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同規模のWEB制作会社による統合は成功だった? その経緯と結果に迫る

株式会社パノラマ

アパレル・ファッション業界のブランドサイトを中心に、デザイン設計を得意とした「コムリエ」。そして、大手企業からの信頼が厚く、総合的なWEBソリューションや広告キャンペーンにおける企画制作など、ロジックに基づくストラテジー設計を得意としていた「トライポッド」。同規模の事業で、錚々たるクライアントを抱え、業界に十分存在感を発揮してきたこの2社が、7月に経営統合。株式会社パノラマという会社組織に生まれ変わった。業界広しといえど、得意分野が異なる両社が統合するのにはどのような狙いがあったのだろうか。CEOの樋口聖氏(旧コムリエ代表)とCOOの牧野秀人氏(旧トライポッド取締役)。そして現場で活躍するディレクターの佐藤雅之氏とアートディレクターの柳澤友己氏の4名に話を伺った。

取材・文:冨手公嘉 撮影:永峰拓也(2016/09/23)

2社が互いの強みを生かす組織作り

そもそも同規模でお互いの得意とする領域やクライアントが異なるコムリエとトライポッド。経営統合に踏み切った背景には、どのような経緯があるのだろうか。

樋口:会社立ち上げからの6年間で、アパレルや美容などのファッション領域、また飲食やエンターテイメント領域といった、ライフスタイルに密接した業界において、ブランディングを含めたサイト設計を行ってきました。そこから派生し、様々な業種のお客様にお声がけを頂くようになりましたが、僕らは少数精鋭であるがゆえに、よくも悪くもフリーランスの集まりのような雰囲気があったんです。チームではあるけれども個の集まりといった風土があり、そこが組織としての弱みだなと感じていました。徐々に人を増やしても分業がなかなか進まず、スタッフ一人ひとりがたくさんの案件を抱えるなかで、教育に力を入れるのも手一杯。ここからさらに仕事領域を拡大させていくにはどうすればいいのか? という課題を常に持っていました。そんな矢先に、同じ規模感の会社で得意とする仕事の仕方が違うトライポッドも似た課題感を持っているということを知ったんです。

CEO 樋口聖さん(旧コムリエ代表)

CEO 樋口聖さん(旧コムリエ代表)

牧野:弊社の場合、広告代理店経由のキャンペーンや広告企画など、代理店と共同で大手企業からの仕事を請けるケースが主流でした。一方のコムリエは直クライアントでスピード感を持って進めるケースが多い。WEBサイトを作るということは一緒ですけど、お客様のゾーンが違っていて、ワークフローがまったくと言っていいほど違う。そうであればノウハウやナレッジを共有すれば、成長が加速する可能性がある。異なる仕事のメソッドを持つ会社と統合することで、デメリットよりメリットが大きいのではないかと飲みの席で盛り上がったんですよ。

とはいえ、WEBの業界内で同規模の会社が統合するというのは、ほとんど前例がないもの。実際に統合に至るまで、慎重に議論を重ねたようだ。

樋口:会食の席などで「統合したらきっとメリットがありそう」といった話は、ベンチャー業界ではよくある話ではありますが、実際に統合したケースはほとんど聞きません。僕たちはまず、果たして本当にメリットがあるかどうかを考えました。そのためにそれぞれの会社の実態を徐々に開示しながら、真剣に検討しようということになって。今後のビジョンや、理想像などはもちろん、数字的な部分や案件数、仕事の回し方など事前に話し合えるだけ話し合いました。

牧野:お互いの仕事を開示していくなかで、驚いたのはクライアントが1社か2社程しか被っていなかったこと。狭い業界でお互い6〜7年会社を経営していて、これは本当に珍しいことだなと思いました。それだけ重なる部分が少なかったので、相互で補える部分が大きいのではと思えましたね。結局のところ、「やってみないと分からない」という部分はたくさんありましたけど(笑)。そうした話し合いの場を通じて、統合に前向きになりました。不思議と現場レベルに経営統合の意思を伝えても、大きな混乱は生じなかったですね。

佐藤:私は4年程前からトライポッドでディレクターをしていましたが、既に何度もコムリエとお仕事を発注したりされたりのお付き合いがありました。だから牧野から「同じ規模感の同業他社と統合する」という話があったとき、すぐに統合先が「コムリエ」だろうと言い当てたんです(笑)。両方の企業がこれから発展していく上で統合はありうると、どこかで予感していました。

実は統合を前提に、試験的に数か月同じオフィスで顔を合わせて仕事をしていたのだという。そして、いざパノラマになったのが2016年7月。現場レベルでの統合がようやく浸透しはじめた状況だ。

樋口:統合する前は正直「簡単には上手くいかないだろうな」って思っていました。ところが意外にも、あんまり混乱はしなかった。よくよく考えてみたところそれぞれの会社に文化の違いがあるとはいえども、10数人規模の会社同士の経営統合ですからね。人数が少なく、会社としての機能も近しい2社だったせいか、スムーズに順応できた印象です。

業界に新しい風を起こしたパノラマに対して、クライアントだった企業からも期待の眼差しが注がれている。

樋口:ありがたいことに、パノラマになってから既存のクライアントからも、以前より大きいボリュームのお仕事のお問い合わせが増えました。トライポッドと統合したことで見られ方が変わったなという部分がありますし、やはりクライアントとしてもリソース面で頼みづらかった仕事がいくつもあったのだ、と統合してから知りました。

異なる得意分野をシェアすることで、成長速度が倍に

2社が統合した効果は、決して短期的なものだけではない。たとえば、同レベルの企業が合わさることで、ほとんど教育コストをかけることなく人数規模が倍になった。その結果、以前では難しかった未経験者の採用なども可能になっているという。

樋口:10人くらいの規模感の場合、チームのコアメンバーが案件を複数抱えているため、自分の実務にプラスしてマネジメントや教育をするというのは大変な労力でした。未経験の人に教えようとしても、どうしても2年3年かかってしまう。しかし今回統合したことで、ひとつの案件に関わるチームメンバーが増えて案件のフォロー体制ができたことで、未経験の人にも教えるだけの余力がそれぞれに生まれるようになりました。

またこれまでは日々の業務に忙殺されて後回しにせざるを得なかった勉強会も、無理なくできるようになっている。会社という組織レベルだけではなく、一人ひとりが個人レベルで持つノウハウを共有できるようになったのだ。

アートディレクター 柳澤友己さん

アートディレクター 柳澤友己さん

柳澤:メンバーが増えたことで、ワークフローもいくつかの選択肢から選べるようになったと思いますね。毎週定例で、仕事の仕方や案件の進め方を共有する勉強会を開いているのですが、方法論など学びが増えました。トライポッドから学ぶことは新しい刺激になりますね。それは若手社員にとっても同様で、単純に会社として教えられるナレッジの総量も増えている。特に若手の成長速度は明らかに速くなるだろうなと感じています。

佐藤:僕はこれまで、代理店案件を張り付きで担当していたため、ある程度ルーティンワークとなっていました。しかしコムリエの案件は直クライアントで手離れが早く、スピード感が全然違う。担当する案件の量をはじめて聞いたときに驚きましたし、現場で長く仕事をしてきた自分としても「多くの案件をスピード感を持ってどうやって回すか」という部分を学ばせてもらっていますね。これまで以上に現場マネジメントやディレクションのノウハウが蓄積されているような感覚を覚えます。

柳澤:お互いの強みが重ならない分、リスペクトし合えているんだと思います。ここは自分たちの方が得意だと思えば、素直に共有すればいいし、弱みである部分については学ぶという姿勢が両者の企業のメンバーにあると思いますね。

どちらか一方がイニシアチブをとるのではなく、お互いのパワーバランスが変わらない企業同士だからこそ、素直に補完し合おうという姿勢が生まれるのだろう。こうしたメリットを鑑みて、樋口さんは統合に踏み切ったことは正解だと感じているようだ。

樋口:得意分野の違う人たちとナレッジが共有できて、かつ新しい文化や仕事の方法を取り入れることで、格段にスピード感を持って成長できることを実感しています。ブランディングやコンサルティング的な立ち位置から入る制作会社が増えるなかで、他の企業と差別化を図る上で、統合も選択肢に入れる企業が出てくるかもしれませんね。

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