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「人が集う場づくり」を原点に

日本デザイン株式会社

「名前負けしないくらい頑張る」ために名付けたその硬派な社名と、柔軟かつユニークな創作物のコントラストが印象的なウェブ制作会社「日本デザイン」。その関係はそのまま、同社を率いる大塚剛代表のバイタリティと、そこに集うさまざまなスタッフの仕事ぶりを反映している。仲間3人で起業し、ちょっと聞いたこともないやり方で単身、飛び込み営業を買って出た創業期。そこから少しずつ、ときには意外な形で仕事と人のつながりが広がった発展期。今では、エイベックス・マネジメントをはじめ、広く多数のクライアントから信頼を得ている。そして、その信頼を深めながらも、更なるステップへ足を踏み出そうとしているというのだ。大塚代表の穏やかながらも熱のこもった語り口から、その道のりと今後の行く末を探った。

取材・文:内田伸一 撮影:菱沼勇夫(2012/09/07)

他分野からの転身・起業

音楽イベントとウェブ制作の共通点

中目黒駅から目黒川を渡ってすぐの、個性的な店鋪が集まるエリア。取材で訪れた日本デザインのオフィスで出迎えてくれたのは、同社を率いる大塚剛代表だ。

淡々と、しかし熱心に作業を進めるスタッフの集う空間に、控えめに音楽が流れる。気付くとそれは、大塚さんがおもむろに開いたノートPCから発せられていた。「すみません、習慣で」と苦笑する大塚さん。音楽好きの社長さん、いいですね! と思いきや、起業前の経歴は単なる「好き」を超えたものだった。

日本デザイン株式会社 代表取締役 大塚 剛さん

日本デザイン株式会社 代表取締役 大塚 剛さん

大塚:もともと僕は、音楽のイベンターをしていたんです。さらにさかのぼればテクノのDJをやっていましたが、「人が集まる場づくり」といったものに面白さを感じてきて、イベント作りに重心が移りました。クラブイベントでは音楽ももちろん重要ですけど、良い環境作り、また効果的な事前告知など、来てくれたお客さんにいかに楽しんでもらうか考える必要があります。そのために催しの趣旨に合う協賛先、たとえばドリンクメーカーなどをアレンジすることも含めた仕事をしてきました。

手がけたイベントは幅広く、出演者には☆TakuTakahashi (m-flo)や浅野忠信、海外アーティストの名も。麻布十番のクラブでは、地元のお祭りに連動する形でフロアに「やぐら」風ステージを出現させ、その上でDJがバチさばき、もとい音さばきを聴かせるという型破りな企画もあったという。

大塚:ちょうどそのイベントを通して知り合った方々との縁で、会社を立ち上げて「自分たちが面白いと思うもの」を新たに始めないか、という話が持ち上がったんです。それが今の会社の発足のきっかけですね。なんでウェブ制作なの? って思うかもしれません。実際、僕自身はそれまでウェブに関しては本当に専門外でした。ただ、イベント作りを一緒にやってきた仲間にデザインやプログラミングができる者がいたし、「人が集まる場づくり」という点では、ウェブの世界も本質的に近いものがある、という直感みたいなものを感じたんです。

「仕事のやり方、教えてくれませんか?」

こうして2006年、大塚さんと仲間2人により、現在の日本デザインの前身が誕生。しかし、作れる仲間はいても、重要なのはどこから仕事を生み出すか。これについては「スタートは本当にゼロからだった」とのこと。

大塚:起業当時は代々木上原にオフィスを借りていました。そこで、とにかく付近のウェブ制作会社を調べて、飛び込み営業をしてみたんです。それも「仕事下さい」では失礼すぎると思って、「会社を起こしたのですが、仕事のやり方を教えて下さい!」っていう。大抵は門前払いでしたけど(笑)、中にはおもしろがって僕の話を聞いて下さる方々もいました。そのうち「じゃあ、これやってみる?」と小さなお仕事を頂けるケースも出てきたんです。

最初は携帯サイトの広告バナーなど、本当に「小さな仕事」から誠実にこなしていった。そしてそれをささやかな「実績」として携えながら、次の会社へも飛び込んでいく。もちろん、誰にでもできることではないし、向き不向きもある。大塚さんはディレクター兼営業担当として、ひとりでこの仕事を引き受けた。

その中で仕事のチャンスをくれた会社の多くは、今でもつながりがあるという。硬派な出で立ちとは裏腹に、懐きやすくもある大塚さんの人柄にも、そんな“関係”を大切にするのが表れているようにさえ感じる。そのうち、今度は意外なところから仕事の声がかかり始めた。

大塚:イベント時代の知人たちや普段仲良くさせてもらっている方々から、「ウェブの仕事始めたんだって?」という感じで、ありがたいことに仕事の相談がき始めたんです。「本当にできるの?」と思いつつ、という人もいたと思いますけどね(笑)。先ほどお話したように、良いものをいかに効果的に紹介し、実現するか、その落とし込みの面では以前の仕事で信頼を頂いていた部分もあったのかもしれません。

こうして日本デザインの仕事は、バナーからページへ、ページからサイトへ、と規模も内容も発展していく。ひとつ作ると、その結果で信頼を得て別のクライアントを紹介してもらったり、またそのサイトを見て新たな仕事を相談されたりと、仕事の幅も広がっていったという。

もちろんどの仕事にも、ディレクションもデザインも制作も、「ゼロから」はじめた大塚さんたちの日々の努力があった。自己流ながら、現場で良い例、悪い例ともに実体験を通しながら実力を付けていったという。テレアポでもメールでもない、飛び込み営業という形や、制作の現場には時間が許す限り顔を出していった、などという大塚さんのエピソードは、イベント時代に培った“現場がすべて”という考え方に反映されているように思う。そしてその結果、広がった交流も、やがて同社の財産になっていく。

「タカクハッシン」の日々

原点の積み重ねが、新たなチャンスに

ウェブ制作の仕事の多くは、ある程度以上の規模になると、代理店を介しての案件が多くなる。しかし、彼らにはそのネットワークがまだなかった。

大塚:それならと思って、代理店にも飛び込み営業してみました。予想はしていたものの、ご担当者は不在で会うことはかないませんでしたが、なぜか連絡先は教えて頂いたんです。それで半年くらい通い続けて、話を聞いてもらえるようになりました。

日本デザイン株式会社 代表取締役 大塚 剛さんそれが5年前のこと。そしてその広告代理店から、意外なチャンスを授けてくれた。代理店自身のロゴデザインからウェブサイトに至るまでのリニューアルに際して、コンペへの参加機会を与えてくれたのだ。そして競合の中で勝ち残ったのは、日本デザインだった。

大塚:これは僕個人の指針みたいなものですが「何事も挑戦してみる」という気持ちが自分の中にはあるのかもしれません。もちろん、やりがいのある仕事ほど、同時に大変でもある。でも、やったことがない分野でも「やってみないとわからない」のも事実。できるかどうか、という意味だけでなく、そこに自分の仕事としての楽しみ、やりがいがあるかもしれないという点でもそうです。

「タカクハッシン」。それが日本デザインのモットーだという。

大塚:「多角」かつ「高く」、そして「多拡」発信していこう、というコンセプトで、「ウェブ制作会社」という枠にとどまらずに仕事をしていきたいと思っています。もともと音楽イベントのつくり方がそうだったし、逆にウェブ制作の既存のあり方に過度にとらわれていても自分たちらしさにはならない。その意味では、これまでやってきた経験を活かして、先入観なく取り入れていきたいです。

その好例が、あるアイスクリームブランドのキャンペーンサイト。大塚さんたちはそのサイトに「アイスクリームを食べながら見られる音楽番組」というコンセプトを提案し、実行した。一般的な顧客層へのアピールはテレビCMが担い、ウェブサイトではこのアイスクリームのファンに、同ブランドをより好きになってもらえる仕掛けとしてのコンテンツづくりだ。

大塚:最終的には落ち着いた雰囲気のクラシック音楽を軸にし、演奏者のキャスティングや出演依頼から、スチル、ムービーのチーム作りまで全般的に任せてもらえた仕事でした。撮影はクラブにセットを組んで、ラジオのアナウンサーの方を司会に招くなど、自分の経験という財産も活かしつつ、新しい挑戦ができたと思っています。

LACOSTE L!VE http://www.lacostelivejapan.com/

LACOSTE L!VE

こうした「タカクハッシン」は、日本デザインが手がける仕事全体の、ジャンルやスタイルの点でも発揮されてきた。たとえばサイトリニューアルを手がけたことから、毎シーズンの写真撮影も担当することになった、シューズメーカー「EVOL」との仕事(※現在、撮影は別担当)。ファッションのビッグブランドの次世代展開を、ウェブを通して発信する「LACOSTE L!VE」のプロジェクト。さらには、関東学院の卒業生たちのために、OB・OGが開いているお店を取材・紹介するモバイルサイトなど、コミュニティをサポートする試みにも参加している。

現在進行中のユニークな仕事も紹介してもらった。それは、タトゥーストッキングブランド「MAM AVANTGARD」のサイト制作。素足にタトゥーをしているように見えるタトゥーストッキングは、女性ミュージシャンらが身に付け始めたのもきっかけとなり、大人気だという。いまや人気ブランドがその個性を競う世界に。

大塚:これも、「LACOSTE L!VE」でお世話になっているPR会社さんからのご紹介でスタートした仕事です。このブランドさんの世界観そのものがかなり特殊というか、個性的なので、この人だ! と思った女性イラストレーターを起用して取り組んでいます。サイト用に描いてもらった彼女のイラストがブランド側にも気に入って頂けて、今度はそれをストッキングとして商品化しようか、という話もでています。そういう意外な展開が生まれるのも、この仕事のおもしろさの1つですね。

「できること」と「やりたいこと」の両軸

設立6年目を迎え、現在スタッフは8人。実は会社にとっても、大塚さん自身にとっても、新たな目標に向け動き出すべきときだという。そこで、取材はいったんオフィスを離れ、近くの目黒川沿いを歩きながら今後のお話を伺うことに。それはスタッフたちのいる前でのいわゆる取材モードとも異なり、1人の挑戦者としての大塚さんの素顔が、より身近に感じられたたひとときでもあった。

日本デザイン株式会社 代表取締役 大塚 剛さん

大塚:6年間の仕事で得たノウハウと自信がある一方で、制作内容も体制も、もっと良くできるのでは? との想いも常にもっています。「何事も挑戦してみる」が自分の原動力なのは変わりませんが、それをより効果的にするのが、社内で共有できるコミュニケーション技術の確立なのかなと。別の言葉でいうと、これまで僕でしか言えなかったこと、やれなかったことが、僕以外のスタッフでもできるようになるといい。

それは会社の実力や財産としてはもちろん、自分自身のためでもあるという。奮闘の甲斐あって、日本デザインは現在、多くの依頼が訪れるようになり、その依頼主も広がった。しかし、ここでもう一度、自分たちの方向性をしっかりと見つめ直すべきだと大塚さんは感じている。

大塚:起業直後は「今月の社員の給料をどうしよう」というくらいの焦りと悩みの中でやってきました。ありがたいことにその段階は超えられた。デザインからデータベースなどのバックヤード系まで全て扱えるのは、この規模の会社では当初少なく、それも強みにしてこれたと思う。けれど今、新たな課題もあります。それは「できること」を引き受け続けることに甘んじていてはいけない、という想い。もちろん、そこにベストを尽くして満足するのでもいい。でも僕らの中には「もっと」がある。具体的には、自社サービスの開発であり、またそのための体力を維持できるスケール感への発展です。

「できること」と「もっとやりたいこと」の二軸がクロスしていくことで、自分たちが次の段階に進めると考える大塚さん。「あのサイトを作った会社が立ち上げた新サービスか」「あのサービスで知られる会社のつくったサイトか」と、自社サービスと受注仕事の両者が互いを引き上げていく関係が、究極の理想だという。

大塚:新サービスのためのアイデアは常日頃から社内で考えていて、たとえば毎週「これがあったら便利だね会議」をやっています。特にウェブやネット関係に限定せず、何でもありのアイデアですが、それもどこかで活かせる時期がくればと思っています。

現在新スタッフを募集中なのも、この次のステップのために決めたことだ。最後に、同社がどんな人材を欲しているのかを伺った。

日本デザイン株式会社 代表取締役 大塚 剛さん

大塚:お話したような展開のために、ディレクターも含めて新スタッフを募集することを決めました。必ずしも自分みたいな突撃タイプが欲しいというわけでもなくて―それは今も社内で僕ひとりだけだし(笑)―それぞれが持っている個性がうまく活かせればいいなと思っています。だから求めるのは、責任感があり、自分で考えて動ける人ですかね。後は、何か新しい事に挑戦したい人。その環境は揃っていると思うので、悩みながらでも、ともかく自分で何かの形にできる人を、新たな仲間として待っています。

お話の最後に「大塚さんでも、悩んだり迷ったりすることが?」と聞くと、微笑んで「悩んでもいますよ、いつも」と答えてくれたのも印象的だった。

 

まとめ

自分たちが楽しいことをやりたい、というクリエイターなら誰でも抱く想いと、人が集う場づくりという俯瞰的な視点。これを「タカクハッシン」という形で結びつけた彼らの挑戦は、いま新たな段階を迎えつつある。そして「現状維持だけに甘んじたくない、という想いは常にある」と語る大塚さんの熱い想いが、どんな「もっと」を生み出せるか。初の自社サービスの実現を含め、期待したい。