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「紙と電子をハイブリッドに使い分ける。」翔泳社が考える、これからの編集者が果たすべき役割とは?

株式会社翔泳社

1985年の創業以来、ビジネス書をはじめ、プログラミングやITインフラといったコンピュータ関連の技術書、情報処理他技術系の資格書を多く手がけてきた翔泳社。近年では介護や福祉関連の資格書、デザイン・ライフスタイル関連の書籍にも力を入れている。インターネットの黎明期以降は紙媒体にとどまらず、マーケター向けの専門メディア『MarkeZine』や、ITエンジニアに特化した情報提供を行うWEBメディア『CodeZine』を運営するなど、紙とWEB、それぞれの特性を活かし、世の中に役立つ知識や技術を発信してきた。デザインやライフスタイルにまつわる書籍を企画・製作しているSE編集部の編集長である関根康浩さんと編集者の本田麻湖さんに、編集者の醍醐味や紙メディアとWEBメディアの違いについて語っていただいた。

紙の書籍には、時代の空気感が圧縮されている

書籍に加え、早くから電子書籍やWEBメディアに取り組んできたのも翔泳社の特徴のひとつだ。

本田:弊社の編集者は、普段からテクノロジーに触れている分、電子書籍についても「楽しそうだからやってみよう」という感じで自然とスタートしたような印象です。だから、基本的には紙の書籍の編集部なんだけれど、最先端な技術にアレルギーがある人にとっては、働くのが少し難しい編集部と言えるのかもしれません。

関根:技術書は、他のジャンルの本より電子書籍の売上比率が高いです。コードをコピーして使えますし、検索もできますし。デザイン書は逆で今のところ電子書籍はあまり売れません。150名の旬なイラストレーターを紹介する『ILLUSTRATION』という年度本なんかもそうです。なので、紙か電子かではなくコンテンツによってハイブリッドに使い分けている感じです。

今後、新たな層を狙ったWEBメディアを新たに始める計画もあるという。

関根:新しいWEBメディアをいくつか考えています。僕らがリーチできていない読者に対して、これからどうやって働きかけるかというのは、とても大きな課題です。ライフスタイル関連もそのひとつで、なんらかの手を打っていきたいと考えています。現在運営している『MarkeZine』や『CodeZine』もどちらかと言えばそうですが、僕らはなるべくニッチなテーマを選んで、社内の横のつながりを活かしながら、「ここにしかない唯一のメディア」を作りたいと考えています。また出版社としては、柔軟に、流動的に動いていくことが大事だと思います。社会の変化に対応しながら、成長していくことを目指しています。

インターネットが発達し、書店以外での売り上げも増加し、新たなWEBメディアの立ち上げを計画している一方で、紙の役割を再確認しているところでもあると関根さんは言う。次々と情報を手に入れることができ、新しいものに価値があるという風潮が高まる今だからこそ、紙の使命が際立ってくる。

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関根:WEBの世界には、「今」しかなくて、どんどん情報が流れていくじゃないですか。「今」に閉じ込められているような感じがして、ときどき息苦しさを感じます。ネットと近しい仕事をしているので余計にそう思うのかもしれませんが。紙は情報を固定してくれますよね。だから、その時代ごとの情報をアーカイブとして残していくのも紙の役割なのかなと思います。WEBの情報は止めどなく流れつづけて、やがて埋もれて消えていきますが、紙にはその時の空気感が圧縮されている感じがありませんか? あとから振り返ってみると、その時代の空気みたいなものまでよみがえってきて、「ああ、懐かしい」みたいな(笑)。

本田:『ILLUSTRATION』も年度版になっているので、過去の号を読み返したときに、「この年にはこういう人がいたな」とか「今は大御所だけど、この頃は旬な人だったんだ」とか、そういう読み方ができますよね。だから、こういう本を作る時には、雑誌とは違って資料性を持たせた企画を考えるようにしています。モノとして手元に置いておきたい本にする、というのも大事なポイントかもしれません。

過去に作ったものにとらわれすぎると、新しい本を作り続けることはできない

出版社で編集者として働く楽しさ、WEBだからこそできること、そして再認識した紙の役割。紙とWEB関係なく、時代の波を乗りこなし、新たなチャレンジをしてきた翔泳社だが、それを可能にした背景には何があるのだろう。

本田:翔泳社って、失敗をさせてくれるんですよ。厳しい会社だと、すでに売れているようなものじゃないと企画が通らないという話を耳にします。でも、翔泳社では「いけるんじゃない?」みたいな感じでやらせてもらえて、そこから始まることも多いです。『みんなの○○日記』シリーズも最初は『みんなの機内食』という、機内食の写真をたくさん載せた本がきっかけになっています。それが好調だったので、朝ごはんや常備菜などの続編を出せることになりました。

関根:編集者の都築響一さんが著書の『圏外編集者』で話していましたけど、すでにあるものをやっても遅いんですよね。ダメなものはもちろん止めますが、チャレンジする姿勢は大切にしています。専門書は比較的リスクが低いというか、莫大な利益にはなりにくいですが、安定的に利益を確保できる商品なんです。リスクを冒してチャレンジできるのは、リスクの低い安定した商品があるからとも言えるかもしれません。

最後に、SE編集部が考える今後の展望を聞いた。

関根:これまで作ってきた本の中で、「思い入れのある本は?」と聞かれると意外に答えられないんですよね。もちろん、毎回担当する本には全力で取り組んでいるし、1冊1冊の本に対してラブレターを書くみたいな気持ちで企画書を書きます。でも、「引きずる恋愛」じゃないけれど(笑)、過去に作ったものにとらわれすぎると新しい本を作り続けることはできない。だからこそ、その「時代」に求められているものを、過去の成功に固執しないで作り続けていきたいですね。せっかく文字要素の少ないデザイン系の書籍なども出しているので、海外なども視野に入れながら、新しい形で、いろんな本を世に出していきたいと思っています。