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タナカミノル流・リア充に負けないサバイバル術

株式会社ピクルス

独自の視点でユニークな広告を作り上げ、ヒットを導くクリエイティブ集団・Pickles(ピクルス)を率いるタナカミノルさん。ソーシャル・メディアやスマートフォンなど、新しいメディアや技術が世間を騒がせても、その中で一線を走り続ける。その企画力の裏側には、技術力へのストイックな鍛錬があった。「これからのクリエイティブにはプログラミングは必須」と話すタナカさんが求める、ピクルスを共に作っていきたい人材について話を聞いた。

テキスト:森オウジ 撮影:菱沼勇夫(2011/12/16)

企画に必要なのは、「新しさ」。

ソーシャルメディアでは「言いたくなる」が重要。

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株式会社ピクルス代表、タナカミノルさん

―タナカさんのお仕事としては、ロート製薬の「キスしたくなるくちびるコンテスト”I want Chu”」など、話題性のあるものが印象的です。企画をたてるコツのようなものってあるのでしょうか?

タナカ:大事にしているのは、とにかく「新しさを形にすること」だと思っています。人は、新しいものに触れたいんですよ。クリエイティブという言葉にすると漠然とするけど、実際それって何なのかと考えると、単に新しいことを作ることなんですね。たとえば、僕が関わらせて頂いた最近の制作案件だと、「ポカリIQチェック」があります。

ーこれはかなり流行りましたよね。友人たちのウォールで一時期非常によく見かけました。

タナカ:このアプリが話題になったのは、facebookの日本人コミュニティの中で新しさが出せたからだと思っています。アプリの中身は、水分摂取についての診断コンテンツですが、何がここまでの話題を生み出したかと言えば、測定結果をグラフィック3枚と一緒にウォールに投稿できるということだったんです。さらにその3枚が、ポカリスエットのグラフィックと組み合わさったものがウォールに現れることで、「今までに見たことがないもの」だった。

—なるほど、たしかにそうかもしれません。

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ポカリIQチェック
大塚製薬「ポカリスエット」のFacebookアプリ。1日の水分摂取量や摂取回数など5つの質問に答えると、水分補給の充実レベル「IQ(Ion Quality)」が測定でき、その測定結果を3枚のグラフィックと共にウォールに投稿することができるアプリ。公開から一週間で5万人を超える「いいね!」がついた。
ポカリスエット - ポカリIQチェック -IonQuality- | Facebook

タナカ:弊社は、代理店の方と企画を一緒に考えていくこともありますし、クライアントも巻き込んでブレストをするような時もあります。そういう企画のブラッシュアップを通してワンアイデアだけではなく、ツーアイデア、スリーアイデアと、新しさを盛り込んでいくことで、より強力な企画になるんです。そしてそういう企画は、友達に言いたくなったりやってみたくなる。ソーシャル・メディアの企画では特にこの「言いたくなる」が重要です。だから逆に、なにか新しさがないと、人は誰にも「言いたくならない」んです。

クオリティーを信じられないくらいに上げると、新しいものができる。

ーやっぱり最近はFacebookのお仕事が多いんですか? タナカさんは以前、「FLASHといえばタナカさん」くらいに特化されていた時期もあったかと思いますが?

タナカ:とくに何かの技術に特化するということは意識していませんね。たしかに最近はFacebookアプリの仕事が増えてますが、WEBサイトから映像から、幅広く全方位的にやっています。共通しているのは、クライアントに何か課題があるときに、最適な技術と表現でそれを解決していく、というスタンスです。

―企画の「新しさ」を実現する上で、とくに意識していることは何でしょうか?

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タナカ:クオリティーをできる限り上げることですね。クオリティーを上げていくと新しいものになる、というのが僕の持論です。たとえば映画の『アバター』はいかにしてヒットしたのかを考えてみると分かりやすいです。3D映画は昔からあって、もちろんフルカラーもある。何が新しかったか、それはクオリティーを信じられないくらいに上げている、という一点に尽きるんです。

—たしかにあの作品は誰もが「新しい」と思いましたね。

タナカ:擬似3Dではなく、この映画の為に開発した3D用カメラで撮影することで非常に高い奥行き感を出し、背景などの造形の作り込みもハイレベルにすることで今までの映画にはない質感を出す。そうなるとストーリーはもう『ポカホンタス』でもいいんですよ(笑)。ストーリーはジェームス・キャメロンがずっとやってるお決まりのものにすぎない。でも、あそこまでのクオリティーを上げていったら、「今まで見たことのない3D映画」という体験を与えられるんです。それはまるで、元々あったジャンルなのに新しく作ったように見えるほどです。

―なるほど、だから同じ3D映画でもあれほど新感覚だったんですね。

タナカ:ピクルスの制作案件ですと、PUMAの「ONE CLICK TO JAMAICA」というFacebookアプリがあります。この企画自体はクライアントから提示してもらっていて、そこからどう広げるかを代理店とタッグを組んで進めていきました。これも言ってしまえば普通のストップウォッチゲームなんです。仕組み自体はそれほど新しさを感じない。でも、背景やカメラアングルなどのクオリティーをできるだけ上げたことにより「走っていて気持ちいい」という体験も同時に伝えてます。

走りの気持ちよさを主軸においた表現ですと、「新しさ」は出せてないかもしれませんが、ストップウォッチゲームと考えるとクオリティを上げたことにより、少しは「新しさ」が出せたんじゃないかと思ってます。

「だって、リア充に負けたくないじゃないですか!?」

地道な積み重ねが、多くの人に「驚き」を起こす。

―これまでのお話しを伺っていると、話題になる企画には新しさがあって、その新しさは非常に高い技術に支えられているということだと思います。やっぱり「アイデアの神さまが降りてきた」みたいなことってないんですかね…?

タナカ:何もしないで突飛なアイデアが出てくるっていうことはなくて、やっぱり地味な積み重ねなんですよね。映像にしろグラフィックにしろ、ずっと同じことをやっていく積み重ねでアウトプットを出せるひとは、人を圧倒する底力があります。ぱっと見たときに、多くの人の心に「驚き」を起こせるんですね。広告の企画ももちろん同じ。アイデアを生み出すのは地味な蓄積です。

―日々の努力が何より重要、と。

タナカ:そうです。でもそれってすごく面倒くさいんですよ。最近の若い人たちを「ゆとりだ、ゆとりだ」って言いますけど、僕たちだって全然ゆとり。ラクしたいんです。だから、みんなやろうとしないんですよね。でも、僕みたいに才能が無い人が、本当にこの世界で生き残っていくためには、やっておいて損はないんです。元々できる人だったらいいですよ。効率よく仕事して、「ああやってこうすれば、人って動くよ」とかきっと思ってるわけですから(笑)。でも、言い方悪いけど、それってムカつくじゃないですか。だからやるわけです……リア充には負けたくないじゃないですか!(笑)

—そうですね(笑)。ちなみに日々の鍛錬にはどんなことが大切なんですか?

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タナカ:子どもの頃に先生にやれって言われてやらなかったことナンバーワンって、「辞書をひきなさい」っていうことだと思うんです(笑)。でも、クリエイティブではこういう辞書論も技術のひとつなんです。たとえば僕たちって日本語が使えるから日本語の辞書なんてほとんど引かない。でも、企画のタイトルやキャッチコピーも、実は高度な情報設計なんですよ。何かモノがあってそれを売りたいときに最適な伝え方をするためには、最適な言葉とその意味をたくさん知っていることが何より大切です。つまり、いろんなことを調べてインプットしているひとは、ひとつのことを考えるときに使えるデータベースの幅が広い。そうするとマッシュアップしやすいんです。企画でもアイデアでも全ては調べる技術の賜物ですよ。

―具体的に、毎日実践できるトレーニング法はあるのでしょうか?

タナカ:歩いていて目にしたものについて考えることですね。たとえば電車の中吊り広告も、きちんと情報設計されているわけです。ぱっと見たときにまず視認させたいことは何かということを考えて、色や文字が組み立てられています。別に広告でなくてもいいんです。目にとまるものの理由を言語化するということを取り組んでみるといいと思います。これを1日2回やれば、年間で700回やることになるので、何もしていない人に比べれば全然違う。そういうことの積み重ねです。

広告業界で生きていくために、プログラミングは必須。

—となると、ピクルスで働いているスタッフも、相当なレベルが求められそうですね。

タナカ:そうですね。でも、入社する前からすごくなくていいんです。入ってからすごくなれますから(笑)。ピクルスで働く人には、どんどんライバルが出てくる中でもこの世界で生き残って欲しいし、活躍してほしい。そういう人を育てたいし、自分を高めたい人には非常にいい環境を提供できると思います。

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—そんな中、即戦力という意味ではやや劣る新卒採用も行なっていらっしゃいますが、どうしてですか?

タナカ:もちろん中途採用もやっていますが、やっぱり新卒の人は吸収が早いです。まっさらな状態でピクルスの思想的な部分を吸収してもらった方が、意思疎通もその人の成長スピードも早いと思っているので、新卒もやっています。

―ピクルスで働くと身につくものって何でしょう?

タナカ:僕がもともとエンジニア出身ということもあるかもしれませんが、ピクルスでは全員がエンジニアリング、つまりプログラミングをある程度できるようにしています。デザイナーが自分のデザインをプログラミングしてもらう場合にもコミュニケーションがスムーズだし、プログラムの考え方がわかっていると、アウトプットも大きく変わってきます。ここ10年で広告の世界で名前が上がっている人を見ると、デジタル畑出身の人が多くなってきてるじゃないですか?

—たしかに、エンジニアや、プログラマー出身の方が多いですね。これからこの業界で活躍したい人にとっても必要ということですね。

タナカ:プログラミング力は必須だと思ってます。コピーライターでも、デザイナーでも、映像でも、作法的に知っておいたほうがいいと思います。仮にグラフィックの世界で活躍したいと思ってグラフィックの会社に行きますよね? そうすると、アートディレクターになれるまでに何年も、下手したら十年以上かかるわけです。でも、僕はエンジニアだったけど、そのスキルがあったからこそ大手クライアントの広告の仕事でアートディレクターもやったりしてます。プログラムって、本気でやれば数ヶ月で身に付くわけです。地道な積み重ねって言いましたけど、プログラミングスキルは、これから広告の世界で何をやるにしても、近道になると思うんです。

—プログラミングの魅力ってどんなことなんでしょうか?

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タナカ:プログラムは、言ってしまえば言葉の積み重ねです。あるルールに従って言葉を積み重ねていくと、仕組みができます。その仕組みを使って人に体験が提供できる。プログラミングで世界は変わりませんけど、ディスプレイの中は変えられるんです。これってすごいことだと思うんです。そして今、このディスプレイの中の世界は、現実の世界において重要な意味を持っているわけです。リア充には負けない、自分が勝てる場所を持っておくのは大切だと思います(笑)。

―プログラミングスキルの他に、広告業界で仕事をしていく人に必要な資質はありますか?

タナカ:いいクリエイティブに出会ったときに嫉妬できない人は、この業界は向いていないかもしれません。僕は嫉妬は礼儀だと思っています。すごいクリエイティブ、すごい人に会ったら思い切り嫉妬して、自分を磨く。それがこの業界に生きる人間の性のようなものです。

—タナカさんは、「月刊インタラ塾」という広告業界の人やクリエイターを集めたトークイベントもやっていらっしゃいますが、そういった外との交流もピクルスさんならではですね。

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月刊インタラ塾

タナカ:そうですね。通常の「勉強会」的なセミナーは他でも多くやるようになったので、最近では「魔法少女とソーシャルメディア ~検索傾向に見る、いまどきアニメのヒット作法~」とか、変わり種なものもやるようになりました。学生から社会人まで楽しんでいただけると思いますので、ピクルスに興味のある人、クリエイティブに興味がある人、ふるって参加いただけると嬉しいですね。僕もいつもそこにいますし、気軽に声をかけてください。これからのピクルスをいっしょに作っていける人との出会いを楽しみにしています。