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世界中を旅してクリエイティブの糧にする、スキーマの仕事術

株式会社スキーマ

「趣味を仕事に」という求人キャッチコピーはよく見かけるが、「旅を仕事に」と謳う会社はなかなか見かけない。東京・渋谷にオフィスを構えるクリエイティブ集団「SCHEMA,Inc.(以下スキーマ)」は、そんなアイディアをカタチにしてしまったユニークな会社だ。ヨーロッパを中心に世界各国を旅先にしたスタッフ総出の社員旅行は、現地で働くクリエイターに直接アポイントメントを取ってヒアリングを敢行。ただの観光旅行では得られない生きた文化事情を肌で感じ取り、糧としてきた。2009年の設立当初からスキーマが持ち続ける世界に向けた視点は、台湾への海外拠点進出という形で事業としても展開されている。 世界と日本のクリエイティブを繋げる「スキーマ」のアプローチについて、代表取締役・志連博彦さんと創業メンバーの橋本健太郎さん、台湾プロデューサーであるリン・コーさんに話を聞いた。

取材・文:阿部美香 撮影:豊島望(2015/09/07)

クリエイティブに大切なのは「会う」ということ。

スキーマの設立は、2009年。会社の同僚だった志連さんと橋本さんが、「場所や時間や固定概念に囚われず、等身大の自分をさらけ出し、自由に仕事をしたい」と立ち上げた。設立当初は時流に合わせてソーシャルゲームのグラフィック制作を担当することで実績を上げ、現在はスマートフォンアプリのUI / UXデザイン、グラフィックデザイン、CI / VI計画などデザインを軸とした幅広いクリエイティブで成長を続けている。

志連:現在、台湾人スタッフ3名を含む10名全員がデザインもできるディレクター職で、みんな好奇心の強い人ばかり。実務では企画設計やディレクション業務が主ですが、自分たちで手を動かしてクリエイティブの完成度を上げていけるところが特徴です。イラストを使ったアートディレクションが得意なので「インフォグラフィックを活用したUI / UX」を提案するなど、クライアントの要望にも応えてきました。扱うジャンルもどんどん広がっていて、IT業界はもちろん、各業界の動向を先読みしながら、クリエイティブの掛け合わせを考えられるのが最大の強みです。

代表取締役 志連博彦さん

代表取締役 志連博彦さん

例えば、株式会社JTBのおでかけ電子チケットサービス「PassMe!」。LINEスタンプでも人気のイラストレーター・カナヘイさんが描くキャラクターイラストを活用した、老若男女に親しみやすいサイトデザインが好評だ。また、東芝ライテック社の太陽光発電アプリのデザインには、パリ在住のイラストレーターの作品を起用している。ソーラー発電量など普段は目に見えない無機質な情報をビジュアライズしたり、ユーザーのアクションに反応する作りを施して、電気をもっと身近に感じてもらう工夫を凝らした。

志連:太陽光発電アプリのデザインは、これまで手掛けてきたWEBやスマホアプリとは全くジャンルの違う仕事でした。当初、世の中にまだ出ていない新しい領域の仕事をお願いされることに不安もありましたが、クライアントから期待されていることが「デジタルなものに表情をつける」ということだとわかって以降は、逆にそれが自分たちの得意分野だと気付かされました。

橋本:もともとAR三兄弟の川田十夢さんが「技術に表情をつける」という表現方法を使っていて。僕がその言い回しを気に入って、「デジタルなものに表情をつける」と言い換えました(笑)。やはり、表情って大事ですから、いろんなものがデジタル化されていく世の中だからこそ、僕らの需要も増えているんだと思います。

そんなスキーマのモットー、クリエイティブのキーワードを志連さんに尋ねてみた。すると、デジタルな仕事が多いにもかかわらず、それは「(直接人に)会うこと」だという意外な言葉が。

志連:正直、今の時代はインターネットにさえ繋がっていれば、メールと電話だけで仕事はできます。実際、これまではそのように行ってきた仕事もたくさんありました。でも僕らは、ものづくりを生業としているので、クライアントやクリエイターと直接会って議論しながら一緒にやっていくことに意義があると感じています。なぜなら、お互いの表情を確認しながら話を進めないと細かくディテールまで伝わらなかったり、クオリティが上がらず、逆にコストがかかることが多々あったので。技術の進化によってIT方面に偏ってきた時代の流れが続いたからこそ、人と人のコミュニケーション価値が上がっているし、現に、最近のクリエイティブのトレンドとして、間違いなくハンドメイド的な揺らぎや、アナログ感あるクリエイティブが求められていると感じます。

シリコンバレーからエストニアまで。現地のクリエイターと繋がる、スキーマの社員旅行

「会いたい」というキーワードは、彼らが毎年行なっている「旅を仕事にする」海外への社員旅行にもリンクしている。きっかけは2010年。ソーシャルゲームを扱うクライアントが北米進出を図り、海外在住のクリエイターとゲームを制作することになったのが発端だ。

志連:サンフランシスコ在住のクリエイターと一緒に仕事している時に、ふと気づいたんです、「この人に見えているもの」と「自分が見ている範囲」に差異があると。そうなるともう、会って話をしてみないと、その差がなんだかわからないですよね。それと、僕自身もシリコンバレーの空気を生で体験したかったので、視察という名目でアメリカに行ってみようじゃないか! と行動に移したのが、海外に目を向ける始まりでした。

創業メンバー 橋本健太郎さん

創業メンバー 橋本健太郎さん

橋本:翌年からは、社員旅行ということでヨーロッパ各国に。当時制作していたソーシャルゲームが中世ファンタジーを題材にしていたので、リサーチの意味もありましたし、世界を牽引するヨーロッパの文化にはやはり触れておきたかったんです。例えば、エストニアの街並はまさにRPGゲームの世界! でもそんな古き良き街並とは裏腹に、実はIT大国だということを、実際に足を踏み入れてから知りました。調べてみるとSkypeなどのサービスもエストニアから生まれているんですよね。街中ではどこに行ってもWi-Fiが飛んでいたので、社員みんな喜んでパソコンを開いて仕事していたのもいい思い出です(笑)。

毎回1週間から10日ほどかけての社員旅行となるのだが、実際、時間に追われる日々の仕事を抱えながらの忙しい旅行でもある。しかし、だからこそ楽しいと彼らは言う。

志連:社員旅行は「現地でしか手に入らないリアルな情報を、自分の目で見て耳で聞いて体感すること」が目的です。例えば、人気の北欧デザインを学ぶには現地の空気感を体験してみないとわからない。今アメリカの中で、なぜポートランドが「住みたい街No.1」で、かつ「クリエイティブな都市」と言われているのか、本当に移り住んできた人に聞いてみるのがいちばん手っ取り早い。また、クリエイティブの質を高めるために最も必要なのは、アウトプットとインプットの両立だと思うんですが、僕らは現地で通常業務もしながら旅先を回るので、今やってる仕事に対して露骨に影響が出ることがあります。アメリカで仕事すれば大胆で余白の多いデザインになるし、アジアにいれば活気ある賑やかなデザインになる。身体は正直ですから (笑) 。

海外の有名なデザイン展示会や現地クリエイターが集まるイベントなども訪れながら、「研修半分、観光半分で仕事と学びを両立させている」と称する社員旅行だが、そこで得られるものはとてつもなくも大きい。

志連:例えばパリなんかは多民族が共生する街なので、日本の会社が現地で人を採用しようとしてもうまくいかないらしく、日本にはない階級社会の壁を痛感するとみなさん言います。そういう発見は、今後もしかすると東京が国際社会と化していく中での知識として活きてくるかもしれない。そんな情報は日本にいても知り得ないし、そういう文化的な背景は経営にもものづくりにも直接影響するんですよね。

海外に行くと自分が日本人であることを強く意識するというが、ものごとを俯瞰で見る力がついたり、デザイン視点で街を歩くと、その土地の文化や歴史を知る必要が出てくる。必然的に「視点の切り替え」ができるようになるため、仕事視点で海外に行くと、日本にいるより数倍経験値がたまるのが速いそうだ。「観光じゃない」というのがポイントなのだろう。

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世界を視野に入れて選んだ海外拠点は台湾!?