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ワン・トゥー・テンが、10年先の未来を創る

株式会社ワン・トゥー・テン・デザイン

10年後のWEB業界はどうなっているだろう? その問いに明確な答えを出せる人なんて存在しない。でも、ビジョンを築き、そこに向かい前進することはできる。この世界で関西の雄として知られるワン・トゥー・テン・デザインは、いま京都・東京の両拠点で活躍し、サイト制作から遊園地向けアトラクションまで手がける「インタラクティブスタジオ」だ。そんな彼らがさらなる飛躍を目指して決めた、創業14年目のいくつかの変革。同社のキーパーソンふたりに話しを伺うと、ものづくりに対する並々ならぬ情熱はもちろん、10年後のこの世界を見据えた「未来」が浮き彫りになってきた。

取材・文:内田伸一 撮影:菱沼勇夫(2012/09/28)

プロダクションは「スタジオ」へ進化していくべき。

ワン・トゥー・テン・デザイン(以下、1-10)は1997年、代表・澤邊芳明さんが学生時代に京都のアパートの一室で開業し、やがて全国区へとその活躍の場を広げていった。当初から「フリーランスの集合体」的な組織づくりが澤邊さんの目指すところだったという。

株式会社ワン・トゥー・テン・デザイン 代表取締役社長 澤邊 芳明さん

株式会社ワン・トゥー・テン・デザイン 代表取締役社長 澤邊 芳明さん

澤邊:創業直後は営業のチラシを配ってましたね、京都の堺町通り限定で(笑)。でもそのころから「全員ディレクター体制」というか、個人でも仕事のできる人間が集まって、化学作用でいいものを作れたら最高に面白いはず! という思いがあったんです。たとえばアニメーション・スタジオのピクサーは、ものづくりを理解したジョブズ、ラスター、キャットムルというリーダーのもとで、熱いクリエイターたちが個々の創造力を存分に発揮する。業種は違えど、あんなスタジオをつくりたいというのは、今に続く想いですね。

澤邊さん自身が、かつてデザインもプログラミングもバリバリにこなしてきた作り手側の人間。「コイツと一緒にものづくりをしたい」を基準に逸材を迎える中で、着々とステップアップしていった。そしていまでは、UNIQLOやJALなど大手企業のキャンペーンサイトから、Kinectを用いた西武遊園地でのインタラクティブ・アトラクションまでを幅広く手がける。いちWEBプロダクションとしての活動には飽き足らず、広くデジタルコンテンツの可能性を探る熱意がそれを成し遂げてきた。

澤邊:会社の肩書きを「インタラクティブスタジオ」と名乗っているのも、その想いからなんです。スタジオって、単なる制作会社を超えて、自分たちの作ったものに対する権利や責任を一定以上、背負える存在ですよね。ピクサーも、途中で経営者になったジョブズが「俺たちはスタジオにならなきゃ」と宣言して今の活躍ぶりがある(編注:ピクサーはもともとルーカスフィルムのCGアニメ部門が前身)。もちろん僕らは広告主あっての仕事が中心ですけど、そういった理念には強く共感しながら仕事をしています。

オフィス内、掲示板に貼られている「それっておもしろいの?」

オフィス内、掲示板に貼られる「それっておもしろいの?」

「それっておもしろいの?」。社内に小さく張り出されたその言葉は、澤邊代表のものづくりへの想いだ。俺イズムでの洗脳フレーズではなく、自発性を問うひとこと。手がける表現自体だけではなく、自分にとってその仕事が、働き方が面白いかどうか。結局は個人も企業も、明日を切り拓くのはそこからだ。そんなメッセージも感じられる。

「知識は深く広く」が、より当然になっていく。

1-10は、ネットを使ったプロモーション広告を多く手がける。澤邊さんいわく「昔からある考え方だけど、いい広告は人々の認識や行動を変えたり、生活や文化水準を上げる役割を果たしてきた。いまでも世界を豊かにする力はあると僕は思っていて、だからこそ広告が好きなんです」とのこと。

『ミライセンシ』

『ミライセンシ』(1→10design.Inc 制作)
西武園ゆうえんちにて設置されている、参加体験型ロールプレイングアトラクション。遊園地でのカード探しと連携した Kinect アトラクションは史上初とのことで、多くの新しい試みに挑戦している。
http://works.1-10.com/event/miraisenshi/

だがその広告もいま、特にWEB業界では混沌とも言えるほどの多様化をみせている。TVCMやスマフォ向けアプリとの連携、各種の新デバイス対応など、激動のなかでそのクリエイティブはどんな方向に向かうのか? 以前のような「わかりやすい広告的魅力」は薄れていくかもしれないが、それもまた「面白い」と澤邊さんはいう。

澤邊:2004年ごろから爆発的にFlashが人気を得て、ブラウザ上で何ができるのかを競い合った時代がありましたね。いっぽう今の広告全般は、身近な何かにいかに「化ける」ことができるかという世界へ進んでいる。気がついたら「あ、そこに居たのね」っていう(笑)。Nike + のFuel Bandなんかも、ある種そういうもの。こうした多様化は他メディアとの連携も含め、もはや「WEB広告」という閉じた領域だけで語れないレベルに広がっています。

その意味で、業界の需要はトータルで見れば縮小しないだろう、と澤邊さんは楽観視する。ただし、同業者が持つべき危機感については真逆の見解だ。その需要に対応していくためには、今後いっそう厳しい戦いになると考える。ここで現場を率いるCTO(最高技術責任者)長井健一さんにも取材に加わってもらった。

最高技術責任者 長井 健一さん

最高技術責任者 長井 健一さん

長井:もちろん、技術が変わっても企画力や伝達力というのは、どの時代にも活かせるでしょうね。ただ、受注仕事の現場はすでに、Flash以降のWEB技術のレベルを大きく超えて多様化しているんです。

澤邊:まぁ、知識は「深く広く」じゃなきゃ、ってことですね(笑)。

長井:簡単に言っちゃいましたね(苦笑)。でもたしかに、例えばデジタルサイネージの案件では、建築の設計段階から企画会議に入ってくれと言われたり、「自分はいま何をやってるんだ?」と思う瞬間もあるくらいに役割は広がっています。だから自らの専門性はもちろん、そうじゃない部分も求められる傾向は、これから確実に強まっていくと思います。

「受託脳」「未機能チーム」からの脱却が明暗を分ける。

賑わいを見せるWEB業界 / インタラクティブコンテンツの世界において、「わかってはいても」陥りがちな落とし穴。それらも、今後のクリエイターや企業の明暗を分けるだろうと澤邊さんはいう。

京都本社

京都本社

澤邊:一番恐いのはいわゆる「受託脳」。来た球をいかに早く打ち返すかだけに注力してしまって、それで結局は価格競争で疲弊してしまう。これは特に、最後はクライアントが決める / 決めてくれる仕事に慣れすぎると陥りやすいんです。そうじゃなく、自分で球を投げ返せるか―つまり毎回お客さんのためにも「僕はこう思います」と言えるかどうか。仮に同じ内容の仕事をしても、その違いは10年経ったとき全く異なる結果になるはず。だから今後は、ビジネス感覚がないクリエイターは生き延びていけなくなると思ってて。それは会社全体でも、また独立してフリーランスでやるにしても同じでしょうね。

前述のスタジオ的組織としての意識改革とも関わりそうだが、実際のチームづくりにおいても、最近1-10は「変化」を選択した。これまでの職能別から、案件ごとに異なる技術を持つメンバーが混在するチーム編成へ移行したのだ。

澤邊:たとえば、IAやUIに関心の高いデザイナーと、レタッチ技術に強いデザイナーをただ一緒に「デザインチーム」にしても発展はない。同じようにサーバサイドのプログラマーが10人いても、誰が新しい技術に詳しくなり知り抜くかは、放っておくと自主性頼みです。さらに、それらの知見をプロモサイトに活かすには、また別の知恵も必要。そう考えると、役職よりミッションで分けるべきだというのが、現状の結論です。

『白戸CG郎』

『白戸CG郎』(1→10design.Inc 制作)
ソフトバンクのCMでおなじみの「お父さん」こと白戸次郎。それをCG化したコン テンツが白戸CG郎。サイトではCG郎が動くだけでなく、喋り、会話を続けることで、CG郎からのありがたい格言・アドバイスがもらえるしくみになっている。
http://shirato.mb.softbank.jp/

現在は、デジタルサイネージやプロジェクションマッピングといった切り口で新たに数チームが誕生。さらに各リーダーには一定の決済権も持つ執行役員的な側面を与えることも検討中だ。そこには新チームで目指す、自ら仕事を生み出せるクリエイターというビジョンがある。創業時の「フリーランス的人材の集合体」から、「フリーランス的チームの集合体」への進化ということか。

澤邊:常に営業頼みではなく、CGキャラの扱いが得意なら、その分野の仕事先を開拓してくれていい。逆に、技術だけで「デジタルサイネージも始めました」と旗を上げても、実際の現場の知見—たとえばJRのトレインチャンネルは天気予報の前後が一番乗客に見られるとか—を知らないのでは、そこに未来はないでしょう? だから知識をクロスさせることで、職域つながりの連携とはまた別の軸でも展開していくことが、今後はより必要とされるでしょう。

会社間でも知見を共有・進化していくべき。

未来を見据えた1-10の攻勢は、社内改革にとどまらない。今年4月、彼らのさらなる挑戦が話題となった。「ワン・トゥー・テン・ホールディングス」を始動させ、自社を含むWEBプロダクション5社を持株会社の形で連携させたのだ。

2012年4月に5社より設立した『株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングス』 http://www.1-10holdings.co.jp/

2012年4月に5社より設立した『株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングス』

参加会社は、プロモーションサイト制作に長けた1-10とカラーズ、またマーケティングの知見と経験に富むエクスペリエンスとアナグラムワークス、そしてWEBアプリ / サービスの開発提供を行う新設会社・クアル。異なる強みを持つ各社が連携することでシーンの多様化に応えていく、この業界ではまだ珍しい意欲的な試みといえる。

澤邊:このホールディングス化も、いままでの僕らではできなかったことをやるための挑戦です。1-10の場合でいえば、サイトは公開されたらそこで終わりじゃなく、その後の利用者データを使った効果検証なども重要になってくる。ただ「がんばってイイものつくりました!」ではマズいわけです。実際の広告の効果は代理店さんが担保してくれることもあるわけですが、そこに僕らが甘えていてはいけない。現に、その責任がより求められる直案件もいま増えています。そこで、強化したい部分をいちから社内で高めていくより、互いの強みを共有していくことで各々の結果に結びつけていくことを目指したわけです。

「今後、この形は増えていくのか?」という質問には「そう思います」との回答。現在勢いのあるWEB制作系の会社も、歴史を重ねていくなかで、組織としてのターニングポイントを迎えるときがある。その際の有力な選択肢だというのだ。

澤邊:専門的知見だけでなく、たとえば人材育成などで共有・効率化できる部分があるのも魅力です。ホールディングス化は法的手続きも複雑でなく、資金面でも連携と独立性を両立できる。その点にも可能性を感じます。社内文化の違いは、無理に統一するより、各自の良さを理解し合うのがいい。たとえば1-10は社長が「右向け右」と号令かけても「なんでですか?」って返してくる面倒くささがまた良さだと思うけど(苦笑)、それを他社に強いる必要もないですからね。

「世界」か「どローカル」か。中堅プロダクションに迫る危機。

日本のWEBクリエイティブは、アジア地域を中心に、充分世界に出ていける力があるという澤邊さん。ただし企業の形態や規模も多様化が進むだろうし、どれを選ぶかは、やはり個々の「選択の問題」だと強調する。

エントランス

エントランス

澤邊:僕自身は、少しずつでも海外に舞台を広げたい。多拠点展開も、まとまった資金を用意できて、得られた利益を集中投資できる規模を持つ組織の多くはそれを目指すでしょう。あるいは逆に「どローカル」に専心して、地域の課題や目標に対応できる、地元に根付いた存在を目指すか。これにじっくり取り組むのは、少人数が向いているかもしれませんね。そうなると、もっとも厳しい課題は、中堅的な位置にあるWEBプロダクションが今後どう生き残っていくか、ということかもしれません。

よく「主戦場は京都か東京か?」と聞かれるそうだが、彼らに言わせれば選択肢は「京都か世界か」。京都から始まり、いま世界を目指す途上ということだろう。実際に今年から、上海、シンガポール、そしてベトナムと新たな拠点づくりを進める予定だ。

澤邊:日本のWEBクリエイティブには世界で勝負できる力もあるし、特にアジアには可能性がある。ただし、日本での成功をなぞって上から目線でいったら絶対失敗するでしょう。市場全体についても、個々の組織や人材についても、すでに優秀なものづくりの土台は発達しています。だから僕らも、まじめに現地との共生・共存を考えないといけない。だって逆の立場で考えたら、言葉も喋れない見ず知らずの外人が、金儲けだけのためにビジネスをはじめるのって、そうとう難しいと思いませんか? だからこそ僕らは、賃金が安いから日本の受託仕事をふって儲けようとかではなく、現地で優れた人材を迎え、彼らを育てながら新しいサービスの開発に挑戦していったり、その国の技術発展にも貢献していきたいと思っているんです。

10年後のWEBクリエイターの仕事とは?

では最後に、10年後のWEBクリエイターが手がける仕事内容はどんなものになっているだろう? このことをお二人に聞いてみた。

株式会社ワン・トゥー・テン・デザイン 澤邊さん 長井さん

澤邊:これは難問ですね〜(苦笑)。まず、現在のようなブラウザベース、パソコンベースではないのだろうと思います。いまもスマフォやサイネージは進んでいるし、下手したら今後はコンタクトレンズの中で何かを見せるとかですかね。いずれにせよ、あらゆるもののオンライン化とその統合は進むはずなので、ユーザインタフェースの開発にはかなり需要があるでしょうね。Google Glassなんかは現段階では使うのが面倒くさそうな印象もありますが、でも考えてみて下さい。10年前に僕らがいまのfacebookをみたら、やっぱり「ちょっと面倒くさそう」と感じたはず。そう考えると、ひょっとして未来には? とも思えてきます。

長井:WEBに強いクリエイターがプロダクト側に大きく関わる可能性も、実際ありそうですね。サイトやコンテンツじゃなくて、意外と工場を抱えて端末つくってたりするところも出てくるのかな、とか(笑)。中村勇吾さんたちのインテリア・デバイス「FRAMED」とか、それに近い事例も出てきてるわけですし。いま家電メーカーの方々と話すと、やっぱりソフトが作れないのが悩みという話は結構聞くんですよ。僕らはその逆だから、そこでもっと連携できる可能性もあるかもしれません。

澤邊:課金型のオンデマンドコンテンツなど、個人が選択できるメディアも発展が進むのではと思います。ただ、WEBはいま話したいずれの発展にも深く関わる存在なので、今後も将来性はあると思っています。だからこそ、僕らの会社も単にWEBサイトをつくりたい人より、ユーザーとの印象的な接点、つまり「タッチポイント」をつくれる人がほしいですね。

長井:「タッチポイント」をつくれる人。それは大切ですね。それから1-10のみんなって、いいものをつくって人を喜ばせたいという=「クリエイター魂」を持った人達の集まりなんですよ。そんな仲間たちとともに次の10年をつくっていきたいです。

澤邊:まぁ、僕は10年後を待たずに、45歳になったら代表を退くつもりなんです。だからそっから先は長井さんに丁重にお任せします(笑)。

長井:いやいや、10年後はもっと面白くなって、やめられなくなってると思いますよ(笑)。

まとめ

理路整然とした言葉の中にも、並々ならぬ熱量と軽妙なユーモアとを漂わせる澤邊さん。そして、柔らかな物腰ながら、社長相手にも物怖じしない長井さん。そのやりとりの端々には、幾多の試練を共に乗り越えてきた信頼関係と、つねに自然体で未来へと全力投球するような「1-10らしさ」も感じられた。   彼らがいま動き出している未来に向けての様々な戦略は、いつか予測から現実へと変わっていくのだろう。ある詩人は「最良の予言者は過去である」と言った。澤邊さんたちならきっとこういうだろうか。「最良の予言者は、それを自ら実行できた者である」と。