ。

山本:スタッフもモチベーション高く続けられる仕事で、かつ世の中や社会のためにもデザインで何か貢献できることはないかと考え始めました。その時に、自分たちが使いたいと思える「生活に根差したデザイン」をすることが、スタッフのモチベーションを高め、同時に、会社として少しでも社会のため・次の世代のためにつながるのではないかと。例えば一過性の大量生産に加担したり、大量のゴミが出てしまうようなデザインはしない。それでいて、自然と使い手の気持ちになれるデザインの方が自分たちにフィットしていると感じるようになりました。

単なるデザイナーではなく、「使い手」と「作り手」をつなぐ存在

サーモメーターは、10年以上お付き合いのあるクライアントも多く抱えている。山本さんに会社として大切にしていることを伺った。

山本:第一に、クライアントさんの顔が見えない仕事はしません。間に仲介が何社も入っていると何のためにやっているのか、その先が見えなくなってしまう。また「一緒にいいものを作りましょう」というスタンスなので、早い安い、ということを優先しているクライアントさんはお断りしますし、お話を聞いてもっと合いそうな制作会社が他にあればご紹介することもあります。

きちんと伝えたいことは「使い手の気持ち」。クライアントとの関係性にもはっきりとしたスタンスがある。建て前ではなく本音で、お互い言いたいことを言い合える関係を目指しているそうだ。時にはデザインと関係ないことであっても、手掛けたお店の店員の接客や同メーカーの別ブランドのパッケージなど、疑問に思ったことは必ず伝えている。

山本:例えばパッケージデザインのお仕事をいただいているクライアントさんが、子供向け商品を発売されていました。私には5歳の娘がいるのですが「もう少しこうしたら魅力が伝わって買いたくなるのに」という、母親としての想いが強く出てきてしまって。頼まれていなかったのですが自主プレゼンをさせていただきました(笑)。デザインと関係ないところでも、手掛けた商品自体が使いづらければ伝えますし、プロデュースしたお店の店員さんの対応が気になれば伝えます。仕事を受けたデザイナーとしてだけではなく、実際に使うユーザーの立場から、疑問に思ったことは常に伝えようと心がけています。

付き合いが浅いクライアントさんだとしても気が付いたことはきちんと伝える、と山本さん。自分たちを単なるデザイナーとしてではなく、「使い手」と「作り手」をつなぐ存在として、できる限りのことをしようとする姿勢が一貫して感じられる。そんな姿勢からユニークなお付き合いの始まり方、「地方で買い付けに行った際につながって、お仕事が決まることもある」と話してくれた。

アートディレクター 山城由さん

アートディレクター 山城由さん

山城:鳥取・島根だけでもたくさんつながりがあるので、県のPRから、地方の眼鏡屋さんのWEB制作、最近では買い付け先で仲良くなった酒蔵の方と何かできないかなと話しています。

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「じっくり働いてもらえる会社を目指したい」、群馬からリモートワークで働くスタッフも。