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グローバル企業と二人三脚で歩む、ルートコミュニケーションズの強さの秘訣

創業からおよそ20年、海外の著名ブランドが日本でWEBマーケティングを展開する際にサポートを行ってきたルートコミュニケーションズ。世界的な企業のWEBサイトを日本のフォーマットでデザインする上でのテクニックや、クライアントのニーズに応えるための秘訣について、代表の寺嶋徹さんとデザイナーの赤塚悠さんに伺った。
  • 取材・文:冨手公嘉
  • 撮影:永峰拓也

これまでの20年を支えた、組織力と個人力

設立から21年目を迎えるルートコミュニケーションズは、長年にわたり世界的に知られるブランドの日本国内マーケティングをデザインの面から支えてきた。彼ららしい組織の在り方とはどのようなものなのだろうか。

寺嶋:弊社はスペシャリストではなく、ジェネラリストが集まっている会社だと思います。これまでに「大きな広告賞を獲るような華やかに見える仕事」をしてきた一方で、「一見地味にも見えるけれど効果の高い仕事」も数多く抱えてきましたからね。どちらかの仕事だけをやりたいという人より、どちらのタイプの仕事も積極的に取り組める人しか社内にはいないかもしれません。私たちのクライアントは外資系の著名ブランドが多いですが、その分、自分たちがものすごいアイデアを出さなくても、すごいことをしているような気分に陥りやすい。そこで油断しないよう、ブランドのネームバリューに負けないくらい良い企画、良いデザイン、良いコピーを考えることを日々念頭においています。

代表取締役 寺嶋徹さん

代表取締役 寺嶋徹さん

赤塚:何かひとつを極めるスキルも大事ですが、クライアントの要望に応えるためには柔軟な考え方も大事だと思っています。たとえば、スポーツブランドの仕事をしているなら、プライベートでもランニングやトレーニングをするなど積極的にクライアントの商品や情報に対して日常からアンテナを高く張ってみたり。そういった細かなところを意識することで初めて、クライアントからパートナーと思ってもらえる組織になれる気がします。

驚いたことに、ルートコミュニケーションズには特別な教育や研修制度などは一切ない。しかしスタッフの自発的な学ぶ意欲や姿勢を大切にしているため、個人の要望に沿ったサポートを行っているのだという。

赤塚:デザインの勉強がしたくて、セミナーに行かせてもらったことがありました。金銭面では全額サポートしてくれたり、退社時間を早めてもらったりと、バックアップが手厚いんです。だから何不自由なく、仕事と学習を両立することができましたね。入社当初は「デザインの本を買って欲しい」というのも1週間考えて言うか迷うみたいな感じだったんですけど(笑)、今思えば迷っていたのももったいなかったなと。スキルアップしたいという気持ちさえあれば、応援してくれる環境だと思っています。

寺嶋:本当にすごい先輩の元で働いて、それをちゃんと自分のものにしていくというのも素晴らしいことだと思います。でも弊社には残念ながら有名なデザイナーやクリエイティブに特化しているような部署がない。だからこそ、少しでも外に出て色んな人と接して、色んな分野の人と知り合って欲しいんです。そこでの学びは絶対仕事に活かされると思いますし。どんなに優秀な方が入社しても、やっぱり自発的に学ぶ意欲は大事ですよね。

地味に思える領域にこそ、信頼を勝ち得るチャンスがある

クライアント一社一社との付き合いが長く、恒常的に動いている仕事が多いからこそ、制作会社でありながらインハウスデザイナーのような動きが求められる。厳密に決められた様々な規定の中で、どのように「デザインという仕事」の醍醐味を見出しているのだろうか。

寺嶋:メディアで取り上げられたり、大きな賞を獲ったりするプロジェクトだけが、私たちの仕事の本質ではないと思っていて。なぜなら、クライアントの期待に応えるための、もっとも効果的なアウトプットが他にもあるはずですから。最たる例が、顧客へ配信するメルマガのデザイン。クライアントが求めているのは、いかに開封率をあげ、そのままオンラインサイトで購買してもらえるかどうかです。ドライに聞こえるかもしれませんが、売り上げという数値化できる目標にどこまでコミットできるかが肝心。すべてはそのためのデザインやコピーライティング、エンジニアリングなんです。

赤塚:自分が手がけたデザインが世に出てからのリアクションやダイナミズムを感じられるのは、意外とメルマガだったりしますね。メールを開いてから下までスクロールしたくなるか、開封したくなる件名になっているかが大切だと思っています。

デザイナー 赤塚悠さん

デザイナー 赤塚悠さん

派手な仕事ばかりではなく、ユーザーとの接点をつくるきっかけになり得るのだと寺嶋さんは話す。

寺嶋:たとえば担当したスタッフが会社を出てから家に帰る途中、同じ電車の中に自分がつくったメルマガを見ている人が必ず一定数いるはず。メルマガは一例に過ぎませんが、私たちが日々手がけている仕事には、それくらいの影響力があるんです。そう考えると、デザイナーとしてもやりがいを感じられる場面が多いはず。とてもシンプルな話ですが、仕事に喜びを感じるひとつってやっぱり社会貢献というか、世の中にちゃんとインパクトを与えられているかという側面もあると思うんです。

赤塚:デザイナーは2種類に分けられると思っていて。ひとつはきれいで洗練されているものをつくりたいというタイプの人。そして、もうひとつはUI / UXをより重視する人。私自身はたぶん、後者だと思いますね。COACHやDIESEL、NIKEなどのグローバルブランドだと、支給されるデザイン素材とルールも全世界で厳密に決まっていたりします。素材が届いたときにクライアントから注意されない範疇でボタンを大きくしたり、バランスを取りながら少しでもエンドユーザーの行動を促せるように工夫する。私はその中にデザインの面白みを感じています。些細なことかもしれませんが、数ミリ単位の変化が数字に影響するんですよ。

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スピードと質を保つための、国境を超えたチームワーク

スピードと質を保つための、国境を超えたチームワーク

世界的に有名なスポーツメーカーやアパレルブランドの本社と直接やりとりするなかで、本国のブランドチームから厚い信頼を置かれている彼ら。プロジェクトを推進させるうえでの秘訣はどこにあるのだろうか?

赤塚:私はデザイナーなので、基本的にはクライアントとの間にディレクターが入るケースがほとんどです。前職ではスケジュールシートが予め用意されていて、絶対的な納期に向けて制作を行っていました。一方で外資系クライアントの案件が多い今の仕事は、納期がとても流動的。

寺嶋:たとえば、古くからお付き合いのあるクライアントに関しては、ツーカーでやり取りできるディレクターがいます。彼らが日々クライアントとコミュニケーションを図り、今何を求められているのかを理解しています。また、デザイナーやエンジニアも十分なスキルがあるからこそ即時の判断ができるし、フレキシブルな対応でクオリティの高いものを制作できる。そういう意味では、クライアントと二人三脚でプロジェクトを推進していると言えるかもしれません。

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赤塚:時には夕方に来た資料を明日の朝までに仕上げて欲しいと言われるケースもあります。基本的にほとんど徹夜や残業はない会社なんですが、クライアントが海外にいると時差の関係でそういった要望が上がってくることもあって。スピード感が何より求められている場合に「何をしなくてはならないのか」、「手をかけすぎなくて良いのは何か」などの優先順位を見極めて整理してくれるんですよね。だから要点を抑えながらデザインに集中できています。

クライアントの要望を素早くキャッチするだけでなく、解釈もする。長きにわたって築かれた信頼関係はディレクターの存在なしでは語れない。

赤塚:だから逆に、これまでディレクター陣が築いてきたクライアントとの良好な関係性を壊したくないという気持ちが強くあります。たとえば、クライアントの担当者によっては「少しだったらデッドラインを過ぎても大丈夫だよ」と言ってくださったりする。普通の制作会社とクライアントの関係だったらもっとドライに切り離したコミュニケーションになってしまうのかもしれませんが、その部分ではある意味ウェットなのかもしれません。だからこそ突発の依頼が来ても対応できるように、いつも私たちが余裕を持って準備していなきゃと思うんです。

画像提供:ルートコミュニケーションズ

画像提供:ルートコミュニケーションズ

英語だけじゃない。必要なのは根本的な「コミュニケーションスキル」。

取材を通して、「コミュニケーション」という言葉が非常に多く飛び交っていた。長い間クライアントからの信頼を保ち続ける秘訣や、スピーディーな対応の背景には、このキーワードが欠かせないのだろう。

赤塚:たしかに、職種ごとに仕事の進め方のスタイルはそれぞれありますが、共通して言えるのはコミュニケーションを密に図っているということですね。私はデザイナーなので、フロントに立ってやりとりすることはないですが、海外本社からのフィードバックを直接受け取ることもあります。

寺嶋:外資企業が多いと「英語が必須」と思われがちですが、もっと根本的なコミュニケーションがあってなんぼ、というのはありますよね。たとえばデザイナーの悩みは意外とエンジニアが解決するし、もちろん逆もありえます。ビジュアライズを大切にする人間とテクニカルを強みにする人間がディスカッションすることで、突破口が開いたりしますから。

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最後に、会社として目指す今後の展望を伺った。

寺嶋:日本に本社を構える企業とお付き合いをしていきたいと考えています。海外のクライアントワークで培ったナレッジもかなり溜まっているので、今度は日本企業の海外進出をサポートしてみたいですね。より深い提案ができれば、これまで以上にクリエイティビティの高いアウトプットもできると思うんです。

Profile

株式会社ルートコミュニケーションズ

WEBサイトからスマホアプリやサイネージ開発まで、デジタル全般の制作やデジタルマーケティングのコンサルティングを行ってる会社です。デジタルといっても、魅力を伝えるひとつの手段に過ぎませんから、サービスそのものの開発に関わることもあります。

全てクライアントとの直接取引で深い関係を築いているからこそ、実現できる幅も広く、プロジェクトの責任や結果を生んだ時の喜びがとても大きいですよ。国内外で知られる有名企業がほとんどですから、どんな小さなことでも、手がける仕事が数多くの方々の目に触れ、人を動かせるのは仕事の内容を超えた充実感があります。

クライアントの多くが外資系企業ですが、英語が話せないとダメなわけではありません!

国立新美術館横の素敵なオフィス。美術館や東京ミッドタウンを訪れる機会があれば、気軽にお立ち寄りください。

株式会社ルートコミュニケーションズ

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